121.5 挿話11【ブーカの冒険1】
カリオン族の僕っ娘の名前をちょっと変えます~すみません~
初期のヒロインと酷似してた・・・
いつもお読みいただきありがとうございます!
今日の二本目です~
このページでゆっくりしていってください~♪
僕は ブーカ フォン カウバンド。十才。冒険者になって二年目のFランクだ。武器はロングソード。だがどんなに訓練しても腕力がいまいちで、細身のものを用意してもらっている。インパラ族だからか、ジャンプ力とか足の持久力とかには自信があるんだけどね。
僕はカウバンド子爵家の長男で、次に領主になれと言われている。しかし、勉強が苦手だから、本をよく読む二歳年下の弟の方が領主に向いていると思うんだ。まだ口にしたことはないけどね。
でも、勉強と経験を積むために冒険者にならせてもらった。子爵である父も冒険者だった時があるから、説得しやすかったからね。
子爵家にはティキという八才の女の子が保護されていて、家ではいつも弟と仲良くしている。しかし僕も彼女が可愛くていつも気になっているんだよね。
そんなティキは保護対象だというのに、お世話になっているからと、下働きの者たちと同じように掃除や洗濯などを進んでやっている。
その日も、子爵家の私兵と剣の訓練を必死でやった、汗だくの服を嫌な顔せず受け取って洗濯場へ持っていってくれようとするところを、話しかける。
「今日も買い物に行くのか?」
「はい、お買い物もお勉強になるのです」
ティキは可愛い猫耳をふわりとうごかして、笑顔で返事をしてくれる。すごく似合う白いエプロンの後ろで優雅な曲線を描く尻尾も素敵な猫人族だった。
昼食の後、僕は研修のために冒険者ギルドに行く体でティキのお出かけに付き合う。弟は昼から読書だそうだ。昼飯の後の読書なんてすぐに眠くなるのに大した弟だ。
「一人で出かけるのは危なくないのか?」
「あら、ブーカ様だってお一人じゃないですか」
「僕はこの通り剣を持っているからな」
「私もすばしっこいから大丈夫ですよ」
「しかし・・・やっぱり女の子が一人で出かけるのは危ないよ」
「そうですね。じゃあ、一緒に行きましょう」
差し出された手を喜んでつないで歩いていた。
そう、カウバンド街は子供が一人で歩けるほどには平和な町だった。それまでは。
しばらくして、郊外にゴブリンがちらほらと出没するようになったり、近くの村で子供がさらわれる話を冒険者ギルドで聞くようになって。
「ブーカ様もお一人の依頼は受けないようにしてくださいね」
ギルド長のスコルは、僕が子爵の長男だということを知っている。
「それから、もしもの時のために心構えは必要ですよ」
「そうですね」
Eランクの冒険者のパーティーはみんな平民の子供達で、なかなか新しく入れてもらうのが難しかった。僕も家名は登録してないんだけどな。
「じゃあ、私も冒険者になろうかしら」
そう言ってある日ティキが仮登録をしてくれて、二人パーティを組めることになった。
とはいえ子供二人なので活動をするときは常にもう一人女性の私兵でDランクライセンス持ちの16歳の人間族のサヤと三人で活動することになった。まあ、父がつけた護衛なんだろう。
そうして三人で活動を始めたというのに、またギルマスに言われた。
「しばらく、冒険者は休んで屋敷から出るな」
「そうですね、ここ三日ほど、子供が誘拐されているんです。坊ちゃん」
「サヤ・・」
「それに、ティキも危ないからな」
「そうだね、しばらく自粛しようか」
それから、僕も弟と一緒に本を読んだり、ティキやサヤたちと屋敷の中で剣の稽古をしたり過ごすことにした二日後、訓練場から屋敷の間の通り道で、茂みからやってきたゴブリンにティキがさらわれそうになった。
子爵家の敷地だからと油断していたが、建物の外だ。
「ブーカ来ちゃダメ!」
「そんなことできるか!ティキを放せ!」
僕は皮鎧のマジックバッグのポケットから剣を出したが、ゴブリンの棍棒にあっさり跳ね返される。
「おおおっ」
だが構わずティキを掴んだゴブリンに素手で挑みに行った。
すると
「・・・チッ、ショウガナイ。ゴメン、君モ来テ」
結局、僕と同じような体格のゴブリンに僕もあっさり捕まってしまって、気が付けば大きな袋に入れられて、とある場所に連れていかれた。
「暫ク、ココニイテ」
そういわれて袋から出されたら、そこには20人ぐらいの子供たちがいる部屋だった。
一番上の子は僕ぐらいで、小さい子は赤ちゃんに近い、おむつが取れたばかりのような子供だった。全員男の子で、ティキはいなかった。
「大丈夫か?」
一人の同じ年ぐらいの男の子が声をかけてくれた。
「トイレはそこだ。ゴブリンも操られているみたいなんだ」
「そうか。おれは女の子と一緒だったんだけど」
「ああ、女は別の部屋にいるらしい」
「食べ物とかはもらえているのか?」
「ゴブリン達がこっそり持ってきてくれるんだけど、なかなか難しいって言ってた」
「そうか、小さい子はたいへんだろうな」
「ああ、みんな泣いてたけど、疲れちゃったみたい」
「そうなんだ、ありがとう」
鉄格子の嵌った窓から外を見るとこの部屋は三階だった。部屋には鍵がかかっておらず廊下に出ると、他にも同じように子供を入れられている部屋があった。ただ、階段のあるとこには頑丈な柵があって鍵のついた扉で塞がれていたから逃げることができなかった。
階段の近くに行くと女の子の声が聞こえるから、二階には女の子が集められていたのだろう。
それから三週間ぐらいたっただろうか、子供たちはどんどん人数が増えてきていた。
そこへ、傷だらけのゴブリンが籠いっぱいにパンを持ってきてくれた。
首にはめられている黒い輪っかの周りから血が滲んでいる。
柵の下の方の隙間から籠を突っ込んでくるのを受け取る。
「モウ、食ベ物ヲ持ッテコレナイカモシレナイ。早ク隠セ」
「あなたは、大丈夫なんですか」
「冒険者ダロ、ゴブリンノ心配ナンカスルナ」
「でも・・・」
「ハヤク!」
下からぎしぎしと階段を大きなものが上がってくる気配がする。
二階の階段を過ぎたところなのか、女の子の悲鳴が上がる。
「みんな、下がろう」ゴブリンが命がけで持ってきてくれたパンを持って。
「「「はい」」」
みんなが部屋に入って息をひそめている。
僕はどうしても何者かが知りたくて、ドアの隙間から覗いていた。
「おやおや、おセッカイなゴブリン、ナニをしているのかな~」
階段から上がってきたのは、黒い軍服を着た真っ黒で目が異様に赤く光るミノタウロスだったのだ。
バーン
「ギャー」
うわっ
ゴブリンが棍棒で殴られた。僕たちにパンを持ってきたから?
「おや、コドモタチ、びっくりさせたかね。あと、トウカほどでおウチにカエしてあげるから、マってね」
・・・後、10日。もうゴブリンはパンを持ってきてくれないのだな。
僕は、初め連れてこられた時に身に着けていた軽鎧のままだった。これについている小さなポケットは、マジックバッグになっていて、武器も入ってたんだけど、鉄格子を削れるようなものが残念ながらなかった。しかし食料はたくさん入っている。それに、僕は初級の水魔法は使えるからね。攻撃魔法はまだ無理だけど、みんなに飲み水は出していたんだ。
ティキも同じようなマジックバッグのついた軽鎧を着ていたから、たぶん生きているはず。
ゴブリンにもらったパンと、俺の鎧からこっそり出した食料をみんなと分けながら過ごしていた。
「ねえ、ブーカさん、早くお家に帰りたいね」
「きっと、父上が頑張ってくれていると思うんだ」
「はやくママのかおがみたいな」
「ね、きっと心配してくれてるけど、ちゃんと食べておこうね」
「うん、おにいちゃんありがとう」
「ブーカ水だせる?」
「はいどうぞ」
「サンキュ」
初めに声をかけてくれた子とも、こんな場所だけど友達になれた。
冒険者のタグで日時を見ていた。本当にこのフロアから出られるのか。
ミノタウロスを見てから10日ほどたったころ、またあのミノタウロスがやってきた。
「ボウやたち、おマたせしたね、チガうところにイドウしようかな。このヘヤもアきただろう」
小さい子は異形にすくんでいて動けない。
チガ
バアン
「ハヤくウゴけ!」
棍棒をそこいらの壁にぶつけて大声を張り上げる。
「うわあぁ」
泣き出したじゃないか。もっとうごかなくなるのに。
僕は二番目に小さい子を抱えると、友達になった子も一番小さい子を抱えていた。
「行こう」
「みんな、二人一組で手をつないでいこう」
「はい」
そうして、大広間に連れてこられた。そこには女の子も同じぐらいいた。あ、ティキもいた。けど、目を合わせて頷きあうだけにした。あっちも他の女の子と必死だったようだ。
大広間には十人のゴブリンがいた。みんな子供たちの顔を見て泣きそうな顔をしていた。
「ゴメンネ」
「ゴメンネ」
って言いながら大きい子供達を後ろ手に縛っていく。
「モ、モウヤメテクレ」
一人のゴブリンがミノタウロスに逆らうように言う。
「は?ナニをイってる、サカらうとどうなるかわかってるのか」
ミノタウロスが逆らったゴブリンを睨みつけると
「ウワァー」
ゴブリンが首を抑えて苦しみだした。
「ウゥ」
あの黒い首輪がゴブリンを支配しているのだ・・・。そうして僕達を攫うようにさせたんだ。
なんてことを。
「おい、おマエら、さっさとガキどもをシバれ」
「ウウ、ゴメンネ」
縛ってくるゴブリンのほうが泣いていた。
本当に小さい子を除いてみんな縛られたぼくたちは広間の真ん中に集められた。
「おい、シバりオわったらこっちにコい」
そうして、ゴブリン達は大広間の舞台の上に集められた。
「いいか?オレサマのイうことをキいたホウビをやろう」
ミノタウロスがパチンと指を指を鳴らすと、真っ黒な液体がゴブリンに降り注ぐ。
「ウワァ、何ダコレハ」
「キ、気持チ悪イ」
ゴブリン達は立っていられないのか姿勢を崩していく。
「ははは、オレサマとオナじマックロになれたなあ」
そして、ミノタウロスはゴブリンを二人ずつ下げては大広間の外側に並べていく。
黒い液体を床に引きずりながら。
「いいか、ガキども、このクロいエキタイはな、オレサマにはゼンゼンナンともないが、ビョウキがいっぱいアツまった、ありがたいドロミズだ。ゴブリンタチにタスけをモトめるとビョウキになってシんでしまうからな。キをつけろよ」
しばらくして、ゴブリンを並べ終わったミノタウロスは、舞台に何やら、台座と大きな水晶を設置したあと、何処かに行ってしまった。
「ハアハア、ミンナ、出来ルダケ真ン中二寄レ」
「コノ、泥水ハ・・・ヤバイ・・・カモシレナイ」
「オイ、俺達ハ、助ケヲ呼ンデクル」
「其方ノドアハ外二出ラレルカモシレナイ」
「頼ム・・・ダガ、逃ゲテシマッテモ良イゾ」
そうして、四人のゴブリンが後ろのドアから、出て行ってしまったとたん。
バアン
ドアの形が変わり、鉄格子になってしまった。
何の魔法なんだ?これでは助けに戻ってこられても入れないのでは・・・。
俺は小さい子にこそこそとパンを配っていると、女の子の集団の方もパンが回っているようだ。ティキも配っていたのだろう。
しばらくして、またミノタウロスが戻ってきた。
ドサリ
一人のゴブリンが倒れた。とたんに地面に溶けるように消えていった。
・・・どういうことだ。
「イマ、ここはダンジョンになっているのだ。だから、シぬとああやって、ダンジョンのカテになっていくのだ。ほらあのトビラのカタチもカわっているだろう?ナンタイか二げたようだが、ビョウキのゴブリンがヌけダせるようなダンジョンではないぞ。
いいか、もうスコしで、おウチにカエろうなあ」
そうして、どこから出したのか、真っ黒な汁の滴る真っ黒な籠を舞台の端に並べていった。
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