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138【湖底散歩】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 上からの浄化はしたけど、下の方はまだ不安だ。それでも湖の水は鑑定ではもう〈飲料可〉になっている。

 おれは、飛び込んだ後にずぶずぶと潜って、湖底へたどり着く。

 水深約百三十メートル。

 あ、ちなみにこの湖の広さは琵琶湖ぐらいあります。つまり東京二十三区より広い。しかも、さっきお話しした専門の地質学者さんによると、本来の深さは二百メートル。

 そりゃあ王都の水を賄えてたでしょう。


 俺は、水の女神か海の神のどちらの加護のお蔭かわからないけど、水中をずんずん歩いていく。あ、ウエイトを手首足首に付けました。でも海よりは沈みやすいかな?やっぱり。淡水だから?しょっぱくないしね。


 “あ、青色ちゃん、おれが沈んだままでも慌てないでってみんなに言っといて。言うの忘れてた”

 “くすくす、わかったわ。アヌビリにいえばいいわね”


 さて

 “おーい、ミグマーリさーん”


 水中は死の湖だった。確かに、水は透明になったけど、小魚や水草迄ない。足元は死骸なのかヘドロでひどい。ヌルっとするし、足をつけると舞い上がってしまう。

 俺は途中から湖底から少し浮いて泳ぎながら回復魔法をかけていくと、後ろに水草が復活する。サンゴ礁よりは少し地味だけど、緑色になっていくのは割ときれいだ。


 “青色ちゃん、もともとここら辺はどういう魚が泳いでいたの?”

 “ヒエラルキーのちょうてんにいたのは、さめ”

 “たんすいのさめ?”

 “そう”

 キャビアのお母さん的なサメかな。復活するといいな。でも地球のあれと似たようなのなら、シーラカンスのような原始的な生物だったかも。


 “おーい、ミグマーリ、会いに来たよ。さっきの駿介だよ”


 “シュンスケ、私はここ”


 “いた、あっちよ、おうじ”

 青色ちゃんが見つけてくれたみたい。誘導されるように方向を変える。

 東西に広がる三日月湖(リンドラーク)の東の方へ水中を泳いでいく。

 相変わらずフィンとかないけど、青色ちゃんの水流で半分誘導されるように進むと、なにやら、形だけは見覚えのある葉っぱが見えてきた。

 これは、水草じゃないね、地上の葉っぱだ。でもなんだか黒く染められていて、ボロボロになっている。

 ミグマーリの気配はこちらの方からする。


 葉っぱはそこらじゅうを這うように広がっているが、緩やかなすごく大きい山を湖底に作っている。さっき上から見えていた島のようなものは、この蔓の山のてっぺんかもしれない。


 まずは気になる変色している葉っぱと蔓に回復魔法をかける。


 “緑色ちゃん。これってさ、ユグドラシルの葡萄の蔓ではないの?”

 葡萄の花や実は、なさそうだけど。


 “たしかに、にているわね”

 “ユグドラシルの世界樹迄行けるのかな”

 “ここまで、かなりきょりがあるし、むずかしいかもしれないわ。

 みずうみのまわりまで、ちじょうがもっとみどりでつながっていないと”


 そっか、結構砂漠化しているもんな。


 とにかく今はミグマーリに会うのが最優先だな。


 この湖の中の葡萄の蔓には潜り込めるかもしれない。

 おれは水中で精霊ちゃんのサイズになって、葉っぱに飛び込む。

 今までは瞬間的に葉っぱの向こうに行くための空間魔法の補助みたいに使っていたけど、今回は葉っぱのつながりを利用して情報を集めてみよう。


 すると、こんもりと盛り上がっている小山のあたりに、白く美しい竜じゃなくて龍がいた。

 海竜のモササや地竜たちとは違って、中国や日本人が認識するような龍だ。長くてそして頭も少し長くて、鹿のような角があって、四本の手足がある。それに何よりすごく大きい。ハロルドたちのような神聖な存在だ。

 長さ的にはムーさんより大きいけどスリムだからな。体積なら同じぐらいか小さいかも。


 俺はミグマーリと思われる白い龍に近づいて、元の大きさに戻る。それでも、彼女が大きいから鼻先に行かないと見えないかな。


「今日は、俺は駿介。ミグマーリだね」

 『ええ初めましてシュンスケ。あら?あなたは王子なのね』

 この子たちは、何を感じて俺を王子と呼ぶのか。あ、まさか匂い?ノームのクンクンを思い出す。ハロルドもクンクンするもんな。


「初めまして。よし、ここから出ようね。ミグマーリは空を飛べるかい?」

 『きっと大丈夫よ』

 よし。でも状態異常の衰弱サインが鑑定に出ている。


 『ああ、水がきれいになったわね。ありがとうシュンスケ』

「そうか、よかった」


 ミグマーリの額に両手を置いたまま彼女に回復魔法を流す。おもり付いたままの足首は魔法の流れのまま上に浮かんでしまう。水流のあるプールで手だけ縁につかまっている感じ。


 “だれか、ムーさんを呼べるかい?”

 たしか、トルネキの王都までは来れると言っていた!

 “あたしがよぶ!”

 黄色ちゃんの元気な念話が聞こえる。

「ミグマーリは白鯨のムーさんを知ってる?」

 『ええ、古い友人だわ』

「彼が来るのを少し待って」

 『え?来るの?』

 すこし弾んだ気持ちが伝わる。


 回復魔法は掛け続ける。


 “もうじょうりくした!”

「トルネキに上陸したって」

 『まあ!』

 じゃあその間に

 この蔓をサブボックスに入れてしまおう。この蔓ってひょっとしてだもんな。

 うわ、すごい量があるぜ。


 『ふう、すっきりしたわ。あの蔓は、初めは私を守ってくれたの、でもその上から、なにか呪いに浸食されていて、重くて動けなかったわ。もう長い長い間』

「そう、頑張ったね。よかった、ミグマーリに会えてうれしいよ」

 『私もシュンスケに会えてうれしいわ』


 “ムーきた!”

「よし、浮上しよう。俺が転移で・・・」

 『シュンスケ、ありがとう、もう大丈夫。自分で浮上するわ。

 だから角につかまって!』

「わかった」


 六才児の俺のままじゃ両角に届かないので取りあえず右の角につかまる。

 角の感触は、ハロルドの角とはまた違うな。

 ミグマーリは白龍。ハロルドやムーと同じで真っ白。それに長年の衰弱から回復してきたのかうっすらと光りだした。


 でも、彼女は確かに精霊なんだけど、妖精でもあるみたい。落ち着いたら彼女に妖精のことを教えてもらえたらうれしいな。


 水面に大きな影が見えてきたと思ったら、船底のようなものが出現した。

 ムーのお腹だ!


 バシャー ミグマーリの角につかまったまま、水上に出る。


 『シュンスケとミグマーリ』

「ムーさん!」

 『ムー久しぶりね』


 『ああ、久しぶりだミグマーリ。シュンスケ、私の友を救ってくれてありがとう』

「ムーさん、ミグマーリはずいぶん長い時間湖底で呪われていたらしい。まだ飛ぶには負担がありそうだしさ、手伝ってくれない?」

 『ああ、大丈夫さ』


 『王子!僕も手伝う!』

「ハロルドも出てきて」

 『うん!』


 水面を過ぎて、ミグマーリの角を手放して単独で空中に出る。手足首のウエイトはアイテムボックスに入れたよ。


 『あら、ハロルドもいるのね』

「うん!僕はずっと王子の中にいたよ」

 『まあ、わたしも王子の中に入れてほしいわ』

「ミグマーリも?いいけど、今はゆっくりして。まだ、自分で飛んじゃ駄目だよ」

 『そうね、ありがとう』


 水面に顔から胸?のあたりまで出たミグマーリの隣にムーさんが緩やかに泳いでいる。

 空中にはペガコーンのハロルドとその背中に乗せてもらう俺。


 なんかすごい光景だ。


「ムーさんの背中にミグマーリを載せてもいいかな」

 『ああ、それで頼む。しばらくは彼女をシュバイツ湖で養生させよう』

「それがいいね。じゃあ行くよハロルド」

 『よし!頑張る』


 俺が、重力に干渉してミグマーリを浮かべると、ハロルドが風魔法でムーの背中にそうっと乗せる。ハロルドらしい優しい仕事ぶりだ。


 ミグマーリをムーに乗せたとたん、トプンと音がして、白龍が白鯨の中に半分ぐらい浸かる。ってムーが鯨の様で水の様だ。


 すげー


 感動の気持ちのままハロルドに乗って、湖岸まで飛んでいく。


 ミグマーリを乗せたムーもついてきた。


 岸についていったんハロルドから降りた俺は、ビーチサンダルを拾い、パーカーを着ながら殿下のところまで歩く。


「とりあえず、水質は飲めるところまで回復しました」

「ありがとう、本当にありがとうシュバイツ王子」

「ただ、この湖を守っていた水龍が衰弱していて、一度シュバイツ湖に連れて行ってもらいます。回復したらまた戻ってきますから、その後は安定するでしょう」

「わかりました」


 『一月ぐらいで、もどってこれるだろう。あちらには女神様たちもいるからな』

「ああ、ムー様、伝説の白鯨にお会いしてお言葉を頂けるとは」

「そうだぜ、ムーは普段ここら辺も飛んでいるらしいが、姿を見せてくれるのはなかなか貴重だそうだ」


 それはこの王都の冒険者ギルドの都市伝説みたいなものらしい。


「そうなんですか?」

 『ああ、わたしもミグマーリを探していたのだ。ただ、シュンスケみたいに自ら積極的に動くには制限があるのだ。頼んでくれる特定の存在が必要になるのだ』

「俺とか父さんみたいな?」

 『ああそうだ』


 この子たちのために、俺が動かなくてはいけないんだね。


「じゃあ、ムーさん頼んだよ」

 『ああ、任せておけ』

 『シュンスケ、回復して戻ってきたら、例の件お願いするわ』

「え?ほんとうにするの?」

 『もちろんよ』

「じゃあ、待ってる」


 空へ浮上するムーへ手を振る。


 後ろでは殿下や、他の人たちもみんな一様に手を振っているみたい。


 『では、また連絡しよう』

「待ってる」

 北西よりにカーブをしながらムーさんが消えていく。


 もう、日が傾いてきていた。


「シュンスケお疲れ」

 頭にぽんと手を置かれる。

「アヌビリさん。確かに疲れました」


「そうですよ、あんなに魔法を放って歩いているだけでもすごいです」

 兵士の制服のレオラさんも声をかけてきた。


「レオラ、それだけじゃないよ」

「アントニオ殿下」

「こんなに疲れ切っていても、シュバイツ殿下はあの広大な異空間を維持しているんだよ」

「まあ、でもあの中には十頭の地竜がいて、そこからちょっと魔素を分けてもらっているんですよ」

「え?殿下は地竜迄保有しているのですか?」

「成り行きですよ」


 湖底を歩いていたからかすこし体が冷えているな。

 滞在している部屋でお風呂に入って・・・それからごはん。


「ふわぁ。あっ」

 気が抜けて思わず出ちゃったあくび。


「だいじょうぶか?おまえ昨日の睡眠時間も少なかっただろう」

「そうだっけ」

「子供は寝るようになってるんだよ」

「むう、中身はアヌビリさんやアントニオ殿下と同じぐらいなんだけどな」


 気が付けば風呂で寝ているところを、ごはんに呼びに来たフロアさんに救われて、食べることなく寝てしまった。


 夜中に目が覚めると、枕元にサンドイッチがドーム型の蓋をされて置いてあった。

 俺は手持ちの熱々スープを出して、一緒にいただいて、二度寝に入る。


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