128【常夏の夜の夢】
いつもお読みいただきありがとうございます!
本日の二本目です~
このページでゆっくりしていってください~♪
次の日の俺は、急遽決まった昼の部なのに、一階は満席で、ボックス席もなぜか半分埋まった公演をこなした。
昼の部のおひねりもすごいです!
そして、夕方の部も開演二時間前に開場する。
トルネキ王国は、セイレンヌアイランドと同じぐらいの緯度で、つまり多分赤道に近い。だから常夏なんだけど、演劇ホールは、程よい空調で涼しく感じられる。だから普通のドレスコードで鑑賞しても熱くないわけだ。魔法ってすごい。
火属性と水属性と、そして風属性のトリプルな魔道具だ。
「あちー。湿度はないから、東京の夏よりましかもしれないけど」
建物の外はやっぱり暑い。でも、ここの教会には初めて行くからしょうがないよね。
俺は、ボックス席に出入りできそうな、かっちりした服をと思って、学園の夏服の上にジャケットを身に着けて、変身を解き。治療院の一階へ迎えに来た。
「ああ、ありがとうございますシュバイツ殿下」
司祭が頭を下げるのを制する。
「まだ処置はこれからなんですから、後ででいいですよ」
今朝二人増えて二十六人が七グループに分けられていた。
治療院の一階の扉を、押さえてあるボックス席の通路につなげ、シスターや助祭と、病人やけが人を運ぶ。今朝運ばれた一人が背中に従魔からの大きな傷と両足骨折の重症の人がいたので、先にこっそりエリクサーを飲ませ、治療魔法をかけて座れるようにする。まあそこでほぼ完治したけどね。まだ貧血はあるかな?
「大丈夫ですか?座れそうですか?」
「おかげさまで、痛みが取れてしまいました。すごいですね」
「ふふふ、では、ゆっくりしていってくださいね」
重症者の席にはどさくさに座る司祭様。まあいいんだけどね。
一つのボックスには六人迄は入れるらしいからまだ余裕あるしね。
そうして、ボックス席のドアを閉めると、並びの他のドアに人が出入りしていた。
俺はぺこりと頭を下げると、ひとつのボックス席のドアを楽屋につなげ、ロムドム団に合流する。
「シュンスケ早く!」
「お待たせカランさん」
楽屋の中のさらに小部屋で、大人の女性に変身しながら大地の女神の服に着替えて、眉毛を整えてもらってアイラインと、口紅を塗ってもらう。カランさんに。
俺が自分で出来るわけないじゃん。
・・・たしかにこうすると叔母さんに似ているかもしれない。姿見を見て思う。
「よし今日もめっちゃ美人♪」
「有難うございます」
そうして、男性陣と合流する。
「教会の連中はうまくいったようだな」
「はいアヌビリさん。もう七組に分けて下さっていました。ただ、二人今朝運ばれた重症者が増えてて、もう軽く治療しちゃったんですけどね」
「そりゃすごい、さすがシュバイツ殿下だ」
そうして話していると、
ノックの音がした。
「メター座長、楽屋にVIP客からご挨拶に来られてます」とわざわざ支配人が来られたようで、招き入れられる。
「これは公爵」
「久しぶりだなメター。活躍しているようで」
「おかげさまで、ありがとうございます」
「そんなメターに特別な客が来ていてね、
どうぞお入りください」
公爵さんが丁寧に招き入れた方は・・・
「アントニオ殿下・・・」
あ、思わず口から出ちゃった。口を押えるのが遅いねうん。こういうところが子供だな俺。
「おや、そちらの女性が昨日から話題の女優ですね。確かにこの世の人とは思えない美しさだ。
ええ、この方が、わがトルネキ王国の王太子殿下、アントニオ殿下でいらっしゃいますよ」
公爵の男性が話す。
「君は?私は貴女ほど美しい女性に会ったことはないんだが。もしお会いしていたら、このように美しい方なら一瞬でも忘れることはないはずなんだが」
アントニオ殿下が手持ちのバラの花束を俺に渡しながら言う。
そのアントニオ殿下の言葉に公爵が答える。
「確かにそうでしょうけど、王族の顔は国内の者なら誰でもご存知ですよ」
「でも、このような美しい人がいるなら、今までも話題になっていただろう?」
・・・ちょっと面倒くさくなってきちゃった。
どうせ挨拶するんだからやってしまえ。男は度胸だ。
「アントニオ殿下、ご無沙汰しております。
シュバイツ フォン ロードランダです」
と、ひらひらの衣裳のせいで付け焼刃のカーテシーを披露する。
「え?・・・」
あ、フリーズした?
「ま、まさか、そんな」
「セイレンヌアイランド共和国でお会いして以来ですね」
と預かっていた、エンブレムを見せる。
どうだ?白鯨のムーさんに乗っかって暴れていた俺の姿を思い出したか?
「本当にお久しぶりですね。こちらに向かってこられているとは聞いていたのですが、途中でこのような美しい大人の女性のお姿になっておられるとは。
ふふふ、シュバイツ殿下」
アントニオ殿下は俺の右手を取りながら跪くと、額に持っていくのかと思いきや、指先にキスを落とされる。
「そのようなお姿では、こんなあいさつしかできませんね」
めっちゃ、にこにこされる。
「殿下!今はわけあって、魔法で変身しているだけですよ!
俺は本来はあの六歳のガキですからね」
笑顔は引き攣ってるのが自分でも分かる。それに台本が無ければいつもの言葉遣いだ。
「存じてますよ。子供の姿でも美しいじゃないですか。さきほどボックス席の通路でチラリと見たのはシュバイツ殿下だったのですね」
「ああ、あれはアントニオ殿下だったのですね。すみません、あの時はバタバタしていて」
すると公爵が、アントニオ殿下に話をする。
「そういえば、なにやら、シュバイツ殿下がボックス席をご自分でご購入されて。治療院の客を招待したらしいですよ、なあ支配人よ」
「はい、そうです。ギルドから報告がありました」
「なんと!
ああ、シュバイツ殿下、どうかその席は私が持ちますから。
あなたに恩を返せていないのに、さらに我が国のことでそのようなことを・・・」
オントニオ殿下が俺の両手を両手で包んで困ったように話す。
「え?そうですか?わかりました、ただ一つお願いしていいですか?」
「はい?」
「この後の演出については、料金を頂かないので、そこのところよろしくお願いします」
にっこり
「うっ。・・・分かりました」
聖属性魔法はがめつくおこなってはいけないのだ。力がなくなりそうだからな。
ジリジリジリジリーン
ここで開演三十分前のベルが鳴る。
「では、我々は席に戻ろうか」
「はい、王太子殿下、行きましょう」
「ああ、アントニオ殿下、こちらからどうぞ」
といって、楽屋のさっき俺が着替えるために使った小部屋へのドアを開く。
「うん?こちらは?」
「とっておきの近道です」
ウインクしながら、どうぞと手招きをする。
だって、この楽屋は舞台下のいわば奈落にあって、俺が手配した三階のボックス席の並びに行くならかなり遠い。だぶん舞台の真正面のロイヤル用のボックス席だろう。
ドアの向こうをチラリと見た公爵が戻ってきて。
「有難うございます。シュバイツ殿下。行きましょうアントニオ殿下」
「ああ、ではまた後で会いましょう」
「わかりました」
振り向くとマツが放心状態だった。
「おうじがひめで・・・おうじとなんかすごかった・・・」
「わかる。僕もこれからやる劇より、すごいクライマックスを見た気がする」
カランさんも!変なこと言わないで。
「おいらも、男同士の挨拶だったはずなのに、チカチカしているよ」
「ふっ」
アヌビリさんはなんの「ふっ」だろう・・・。
「ははは、これは新しい演目のネタに‥」
「しないでぇ、メター座長!」
「はっ、わたわたしているのがやっぱり、しゅばいちゅおうじ」
「何を言ってるんだい、マチューラ嬢」
猫むすめのほっぺたをつんつんする。
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