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137 【輝く三日月湖】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 次の日の昼、俺は黒目黒髪の人間族に姿を変え、麦わら帽子を被る。

「すみません、精霊の姿のままでは、この南国の日差しがきつくて、この姿で失礼します」

「昨日変身は見させてもらったのですが、もちろん大丈夫ですよ。それにしても見事な術ですね」

 レオラさんがそういうけどさ、変身の魔法って、悪用されると昨日みたいになるからね。



「有難うございます」

「いつか、王太子やアヌビリが言ってた女優のお姿も見たいですけど」

「ははは、もうあれはしないですよ」



 湖の調査には、レオラ騎兵隊員と、アヌビリさん、そしてリカオン族で専門の学者、リリュー教授がついてきてくれる。

 リカオン族といえば、ロムドム団のカランさんしか知らなかったけど、この人はまた全然違う気難しそうな学者らしい人だ。第一印象では。鑑定では五十代の女性なので失礼のないように対応しよう。



 暑い国や砂漠の湖と言えば高濃度の塩湖のイメージがあったりする。



 しかしこれは・・・

 三日月湖の名前は〈リンドラーク〉



「ひでえ」

 アヌビリさんのつぶやきに頷く。

 あちらこちらに、死んだ魚が浮かんでいる。

 それがまた悪い空気を発生している感じだ。臭いし。



 湖の表面にはうっすらと油が浮いたようになっている。

 昔よく海で船の燃料やタンカーの油が流れたようなああいう風景だ。

 水の部分が半分いや、三割ぐらいしかない。この広い湖で。

 きのうここに着いた時は、夕焼けで一様に光って分からなかったけど、今ならわかる。



 そして、湖の表面に浮いているのは油じゃなくて、悪魔がまき散らしていた、病原菌の小さな精霊でできた液体のようなものだった。あれから俺は悪魔の液体と言っている。



 そりゃ、ろ過だけではむりだ。

 女神(おば)さまたちによるとあいつらは、煮沸でも難しいのだ。



 “みんな、悪魔の痕跡がないか調べて!”

 “わかった!”

 “気を付けるんだよ!”

 “まかせて”



 “青色ちゃん、今は潜れないよね”

 “こんなきもちわるいみずはむり”

 ですよねー



 まずは浄化だな。

 せっかく人間族になったのに、沢山魔法を使うので元に戻る。そしてハロルドを出す。



 まだ、大掛かりな病気が蔓延しなかったのは、湖からの取水口が湖底に近かったことかもしれない。あいつらは水面に浮いている。

 そして、地球と違って魔法で水が作り出せるのがファンタジーならではのアドバンテージだろう。魔法の水は、術者のイメージで出るのだが、必ず飲める水を出す。きれいな水を出すイメージしかしないよ。貴重な魔力を使うんだもんな。



「じゃあ行くよハロルド」

『王子歌うの?』

「そうだな」

 麦わら帽子をアイテムボックスに仕舞い、ハロルドの背中に乗る。



 スマホに入れておいた、俺がピアノで弾いた伴奏を流す。湖全体に広がるように大音量で。

 厳かで清らかな曲だから、大音量でも不快ではないね。



 そして、俺も歌いだす。いつものアメージングなあの歌を。

 俺のイメージの問題なんだろうけど、聖属性魔法を発動するには、これが一番すんなりいく。

 すると、俺が良く歌うからか、ハロルドが鼻歌で合わせてきた。

 こりゃいいや。



 羽根を大きく広げたベガコーンに乗って湖をぐるりと飛んでいく。ぐるりとは言っても三日月型だけどな。

 小さな雨雲のように、大きな如雨露の水やりのように、俺達からきらきらとラメのような魔法が大量に降り注ぐ。そうして、湖面に接触すると、湖の表面もきらきらと光って、朝霧のように水上にも立ち込めていく。



 真ん中より東寄りに、島のようなものがある。



 そして、死んでしまった魚たちに、モーツァルトの子守歌を。

 あの黒い液体で苦しんでいた、ゴブリンを思い出した。あの子たちみたいに、助けるのが間に合わなくてごめんね。せめて安らかに。おばあさま、どうかあの魚たちの魂を救い給え。



「どう?」

 “すいめんは、じょうかできたかも”

「水面は、か」

 水中はまだ問題ありそうだな。

「もう一度初めの歌を歌うよ」

 『わかった!』



 俺の気持ちを汲んでくれたのか、ハロルドは今度は水面すれすれに飛んでくれる。

 時折、蹄が水面をバシャリとかすめると、水しぶきがあり得ないぐらいキラキラときらめいている。



「次は真ん中に行こう」



 さっきの島に降りたかったけど、結構東寄りだったからな。魔法を広げるには真ん中がいいか。



 宮殿の真正面、三日月湖(リンドラーク)の一番幅のあるところの真ん中に大きな丸い氷を出す。

 直径三十メートルぐらい。真ん丸の舞台って感じだ。

『わあ、これって僕が王子と初めて会った時みたい!あれより大きいけど』

「そっか、ラーズベルトからカーリンとシュバイツ湖に行った時だ」

『ふふ、ついこの間のはずなのに、結構経ってる気もする。不思議』



「この上に、真ん中なら大丈夫かな」

 チェンバロをアイテムボックスからそっと置く。椅子と。



 氷は結構な厚みにしたから傾くことはないと思うけど。



「さて、水の女神様の歌かな」

『うん!』



 ~~碧く~~澄んだ~~

 ~~清らかな~流れよ~

 ~~天からの恵みの水よ~





 ハロルドも歌うと、かなり最強だ。



 “君は誰?神様?”

 なにか俺に呼び掛けてきた。

 “俺は駿介。君は湖底にいるの?”

 “私はずうっとここに縫い留められていて”

 縫い留められる?

 穏やかじゃない単語だな。





 俺は歌い終わってチェンバロを仕舞う。

「ハロルド、湖底に行ってくるから、俺の中に戻って」

 今日は手綱だけだからシュっと戻れるんだけど。

 『うん』

「そのまえにね、このあたりにハロルドの友達はいない?」

『そういえば・・・王様がまだ精霊王だったときに、この辺りに水を守る白い子がいたんだ。そういえば長い間見てないなあ。たしか〈ミグマーリ〉って子なんだけど』

「おっけー多分その子だ!行ってくる」

『わかった!』





 俺はハロルドを仕舞うと、服を脱ぐ。

 安心してください。もちろん海パンは初めから履いてますよ!

 まあ、護岸からかなり遠いので、高性能な望遠鏡じゃなければ見えないかもしれないけど。





 “おうじ、あぬびりからでんごん”

「おっと赤色くん、何だ?」

 “つぎになにをするかわからないけど、きゅうけいしろ!だってさ” 

「そっか、そうだな、心配かけてるね。一度戻ろうかな」

 眩しいので人間族に戻ってパーカーを着て麦わら帽子をかぶり、氷の舞台から少し浮き上がりながら氷を錬金術で水に分解する。えっと、水分子の振動を上げて氷を水にするんだよ。錬金術より化学の応用だよね。





 “御免。いちど護岸に戻るけどすぐに戻ってくるから、君はミグマーリで合ってる?”

 真下だろうか、湖底の子に話しかけてみる。

 “そう!私はミグマーリ!どうして知ってるの?”

 “ハロルドと一緒に来ているんだよ!”

 “わあ、ハロルドと?なつかしいわ。会えるの?”

 “会えるよ”





『え?やっぱり、ミグマーリがいるの?』

「そうみたい!」

『わあ、楽しみ。でも一度王子は休憩だよ』

「はあい」





 俺はハロルドに乗ったまま一度、空高く飛んでもらう。

 地球の地理とか地学を習った時に、三日月湖はそもそも川が長い期間に蛇行の川筋が変わってできたもので、近くにはそのもとになった川があるはずだと。





 すると、宮殿を挟んで三日月湖(リンドラーク)と反対に東西に流れていただろう太くて長い筋が大地を這っている。





「あれが三日月湖(リンドラーク)のもとの川だね」

『そうだよ。昔は大きな川で、その両側を緑が一杯あったんだけど、すっかりないね」

「普通に緑があったんだ」

『うん、ぜんぜんちがうふうけいだよ。そういえばミグマーリに会った時は、川があったよ』

 なるほど。





「ハロルドがずっとここに来なかったのはなぜ?」

『風の女神さまと、シュバイツ湖で遊んでたから』

「そっか、風の女神さまは優しいもんな」

『そう、楽しいことが大好きなんだよ』

「・・・知ってる」

 仕事が楽しすぎて、地球から戻ってこれないことを。





 パーカーを再び着て、宮殿の前に作ってくれているテントに戻る。





「お疲れ、シュンスケ」

「お疲れ様です。シュバイツ殿下」





 がばっ

「すごいよ、シュバイツ殿下」

 だんだん黒ライオン殿下の距離感が近くなってきて、・・・抱き着いてきた。

 昨日はマツがいたからかな?今日はすごいですね。

「有難うございます。会議は終わられたのですか?」

「会議なんかよりこっちを見守る方が大事だ。

 あの、劇場で歌ってくれた奇跡をまた見ることができるなんで」

 今回はガキの状態で歌いましたけど。

 キラキラは一緒か。





 テントの中のテーブルセットに座って、フロアさんが入れてくれた冷たいお茶を頂く。ストレートティー。

「おいし」

「シュンスケ、これ」

 アヌビリさんが紙袋を出してきた。中をのぞく。

「あ!煎餅じゃんすご」

「古書街で売ってて、米で出来てる菓子って言ってた」

 手を突っ込んで一枚出す。

 醤油はこの世界ではまた見たことがない(俺の手持ちは大量にあるがな)から、塩せんべいだ。でも少しピンク色。何だろ。良い香り。

 クンクン

 ありがたくもらって齧る。

「旨、なんかエビかカニか甲殻類の香りがする」

「へえ、あたりだ、海の小エビを焼いてから風魔法で粉砕するんだと。それを蒸かした米に練りこむんだとよ」

「なるほどー!そうか!なんか懐かし」

 もう一枚♪ へへっ。





「こういうの、お前らも好きそう」

 ちっちゃく割って赤色くんと白色くんにおすそ分け。

 “お、さすがおうじ”

 “うまい!アヌビリ、いいちょいすだぜ”

 赤色くんが小さい親指でグッドマークを出す。

「そりゃよかった」



 しかもストレートティーに結構合うじゃん。



「ふっふっふっ、力が湧いてきたぜ」





 俺はアイテムボックスの中のさらに母さんのウエストポーチから、ビーチサンダルを出す。そして、スニーカーと靴下を脱いで代わりに仕舞う。





 んじゃいっちょ、ミグマーリに会いに行きますか!





 表面がきれいになった三日月湖(リンドラーク)に向かって走り出す。途中でパーカーとビーチサンダルを脱ぎ捨てて、空を飛びながら二十メートルぐらい先へダイブした。


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