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異世界転移したら尖った耳が生えたので、ちびっこライフを頑張ります。  作者: 前野羊子
第一章 ~始まりの章~

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【ちびっこアルバイター】

他サイトに入れていたお話を差し込みました。

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 大人に混じって勉強を始めてひと月ぐらい。俺はかなり読み書きができるようになった。

 元はまだ大人になり切っていない若者だったはずだけど、やる気を出したちびっこの記憶力は我ながらすごい。


 そんな俺は、昼間孤児院でちびっ子たちと遊ぶよりは、冒険者ギルドの図書室の本を片っ端から読んでいるほうが楽しいのだ。

 図書室には冒険者に役立つようなものから、物語まで雑多にある。

 魔物の図鑑や、解体図鑑。植物は薬草図鑑と、食べられる野草図鑑と、きのこ図鑑。毒草図鑑。けがをした時の応急処置の方法とか。けっこう絵が多めだけどね。

 その他にはギルド職員が読む、帳簿の付け方とか。


 「……シュンスケ君、ひょっとして計算得意?」

 ある日、ギルマスの秘書のセレさんが帳簿の本を見ている俺に話しかけてきた。

 「足し算と引き算ぐらいなら」

 「じゃあ、ちょっと待ってね」

 そう言ってパタパタと図書室から出て行った。図書室は二階、ギルマスやセレさんがメインで執務をするのは三階だ。

 ブラウスに、ひざ下のフレアスカート、それにジャケットという、この世界の事務服に身を包んでいる。ちなみにギルドの受付職員は、もうちょっと可愛らしいフリルとか、胸の谷間がチラリと開いていたりしているが、セレさんの服装はもう少しかっちりしている。

 その彼女がすぐに戻ってきた。手には数枚の書類を持って。


 「……これなんだけど。ちょっと計算してくれない?」

 見ると、冒険者の討伐した魔物の買い取りの計算書類だった。

 冒険者の持ち込み素材に対しての支払金額が書いてあった。

 「なになに、フォレストボアが五頭、一頭の買い取り単価がこれで、総額が……なるほど合ってます」

 「掛け算もできるみたいね」

 あ、まあね。


 「次は……あれ?これ、間違ってます」

 「どれどれ?」

 「これ、角兎、一匹単価これだと、支払いが足りないのでは……」

 「まあ本当だわ……足りないのが分かったのなら正解よ」

 そう言ってにっこりと俺の頭を撫でる。

 「それで、間違っている数字にこうやって線を引いて、隣の余白に正解の数字を書いて、最後に正しい合計金額も修正してほしいの」

 ほうほう

 「報酬はちゃんと払うわよ」

 「やります!」

 すると、インク壺と羽ペンも横に置かれた。

 

 一応、小学生の時に三年間ほど珠算を習っていた、もちろんフラッシュな暗算だって。

 母さんのウエストポーチにはその時の算盤だって入れてくれている。

 算盤には、三年間で貯めた級のシールがずらりと貼ったまま。

 今、ここで出すのはためらうので、暗算で検算を何度かして書き込もうかな。


 三十分ほど集中して、計算書を修正していた。

 間違っている紙は三割もあった。誰だよこんな計算をしたやつは。しかもどれも冒険者への支払いが少ない。これはあれか?差額をわざとちょろまかす職員がいるとか……。

 「シュンスケ君どう?」

 「終わりましたよ」

 「もう?早いわね」

 「こっちが間違えている方、こっちはあってます」

 「どれ……まあ本当間違ってるわ。助かったわ。どうも適当な職員がいるのよ」

 「どれも、冒険者に払う額が少ないんですよね」

 「なるほど、その職員が不正をしているかもしれないわね。

 冒険者の信用が無くなったら、そこのギルドは閑古鳥が鳴き出して最悪つぶれるのよ。冒険者同士の情報共有ってすごいから」

 「そうなんですね」

 「こっちのほうの冒険者に不足分を入金しなくては」

 冒険者がこの街に居なくても口座に入れればいいそうだ。

 いつの間にか口座のお金がちょっと増えていたらいいだろうな。

 まあ、本来貰ってたはずの金額なんだけどさ。


 ちなみに、口座から引き出すには、身分証とそこに登録されている本人の魔力パターンが必要なので、他人が勝手に引き出すことはできないそうだ。まあそりゃそうだよね。

 「じゃあ、報酬はこれで」

 そう言って鉄貨を一枚渡された。

 三十分で五百円。時給に換算すれば千円。ちびっこには十分な収入である。


 「これからも帳簿とか、助けてくれない?」

 「いいですよ!」

 

 翌日、俺は冒険者ギルドの受付の裏の机で、冒険者が持ち込んだ素材の計算をしていた。壁には単価表があって、それに基づいて計算する。一匹いくらのものから、キログラムいくらのものまで、獲物によって計算が変わる。特に子どもの魔物の場合は大きさがまちまちなので重さで買取金額を決めるらしい。


 「やーんシュンスケ君。計算はやーい。かっこいい!」

 あんたが遅いだけだ、とは絶対言わないで、

 「計算得意なんです。はい計算書」

 「ありがと!それに読みやすい数字だわ」

 「そうですか?良かった」


 「おーいすみません、隣街から手紙持ってきました」

 カウンターには、他の街から来た冒険者が手紙の入った袋を持ってきた。

 「はーい、シュンスケ君お願い!」

 「はい」

 「お、坊主が受け付けているのか?」

 「はい、仕分けのお姉さんが今はお昼休みなんです」

 「そっか。大事な手紙もあるから、無くすなよ」

 「もちろんです」

 「んじゃ」

 そう言って冒険者のおにいちゃんは、俺の頭をカウンター越しに撫でて行った。


 それを配達しやすいように仕分ける作業がある。

 ポリゴン町の番地に分けられた細かい棚が壁に取り付けてあって、そこに仕分けるのだ。

 高い場所は、靴を脱いで、椅子に登って入れていく。

 棚に書いてある番号と、手紙に書いてある番号を合わせて入れていくだけなんだけどね。

 合わせるだけだからすぐだよね。


 ぽいぽいぽいぽーい

 そして、右上から左下までの順番に手紙をそろえる。すると、配達する地域順に並ぶから効率よく配達できるんだ。


 「んじゃ、この半分を俺が配達しますね!」

 見た目五才児の単独行動は、危険だ。初めてギルドに来た時も、ウリアゴたちが常に手をつないでくれていた、だが今日俺は、郵便配達用の帽子を被って出かける。これを被っていると、もしも何かがあったらすぐにギルドに連絡が行って駆けつけてくれるのだ。それに俺が配達する範囲は近場ばっかりだ。それでも

 「よし、じゃあシュンスケ君気を付けて!」と声を掛けられて俺は出ていく。手紙が入ったカバンのベルトは俺の体格に合わせて調節済み。さらにたすき掛けにして。

 そして、護身用の竹刀を腰に差す。

 「行ってきまーす」


 ポリゴンの町は真ん中に街道を挟んだ小さな町だ。ウリアゴと通った町の門の近くには畑や、家畜を飼っている牧場もあるし、人々が住んでいる家々もそんなに密集していない。

 だから俺の手持ちの三十通ぽっちの手紙も結構な距離を回ることになる。


 だが、俺はあえて、走って配ることで体力づくりをすることにした。

 弓矢や槍、剣をもった人が跋扈する(冒険者だけどね)治安が良いとは言い切れない町で、武道を鍛えるにはちびっこすぎる。まずは走りこんで、スタミナをつけることが大事だよね。

 ギルマスと、訓練場でいつもダラダラしているゲールっていう、引退した冒険者にもそう言われている。

 ゲールはおもに、冒険者になりたい人の試験をしたり、鍛えたりする係だそうだ。

 だから、該当する人がいない場合は暇なのだ。


 初夏の日差しの町を走っていく。


 「こんにちはーお手紙でーす!」

 「まあまあ、シュンスケちゃん。偉いわねー。ありがと気を付けるのよ」

 「はーい」


 「服屋のおにーさーん。お手紙ですよー」

 「お、ご苦労さん!代わりにこの配達頼んでおいてくれよ」

 「分かりました!」

 ポストの代わりっていうか集荷もする。


 そうして、縦横無尽に配達をするうちに、ポリゴンの町に慣れてきて、知り合いも増えて、お小遣いも増えてきていた。


 「なあ、シュンスケ、ちょっとはたらきすぎじゃないか?」

 ある日孤児院で、おやつについてきた山羊のミルクを飲んでいる俺を、シト君が心配そうに俺を見てきた。

 「うーん、まだまだ働けるよ?」

 「ぼくも、もう少ししたらはたらきたいんだけど、お金もらうならすうじのべんきょうがだいじだってライ先生にいわれてさ」

 「そうだね」

 「しゅんすけは、どうやってけいさんがはやくできるようになったんだ?」

 「うーん、なんだっけ」

 数字や簡単な計算に出会ったのは幼稚園の年長さんだったっけ、かれこれ十二年以上前。そのあと小学校で・・・!あ、流行った遊びがあったじゃん!


 俺は、B5ぐらいの羊皮紙の切れ端を出して、ライ先生に借りた定規とクレヨンで十×十の百のマスを書く。そして上の段に左端からゼロから九までの数字を書いていく。左端に縦にもゼロから九までの数字を書いていく。どちらも順番にね。

 そうして、その間のマスを上段の数字と左端の縦の列の数字を足した数で埋めていく。

 これは、答えだ。


 今度は本の部屋にある石板が小さいので、五×五の二十五のマスを書く。

 そして、上の段と左端の段に一桁の数字をランダムで入れる。


 「なになに?」

 「こことこっちの数字を足して、このマスに埋めていくんだよ。初めは両手と両足の指を使えばいいからね。たとえば、これが五でこっちが三だろ」

 「うん」

 「それで、それが交差するここに足した答えを入れるんだ。いくつになる?手を使っていいよ」

 「えっと八だ」

 「そうだね。で、ここに八と書くんだよ」

 「うん」

 「そうして、全部埋めてごらん?」

 「よし!」

 「出来たら、この紙に書いた表で答え合わせをしてね」

 「あ、本当だ。五と三の所に八って書いてある」


 百ます計算、流行ったよなー。みんなで毎朝速さを競ったりしてさ。

 「これを何度もすると、ぱっと計算できるようになるんだ」

 「たしかに、シュンスケさっき、こっちの百ますにすごい勢いで数字を埋めてたな」

 「これは順番通りだから簡単だよ」

 「いやいや、覚えてるのか?」

 「まあね」

 「よし、でもこれで僕も計算練習しようっと」

 「うんうん」


 後日、孤児院の図書室には、百ます計算のための、まるで将棋盤のような石板がいくつも置いてあった。シトが遊んでいるのを見て、助祭のライ先生や、司教さまが用意したらしい。


 つぎは百ます掛け算の答えの表を作っておこうかな。


 やっぱり数字は男の子のほうが好きなのか、ゲーム感覚なのが受けたのか、男子を中心に計算ブームが孤児院に来ていた。


 一方俺は、ギルドの帳簿チェックに、手紙の配達のほかにも俺のアルバイトはある。それはレストランコーナーの下ごしらえの手伝いだ。

 ニンジンやジャガイモの皮をむいて、ジャガイモは芽を取る。

 ジャガイモは丸っこいので、果物ナイフのような比較的小さなナイフでむく。ニンジンは・・・ピーラーのようなものがありました、それで。皮むきはヨネやシトもできる。みんなで怪我をしないようにでも楽しくお手伝い。

 その他には、レストランとは言えさすが冒険者ギルド。肉はすぐそばである程度解体されたものが置いてあって、それを使う。新鮮だよな~。


 俺は作業を見せてもらいながら、解体の勉強だ。将来冒険者になるならその知識は必要だよね。


 そうして、俺はちょこっとずつ小遣いを稼ぎながら貯めながら、日々の異世界を過ごしていた。


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