125【野営もいいけど】
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真っ白な馬が曳く、旅芸人一行の馬車は南に向かって行く。
途中で野営の必要な地点があったので、思わずアナザーワールドを開放した。
スフィンクスがたくさん設置していた二段ベッドも片づけられて、いまは普通の寝室が六つ。
結局海の家の間取りが使い勝手が良いので、同じ間取りになっている。
違うのは、玄関前には大通りじゃなくてちょっとした石畳でその向こうに森が広がっている。それと、砂浜の向こうが海じゃなくて湖に代わっていること。
そう、俺はしょっちゅうアナザーワールドの仕様を変えている。だって面白いもん。リアル箱庭みたいでさ。
王都の海の家と同じお屋敷の隣には、建築中のポリゴン町と同じ仕様の家。こっちには今、十人になってしまったゴブリンが住む予定。
カウバンドに来た時にドミニクに言われた。
「ゴブリンを飼うなら、ピルって薬を普段から飲ませないといけないぜ」
「?」
「あいつらはネズミのように繁殖するからな」
雄しかいないと思うんですけど~
「人と同じ常識が通じると思うな」
って言われたのに、本気にしていなかったから、気が付いたら、一人のお腹が膨れていたんだ!腐女子がよく読んでいた第二の性ってやつ?
いや、ゴブリンだ。
俺は慌てて、王都のギルドに行って従魔用のピルを買い込んで、きちんと飲むように言いました。
で、間に合わなかった子が生まれて、現在十人・・・。たった一週間です。うん。生まれたの一人でよかった。
で、他には繁殖する暇がないぐらいやることを与えている。
とりあえず昼は家の建築をさせて、夜は、スフィンクスの手を借りて、読み書き計算を仕込んでいく予定。
広い馬小屋がまだ不要だから、図書室にして本をいっぱい読ませてインテリな奴が出ればいいし、ハウトゥー本を読んで、出来そうなことを探してもらうのもありだ。
貧乏でもすることがなくなると繁殖してしまうのは人間も一緒だしな。仕事させなくちゃ。
ゴブリンが住んでいるほうの家は、もともと、適当に俺が作った建物で、今はリーニング領のカルピン木材店で同じ部材を一組購入してゴブリンに組み立てさせている、自分の家をちゃんと自分で作れということで。おもちゃのブロックみたいだから簡単だったしね。
スフィンクスも自分用の平屋が欲しいと言われて、二つの家の間に、平屋がある状態だ。そっちは、カルピンさんのところに既成のものがあって、木材セットは一袋に入っていた。
組み立てはなんとクインビーが魔法でパパっとしてくれたんだ。なんて器用な子!
そうやって、畑があって、湖があって、森があって、スローライフを楽しむのに持ってこいな空間になっている。
もちろん、地竜たちの簡単な屋根のある設備もあるよ。
「というわけで、野営するならと、こちらでどうですか?」
最初は、裁いた肉を与えていた肉食の地竜の運動も兼ねてと、野生の鳥や、獣などをとらえて放し飼いにして繁殖させているやつの種類を増やした。もちろん湖にも淡水魚をシュバイツ湖から何種類か移動して増やしているから釣りもできるよ。
『いらっしゃい、みなさん』
「スフィンクス様おせわになります」
座長のメターさんが代表であいさつする。
『いえいえ、わたしは、皆さんにお食事を出すのがうれしいですよ。とは言え本日は王子のリクエストでバーベキューにしましたけどね』
「サンキュ」
『飛竜や、地竜が獲ってきた肉や、ゴブリンが釣った魚、そこの畑で収穫した野菜がありますから。どうぞいっぱい食べてくださいね』
「「「わあっ」」」
夜だから、マツのお友達はもう寝てるけど、朝には会えるだろう。
砂浜に面したテラスにはバーベキュー用に炉を二つ作ってある。そこに薪をおいて火を熾し、片方には鉄板を、もう一つには焼き網を置いて、焼いていく。
途中からは要領を得たビャオがバーベキューの面倒を見ながらみんなに焼けたのを取ってくれるようになった。
「これ面白い」
「でしょ、単純なようで奥が深いらしいですよ」
傍らでは大きな盥にロックアイスを満たし、そこに小さめのエールやワインの樽を突っ込んである。
「風呂はでかいし、寝室はきれいだし。最高だな」
アヌビリさんも気に入ってくれましたか。
「毎回ここに泊まればホテルいらないわね」
「まあ、そうなんですけど、それぞれの街にはそこでしか味わえないものがあるじゃないですか」
「そうだね」
「自分の口に合ってなくても、それが旅の楽しみというかね」
「シュンスケは幼いのに渋いな」
「見た目はこうですけど、俺は十九歳ですよ」
「まじ?まさかのアヌビリと同じ歳!」
カランさんがびっくりしている。
「エルフいや精霊?すごいな」
「ははは、自分でもびっくりしてますけどね」
一日馬車に揺られるのは意外と体力が必要だ。
お腹が膨れたマツはもう限界みたい。
「マツ、先に寝室に行こうな」
「やだ」
「朝、早起きして地竜と遊ぶんだろ?」
「そうだった、じゃあもうねる」
「まっちゃんは、僕が連れていくよ」
「ありがとう、カランさん」
マツを寝室に送った、カランさんが戻ってきた。
俺はミニギターを出して〈田舎道〉っていう英語の歌を歌う。
そのあと、カブトムシ達ってイギリスのグループの古い歌をメドレーしていく。
大人はいい感じでアルコールを傾けている。
俺は座っているハロルドをソファーにさせてもらって歌う。
『王子、それはどこの歌?』
「ハロルド、これはね、地球の歌」
『地球?』
「そう、俺が生まれたところ」
『言葉はちょっとわかんないけどいい感じ』
「だろ?言葉は俺もあんまり分かってない。生まれ育ったのとは違う国の言葉だからな。ここと違って国が変わると言葉や文字がいろいろ変わるんだ。信じてる神様(や仏様)も変わったりね」
『ふうん』
「今はね、地球でまだ母さんが暮らしているんだ」
『風の女神さまが?』
「そう、あっちで楽しそうに忙しくしているんだ。だからまだ会えないんだよ」
『それは寂しいね』
「そうだね。だけど、俺はこうやってゼポロ様の世界に来て、ハロルドとかマツとか、すごくたくさんの友達ができたから、母さんに会えないのは寂しいけどさ、ぜんぜん寂しくないよ。毎日楽しい」
『うん!』
「それに、父さんに会えたし(俺にとっては、ほぼ初めましてだったけど)ね。父さんにはいつでも会えるしね」
『そうだね』
ハロルドと話しながらだから、ギターを弾くだけになっちゃった。
白い馬の鼻先が俺の黒い頭をかき混ぜている。
ホウーホウー
・・・フクロウもいるのか。こんなに沢山の生き物がいるならもうアナザーワールドを閉じるのは無理だな。
「ハロルド、俺ももう寝るよ」
『うん、お休み』
きょうはハロルドは外で寝るみたいだな。湖からの風が気持ちいいんだって。
たまには良いよね。
次の日、マツがたっぷり朝から地竜たちと遊んだ後、再び旅路に戻る。
そうして、トルネキ王国の王都の一つ手前の街に着いた時に、俺には治すことのできない体調不良の劇団員が一人出てしまった。
「いたたた・・・それにふらふらするわ」
「タレンティーナさん」
一応治療魔法ではなくて、母さんのウエストポーチに入っていた痛み止めを飲んでもらう。
「さっきはお薬ありがとう、痛みは治まったけど立ち眩みがひどいわ」
・・・生理は病気じゃないから不調を取り去ることはできないみたいだった。
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