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129【女優でソリスト、有終の美を飾れるか】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 旅芸人ロムドム劇団の座長のメターさんが少し震えてる。


「ひょっとして、緊張されています?」

「この劇場、二千席あるんだよ。それが今日は、ほぼ埋まってるんだ。

 それに、王太子殿下まで来るなんて聞いてないよ」

「ですよね」

 舞台袖の配置へ移動しながら話す。

「何言ってんだ、あの王太子より、上の存在がココにいるってのに」

 アヌビリさんは心臓も強くて何よりだけど?アントニオより上って?

「俺は王太子じゃないから、彼より下ですよ」

「いや、種族的には上だろ。俺は昨日お前のステータス見てしまったから・・・あんな種族名は見たことない」

「確かに、カウバンドのスコル氏もとんでもないステータス見たって言ってたな」

 ビャオさんがアヌビリさんの後に続ける。

「その割にはみんな普通に接しちゃってるけどねえ」

「・・・不敬罪はないよね、おいらシュンスケのこと大好きだよ!」

「ビャオに必死で告白されても、シュンスケが困るだけだ!」

 アヌビリさんはバッサリ。


「あるわけないですよ、あ、マツ!頑張ろうね」

 反対の舞台袖にカランさんと行く猫むすめ。

「おうじひめもがんばって!」

「ぷっ、おうじひめって」

「マツー」

「ははは、よし、あの子のおかげで緊張がほぐれたかも」

「そりゃよかった」


 緊張の解れた座長は強かった、それに俺も三回目だしね、ちょっとはぎくしゃくしない優雅な動きができたと思うんだよ。


 マツの可愛さも人気抜群!彼女の登場にも黄色い声援が飛んでおります。

 今日は夜にもかかわらず、小学生ぐらいの子供も来ているんだ。とくにボックス席とかにも。そんなに貴族がいるんだ?ではなくて、席を取るのは貴族だけど、そこを招待してシートに座るのは平民でもいいんだって。だからお付き合いのある商人とか有力な平民もボックス席にいるらしい。


 さて、演目:ヴェール ドゥ シュバイツ、

 副題〈碧く清らかな精霊の泉〉のお芝居が終わって、第二部の歌の部に入る。

 今日ラストは俺がセンターで独唱を引き受けた。

 みんなで演奏して歌った後に、こっそり、サイズ変更の付与をした水の女神さまの衣装で舞台の真ん中に立つ

 スマホのカラオケを黄色ちゃんに会場中に広げてもらう。

 女の声で、アメージングなあの歌を歌ってみたかったんだよね。今回しかできないからさ。音響効果抜群のホールだから、気持ちよく自分の声が伸びる。我ながら気持ちいいぜ。


 すこし聖属性魔法を自分に向けて上からスポットライトのように振りかける。

 まあ、疲れてたしさ、良いよね。


 一曲目の独唱が終わる。


 うわあー

 スタンディングオベーションになりかけたのを、ゼスチャーで止める。


 パチン

 と俺は指を鳴らして、ユニコーンハロルドを呼び出す。


「わあさっきのユニコーン」

「ほんとに白くてきれい」

「あれは人が入っているのじゃないの?」

「ばかいえ。足がリアルすぎるだろ」

「いや、あのユニコーンはもしかして」


 みたいなざわめきの中、おれは普通サイズのもともと愛用のギターを後ろ手にアイテムボックスから出して肩に掛ける。さらに背中に翅を六枚出して女性の姿のままパタパタとハロルドに横向きに乗る。


「では、最後三曲歌います~よかったら手拍子してくださいね~。

 ワン、ツー、ワンツースリーフォー」

 と軽快な前奏を始めて、歌を歌いだす。

 歌謡曲からチョイスした、軽快で元気が出る、未来に希望をもてる曲を数曲歌う。

 そして、途中からハロルドがユニコーンから薄っすらと光るペガコーン姿になって羽ばたくと広い客席の上を周回する。その動きに合わせて俺は聖属性魔法を振りまいていく。ハロルドが駆ける円の軌跡を描くように。

「わあーやっぱり、ハロルド様ー」

「わああ」

 そうして徐々に俺は女性の姿を解除していく。水の女神の衣装なら何とか男の子でも行けるだろうと。歌いながらギターを弾きながら、途中でコルセットや上半身の女性の下着や青いカツラをアイテムボックスにしまいながら。

「シュバイツ殿下ー」

「シュンスケちゃーん」

 二週ぐらい回ったところで、舞台のマツが片手には鈴を持って俺に手を振っている。それを、風魔法で拾い上げて、俺の翅をいったん仕舞って、ギターを抱えた俺の後ろに座らせる。翅はマツの背中にもついてるから!


 それに俺はもう、男に戻ったから横座りじゃないから大丈夫!

 片手で俺につかまりながらもう片手の鈴を客に振りまく可愛い属性の精霊ちゃん猫むすめ。


 猫耳アイドルがここにいますよ~。

「キャーマツちゃーん」

「二人とも可愛いー」

「天使が二人も」

 俺の練習に付き合ってくれたマツが一緒に歌ってくれる。

 ラブがウインな歌を!

 あ、ハロルドも歌いだした。うまいじゃん!


 ボックス席の前にいくと、司祭が泣きながらハンカチを振っている。

 振るならハンカチよりタオルの方が縁起が悪くないんですけど!

「シュバイツ殿下ー、ハロルド様ー」

 他の病人や怪我人も立ち上がって、身を乗り出すように手を振ってくれている。

「うぉー、シュバイツ殿下ー」

 危ないよ、落ちたらまた怪我するぜ!


 なんて心の中で叫びながら次はアントニオ達が立って手を振るのに一瞬手を振って魔法をそこら中に振りまく。


 『すごいねーみんなたのしそうで』

「ほんとね!こんなにたのしいなんて、さすがおうじ」

「そう?マツのおかげだよ」

 『みんなで歌うのも楽しいねえ』

「ハロルドも歌ってたじゃん」

「ハロルドって、うたじょうずー」

 『そう?僕、初めて歌った。楽しいね』

「今度、ユグドラシルにも歌ってやろうか」

 『それはいいね』

「ねー」


 間奏の間におしゃべり。


 最後のサビが終わって、子供二人を乗せたペガコーンが優雅に舞台に降り立つ。

 そこに劇団員みんなが駆け寄って、客席に向かって両手を振る。

 俺も、ギターを仕舞って両手を振っている。

「メター座長ー」

「シュバイツ殿下ー、ハロルド様ー」

「アヌビリ様-」

「マツちゃーん」

「カランさーん」

「ビャオー」


 カランさんとビャオさんは幕間でなんか掛け合い漫才していたんだよね。

 ビャオさんの方が突っ込みだった!


 緞帳が下りて、今回のこの大ホールでの演目がすべて終了した。


「皆様ありがとうございました。最後に俺の勝手気ままな舞台にさせてもらっちゃって」

「いえいえ、あんな素晴らしい舞台は、殿下じゃないとできません。こちらも本当に貴重な経験でした」

 座長のメターさんが改まった感じで俺の右手を、両手で包んでいる。


 奈落の楽屋に行くと、少し顔色が良くなったタレンティーナさんがいた。

「お疲れシュンスケ君今回は本当にありがとう!あたしも客席で見ていたの!」

「タレンティーナさん、こっちこそ結局派手に楽しんじゃいました」

「シュンスケ君が抜けた後の劇団がどうなるんだと思うとちょっと怖いけどね」

 座長が少し困り顔で言う。

「ははは、でもあれで、謎の女優はシュバイツだったってわかってもらえたと思うから、大丈夫だと思うんだけど」

「それで、あんな・・・」

「それに、他の演目もあるんでしょう?ほとぼりが冷めるまでそれとかね。ユニコーンもないしさ」

「そうね、何とかなるわ」


 また、学園の夏の制服に着替えて鏡を見る。

「うぇ、アイメイクとリップが残ってた」

 楽屋のすみっこの備え付けの洗面でクレンジングと洗顔をする。

「じゃあ、俺は教会の連中を帰してきます」

「行ってらっしゃい」

「あ、俺もつれていけ」

「アヌビリさん?」

「形だけでも要るだろう?護衛役」

「有難うございます、では、こちらへ」

 とさっきアントニオ殿下を通したようにドアを繋げる。


「皆さんお待たせしました、教会へ送ります。っとその前に皆の症状はどうですか?」

「ええ、みんなすっかり良くなりましたよ!」

「シュバイツ殿下、さっきはよかったよー」

「おれ、魔物の爪でやられて目が見えなくなってたのに、初めの幕が上がった時から少しずつ見えだしたんだよ」

「初めから?」

 “あたしが、はじめに、ちょこっとなおしといたー

 それで、しゅばいつのまほーでかんちした!”

 “さすが、キュアちゃん!”

 いい子や。


「私も、利き腕が生えてきたんです!」

「よかったです。でも、十分にリハビリ訓練をしてから、仕事に戻ってくださいね。中途半端だとまた怪我しちゃいますよ」

「ええ、本当にありがとう!」

「俺はちょっと特殊で、パーティー仲間を失ったことによる、心の病だったんだ。けど、おかげで元気になったような気がする。くよくよしてても死んだ奴は喜ばないよな」

 え?そっちにも効き目有るの?知らなかった!

「さっきの歌を聴いてそう思った」

「ああ、歌っていいでしょ。よかったらご自分でも歌ってみるといいですよ。鼻歌でも良いですしね」

「そうだな。本当にありがとう」


 ボックス席の通路の向かいに作った扉から教会の一階に帰って行ってもらう。

 すると、ロイヤル席のある方から声がかかる。


「へえ、さすが殿下の空間魔法はすごいですね」

「あ、アントニオ殿下!公爵!」

「え?あなたがさっきの美しい女優さん?」

「何言ってんだ公爵、さっきハロルド様の上で女性からこの姿に変わったじゃないか」

「そ、そうでしたね。なんだか夢のような魔法をかけられたみたいです」

 くすくす

「確かに魔法ですけどね」


「そうだ、シュバイツ殿下、今度舞踏会で私の虫よけに一緒に・・・」

「ごめんなさいアントニオ殿下。同じセリフをガスマニアの皇太子に言われて断ったので、悪いんですけど・・・」

「そうですか、非常に残念です。それよりそろそろ、王都に到着ですよね」

「ええ、この後公演は無いですよね?」

 と後ろの金狼族に聞く。

「はい、シュバイツ殿下。二か所ほど宿泊に寄って王都入りします」

 すごいな、アヌビリさんはすっかり護衛だ。

「じゃあ三日後には再び会えますね」

「はい」

「私も、噂の劇を観に早馬で来たようなものですからすぐに戻りますし」

「え?わざわざそのために来られたんですか?」

「公爵と別件の用事もあって来てたんですけどね。

 最近のロムドム団の噂を冒険者ギルド経由でいろいろ聞いて、いてもたってもいられなくて、ちょうど公爵のホールでされるというので席を用意してもらったんですけど、噂以上の公演でした」

「よかったです。たまたま今回俺は、体調不良の女優の代役でしたからね」

「そうなんですね。じゃあ幻の女優に会えたんだ」

「まあ、そういうことになりますね。

 それでは、お互い気を付けて王都へ行きましょう」

「はい、王宮でお待ちしています」


 ホテルに帰る道すがら、ジャケットを脱ぎフードのついたパーカーを出して半そでのワイシャツの上から着て顔を隠す。

 アヌビリさんも同じようにしている。不審な二人だ。

「疲れましたね」

「そうだな」

「部屋に着いたら、アナザーワールドの大きなお風呂に行きませんか」

「それはありがたい」

 彼の言葉遣いが元に戻ってホッとする。

「タレンティーナさんにも提案しようかな、女性の不調が終わったらお風呂で温まったらいいって、俺のパーティーの姉さんが言ってたし」

「喜ぶと思うぜ。いつも冷え性でとか言ってるからな」

「そうなんだ」

 あの魔女さんは確かに冷え性っぽいかも。


 いったんホテルの部屋に戻ってすぐにアナザーワールドに皆を誘う。

 月夜を演出した大きな窓のお風呂へ。


数日間お休みします~


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