112【ひとつもどる】
いつもお読みいただきありがとうございます!
今日の二本目です!
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午前中に地竜達をアナザーワールドのから、リザードマンの領地に返した俺は、マツを伴って、進路を逆に戻り、橋の落ちた川を見に来た。
川幅は約五十メートル。神田川ぐらいかな。
向こう側には資材が届いているようだ。
「おうじ、あっちにボヌーのおじちゃんがいる」
「え?あほんとだ。あ、見つかった、手招きされてる」
ボヌーの他には人足風のがっちりなおっさんが四人いる。
『ははは、ぼくは王子の中に隠れているのにね。目のいい奴』
「ほんとだよ、マツを見てて。ハロルド」
『オッケー』
出て来たハロルドにマツだけを乗っける。
「ちょっと、俺だけで行ってみる」
『「わかった」』
「おーシュンスケじゃなくってシュバイツ殿下」
「こんにちはボヌーさん。橋の付け替え工事まで冒険者の仕事なんですか?」
「まあな。料理人さえいないギルドだぜ。何でもやるさ」
「そうでした」
「さっき、スブルグの冒険者ギルド経由で、シュンスケに依頼出したらしいんだけど、もう来たんだ早いね」
「え?そうなんですね。俺達は朝から出たままで、まだ依頼内容は聞いてなかったです。で、どんな依頼だったんですかね」
シュンスケ扱いでやり取りしてくれるボヌーさんに好感を覚えながらたずねる。
傍らには、大きな杭が四本刺さっていて、横には同じ杭が四本転がっている。
その周りにもたくさんの木材や石材が積まれていた。
いよいよ工事なんだな。
「あちらに、このような杭を打ち込んで、その間にロープを渡して、作業用の仮の橋をつける準備をしたいんだけど、それを手伝ってほしいんだってさ」
「なるほど、ロープは渡せるけど、杭打ちの強度に自信がないなあ」
「じゃあ、俺をあっちに連れてってほしいな」
飛びたいのかな。従弟のロイエさんとはだいぶ違うな。
俺たちのやり取りを。黄色ちゃんのサポートで聞いてたハロルドが反応した。
『オッケー、じゃあ、そっちに行くよ。
マツしっかりつかまってね。ゆっくり行くからね』
「うん!」
「え?まじ?」
ハロルドにマツだけが乗って飛んでくる。めっちゃ怖い!
まあ、風魔法で支えてくれるって解ってるけどさ。
ひょっとして、他人から見たら俺もこんな感じだったりして・・・。
『「きたよー」』
「やっぱり、おうじがいないと、せなかがさむい」
「ふふふ、怖くなかった?」
「ぜんぜん」
そうは言うけど、平気すぎるのも怖いんだよね。
「さて、ボヌーさん達、杭を入れるマジックバッグは持ってますか?」
「ない」
まじか・・・この杭十メートルぐらい長さがあるぜ。
「しょうがない」
『王子、なに悩んでるの?』
「このオッサンたちをたくさんハロルドに乗せるのがやだけど、空間魔法を見せまくるのもやだなと・・・」
二人してそんな、純粋な目でおかしなことで悩んでいる俺を見ないで・・・。
「よし、扉を繋げる方で」
『そっちの方が速そうだね』
「結局そうだよね。というわけで、先に、ロープを、こっちの杭に巻き付けて下さい」
「おう、みんな」
「ああ!」
「では、今からあちらを繋ぐドアを出しますから、ボヌーさん以外は、みんなで杭を担いであちらへ」
ガチャリ
「おおお!」
杭のサイズに合わせて、観音開きの大きな扉を出す。
川の向こうにもドアが出現している。
「ささ、わたって~」
「おもしれー」
「さっきこっちに居たやつが向こうから人が出てきてる」
「ほんとうだ。俺もこういう風景は初めて見たな」
「きゃっきゃっ、おもしろーい」
杭はどうして打ち込むんだろう・・・あ、土魔法ですか、なるほどです。勉強になります。
「向こうのやつがマルをしたぜ」
ボヌーさんの合図で、
『次は僕の出番だね、どうぞ』
ハロルドの角に、ロープをひっかける。
『じゃあ行くよ、ゆっくり行くから、絡まないようにお願いね』
「わかりました!」
俺もロープが絡まないように補佐を。そうじゃないとハロルドが怪我するからね。・・・怪我するのかな?
長い長いロープの先を向こうに渡すハロルド。
『おもしろい、こんなことするの初めて』
「ははは、何でも楽しむハロルドが素敵だぜ」
『そう?王子もいろいろ楽しんでるよね』
「まあな、この世界の暮らしが楽しくってさ、こないだの悪魔みたいな時もあるけどさ」
『うんうん』
マツは、ボヌーさんのところで待機。
『とうちゃーく』
「ハロルド様ありがとうございます!」
『はいどうぞ』
「うわ、五十メートルって結構長いね」
『そうだね、これより川幅が長かったらもっと大変だろうね』
「そうだな」
ロープに風があたってビュービューと音が発生している。
「ハロルド、風が大変だったんじゃない?」
『平気。僕もね、風の女神様の加護があるもん』
「そっか、俺と同じだな」
『そう、それにね、王子は風の神様と同じ香りがする』
「え?香り?なんか匂う?」
『うん!いい匂い』
「昨日のシャンプーかな」
「いつものいいにおいーシャンプーたのしいよね」
待機してもらってたマツをまたハロルドに乗せて俺は手綱を曳いて、スブルグ側の川岸にいる。扉はとっくにひっこめている。
「じゃあ、マツとお揃いだよ」
『うーん、マツもいい匂いだけどちょっと違うんだよね』
「へえ、そう言えば前に、ノームにクンクンされた」
『ははは、そうなんだ、どれどれ』
「わーハロルド、俺の頭をクンクンするな」
「きゃははは、おうじがクンクンされてる・・・」
「なんかすごいなここは」
「奇跡だよな」
コホン。じゃれてる場合じゃないね。仕事中じゃん。
「俺、もう一度向こうのボヌーさんとこいってくる」
『「はーい」』
「おーい、後何やるんだっけ」
「ああ、シュンスケ、次はこの縄梯子をあっちにつなげたいんだ」
「おっけーおっけー」
「結構重いぜ?シュンスケでもできるのか?」
「出来る、たぶん」
これはあれだよ、亜空間を使わない瞬間移動なら出来ると思うんだよね。
縄の端っこを胴に巻き付けておいて・・・この五十メートルもある縄梯子も、風の力で持つ。
「んじゃ行ってくる」
「おー」
パタパタするんじゃなくて、風を利用して素早くだよ・・・・。
初めての試み。イメージだよ駿介。
シュー
俺の周りに風がまとわりついていく。
頼むよ母さん。
「せーの」
シュッ
ドンッ
「どうだ?前には川がなくて・・・後ろに川!よし、出来た!」
「わー、すごいかぜがきたー」
『え?どうやったの?王子』
「風の勢いでこっちに来た」
『なるほどー』
「ありがとうございます!これで随分助かります!」
扉で先にこっちの岸にわたってた人が、俺の胴から縄梯子を外して、他の杭にしっかりと結わえていく。
「それにしても、縄と縄梯子だけで五十メートルを渡るなんて、ああ、ボヌーが渡ってきた」
「何に感心してるんですか、シュバイツ殿下。風の勢いで縄を渡した人が」
「だって、怖そうでさ、ああ。揺れてるし」
“しばらく、あたしがめんどうみようか”
「お願いします黄色ちゃん」
自分も結構無茶で無鉄砲だと思ってたけど、他人の危険なシーンを見ているほうが怖い。肝が冷えるってこういう事なんだな。俺もいつもこういう事を他人様に体験させてたのかもしれない。
無茶するときは、出来るだけ隠れてしなくちゃね。
“そろそろ、やみまほうの、けいこじゃない?”
「そうだね、紫色ちゃん。マツも一緒に教えてやってね」
“いいわよ”
スブルグの冒険者ギルドに着いた俺は受付で。
「・・・殿下、依頼は請け負ってから行ってください」
注意を言われてしまった。
「すみません・・・すっ飛ばしました」
「まあ、シュンスケ様へのご指名の依頼だったので、いいんですけどね」
「ははは」
「依頼達成ですね、あと、リザルド公爵から連絡が入ってます。これを」
「ありがとうございます」
受け取った手紙を見る。
「マツ、十頭だって、地竜を預かるの」
「わあ、たくさん。みんなおともだちになれるかな」
「がんばれマツ。プウとポウもいるよ」
「やったー。じゃあみんなの、おむかえじゅんびね」
「そうだ!色々買い物に行こう」
「おかいもの♪」
そうして、マツと手を繋いで、スブルグ辺境伯領都のショッピングに繰り出すのだった。
夕方が近いので、大急ぎだったけどね。
お星さま★お願いします♪
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