116【あの舞台をもう一度】
いつもお読みいただきありがとうございます!
今日の二本目です♪
このページでゆっくりしていってください~♪
教会の音楽室を楽屋にして、衣装に着替えた俺達。
今日の公演は大聖堂でやるそうだ。劇の内容から、今回は教会でできるんだって。
幸いにも、この教会もメインの神様は風の女神様。
演目も風の女神様がヒロインのやつだしね。
そんな俺の元に、この教会の司祭がちょいちょいと駆け寄ってきて、こそこそと耳打ちしてくる。
「・・・あの、シュバイツ様ですよね」
「しっ」
「最後にちょっとでいいので、癒しをお願いできませんか?」
「どなたか病気や怪我で重症の方がいらっしゃるとか?」
「何名か冒険者の方で怪我人が何名か施療院におりまして。このままでは冒険者活動に差し支えそうな方々です」
「わかりました、最後の曲でやりますので、後ろの方に並んで座っといてもらっていいですか?」
「ああっ、やはり・・・本当にありがとうございます。」
どんな怪我か分からないけど、冒険者は体が資本だ。きっちり治ってもらわなくちゃね。
「シュンスケ君これを」
ってカツラと翅をつけられる。
“ははは、自分のが出せるのに変なの~”
“でも、これ明るい金色だからまた雰囲気変わるよね”
“似合うけど、違和感”
姿見を見ながらハロルドと話していたから、俺の顔が変だったみたい。
「しゅんすけおにいちゃん?」
「ハロルドに笑われてさ」
「ははは、でもにあってるよね、ハロルド」
“金色だと、ますます天使って言われるかも”
げ、それはちょっと。
そんなわけで、翅は作りものなので、魔法で飛ぶことになる。うん、ちょっとめんどくさいけどさ。
ワイヤーとか言われたけど、俺の風魔法で俺やマツを少し飛ばすことはできると言ったのだ。ワイヤーの方が怖いし。
とにかく俺はマツの桃色妖精ちゃんをパシャパシャしておきたい!
それに、余りにも可愛いので、今回はマツの髪の毛の間に黄色ちゃんや白色くんにスタンバってもらう。最近物騒だからさー。
さあ、いよいよ後五分で本番だ!
物語〈ヴェール ドゥ シュバイツ〉は、精霊王(父さん)と風の女神(母さん)の馴れ初めの話だ。ユニコーン姿になって湖で遊んでた風の女神に小さな妖精ちゃんに扮した精霊王がフラフラと近づいてキスをしたのを、他の神様に叱られたって話だったっけ。まあ、精霊も妖精も小さい子は同じような認識らしいけど、俺はまだ実際に妖精には会ったことはないね。
バタン!
「・・・た、大変だ」
大道具担当のビャオさんが血相変えてやってきた。
「どうした?」
「とうとう壊れた」
「なんだと!」
「何がですか?」
「ユニコーンだ」
ユニコーンはもともと、カリオン族のカランが小さい精霊に見えるように、巨大な角のついたでっかい馬の頭を作ってあって、これまでも使いまわしていたからか、結構ボロボロだったのを俺は見ていた。
仮設舞台の袖では大きな馬の頭と外れてしまった角が転がっていた。耳や頬の一部も取れていて中々にホラーだ。
「さっき、ちょっと位置を変えようとしたら、ばらばらに・・・・」
「うーむどうすれば」
お客さんももう揃ってるしね・・・
今からユニコーンの頭を工作するのは無理でしょう。
「あの、俺、ユニコーンになら変身できますよ。ちゃんと変身のスキルも登録しています」
変身ならそういう魔法ってことだしね!
「まあ、シュンスケって本当に優秀ね。まだ二年生でしょう?」
「ふふふ、一応Sクラスの主席でしたよ去年は」
「なるほど」
先輩魔法使いさん、ごまかせた?
「なに!ほんとか!」
さっき落ち込んでたのがすっかりキラキラになった座長さん。
「ただ、普通の大きさのユニコーンにしかなれないですけど」
それはいいけれど
「では、最初の妖精ちゃんを・・・」
「もちろんマツで」
「え?あたし?」
「さっき俺のお稽古見てたでしょ?」
そう、難しいセリフもないし。
「ユニコーン(ハロルド)の角にキスするんだよ」
“わーい、マツならうれしいよ”
“ほら、ハロルドも言ってるしね”
「わ、わかった!がんばる!」
じーん
「なんて良い子なの」俺の心の声をカランさんもつぶやく。
ジリジリジリジリーン
開演の合図がなってしまった。
マツの飛行は黄色ちゃんが請け負ってくれる。
座長のメターさんと下座の方にスタンバイ。
「では、変身しますよ」
俺自身がハロルドになるときは一瞬服を脱ぐ必要があるけど、パッと眩しく光って、せっかく着ていた金髪妖精の衣装一式をアイテムボックスにぱっと収納して、ハロルドに変身。
『ひさしぶりだねえ』
『そうだな』
今回はユニコーンだから、角だけで。手綱はアイテムボックスに置いてある。
「・・・ほ、本当にユニコーンだ」
ビャオさんが腰抜かしそうになっている。
「何言ってんの、ユニコーンに変身するって言ってたじゃない。にしてもほんとにリアル。初めて見たわ、しかも美しい」
『ええ、動物みたいなのは白い馬系しか変身できないですけどね』
「話も出来るんだな」
『もちろんです』
「じゃあ、出番よ」
「『はーい』」
劇中(伝説)のユニコーンはハロルドではなく風の女神様ってことになってるんだけど、“もしかして、ハロルドは昔母さんの中にいたの”
“そんなこともあったっけ?おぼえてない”
“でも、きみ、風の女神様が大好きなんでしょ?”
“もちろん!でもでも王子も大好き”
“うん、俺もハロルドは大好きだけどさ”
舞台の上でのんきにハロルドと念話で会話していると
“おうじー、はろるどー”
桃色妖精の猫むすめが念話で叫びながら飛んできた。
可愛いぜ。
物語はどんどん進んでいく。
妖精王に扮したメターさんは・・・似てないけどね。演技力でカバーできるのがすごいぜ。
二度目のキスを角にもらったらマツを背に乗せて、客席の上をユニコーンのまま飛んで行って二階席で消える。消えるところは任せてくれと言っている。魔法使いだから奥の手があるとか何とか言って、無理やり納得させている。
みんなには二階席で変身を解くと言ってあるけど、すっぽんぽんになっちゃうからね。
ってことで、こっそりハロルドが入れるサイズのアナザールームに転移する。
「ふふ、ハロルドぉ」
『マツー』
二人が抱き着いている間に俺はハロルドから離れて服を着る。
カツラをかぶって、マツと手を繋いで舞台袖に出ていくと、
「すごいわ~あなたは本当に優秀な魔法使いなのね」
学園の先輩魔法使いにお褒めいただいて嬉しいっす。
「じゃあ、歌を歌いましょうね」
「はい!」
作り物精霊ちゃん姿でチェンバロに座る。
さっきハロルド姿で飛んで行ったときに、司祭が言ってた怪我人の座ってた場所も確認済み。
俺はあくまでも、メインボーカルのタレンティーナさんを立てるように、サブボーカルの声を控えめに、舞台装置のライティングにごまかせるように聖属性魔法を発動。
特に怪我人の付近は、床から上に沸くように光らせていく。
そうやって工夫してるってのに、
「ねえ、あれってやっぱり」
「そうじゃない?殿下なんじゃない?」
「でも、髪の色がちうわ」
「今日はふわふわだしね」
ちょ、どうして、ポリゴン町からこんな離れたところで、チェンバロを弾いているだけで勘付くやつがいるんだよ。
“しゅばいちゅ、けがにん、みんななおった”
“キュアちゃん、さんきゅ”
“まえのせきの、おばちゃん、ぽりごんでみたことある”
“まじか・・・”
今回は知らんぷりしちゃおう。主役は座長なんだから!
今日は目は黒いままだし、金髪だし。翅はいかにも作りものなんだからね!
悩んでいるうちに、歌の最後のフレーズが終わった。
一呼吸置いて
うわあーきゃー
拍手喝采。みんなでお辞儀のために舞台に並ぶ。
俺は端っこに立ち、隣にマツ、その隣にメイン女優のタレンティ―ナ、座長のメター、ゼポロ神の姿の金狼族のアヌビリ、そしてカランにビャオ。みんなで手を繋いでお辞儀!
なのに
「きゃーシュンスケちゃーん」
それはまだいい
「シュバイツさまー」
しっ
「でんかー」
だからシッてば。
マツの手を握る俺の背中に冷や汗たらたら。
ここはもう、トルネキ王国ではないのか?ポリゴン町を出てどれぐらい距離離れていると思ってるんだよ。何日もかかったよ?ここまで。なのになぜ俺の名前を呼ばれているのか。
ぐるぐる考えるけど、
「おにいちゃん、えがおだよ」
「はい」
マツにさとされた。
愛想よく行かなくちゃね。旅芸人なんてお客がついてなんぼだしね。
「さすが、おにいちゃんのにんきはすごいねえ」
「おばさまたちがすごくて怖い」
「ははは、たしかに」
わーわー
「はろるどさまーどこ行ったー」
おっはろるどの美しさも隠せませんな。
『ははは、王子についてきたら色々楽しいね』
楽しんでるようで何よりだよ。
お星さま★お願いします♪
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