136【緊急会議】
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もう、夜の八時になっていたけど、俺は急遽ポリゴンの冒険者ギルドマスターの部屋にお邪魔していた。疲れと眠気で限界のマツを伴って。
「そうか、マツ本人が狙われたのか」
「はい、ちょっと安全がもう少し確保できなければ連れていくことは難しいかと」
「そうだな。ではしばらく孤児院に戻っていてもらおう」
「おうじ、ごめんなさい」
「いや、俺こそ、一緒に連れていけなくてごめん。でも安全が確認出来たら必ず迎えに来るから」
「うん、きっとよ」
「でも、マツとティキのお家の手がかりになりそうだから、事情をあっちこっち聞いてくるね」
「わかった!あたしはおべんきょうしてまってる」
「ああ、頑張りすぎちゃだめだよ」
「おにいちゃんこそ!」
「あ、それからドミニク卿。ちょっと早いかもだけど、これをお渡ししておきます」
と誕生祝の例の本を渡しておく。ラッピングで何が入ってるか察したみたい。
「わるいな」
あれ?いつものいかめしい表情がへらりと崩れる。初めて見るドミニク卿のお父さん顔。
「カウバンドから帰ってすぐに生まれて」
「え?そうなんだ!おめでとうございます」
「わあ、あかちゃん?あいたいなあ」
「俺も、落ち着いたらお顔を見せてくださいね」
「ああ。だから気を付けて行ってこい」
「わかりました。じゃあ、あまりギルマスに仕事をさせちゃいけないな」
「何言ってんだ、お前のおかげでそこの扉が家につながってるんだ。子供が気にすることはない」
「ははは、分かりました、では行ってきます。
マツ、お疲れだからゆっくり寝るんだよ」
「はい。あ、おうじ!これもっていって」
マツが見覚えのある袋を俺に渡す
「これ?マツがカランさんにもらってた」
「やくにたつかもしれないから!」
「わ、わかった。サンキュ。じゃあ」
場所は変わって、アナザーワールドの大きい方の家にやってきた。
こちらも今は夜。
ここに、王太子と、レオラ騎兵隊員とアヌビリさん、侍従長のフロワを呼んだ。
急遽、トルネキ王国の外務大臣のビストル フォン クリエルさんが同席だ。
「夜分遅くにお呼びだてして申し訳ありません」
そう切り出すと。
「トルネキ王国は常夏の国なので、どちらかというと、涼しい夜に動いておりますので。夜遅いのは苦ではありません。
我々の方こそ、まさかあんなに間者が入り込んで、客人を狙ってるとは申し訳ありませんでした」
アントニオ殿下が低姿勢で誤ってきた。
腰の低いライオンさんはすごく好感度高いです。
「ところでフロアさん、侍女長さんは見つかりましたか」
「はい、何日か閉じ込められていたようで、少し衰弱しておりましたが、水分を取らせていまは休んでおります」
「よかったです。
今回のことで、マチューラ フォン ケティ嬢は、俺の空間魔法でガスマニアに帰らせました。それで、ギルドマスターのドミニク卿も詳細は分かっていなかったみたいなのですが、東の方の内紛について、こちらの国の方が近いことですし、ご存知の範囲で、詳しくお聞かせいただきたいのです」
「それについては、外務大臣のビストルから説明をさせよう」
初めましての挨拶は、アナザーワールドに誘った時にして済ませている。
テーブルには持ってきてもらった大きな地図が広げられている。かなり広域な地図だ。
俺がガスマニアの学園や冒険者ギルドでみた地図も載っている範囲が同じではあるが、大陸の真ん中あたりはかなり古い内容だと言われていた。
もちろん、今回の旅の時まえにもある程度見せてもらった。けど、国の名前とか、ましてや領地なんて日々変わるもの。だから川や山、平地の名前はいいけど、国の名前は信じるなと言われたから見もしなかったんだ。以上言い訳です。
「では、ご説明します」
このブラックライオン族が大方を締める、トルネキ王都から、西へ、距離でいうとガスマニアよりもっと遠い所に世界樹があって、そのふもとに、ペルジャ―王国っていう国があって、周りの小国を巻き込んで勢力拡大をしていってるらしい。
で、抵抗しているところの一つがマツとティキの実家、ケティ家だそうだ。
とにかく、トルネキ王国の水問題を早く片付けてそっちに向かわなくちゃね。
マツを狙ったのも、ペルジャー王国が戦略的に優位に立つために人質にしたかったのかもしれない。
「それなら、カウベルドにいるティキも少しでも遠くに保護した方がいいかもしれないですね」
「それなんですけど、シュバイツ殿下のこの、アナザーワールドに保護いただくのは難しいでしょうか」
「それが、一日や二日ぐらいなら大丈夫なんでしょうが、まだ長期に人を住まわせたことがないので、正直怖いんです。亜空間というものは術者にもしものことがあったら大変なことになりますから」
「亜空間に永遠に閉じ込められてしまうとか」
「ええ。
もちろん、俺だって簡単に死ぬことはないとは思うんですけど、この中に人を住まわせる責任を負うのが怖いんですよ。
一応俺の魔力が途切れても、ここにもユグドラシルや神々などの恩恵が来ているので、自給自足は続けられるんですけどね」
「なんと、さすがですな」
何がさすがなの?ビストル外務大臣さん。
「せめて、ガスマニアの王都の海岸に俺の家が一つあるんですけど、そこなら向かいにドミニク卿が住んでいますし」
「え?ポリゴンのギルマスが?帝都に?」
「あ」
単騎で二日必要な距離を通勤は出来ないよね。うっかり。
「其方は、空間魔法で行き来できる扉があって」
「先日、殿下のお出になられた劇の、奈落の楽屋とボックス席を繋げてくれた扉のようなものですか?」
「はい、あれは術は俺が一瞬だけ繋げた魔法ですが、ポリゴンの扉は、あちらの世界樹のユグドラシルの協力で固定しているのです」
「「なんと」」
俺の屋敷からも、ロードランダの城への扉があるけどな。
「さすが、シュバイツ殿下」
さすが頂きました!二回目。
「丁度カウベルドのブーカ君がこの夏からここの学園の入試を受けて入学するって言ってたから、それをガスマニアの学園に変更して、一緒に帝都に住んでもらうのはどうだろう。マツもなんだか勉強したいって張り切ってたし」
ぶつぶつつぶやいていると、
「それはいいですね!下宿代はきっちりカウベルド子爵に払わせますよ」
聞かれていた!
「それはありがたいです。帝都の俺の家の中なら、ロードランダと同じユグドラシルの結界が張ってあるので安心ですしね」
「ユグドラシルの。そういえば、去年の夏にここの冒険者ギルドに手配中だった犯罪者のエルフ二人が突然現れて掲示板のやつだったから速攻で捕まえて、後で聞いた話、ロードランダの国境から飛ばされてきたって言ってたな」
「あぁ」
飛ばされる瞬間をクリスとみてたやつだ。馬鹿なエルフの。
アヌビリさんがこっちのギルドにいたんだ。世の中狭いぜ。
「あいつら、寿命が長いので、何十年拘束したところで堪えないと思いますから、ロードランダに連絡したら引き取りますよ。アントニオ殿下」
「そうですね。考えてみます」
「分かりました、王都からもギルド経由でドミニク卿に連絡してみます」
レオラさんも動いてくれるようだ。
「ではケティ家のお嬢様達はそのように」
「あと、他に取り込んでいる亜空間のスパイをどうしようかな。べつにあっちの国がトルネキ王国と敵対しているわけではないんですよね」
「そうなんです」
「じゃあ、スパイなら亜空間で捕まえておこうかな。一応こちらに出してみましょうか。犯罪歴などがあれば別方向から捕らえられますしね」
「お願いします」
ミノタウロスを捕まえていたのと同じで、トイレシャワー完備で、ベッドがない牢屋仕様。窓もなし。
こちらへの扉をがちがちの鉄格子にして出す。
女が一部屋、男二人で一部屋
亜空間の中で別の亜空間なんてって思ってたけど平気だった。
女がリーダーみたいだな。
「まずは、変身の魔道具を外しなさい」
「魔道具なんて、私はベージュです。トルネキ王国の宮殿の侍女頭です。早くここから出してください。私、仕事が一杯あるのです」
「よくも白々しい!」
侍従長のフロアさんが叫ぶ。そうだよ、本物を何日も拘束してたのをみんな知ってるぜ。
「フロアさん。私は侍女長のベージュです。助けてください」
「ベージュならキッチンの地下から救出して今は手当てを受けている。それを知らずにいたなんて、私は自分が許せない。それ以上に同僚をあんな目に合わせたお前を許すことはできない」
おおっ年齢的にホワイトになってるとは言え、ブラックライオンが怒ると怖いぜ。
「ちっ、くそ・・・」
“変身の魔道具はネックレス?”
精霊ちゃんに探してもらう。
“そうそう、ブラウスのしたにあるわ”
“ひっぱって!”
“おっけー”
「往生際が悪い!」
パチン
「あ、タグが」
犯罪者のくせに、身分証のタグもしたままなんて馬鹿じゃね?
俺やマツがドミニクにもらった魔道具と違って、ネックレスそのものにいくつかの小さい魔石がついていた。
ライオンじゃなくて、元のヤマネコ人族に変化しているというか戻ったね。
もちろん、冒険者ギルドのギルマスが扱うものと同じステータスをきっちり見る魔道具を持ってきてもらっている。
転移魔法で手元に引き寄せたタグをレオラ騎兵隊員に渡す。
レオラさんは騎兵隊員だが同時に近衛兵でもあるらしい。ようは警察組織の人みたいなものだ。なので、おねがいする。
ついでに他の二人の分のタグもなぜかぶら下がってたので引き寄せる。
拘束されない自信があったのかね。
でも
「この身分証、なにか上から違う文言を重ねられていますね。この魔道具ではきっちり見ることはできないです」
「ううむどれどれ」
身分証のタグを鑑定する。
ー----------
ベージュ (ガト)
ライオン人族 (ヤマネコ人族)
三十二歳 (四十二歳)
トルネキ王国 侍女頭 (ペルジャー王国暗部所属)
レベル*
生命力*
体力*
スキル*
〈ボルリア フォン プリネイの名のもとに編集〉
ー----------
「ガトっていうんですね貴女」
「なぜ、それを」
「俺ね、変身得意なんですよ。道具を使わなくてもね」
そういって自分のピアスやタグを外してテーブルに置く。
今は見た目六才児の精霊の姿だ。
そして、普通の大人の人間族黒目黒髪に変えていく。
もちろん洋服にサイズ変更の付与しているので、大人の転移する前の姿になる。
長ズボンにしておいてよかった!
「おお、こちらも素晴らしいじゃないですか。シュバイツ殿下」
「本当だ」
「ありがとうございます。俺、殿下と同じ十九歳なので」
「ははは。そうか」
「まあ、話は戻って、ガトさん。俺がこの通り変身得意なんで、貴女の変身なんて簡単に見破れましたね」
ってのは、はったりだけどさ。
「で、十歳もサバ呼ばせてもらって、種族や職種を変更した、ボルリアって人は、誰です?本当は四十二才のヤマネコ人族、ペルジャー王国暗部のガト」
「なに?そこまで分かってるのか」
興奮気味にきらきらと俺を見るアントニオ殿下とは対称的に、途方に暮れたようにこちらを見るガト。
「わ、私は知らん。ボルリア?会ったことはない」
「嘘ですよね。身分証の隠ぺいは、直接会わないとできないんですよ。まあ、たぶんペルジャー王国当たりの冒険者ギルドマスターか、王国の執務のトップにいる人でしょうね。そうじゃなきゃ身分証の内容を書き換えるのは難しいでしょうね」
「すごいな、シュバイツ殿下の鑑定力は。魔道具を超えてるのだな」
「はは、こんな能力があるなら悪いことはしちゃいけないですね」
「あなたが悪人になるわけないじゃないですか」
「アントニオ殿下、信頼してくれてありがとうございます」
数回しか会ってないのに、信頼してくれるアントニオ殿下にありがたいと思う一方、将来国を背負うひとが、かんたんに人を信じてもいいのか少し不安にも思う。でも、
「鑑定とは違うが、他人を見る目には自信があるのだ。そもそも、侍女長とはここ数日あって無かったからな、久しぶりに見たと思ったら、こういうことだったなんて。
ガトよ、他国の王宮に入った暗部がどうなるか分かっておるか」
「拷問の上処刑でしょ。分かってるわ」
逃げられると思ってるのかな、結構冷静だな。まあいいや。
「ガト」
「シュバイツ王子」
「こんかい、マチューラ嬢は俺と同行していると分かってて、攫うつもりだったのか」
「ええ、お子様二人の旅だから、ちょろいと言われたよ」
「へえ、お子様ねえ」
「今はお子様じゃないね」
「そうですね、かなり立派な青年です」
うれしい、久しぶりの大人の男子だぜ!十九歳、成人です!
「誰にちょろいと言われたのですか?ボルリアですか?」
「・・・・」
「言わないのですね。明日でいいので冒険者ギルドで、ボルリアっていう人がギルマスリストに出てこないか聞いといてください。あ、ドミニク卿に聞けばいいか」
「そうですね」
ボルリアが絡んでいるのか、バックにさらにペルジャー王国が絡んでいるのかをしらべればいいか。
「この三人の件は急ぐことじゃないし、俺の異空間に預かっておきましょうか。その方が逃げ出すことはできないでしょう」
「お願いします」
アントニオ王子お願いされた。
「ガト、平気そうな顔をしているけれどね、俺のその箱は、これまで二人の悪魔を閉じ込めてしかるべき恐ろしい所に行ってもらったんだぜ」
って悪い顔でにやりとすると、ヤマネコ人族の女は青い顔で震えだした。
ふん、マツを攫おうとしたんだから、こんなぐらいでは許さないぜ。
パチン
指を鳴らすタイミングで、三つの箱の扉を閉めて存在を消す。
「では、宮殿に解散しましょうか」
「「「本日はありがとうございます」」」
扉を王宮につなげてみんなに帰ってもらう。
「今日は、冒険者ギルドに帰るけどよ」
「アヌビリさん?」
「明日は湖に行くんだろ?」
「うん」
「護衛させてくれ」
「え?」
「どうせ、まだロムドム団は動かないからすることねえしな」
「結局ユニコーンを発注するのか」
「それが届いてから動くらしい」
「そっか、じゃあお願いするよ。明日正午時にはその宮殿の正面の湖からスタートなんだ」
「また、一番熱い時間に」
「色々あって、今日遅くなっちゃったからな」
「わかった。じゃあ、お休み」
って、いつものように俺の頭を撫でて踵を返す。
あれ?俺今まだ大きいままなんですけど!
つか、アヌビリさんとほぼ同じ年齢!
「では、シュバイツ殿下此方へ」
フロアさんが再び案内に入り、さっき一度案内された、与えられた部屋に向かいながら変身をリセットし、子供の精霊姿になっていく。
「では、おやすみなさいませ。本日はありがとうございました」
「いえいえ、フロアさんもお疲れでしょう。おやすみなさい」
就寝の世話は断った。
水が貴重だって聞いたから、浴槽に蛇口じゃなくて、自分の魔法でお湯を張りながら歯を磨く。
アナザーワールドから王宮に切り替えたとたん、すごく寒かった。大陸気候ってやつか。
この世界の風呂は普通は洗い場がないから、お風呂の入り方が逆なんだよな。お湯に浸かってるとやけに静かさを感じる。
「なんだろ」
違和感を感じながら全身を洗って泡と共に浴槽のお湯を流して出る。
パジャマを着てベッドに入って
「なんか、寒っ」
そして気が付く。
ああ、マツがいないんだ。
今年になってもうすぐ半年がたつ。その旅の間ずっとマツと寝てたんだもんな。
半年ぶりの一人寝に少しさびしさを感じる。
「ハロルド出てきてくれない?」
『くすくす、王子さびしいんだ』
「まあね、マツがいないときは、たいていアリサと寝てたしね。父さんとは数えるほどだけど。
おかしいな、日本じゃずっと一人寝だったんだけどね」
『僕がベッドに入るのは無理だけど、ベッドの横のここに寝ようかな』
「うん。じゃあお休み」
“あたしも、おうじとねる!”
黄色ちゃんが潜り込んできた。
“わたしも!”
“おれもおれも”
“とうぜん、あたしも”
“きゅあも、しゅばいちゅとねる”
“おれはこっちにしようかな”
足の方は蹴飛ばすから!
「みんな、マツともねてね」
あの子もきっとさみしく感じてると思うし。
“もうひとりのきいろは、もういっしょよ” “おれも”
「サンキュ。流石だぜ。よし、寝よう。みんな、おやすみなさい!」
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