122【先にあいつらとこいつらを】
いつもお読みいただきありがとうございます!
今日の二本目です~
このページでゆっくりしていってください~♪
朝六時。今日の予定には少し時間がある。
でも、冒険者ギルドは二十四時間営業なので、俺は訓練場にお邪魔して走り込みをしている。マツは黄色ちゃんにお願いしちゃった。
体が温まったころアヌビリさんもやってきた。
「よう、早いな、昨日大変だったろうに」
「おはようございます。まあ、習慣で目が覚めちゃいました」
「ちょっと、打ち合いしないか?」
「いいんですか!お願いします」
アヌビリさんが投げてきた木剣をキャッチする。
「行くぜ」
「はい!」
カンカンバシュバシュ
「俺もっAランクだけどよ、お前本当にAランクか」
「あなたこそ、Aランクなのに、旅芸人ってどういうことですか?」
カンカンバシュバシュ
「パーティ組んでたやつが、ギルマスになっちまったんだよ」
「なるほどー」
「まあ、演技を身にっ付けるのも、依頼によってはっ役立つからよっ・・・」
「たしかにそうですねっ」
ガキーン
「うわぁっ、降参だ」
「おおっ、アヌビリさんが必死で、さらに剣を飛ばされた」
「迫力あったぜ。あの子供スゲー。体格差って武器じゃないのかよ」
「金色タグ同士の打ち合いってどうなるかと思ったけど」
「シュンスケの圧勝だね。しかもゼンゼン息が切れてないなんて」
「あれ?ビャオさんおはようございます」
「おはようシュンスケ・・様?」
「やめてくださいよー呼び捨てでいいですよ」
「はあはあ、なんだビャオ」
「ははは、アヌビリが必死な相手初めて見た」
「そうだな、あいつがギルマスになってからはそうかもしれんな」
「アヌビリさんありがとうございました」
「こっちこそサンキュ」
「部屋に戻ってシャワーして朝ごはんにまた戻ってこようかな」
「だな」
汗をぬぐいながら、アヌビリさんと宿舎へ戻る。ビャオさんはもう先に朝ごはんだって。
ただのギャラリーだった。
宿舎のシャワーを浴びていたら赤色くんが、
“なあ、おうじ、あいつらのことわすれてるだろ”
?
“さんかくぼうしの、やつら”
「わ、忘れてないよ。だってアナザールーム維持してるでしょ」
・・・実は完璧に忘れていた。
いつの間にかノームは俺のアナザールームから消えていたんだけど、他のは一部屋にいっぱい詰め込んである。
「で?」
“あいつらきょうかいの、ゆかしたにいなくちゃ、いけないんだって”
「なるほど、家付き妖精ってやつかな」
「そう」
「司祭様に相談だな」
ダイニングに行くと、マツがキッチンでお湯を沸かしていた。
「おはよ、おうじ」
「おはようマツ。なんか目が赤いな」
「おねえちゃん?にあえるってきいて、すこしねむれなかった」
「そっか、そうだよな」
「あたし、みんなとおわかれするのかな?」
「ぽりごんの?」
「うん」
「いや、まだティキも、お迎え待ってるらしいし、まだじゃねえ?」
「そうだといいな。でもお姉ちゃんにはすごく会いたいの」
「うん、マツにそっくりでいい子だよ」
“そうそう、わたしもあったよ”
「きいろちゃん」
“ちりゅうと、なかよくなってた”
「わあ、ぷうとぽう?」
“そうそう”
「マツ、今日チェックアウトするから片づけとこうか」
「うん。ベッドの上にまとめてる」
「あ、俺のだね、マツのは?」
「あたしのポシェットにもういれたよ」
部屋に備え付けてあったカップでお茶を飲んでから朝ごはんに出る。
隣の魔女たちは朝に弱いそうだ。
朝ごはんを食べ終えた俺とマツは先に教会の大聖堂に入る。
普段ならまだ閉まっている時間だが、司祭様に先に話したいことがあるので入れてもらった。
「朝早くからすみません」
「いえいえ、二人も子どもなのに早くて偉いですね」
たくさん並んだ椅子の一番前に並んで座る。ここなら、祭壇との間に少し広い場所がある。
「それで、シュバイツ殿下、お話とは」
「きのうもお話しした通り、俺はそちらの封鎖した部屋の地下から、北の旧領主邸に行ったんです。その地下からずうっとダンジョン化していて、それに途中は下水や通気口の穴のような直径がに三十センチほどの通路でした」
「なんと」
「その初めの方の、教会の敷地地下で俺はたくさんの、瘴気にやられた妖精を捕まえたのです」
そう行って、祭壇のあたりに小さなスマホぐらいの扉を出す。
扉は俺の魔法で開く。
「出てきていいよ」
すると、キョロキョロしながら、色とりどりの三角帽子が出てくる。
あの、しわくちゃなおっさん顔が、精霊ちゃんほどではないけど、若くなっていた。それでもみんな男の子じゃなくておっさん?ひげやまゆげが濃いし。女の子っぽいのはいない。
これらの妖精は、翅がなくて飛べなさそう。だからこうやってここに広げたんだけどね。
「おお、なんと」
「見えてますか?」
「三角帽子の小さいのがいっぱいいますね」
「それはよかった。この妖精たちが言うには、この教会の建物付き妖精らしいのですが、それで間違いないのでしょうか」
「この教会に、建物付き妖精がいるらしいということは聞いたことがあるのですが、大人の私どもはなかなか姿を見ることはできないものです。今はおそらく、殿下がいらっしゃるから見れるのでしょう」
マツを見ると、足を座面にあげて、椅子の上で体育座りになって、無言だ。
精霊ちゃんを見る時とは明らかに反応が違う。分かるよ。可愛くないもんな。
でも、捕まえた時はもっと醜悪だったんだぜ。
「先日、司祭様はこの教会は何かを封印して守っていると言ってましたが、その守るのにはこの妖精たちは必要なのでしょうか」
「・・・ふむ・・・必要はなさそうですよ」
≪エーソンナァ≫
≪オレタチャ、ドコニ行ケバ≫
うわ、みんなショックを受けている。
「別に居てもいいんですけど」
≪ワー、ヤッター≫
≪ココニイタイ―≫
「お供えがなくなってるんですよねぇ」
一様にギクリってポーズ。
「お前ら、お供えパクるだけで、何か返してるのかよ」
≪ヒューヒュー≫
「こら、口笛吹くまねしても誤魔化せないぜ。知らん顔するな!バレバレだぜ」
変な所で素直なんだから。
「よし、お前たちは、部屋へ戻れ」
≪ガーン≫≪エー≫
「夜の間に繕い物ができるとか、靴が作れるとか、そういうのがあれば考える。できる奴いるか」
≪シーン≫
「はい、部屋へ戻る、ほら!少し広くしてやるから」
“ざんねんだったね~”
“おかえりください~”
妖精たちを精霊ちゃんたちが追い立てるように部屋へ入れていく。
“おうじはやさしいから、きっといいように、してくれるよ”
“うんうん、もうちょっとまってたら?”
≪おまえたちは、なにかしてるのか?≫
“おうじをたすけているよ”
“まほうでね”
“おつかいもするよ”
“そうじもするよ”
≪それなら、ぼくらもできる≫
「そういわれても、精霊ちゃんでもう十分だし」
≪ガーン(二回目)≫
妖精たちも女神(伯母)様達に相談だな。
「なあ、こいつらを、アナザーワールドに放っていいと思うか?」
マツに聞く。
「やだ」
「なあ、まだ信用できないよな」
こっくり。
「それからほかにも何とかしたい奴らがいるんだよね」
「だあれ?」
「ゴブリン九人」
「なんと」
「すいません司祭様、ここに出してもいいですか?」
「どうぞ」
今度は普通の扉を出す。
アナザーワールドのゴブリンがいる方の家につないだ。
「ちょっと、代表で一人、あ、キミでいいか出てきて」
「ア、オ早ウゴザイマス、シュンスケ様」
初めに保護したゴブリンに出てきてもらう。
腰蓑だけじゃあんまりなので、Tシャツと緩いボトムを着せている。
改めて鑑定すると
〈ゴブリン:13才、所有者:シュバイツ フォン ロードランダの従魔〉
所有者って・・・あ、首輪か。
首輪を鑑定する〈シュバイツ フォン ロードランダの所有を示す首輪〉
「なあ、この首輪って、黒かったじゃない?」
「ソウデスネ、アノ時ハ、ミノタウロス二逆ラウト締メラレタリシマシタ」
「こわっ」
「それは隷属の首輪が、ただの所有の首輪に代わってるな」
さっき、誰かが近寄ってきた気配はしていたけど、
「スコルさん」
ギルマスのスコルさんが入ってきていた。
「隷属の首輪には、それ用の内容が付与された魔法陣が刻まれているのだが、これにはない」
「よかった、知らずに首を絞めるのは嫌ですもん。それに、俺は所有するつもりはなくて」
「たぶんミノタウロスの魔力から、強力な殿下の魔力に上書きされて、奴からの従属が途切れたのだろう」
「空間魔法に入れただけですけど」
「そもそも、空間魔法は、術者の膨大な魔法で構成されているだろう?こういうものはそこに入れただけで書き換えられるのだ。もし書き換えを防御する付与を盛り込んでいても、魔力差が大きければ無効だからな」
でも・・・おれはゴブリンに向かって話す。
「なあ、俺はそれを外して開放したいんだけど。もうあいつの呪縛はないんだから、悪さはしないだろう?」
「いや、殿下それは首輪だけの問題ではない。殿下はそのゴブリンをテイムしていることになっているはずだ。自分のステータスを確認してみろ」
「ステータス?」
俺は冒険者用のタグを握ってみる。
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シュバイツ フォン ロードランダ〈田中駿介〉
種族 スピリッツゴッド 十九歳〈六歳〉
ロードランダ国王子
冒険者 ランクA ウリアゴパーティ
レベル 一〇〇〇
生命力 二〇三〇
体力 三三二三六
魔力 五〇〇〇二十
魔法基本属性 全属性
魔法特殊属性 全属性
スキル魔法 空間・錬金・鑑定・精霊・変身
その他スキル 算術・剣術・弓術・投擲・料理・裁縫・癒し・音楽・治癒・素描小悪魔、潜水、ペガコーンの主、世界樹
従魔:地竜×九、翼竜×一、ゴブリン×九
称号:白鯨の盟友
風の女神の加護
水の女神の加護
海と宇宙の神の加護
大地の女神の加護
太陽と創造神の加護
月と魂の神の加護
火と文明の神の加護
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「本当だ・・・」
うげ、地竜たちも従魔になってる・・・。もう娑婆に出せないのか・・・。
「なので、ギルドでは従魔の数を登録するから、一度それを貸してもらえるか」
「わかりました、アナザーワールドに入れっぱなしの地竜も増えていたんですが」
「了解」
アナザーワールドに入れておくだけで、テイ厶出来るなんて知らなかったぜ。
「シュンスケ様」
このゴブリン・・・さっきから俺のこと「様」付けてるよな・・・
「なんだ」
「出来ルコトナラ、自分達ハ、シュンスケ様ノ素晴ラシイ、アナザーワールドデ暮ラシタイト思ウノデス」
「え?」
「アノ中ニハ、自分達ヲ刈ロウトスル冒険者ハ来ナイシ、モチロン、アノ恐ロシイ悪魔モ来ナイデショウ」
「まあ、そうだな」
「アノ世界デ、スフィンクス様ヲ、オ助ケシテ、地竜ヤ畑ノオ世話ヲシタイノデスガ、ドウデショウカ」
「なるほど、それはいいな。聞けば殿下はまだ実質十九歳、種族的にはほぼ永久的な寿命だろう。ほれ」
ギルドからすぐに戻ってきたスコルさんがタグを俺に渡しながら言う。
「いや、そりゃそうでしょうけど、俺だっていつ何があるかわからないですよ。地竜たちだって暫定的に保護しているだけであって、いつかはアナザーワールドは空っぽにしたいんですけど」
あれは俺が作った異世界みたいなものだけど。ゼポロ神様みたいな存在にはなれないし。
「えー、いいなあ、あたしもおうじの、アナザーワールドにすみたい!ちりゅうたちと、いっしょだもん」
「これ、マツ」
「しかし、今や生きる伝説の二人目と言われている殿下のステータスを見せてもらって納得した。あの天文学的な数値の魔力量・・・そりゃあ、アナザーワールドが維持できるわけだ」
なんだその生きる伝説の二人目?一人目はやっぱり父さんだろうけど。
「・・・わかったよ、アナザーワールドで住んでもいいよ」
「有難ウゴザイマス。シュンスケ様。コチラデ御用ガアルトキハ、イツデモオ申シ付ケクダサイネ」
「とりあえず、この聞き取りづらいゴブリン訛りを改善出来たらな」
「ははは、それは無理だ。これだけ会話できるだけ知能はあるほうだ」
スコルさんが笑いながら話す。
「そうなんですか?」
「スミマセン」
そうして、ゴブリンは俺が再び出した扉から帰っていった。
「失礼します、シュバイツ殿下はおられますか?」
入れ違いに入ってきたのは。
猫人族の侍従を連れた一人のインパラ族の紳士だった。
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