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130【こしょこしょ噺】

お待たせしました~再開します!

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

間取りソフトを変えちゃいました!

メガソフトさんのマイホームデザイナー

 真っ白なハロルドが曳く馬車は今日も街道をトルネキ王国の王都に向かって進む。

 

 ハロルドが日差しに反射して眩しそうなので、今日は背中に日差しよけのゼッケンも付けて、レオナルド公爵領を出る時に買い込んだ麦わら帽子に耳の通す穴を開けて、切り口が刺さらないように花柄のリボンで縁取りして被ってもらった。そして顎も可愛くリボンで蝶々結びをして垂らす。


 『これはいいねえ。太陽がまぶしくないよ』

 「でしょ。それにマツとお揃だよ」

 「リボンのもようがいっしょ♪」

 マツの帽子も猫耳の出るところをリボンで縁取りしている。

 隣では俺も麦わら帽子を被ってマツといっしょに馭者席に座る。

 もちろん、マツお嬢様には日焼け止めと虫除けスプレー済み。サバンナにはどんな虫がいるかわかんないもん。さらに長袖長ズボンだ。その方が日差しを遮って暑さ対策になったりするんだって。ありがとう携帯の向こうの旅行好きサンたち!

 そして、マツは荷台で、チョコバナナかき氷を堪能中。精霊ちゃん達と。

 “ちょこばななは、さいきょうだな”

 そういえば、美味そうに頬張ってる赤色くんのリクエストで、チョコづくりを始めたんだっけ。頑張ったのはスフィンクスだけどさ。

 「おうじ、あーん」

 手綱を持つ俺にも横からスプーンを差し出す猫むすめ。

 「ふぉんと、チョコバナナってうまいな」

 

 ぱかぱか、ぱかぱか。


 『そういえばさ、次の街ってね、たしかえっと、本屋さんが並ぶ街なんだよ』

 「まじ?」

 『うん、王都に近い街だから、買う人も多いんじゃない?』

 「それはぜひ俺も仕入れたい!」

 勉強にもなるけど、テレビやゲームのないこの世界では、読書は高貴な娯楽なんだぜ。

 それに異世界のお屋敷には図書室はつきものじゃない?

 現在五つもお屋敷を持つ俺には、どんなに本があっても困らない。

 だけどこの世の本はほとんど手書きで、だから高価だ。それで他の建物に持っていこうと手持ちの本を写本してたら、途中で元の本が読めなくなったり不思議な現象があって、自力ではコピーできないんだよ。

 日本の本をこっちの文字に書き換えるのは出来るんだけどね。


 海の家でしょ?ポリゴン町の家でしょ?そして、南の国と、アナザーワールドには二軒も建物があるんだぜ。


 ・・・すでに建物五つ・・・やっぱり多すぎだよな。


 マツはチョコバナナも食べ終わって、青色ちゃんに手とお口の周りを、ちゅるちゅると洗ってもらっている。

 もうすっかり立派な精霊魔法使いだ。


 『じゃあ、ちょっとスピードアップする?』

 「うん、でもその前にマツ、シートベルト確認しとこうか」

 「あい、おうじもシートベルトだよ」

 「はーい」

 マツと俺のために特別に馭者席に取り付けたシートベルト。忘れずに。

 「よし、おっけー」

 『では』

 シュー

 車輪が轍から抜けて地面から二十センチ浮く。

 『行くよー』

 ヒューウーンン

 

 大人の皆さんは荷台でお昼寝中。


 風魔法の得意なハロルドが、ほんのちょっと本気で馬車を引くと、揺れなくて早い!普通の馬車や馬は辻で取り換えながらで、時速九~十四キロ。ママチャリぐらいの速度?それがハロルドだと疲れ知らずで時速三十キロの原チャリ速度。さらに本気を出せば新幹線ぐらいにはなると思うけど、ギルドからの借りものの馬車の方の車体が持たない。それに、前に他の馬車がいたらどこか広い抜かせるいわば一車線以上の道幅の場所に行かないと詰まっちゃうんだよ。


 でもそこは、ちょいちょい飛んでごまかす。


 ごまかすには、最近勉強した闇魔法や光魔法で目くらましをするんだけど、この眩しい日差しの場合は、光魔法で、追い抜くときに、自分達のことを光らせて影が走らないようにするとうまくいく。

 とはいえ、飛ばすのもごまかすのもハロルドがやってくれる。さすがです。



 外の風景はやっぱりサバンナ。もうあまり木がないから、余計に影が無くて暑い。

 実は魔法を使いまくりで涼しいけどね。荷台の中も冷房が効いております。


 『皆ー、町に着くよー』

 「え?もう?うわ本当だ寝すぎたすまん、シュンスケ」

 「大丈夫ですよアヌビリさん。俺が早く街に入りたくて、ハロルドに半分飛んでもらっちゃいました」

 「飛んでって、まさか」

 「すごかったよおー」

 「あはは。でも抜かした人たちには気づかれてないのでご安心を」

 『ご安心をー。ふふふ。で、どこに泊まるの~?』

 「ハロルド様、それなら〈本の虫亭〉って宿が、シュンスケも好きそうだから行く予定です」

 「俺が好きそう?」

 『メターわかった。じゃあ、もうみんな降りて』

 「おい。起きろ、着いたぞタレンティーナ、ビャオ、カラン」

 「んあ?」

 「ふわあよく寝た」

 「ハロルド様の馬車は揺れないから、ホテルのソファで寝ているみたいだったわ」

 街に着く前に、みんなを馬車から降ろして、ハロルドのゼッケンや手綱を外してくれたアヌビリさんから受け取ったハロルドを俺のなかに、馬車などをアイテムボックスに仕舞う。

 「ここからは、通りが狭くて、手押しの荷車ぐらいしか通れないんです」

 メターさんのセリフにはてなマークを引っ付けながらついていく。


 入り口で、通行の手続きをして中に入ると、そこは古本の屋台が軒を連ねる市場だった。

 「なるほど、うわあすごーい」

 「ほんがいっぱーい。あたしにもよめるのあるかな」

 「こんなに沢山だもん、あるよ絶対」

 もちろんしっかりした建物の店を構える書店もある。

 屋台は本がメインだけど、物語に出てくるのかな?人形やぬいぐるみもテントの軒にぶら下がっている。それが市場を鮮やかに盛り上げている。

 本の屋台の間には読書のお供にと、干菓子や干した肉や魚介類などの食べ物やお茶の葉などの食品店。机や椅子、ソファなどの家具屋さんがある。でも本を読むためのアイテムとして売ってるんだ。徹底してるよな。


 「あ、文房具屋さんもある、あとで買いに来なくちゃ」

 「あたしも、もじのべんきょうようと、おねえちゃんへの、おてがみせっとをかう!」

 マツも出演料をもらって、急遽作った冒険者ギルドの口座にお金が入ってる。マツにも可愛い花束のおひねりが沢山あったんだ。それは円換算すると百万円も!マツは俺より沢山出演しているからな。おひねり以外も毎回出演料がロムドム団から日払いで支払われていた。


 「あたしも、おうじみたいにがっこういきたいんだ!」

 「え?」

 「せいれいじゅつって、まほーなんでしょ?

 ブーカさんがいってた」

 「そうだな。魔法に分類されてるな」

 「おうじだって、まほうのべんきょうのために、がっこうにはいったんでしょ?」

 「まあ、そうだけど」

 「だから、あたしもまほーとか、べんきょうしたい!」

 

 なんてしっかりした子なんだ!小学校に入った時の俺に聞かせたいよ!


 たしかに、貴族の娘なんだから教養は大事だよな。もし仮にお家が復興してから入学するんじゃ遅いかもしれないしな・・・。


 「だから、たびのとちゅうも、がんばるし、ぽりごんにいったら、ぎるどのおてつだいをして、おかねをためるの!」


 あの、マツさん?あなた、まだ五才ですよ?

 俺みたいに見た目は六才だけど、中身が大人・・・とは違うでしょ?

 

 だが、しかし!

 「よし、俺がばっちりバックアップするぜ!」

 「わーい。ばっくあっぷぅ・・・てなあに?」

 「マツの勉強のお手伝いをするよってこと。それに多分ドミニク卿も、マツがやる気だったら手伝ってくれるぜ」

 「うん!」


 そうして、やる気満々のマツと手をつないで歩いていると後ろから、

 「なんかすごい話してるね、猫ちゃんは」

 リカオン族のカランさんが声をかけてくる。

 「そうですか?」

 「僕なんか文字がある程度読めるようになったのは、大人になってからだよ」

 「そうだな、おいらも、勉強嫌いだったからなあ」

 「だから、カランやビャオの台本はふりがなが必要なんだ」

 「しっ」

 「子供達の前ではやめてー」


 「ははは」

 「あ、ここだよ〈本の虫停〉」

 

 石畳の市場の途中から雰囲気のある路地に入るとそこには隠れ家的な宿泊のできる料理店があった。

 「うわあ」

 「しゅごい」

 入り口からは想像できないほどに中は広く、壁一面の本棚の廊下の突き当りに小さなフロントカウンターがあって、左手に本を読みながら食事ができるフロアが広がっている。


 そこにも窓以外は壁一面に本の詰まった本棚。食事のテーブルは一人掛けばっかり。読書の邪魔にならないように、グループお断りだ。


 また、フロントカウンターの右側にはトイレと、三帖ほどのコンパートメントが五個あって、宿泊せずとも、市場で買った本を家に帰る迄待ちきれない人が集中して読めるようになっているそうだ。もちろん、レストランのカウンターで飲み物を買って持ち込むことも可能なんだ。

 レストランのカウンターバーは夜だけアルコールを出すんだって。


 うん、漫画喫茶だな。漫画はないけどさ。


 挿絵(By みてみん)


 「では、お部屋をご案内しましょう」

 受付嬢とは別で、廊下の本を整理していた山羊人族の男性が声をかけてきた。頭に短い角が二本あって、顎髭だけ五センチほど真ん中が長くなるように伸ばしている、白髪で白髭だ。

 この〈本の虫亭〉の主人のログホーンさん。


 座長は今回も三部屋取ったらしい。男部屋と女部屋と、子供部屋だ。

 「うわあ、まどがひろ~い」

 「いいんですか?俺たちが使う部屋が一番広くて」

 メター座長に聞く。

 「ああ、一泊だしな。この部屋はキングサイズのベッドひとつしかないからな」

 「他はツインルームに、男部屋は一つベッドを足してもらうんだ」

 ビャオさんはベッドさえあれば読書もしないしなんでもいいらしい。

 

 二階と三階は五部屋ずつあって、どの部屋でもゆっくり読書ができるソファとか、明かりとかが配置されているらしい。


 俺とマツが泊まる部屋にも、クッションが柔らかそうなソファーがあった。

 それと、びっくりするのは、各部屋に風呂付の水回りが完備されているのだ。シャワーがあればいい方なのに。これはすごい。


 「本を読む時には、清潔にしていただきたいのです。ご自分の本は構わないのですが、この宿の本は皆さんで共有していますからね」


 思わずうんうんと首を縦に振りながら話を聞く。


 そういえば一階のフロントのそばにも洗面があった。

 このサバンナ地方は水が貴重だと言ってたけど。魔道具ってすごいね。


 「それから、廊下を挟んでお向かいのシングルのお部屋には、今、作家が滞在されていますので、くれぐれもお静かにお願いします」

 「分かりました」


 「どうして、さっかせんせいが、おやどにいるのですか?」

 マツが俺の疑問を代わりに聞いてくれる。


 「私どもは先祖代々本が好きなんですよ。こんな所を経営しているほどにね。だから、本が一冊でも増えるように、協力するのが大切なのです。とは言え、普通の下宿代ぐらいは頂いておりますよ。有名な作家の先生は、収入もありますからね。

 そして、三階のシングルのお部屋には、写本をして下さっている専門の方もいらっしゃいますよ。彼らは読みやすいきれいな字をすごく早く書くんです」


 読書に特化した喫茶店や宿は日本でも聞いたことがあるけど、作家まで保護しているなんですごいね。国語の教科書に出てきたような大昔の文豪は、温泉宿にほぼ住んでたり、東京駅のホテルに住んでたとかも聞いたけどね。この世界にもあるんだ。


 好きなことを仕事にするってすごいよネやっぱり。

 

 ちなみに、独立した出版社のないこの世界で、作家の収入はどうなっているかというと、商業ギルドにそういう出版部門があって、新書・新本に売り上げの一部が作家の手元に入るようにシステム化されている。作家のオリジナル(原稿)が商業ギルドの管理下に置かれて、商業ギルドに登録している新書・新本専門の写本家がいて、新書・新本は商業ギルドや許可を取った書店しか販売することができないのだ。そして新書が完売されると、重版が新本として写本されるという仕組みで、それらの売り上げが、作家と写本屋に入る。

 ただ、所有者が変わって古本状態になると、その古本から写本ができない魔法があって、インクの匂いに反応して、二ページ目を過ぎると本が真っ白になって読めなくなってしまうんだ。でも、一日経つとまた読めるようになるんだけど、続きを写そうとすると、今度はすぐに真っ白になるんだって。

 作家が病気や高齢で自然に無くなって数年たつと、写本ができない魔法が外れるのだ。

 ただ殺害された場合は、永遠と写本できないんだ。そうやって、作家が守られている。


 これは、歌や楽譜を描いた作詞家や作曲家でも同じなんだって。 


 魔法による版権の保護ってすごいな。ネットやデジタルより徹底してる。


 ただ、学習のための本や布教用の本や楽譜には写本禁止の魔法が付与されていない。じゃないと書いて覚えるのができないもんな。


 そういう、魔法の世界ならではの本や著作権の仕組みを、宿の主人のログホーンが説明してくれる。カランさんやビャオさんには全然興味がないみたいだったけど、ほかのメンバーはわりと楽しく聞いていた。読書好きな俺はめっちゃ必死で聞いていた。


 そっかぁ道理で、本を複写しようとしたらうまくいかなかったんだよな。複写の魔法にも反応するんだ。五つの建物に同じ本を置こうと複写しようとしたら出来なかったのは、比較的新しい書物だった。


 部屋から降りてまたフロントの本棚の前でログホーンがいくつかの本を指さす。最近販売された新書を仕入れたらしい。

 「今人気の物語は、〈ヴェール ドゥ シュバイツ〉の続編で、数名の作家から続き物で出されています」

 「へ、へえ」

 なんか冷や汗が出そうだよ。


 「もとの物語は主に、エルフの王のロードランダやガスマニア王国のラーズベルトの作家が書いたものが多いのですが。最新刊はなんとこのトルネキ王国の作家が書いているんです。

  同じネタの物語でも、作家の文章力や、元ネタの信憑性によって売れるか売れないかが変わったりするんですけど。懐に余裕があれば読み比べるのも面白いものです」


 「わあ、マツも、はやくもじをおぼえて、よみたいなあ」

 「ほんとね、事実とどれぐらい違うのか、まっちゃんなら比べるのも面白いんじゃない?」

 「ちょ、タレンティーナさん!」

 「もしも、作家にネタを提供したら、情報料もらえたりして」

 「もちろんそうですよ。おや、お客さんは何かネタをお持ちなのですか?」

 少し目がきらりと光るログホーンさん。

 「カランさんやめてー」

 俺はログホーンさんに見えないようにカランさんの耳にささやく。

 「口止め料はいくら要りますか?」コソッ

 「しないよ、シュンスケ。そんなことしたら、女神さまから罰当たりそうじゃん?」コソッ

 「そうだよカランしゃん、めがみさまたちは、おうじのことだいすきだもん」コソッ

 「ひえ、それなら絶対ネタの事は言えないね」コソッ


 「「「ははは」」」


 「でも、事実とどれほど差があるかぐらいはチェックした方が良いのでは?」コソッ

 「座長、違う方がいいです」コソッ


 〈本の虫亭〉を出るまでこそこそ話すロムドム団たち。

 座長はロムドム団で宿泊するのではなく、メターとその連れという内容でチェックインしてくれたんだ。だから、俺の身分証も出さずに済んでいる。さすがです。


 「では、今日はそれぞれ自由行動で」

 「「ほい」」

 「「「はーい」」」」

 「シュンスケとマツは迷子にならないように!」

 「だいじょぶ、せいれいちゃんがいるから」

 「なるほど、すげーな」

 ビャオの言葉に

 「えっへん」

 “えっへん”

 黄色ちゃんと、二人そろって同じポーズって可愛すぎか!

 「一応俺が付いて行こう」

 「ありがと、アヌビリしゃん」

 「有難うございますアヌビリさん」


 アヌビリさんは改めて右腰につけていたマジックバッグから剣を出して左腰に下げる。剣を下げる金狼族のAクラスライセンスが後ろにいるだけで、すごい抑止力だろう。

 俺の立場を分かってて、さりげなく護衛を買って出てくれるその姿勢にウリサ兄さんを思い出す。ウリアゴの三人は元気かな。


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