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131【魔法のステーショナリー】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 「まずは、文房具だな!」

「うん!」

「それなら、いい店があるぜ」

 お、アヌビリさんのおススメ?

「ここだ」

 文房具が一杯展開された露店の間に石造りの外壁に縁どられた緑色の扉が外開きに開かれていた。

 〈ヴィルパークカンパニー〉

 扉の両端の露店も同じ店の安売りセールのようだ。

「身分証には学園生って出るんだろ?」

「はい」

「学生は割引なんだ」

「この国のじゃなくても?」

「もちろん」

「それはありがたい!マツの分も俺の身分証で買おうな!」

「え?でもおにいちゃん、あたしのは」

「いいからいいから!」


 マツの手を引いて、お店に入る。

「とりあえず、一通り見ようか」

「うん」

「まずは上から行くといいぜ」

「はい」


 一階ではハーフドワーフのおじさんが、うとうとと店番をしていた。

「三階まで売り場があるんだ」

「へえ、アヌビリさんはよく来られるんですか?」

「おれもトルネキ王国の学生だったからな、よく頼まれて来たぜ」

 武闘家に見えて意外と文化的なんだなと思ってたら、

「教授のお使いで来て、自分のために買うわけじゃなかったけどな。教授が俺の学割で買うのが目的なのと、俺自身は王都から長距離走る理由に良かったんだ」

 あ、そういう、やっぱり体育会系。

「でも、この店のガラクタを見るのは面白いんだ」

 ガラクタって・・・。

「そうですね」


 まず三階に上がる。

 ここでは絵画の材料と額縁が売ってる。

 キャンバスと絵具と、筆と。

「おにいちゃん、これは?」

「これは、ペイントナイフ。絵具を混ぜたり、筆みたいにお絵描きに使うんだよ確か。物を切るんじゃなくてね」

 とマツの質問に答えながら店を回る。


 いつのまにか、さっき居眠りしていたハーフドワーフのおじさんが後ろにいて、アヌビリさんと話していた。なんか起きてても目が小さいな。

「なんじゃ?お前さんの子供か?」

「ちがう」

「たしかに、お前さんとはかなり毛色が違うな」


 まあ近くにいてくれたら質問できるからいいけど。

「ヴィルパークさん。これは何ですか?」

「ぼうず、わしがココの店主と分かったのか?」

「俺の友達の伯父さんに雰囲気がほんのちょっと似ていて、同じような店をしてるんだよ」

「二人はガスマニアから来たのか?」

「うん」

「そうです」

「ヴィルパークさんは、もしかしてジャンクカンパニーのジャンクさんの知り合いですか?」

「ああ、ジャンクは、年は離れとるが又従弟にあたるかの。あれの親や弟は最近死んだって聞いたが、ジャンクは元気かの」

「やっぱりそうなんですね。ジャンクさんは元気ですよ。俺たちはジャンクさんの甥と姪の友人なんです。

 マツ、この人はクリスやアイラの親戚だって」

「わあ、こんなとおいところに、アイラのしんせきの、おじさんがいるなんて」

「そうかそうか、クリスとアイラっていうのか」

「そう、クリス兄ちゃんと、アイラは、ハーフエルフミックスなんだよ」

「ほう、じゃあかなりいい男と別嬪じゃろ」

「うん!」

「お嬢ちゃんも、ぼうずも、かなり可愛らしいけどな」

「ありがと!」

「そういえばえっと、俺の魔道具に二人の写真が・・・とあった。これ、去年ジャンクさんとクリスとアイラと二人のお母さんのナティエさんが一緒に写ってるの」

「ほう、すごい、写実的な絵じゃな」

「転写しましょうか?」

「できるのか?」

「はい、得意なんですよ俺」

「ちょっとまて・・・じ、じゃあこのキャンバスに出来るか?大きすぎるかの?」

 と、襖の半分ぐらいの大きさのでっかいキャンバスを出してきた。

「行きますよ」

 ビカー

 そうして俺はスマホのデータをでっかく転写した。

「スゲーな、シュンスケ」

 アヌビリさんもなんか褒めてくれた。

「何が?」

「転写の魔法を使える人はいるが、拡大をこんなにくっきり出来る人はおらん」

 ヴィルパークさんが言う。

 たしかに、教授のも画素数が少ない感じだったな。

「魔力を出し惜しみしないのがコツです」

「それじゃ、他の奴には無理だな」

「え?」

「お前より魔力の多い魔法使いはほとんどいねえ。お前の父親ぐらいか」

「そうなんですかね。じゃあコツとか言えないか」

「ははは」

「とりあえず、このクリスは、伯爵の跡取りなんで、大事に保存しておいてくださいね」

「伯爵?」

「うん、ろーどらんだおうこくの、りーにんぐはくしゃくだよ」

「こんど連れてきますね」

「そうかそうか。待ってるよ」


「で、話は戻って、これは何ですか?」

 色見本があって、小さめの色とりどりの四角くて平たい石が同じ色同士で分けられて、袋に入れて並べられている。

「これは、モザイク画用のタイルじゃ」

「タイルにしては、表面が釉薬じゃないように見えますね」

「ああ、もともとこれは、白の外壁に防御用の魔法陣をでっかく描くためのもので、魔石を粉にしたのを塗ってあるんじゃ」

「ふんふん」

「最近は戦争している地域が減っているから、職人が、画材と一緒に並べてくれと言って持ち込んだんじゃ」

「なるほど」

「教会の外壁にあしらうこともあるんじゃよ」

「へえ、しらなかった」

 教会の外壁を見ることなんてないな。いつも冒険者ギルドの裏から通るもん。

「こんど教会に行ったら見てみます」

「おう」


 何も買わずに二階に行く。ジャンクさんの親戚の同業者ならきっとここは。 

「おうじ、ここって」

「魔法のための道具のフロアだな」

 魔法を使うための道具や、魔道具や、魔法薬の容器などだ。

「アイラの伯父さんの店にもあるけど、こっちの方がいっぱいあるなあ」

「あっちは、学生専用じゃからな」

「でも、高額なものが多くて、買えないんですけど・・・あ、これほしい」

 〈茶色屑ガラス十キロ入り〉〈緑色屑ガラス十キロ入り〉〈半透明屑ガラス十キロ入り〉

 海岸でガラスの材料を集めるのも面倒くさいもんな。しかもリサイクル用だからリーズナブル♪

「おうじ、はい、ここにいれて」

 マツにレジ駕籠のようなものを渡された。

「お、サンキュ」

 十キロって表示されているが、蜜柑ぐらいの小さな使い捨ての巾着に入れられている。それを二袋ずつ入れる。


「ここは、魔法が使える者しか入れねえフロアなんだ」

 アヌビリさんがガイドをしてくれる。

「え?マツもいれてもらえたよ?」

 子猫が金狼を見上げる。

「おまえは、精霊魔法が使えるじゃないか」

「あ」

「だから、俺がそのおやじに言って、二階に入れてもらったんだ」

「ありがとございましゅ」

「まあ、アヌビリは身体強化の魔法しか出来んから、このフロアは教授のお使いでしか来なかったの」

「ああ、そうだ」


 魔道具かあ、気になってるのはあるんだけど。

「あ、これ!」

 〈魔法の杖を作ろうキット:属性スロット三、耐久魔力量五〇〉

 俺の身長ぐらいの磨かれた棒に、三つの大小のくぼみがあって、そこにはまりそうな透明な魔晶石が三つネットに入れてくくられている。

「こんなに大きくて、耐久魔力量五〇」

「それは、魔法使いの入門用じゃな」

「例えば、学園の魔法学部の教授クラスが使うとなると、耐久魔力量はどのくらい必要なのですか?」

「ふうむ、あの方たちは強いというわけではないからのう、ある意味器用だから、これでも使いこなすじゃろ」

「おにいちゃん、つえがほしいの?」

「うん、できたらクインビーが持ってるが欲しいんだけどね」

「あの子の杖ってそのペンぐらいの大きさだな」

「そうそう、ドミニク卿もペン型の杖使ってたな。便利そうでさ」

「シュンスケおまえ・・・」

 あきれたようなアヌビリさんを見上げる。

「?」

「お前みたいな天文学的な数字の魔力に耐えられる杖なんぞ、あるわけないだろ」

「そうかなあ」


 つぶやく俺に背を向けて、店主に聞くアヌビリさん。

「レア度がゴッズクラスの杖ってこの世にあるのか?」

「ふむ、三千年以上前に存在したと聞いたことがある。じゃが、精霊王の魔力に耐え切れず破損したとか」

 精霊王ってエルフになる前の父さんのこと?

「どういうものなんです?」

「このぐらいの魔晶石に、風属性のドラゴンが入ってて、それをはめてある杖だそうだ。まあ、おとぎ話にあった内容じゃがの」

 と、ヴィルパークさんは手近にある、二十センチぐらいの水晶玉を指さす。

「は?ドラゴン入りの石?こういうの?」

 リーニング領から常にウエストポーチのマジックバッグじゃなくて普通のポケット部分に入れてる、ルビードラゴンの魔石を出してみる。

「お、おまえさんこれは?」

 ヴィルパークさんが小さい目をまんまるにして俺に聞く。

「さっき言ってたジャンクさんの甥のクリスの、お母さんの実家にお邪魔したときに、小さい友達にもらって、それから持ち歩いでいるんですよね」

 初めは直径が五センチも無くてピンポン玉ぐらいの大きさだったのが、いまは野球の硬球ぐらいの大きさになって中のドラゴンも大きくなっている。

 この子は火属性なのか、この球はいつも体温ぐらいに温かい。もらった時は寒いところだったから、カイロにちょうど良かったけど、この赤道直下の地域では熱い。そろそろ、いれている場所もきつくなってるから、少し考えなきゃな。


「これって、杖の材料?」

「にもできる」

「でも、こんなにおおきなぼーるじゃ、ちいさいつえにはできないね」

「ね。この子はまだポケットかな」

「うん」

「それに、ゴッズクラスの素材ではないだろう」

「素材としてみたことなかった。杖はまた今度かな」


 屑ガラスを籠に入れて一階にいく。ほかには無属性の魔石をたくさん買う。会計はまとめて一階だそうだ。

 一階には店主が寝ていたところに今は可愛い女の子が座ってた。うっかり鑑定したら百歳のハーフドワーフだった。


「さあ、いよいよ文房具をみよう」

「わーい」

「羊皮紙とーあ、この紙は?ヴィルパークさん」

「それは東の国で作られた植物を網で漉いて作られた紙だよ」

「なぜこれは羊皮紙より高いの?」

 個人的には、和紙に見えるこっちの方が安いと思うんだけど。

「輸送費にとられてるんだ」

「東の国はそんなに遠いんですね」

「ああ、特に最近は道中が物騒でな、新しく入ってこないんだ」

 そっか、紛争があるって言ってたよな。


「真っ白な本と、横線がある本がある」

 白い本は観たことあるけど、豪華装丁された横罫の本は見たことないな。分厚いノートみたい。

「ここら辺をいっぱい買おうかな。羊皮紙をたくさん買うより無駄がなくてお得だし」

「うんうん」

「あと、インクと、ペンと」

「おうじ、あたしいいもの持ってるんだ」

 そうやって、マツがポシェットのなかから奇麗な羽根を二本出した。

「ああ、これは、ハロルド様の羽根?」

「うん!もじのれんしゅうにつかって、ってもらったんだ」

「すごいじゃん。」

「いっぽんは、もちろんおにいちゃんにどうぞ」

「うん!で、ヴィルパークさん、これに取り付けられる軸とペン先でお手頃のはないかな」


「そ、それは確かに素晴らしい羽根ですね」

「光ってるな」

 薄暗がりの一階で、本体から抜けていても程よく光る真っ白な三十センチほどの羽。

「でしょ、おへやがくらくてももじがかけるんだって」

「それは勉強しすぎてしまいそうだな」

「ふふふ、さっかのせんせいだったら、らんぷがなくてもしごとしちゃいそうだね」

「なんて恐ろしいことを」

「もちろん羽根そのものをペンにしてもいいが、軸が細いから疲れるんじゃ、だからこういうペン軸のここに取り付けて、さびない金やプラチナメッキのこういうペン先を取り換えながら使う」

「ほうほう、じゃあ、これをかおうかな。あ、こっちの方が女性用か。お花の模様が可愛いじゃん。七宝焼きで作ってるのかな。ね、マツはこっちかな」

「うん!」

「ちなみに、この羽根でペンを作ったら幾らぐらいで売れるの?」

「最低でも大金貨一枚は付くでしょう」

「ひえ、さすが。この羽根がどういうものか分かってるんですね」

「こう見えても鑑定スキルがあるんじゃよ。とはいってもわしゃ物の鑑定しかできないんじゃ」


「まつ、大金貨だって」

「しゅごい。おにいちゃんのおとうさんのおかお」

「しっ」


「あとね、ヴィルパークさん、ちょっと筆を作る職人を知りませんか?」

「うん?しってるよ」

「この素材で筆先をつくって、尾骨のところに魔石を取り付けられるものをいくつかこしらえてほしいんだ。魔石はこれからお金をはらうこの無属性の小さいこれ」

 と、きっちりと括ってまとめた二十センチほどの俺の緑銀色の髪の毛の束を渡す。

「こっちのも欲しいな」

 と、ハロルドの尻尾を十センチほどで切りそろえた束も渡す。馬毛の筆って普通にあるしね。

「どういうことじゃ?」

「消しゴムにしようかと思って」

「けしごむ?ってなんじゃ?」


 魔力を通しやすい精霊の髪の毛(繊維)に浄化魔法を通してこするとインクが消えるんだよな。修正筆だよ。

 契約書にはだめだけどさ。


 って説明する。


「ただ、売り物にはしたくないので、余った材料でヴィルパークさん個人用のものを作るのはいいけど、売らないでね」

「モチロンじゃ。わしはそういう珍しいものをコレクションするのも好きでの。大事なものは決して人にはやらん」

「ああ、シュンスケ、このオヤジはそれは保証できるぜ」

 アヌビリさんも店主を信用しているなら大丈夫だね。


「どちらの素材も余ったもので、ほかに作れるものがあるなら教えてほしいです」

「わかった。任せとけ」

「あと、修正筆が出来たら、冒険者ギルドか商業ギルドのシュンスケ宛に連絡してくれたら受け取りに来ますので」

「この街にゃ冒険者ギルドも商業ギルドの中に間借りしてとるでの。了解じゃ。

 わしの専門じゃないが、こっちの馬の毛がもっと長けりゃ、バイオリンの良い弓ができるぜ」

「わかった。こんどは切らずに長いまま集めておこうかな」

 バイオリンは弾けないけどな。そのうちチャレンジしたい。


 そして、ほかの色とりどりのインクや、線を引くための定規と烏口、普通用やカリグラフィーに使いそうな様々なペン先、マツがティキと文通する用の便箋と封筒セットの女の子用の可愛いものを片っ端から籠に入れて会計をした。


「ぼうず、お前さん、金持ちの坊ちゃんなのか?それかお貴族様とか」

「まあね。確かに父さんは金持ちですよたぶん。でもお金を使う人じゃなくてさ。

 俺も自分で別に少し商売しててね。よかったらこれ置いといてくれる?」

 と言って、シュバイツ印のシーリング用ワックスを箱で渡す。

 封蝋のスタンプにつかう、この世界では手紙のやり取りに使うものだ。

 クインビーの高品質な蜜蝋にクレヨンでいろいろな色に仕上げた(犬人族の二人)自慢の商品。


「ほほう、なかなか良質だな」

「でしょ!最近はロードランダの王様も使ってるんだ」

「超ロイヤルじゃねえか。じゃあこれも売れたらお前さんの口座に入れればいいんだな」

「売るなら幾らにするのかわかんないけど、割合はコンくらいで。よろしくね」


 買い込むだけでなく、商品を売るという商人っぽいことも出来て、ほくほく顔で文房具屋を出る。

 さて、次は古書だな!


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