121【光るスライム入りボール?】
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“おうじ、これがだんじょんこあ、よ”
紫色ちゃんが教えてくれる。
「でも、これを外してダンジョンが壊れちゃったりしない?」
“いろがうすいから、だいじょうぶだとおもう”
一応鑑定する。
〈ダンジョンコア:もとは砂漠の中の沼に発生したもの。ランク幼〉
「ここのダンジョンは出来たばっかりということか」
“これからだったんじゃない?”
まずは子供達を避難させなきゃね。
「みんな歩けるか?ゆっくりでいいから立ってみような。今から教会に連れていくけど、その前に一度違うところに行ってほしいんだ。だけど、そこには俺が飼ってる地竜がいるんだよ。おとなしい良い子たちだけど大きい子も居るからみんなびっくりしないでね」
「あの、ちょっといいでしょうか」
インパラ族の子供が声をかけてきた。
「ぼくはこの街の領主の息子でブーカ フォン カウバンドって言います」
まだ角が生えていないから、初めは鹿系だと思っちゃった。けど、俺より背が高い。
「俺は 駿介。冒険者をしているよ。ブーカさん、俺に敬語はいらないからね」
ってタグをチラリと見せると、色に気が付いたのか少し驚いた顔をする。
「ぼくも一応、冒険者登録してる。だけど、全然役に立てなくて」
「じゃあ、今から少し手伝ってくれる?拘束されていて疲れているかもしれないけどね、
俺の空間魔法で教会に送るんだけどさ、あっちの段取りもあるからいったん別のところに送るよ。そこでみんなで休んでいて。ただ、さっき言ったように地竜がいるんだ。みんなおとなしくて気のいい子なんだ。ちょっとの間だけど仲良くしてね」
ブーカとその周りの子が頷く。
そうして俺は、アナザーワールドへ観音開きの扉にしてみんなを誘導する。
中からスフィンクスが出てきて補助をしてくれる。
何人かほど歩けなさそうだから、二人は二人のスフィンクスが、もう一人を俺が抱っこして連れていく。
そして俺は一瞬で戻ってもう一人の女の子を抱っこして連れていくと、さっきのブーカが友達なのかこの女の子に話しかけてくる。
“黄色ちゃん、この子のそばにいてほしいな”
“わかった!”
「じゃあ、一晩かな、その間宜しくね」
『はい、消化のよさそうなお食事を出しましょうかね』
「・・・めちゃくちゃ大勢いるぜ?」
『暇つぶしの作り置きが沢山あるのです、わたくしのアイテムボックスに』
「さすがスフィンクスだぜ。
あ、ゴブリン達も入ってて」
「シカシ、自分タチハ、アノ子供タチヲ攫ッタ実行犯デ」
「どっちにしても、ここにはいられないから。あの子たちに罪悪感を感じているなら、あっちの地竜がいる方にも建物があるからそっちに居てて、あいつらも悪魔の被害者なんだ」
「ワカリマシタ、シュンスケサン」
『さあ、こちらにどうぞ。あ、まだ具合悪いゴブリンいますか?』
二人目のスフィンクスが出てきた。
「少シ怠イケド大丈夫デス」
『わかりました。あなたも療養しましょうね』
『ほほほ、ゴブリン達は私が誘導するわ』
クインビースピリットは俺の配下じゃないはずなのに、アナザーワールドと彼方此方の蜂の巣箱を行き来している精霊で、いつも手伝ってくれるありがたい女王蜂様だ。ほんとにお世話好きで助かる。
『クインビー、ありがとう』
『坊やたち、こっちよ』
「「「ハイ」」」
「「「オ願イシマス」」」
そして俺だけが大広間に戻る。
あ、精霊ちゃん達はいますよ。
「んじゃダンジョンコアを動かそうか」
俺は何も考えずにダンジョンコアの水晶に近寄る。
穴は開いていないけど、高二の時に遊んだボーリング場に、こういうマーブルなきれいな玉あったよな。
それを素手で持ち上げ・・・
“あーさわっちゃだめ!”
紫色ちゃんが叫ぶけど、もう遅かった。
ズワッ
「やべ、魔力が」
俺から魔力が吸われて水晶に流れていく。薄紫色だった水晶が点滅しながら、見覚えのあるラメが泳ぐ乳白色に代わっていく。
昔こういうスライムが詰まったボールのおもちゃあったよな。中が光るやつ。ラメが液体のように中で勝手にゆっくり流れている。
あっという間だったけど、ラメの動きが止まって、点滅も落ち着き、光るだけになった。
「これは・・・」
〈ダンジョンコア:このコアで出来るダンジョンはダンジョンマスター シュバイツ フォン ロードランダによる聖属性に特化したダンジョンになる〉
聖属性のダンジョンってなんだよ。訳が分からないからとりあえずアイテムボックスに放り込んでみる。
シューーーーーーンンンーーー
空調が止まったように静かになって、シャンデリアの明かりが消える。
十秒ぐらいして、またシャンデリアがともる。
今度は太陽のような温かい光だ。
「サンキュー白色ちゃん」
“そろそろおわりだろ?”
「うん」
“このたてもの、ぜんぶみてきたわ”
“おへやたくさんあったけど”
“だれもいなーい”
「みんな、サンキュ」
改めて大広間を見ると、さっきは分からなかったが、ずいぶんとボロボロの室内だった。
壁紙は剥がれ、上の方にひかれていたカーテンもボロボロだ。そして俺が抜けてきた鉄格子の穴は、普通の扉に代わってそれが外れかけていた。
これが本来の姿なのか。ダンジョンって・・・。
俺はもう一度携帯を見ると今度はMAPの地図が出た。
ここは教会とその北側の広大な墓地を挟んでさらに北にある大きなお屋敷だった。
〈旧領主邸〉
貴族の屋敷の空き家って碌なことないな。
“ハロルド起きてる?”
今は二十時を回ったところ。
“起きてるよ。みんなで音楽室”
“オッケーそっちに戻る”
“マツも心配してるよ”
“俺は大丈夫だって言って”
“精霊ちゃんもそう言ってたけどね”
俺は 大広間の舞台部分から降り、紫色ちゃんの誘導で、とあるドアを開くと、幅が広くて傾斜の緩い登り階段があった。
しばらく上っていくと、広い廊下みたいなホールのようなところに出る。上った階段の横にまだ上に上がる階段があるけど、ボロボロで抜けていたりする。
ホールの階段と反対側にあるドアを開けると外に出られた。階段を上ってきたのにそこが地上だった。
あの大広間は半地下になっていたんだな。
「さむ」
昼は暑い地域だけど、夜は寒いな。
俺はパーカーを重ねて羽織ると、人間族の状態のまま翅だけ出して飛び上がる。
出てきた位置を確認しながら、夜空から教会を目指す。冒険者ギルドはまだにぎやかだ。
「ただいま」
「おかえりおにいちゃんー」
マツが飛びついてきた
まあ一応、自分にも浄化魔法をかけまくったけど、一瞬ためらったよね。あの汚いところからの帰りだから。
「おかえりなさい」
「おう、お疲れだったな」
「お腹すいたでしょう。シュンスケの分置いてあるわよ」
「ありがとうございます。みなさん」
旅芸人一座のロムドム劇団が五人全員と、司祭様が揃っていた。
この音楽室で夕食を食べていたみたいだ。
『おかえり』“王子”
「ただいまハロルド」
確かにかなりの空腹だったので、タレンティーナさんが魔法で温めなおしてくれたスープや肉料理をいただいて、人心地つき、紅茶をもらいながら、司祭様にお願いした。
「明日朝、領主様とこの街のギルドマスターに会いたいのです」
「わかりました」
「シュンスケ?ギルドマスターはともかく、領主さまをそんなすぐに呼ぶなんてできないよ?あっちは結構偉いお貴族様なんだよ」
「カラン!」
メター座長がカランさんを咎めるように止める。
「すみません」
そして、俺に頭を下げてくる。
「いえ頭を上げてください。大丈夫です。普通そういう反応ですもんね。
ですから司祭様、領主さまにはシュバイツが会いたいとおっしゃってくれませんか」
「はい。もちろんです」
と言いながら司祭様は俺に向かって祈るような仕草をした。
「お子さん達を無事に保護することができたのです。ただ、皆はもう眠っていまして、明日朝打合せをしてからと思いまして」
「まあほんと?」
「はい」
「ちょっと、そういうことならギルマスにはすぐ知らせようよ」
「そうですね」
「おいら呼んでくる」
ビャオさんがシュっと出ていく。
「もー、おにいちゃんも、つかれているのにね」
「ははは、だいじょうぶだよ」
「あれ?ところでハロルド様は?」
メター座長がキョロキョロしている。
「彼はもう俺の中に入ってます」
「なんと」
「俺のスキルなんですよ」
「へえ、すごいな」
タレンティーナさんがお代わりのお茶と、カットされたパウンドケーキを持ってきた。
その一切れを俺がもらって、他の二切れを、マツがお皿にのせて、ナイフで細かく刻みだした。
そして、ティースプーンで精霊ちゃん達に食べさせ始めた。
「マツさん」
「はい?ざちょーさん」
「精霊ちゃんとすごく仲良しなんですね」
「はい。あたし、みんながだいしゅき。はい、あーん」
“あーん。おれも、まつのことだいすき”
“あたしもあたしも!”
「あーん」
“あーん”
初めは黄色ちゃんだけだったのに、俺と旅する間にみんなを見ることが出来るようになってらっしゃいます。
「ふふふ、すごいわね。あたしも今まではたまに光ってるのしか見えなかったけど、今日は赤い子が見えるわ」
「タレンティーナさん、それはあかいろくんね。あたしがおゆをだしたいときにてつだってくれるんだ」
「まあ、いいわね」
「私もいつもは黄色の子しか見えなかったけど、今日はほかにも見えるよ」
さすがエルフが半分の座長さんだ。
「えー二人とも、精霊が見えるんだ。いいなあ。でも今日は僕でもちらちら光ってるのは見えるよ。特にまっちゃんの周りとシュンスケくんの周りが凄い」
カランさんは精霊が見れるのにはもう少しかかりそうだな。
「そうだな。俺は赤い子が見えてる。男の子だな」
アヌビリさんはもともと火属性を持ってたのかもしれないな。
「ね?みんなおにいちゃんを、たすけるのにがんばったもんね」
“きょうは、たいへんだったわ”
“ちりゅうのときぐらい、かつやくしたぜ”
「しろいろくんも、あーん」
“わーい”
ガチャリ
「おーいギルマスを連れてきたよ」
ビャオさんが戻ってきた。ギルマスを連れて。
「げっ」
「げっとはなんだ、アヌビリ」
アヌビリさんがイヤそうな顔をされて入ってきたのは、アヌビリさんにそっくりな金狼族の男だった。
「夜分にお呼びしましてすみません」
「いえ、大丈夫です。この街のギルマスをしておりますスコルと申します」
「ここでは駿介と呼んでください」
「わかりました。シュンスケ様」
「ねえ、なんでギルマスがシュンスケに様を付けているの?途中から座長も口調が丁寧になっちゃってるし」
「ああそうですね、明日領主様を呼んでることだし、いいか。
カランさん。俺の名前は、シュバイツ フォン ロードランダ って言います。夕方もチラリと見せましたが」
と言いながら人間族の姿を解除して、本来の精霊の姿に変わる。
「うわ」
「ったく、ハロルド様が出てきたときに気付けよな。俺はあのドッグタグの色でもしやと思いましたけど」
アヌビリさんも分かってたんだ。
「え?おおおいらも全然わかんなかった。でででも確かにこんなに奇麗な子だったら、男の子でも搔っ攫われるよな。人間族かハーフエルフに戻った方がいいようんうん」
「ふふふ、なんだかビャオの慌てぶりがタイプの女の子を見た時のようね」
タレンティーナさんは学園の話を聞いてたかもしれないな。
「うううだって、このシュンスケ君、じゃなかった、シュバイツ殿下?めちゃくちゃ奇麗なんだもん」
「まあ、俺の容姿の話は今はいいんですよ。それより、行方不明の子供達かどうかわからないですけど、さっき二百四十名の子供を保護したんです」
ウエストポーチからこの街の地図を出して説明する。
「この、旧領主の半地下の大広間から、この教会のあのユニコーンの頭を入れていた控室の地下までずうっと、ダンジョンになっていたんです・・・」
と、おれは夕方から夜にかけての出来事を伝えた。
「なんと!」
「明日朝、教会の大聖堂に開放しますか?」
「そうですね、その時に、名前を照合してその親に連絡しましょう」
「ではそういう段取りで」
そして音楽室を解散して、宿舎に戻り、子猫と一緒に眠った。
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