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111【俺の恐竜ランド】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 翌日。アナザーワールドから出てきてもらったエスカーザと、冒険者ギルドの借りてる部屋で朝食を取りながら、地竜達の返還について打ち合わせをしていた。


 今日はシリアルじゃなくて、パンとふわふわオムレツとサラダだ。

 マツのオムレツにこっそりケチャップを乗せた。

「はーとまーくかいて」

「よし・・・(萌えの字は無理)可愛くできたぞ」

「わあい」

 後で、血とは思われないように拭きとるけどね。


 俺たちのやり取りをにこにこして見るリザードマン。


 さて、ムーシュに食われた地竜は大小合わせて五十八頭もいたらしい。数量については、伯母様に報告しましたよ。でもやっぱり、慰霊祭をした方が良いよね。


 エスカーザは引き続きアナザーワールドで過ごしてと言ったけど、魔素たっぷりの空間で全快になったそうで、確かに鱗もつやつやしてるし顔色も良くなった。

 服装もスフィンクスが用意してくれたのか、貴族の嫡男っぽい装いになっているので、このまま外に出しても大丈夫そう?


「もちろん、私の責任ですからね。私も出ていかねばなりません。父へも報告しないとですし」

「それはそうですね」


 スマホの時計を見る。

「じゃあ、そろそろかな。マツ、この葡萄の蔓を持ってて」

 昨日ワイザーさんに渡したのと同じようなものを猫むすめに渡す。

「あい」

「ムーシュさんちょっとの間、この子をお願いしますね」

「わかりました」

「では」

 と言って俺は、精霊の姿になり小さくなっていく。

「わあ、おうじ、みんなとおんなじ大きさ~」

「可愛いだろ?」

 自分で言っちゃう。

「うん!あ、みどりいろちゃんと、おそろい。いろが」

「ふふふ、いいでしょ」

 同じサイズになった緑色ちゃんが俺の頭を撫でる。

「本当ですね」


 “おうじ、ワイザーかられんらくきたよ”

 “ここがいいってさ。ちゃんとツルももってるぜ”

「よし、じゃあ緑色ちゃんお願い」

 “はい、いくわよ”


 緑色ちゃんの手を繋いで、いつか父さんの部屋に初めて突撃したときのように、葡萄の葉っぱに飛び込む。


 これは、根っこが繋がってなくてもいいみたい。不思議だ。


「よいしょ」

 “なに?その掛け声”

 “え?言いたくない?よいしょって”

 なんか運動会の障害物競走とかで、狭いところから出る感じ?


「おはようございます、ワイザーさん」


「え?あれ?まさかシュバイツ殿下?ちっちゃっ」

 葡萄の蔓を持ったワイザーと目が合う。

 まあ、このサイズは本当に小さいですからね。

 スズメよりは若干大きいけど?

「ほんと、ちっちゃいとさらに可愛いですね」

 ワイザーの傍には人のような服を着た地竜が何人かいて、同じように話をしている。鎧も着ているから、護衛にしているのかな?あ、戦士なんですね。


「ははは、誉め言葉と思っとくね。ちょっと待っててね~」


 葡萄の蔓から飛び出た俺は、緑色ちゃんと手を繋いだまま少し辺りを飛び回る。

 緑がきれいで、ゴルフ場のような場所だな、大きな池や砂地もある。

 へえすごい、あ、あっちは大きなトラックのあるグラウンドみたいなのが。

 そこには地竜がいますねえ。教えてくれた競地竜場だな、大人になったら賭け事にも一度ぐらいチャレンジしようかな。



 ワイザーの傍に戻ってきて、もう一度掛け声を。

「よいしょっと」

 六才児のサイズに戻る。

「おはようございます殿下、

 びっくりしました、小さいままだと本当に妖精のよう・・・」

「ははは、一応俺は精霊です」

「なんと失礼しました、そうだ、元精霊王の息子さんですもんね」

 周りの方が気を使ってる?

「よくご存じで」

 精霊と妖精ってそんなに隔たりがあるのか・・・。

 当の本人が分かってねえ。まあ、妖精には会ったことないしな。


「まずは、俺自身がここに来る必要があったので、精霊ならではの方法で来ました。

 次は普通に転移魔法で行き来します。

 まずはエスカーザさんを連れてくるので、少しお待ちくださいね」

「はい」


 そうして俺は、ギルドの自分の部屋に戻ると、そこにはギルマスがいた。

「うわ、びっくりした」

 そう言えば呼んでたんだ

「うわ、びっくりしたのは俺もです。昨日言ってた転移魔法ですか」

「はい。でも、ちょうどよかった。予定通り、ここからポイコローザ公国へ転移して、地竜達を帰してきます。カウンターには下りないのでこのままカギをお渡ししますね」

「わかりました、無事なお帰りをお待ちしております」

「戦いに行くわけじゃないから大丈夫」

「いってきましゅー」

「じゃあ俺と手を繋ごうマツ、それにエスカーザさん」

「はい」「あい」

 堂々とここで転移魔法を使うのは、エスカーザさんたちが魔道具による転移魔法が確立しているから。そうじゃなければおっぴらにしてはいけないことだ。まあ、あちらこちらにドアを繋げてるので今更だけどね。


「ああ、戻って来れた・・・て、え?殿下、何ともないんですか?」

「ええ、大丈夫ですよ。三人ですしね」

「あ、そうか。

 ワイザー、迷惑をかけたな」

「迷惑だなんて、兄さんこそ、大変だったって聞きましたけど、本当に大丈夫なんですか?」

「ああ、この通りだ」

「えしゅかーざ、むりしちゃだめだよ」

「ありがとう、マツさん」

「マツさんと兄さんは、こちらに」

 といってワイザーが椅子を用意してくれていた。

「わいざーしゃん、ありがと」


「ではゲートを出しますよ」

「お願いします」


 位置が把握しやすいようにすこし飛びながら、

「そこと、向こうの方とで三か所から出しますよ、あちらには蜜蜂などの精霊たちが、中から誘導します。

 こちらはワイザーさん達でお願いします」

「わかりました」


 そして俺は三つのゲートを開く。


 地竜達のどやどやする足音があちらこちらから聞こえる。


 静かだったフィールドがだんだんと賑やかになっていく。

 そこへ、ワイザーさんの傍に控えていた、戦士タイプの地竜達が動きをサポートしに展開していく。


 出来るだけ大きく開いて、俺の空間にたまった魔素も吐き出す。


「ああ、かえってきた!」

「あ、ワイザー君だ」


「おーい、みんな」

「ワイザーは無事だったんだね」


「エスカーザ、こっちにもう来てたんだ」

「ああ、みんな、シュバイツ殿下にお礼言おうな」

「うん、もちろん」


「「「シュバイツ殿下、どうもありがとう」」」

「うん、戻って来れてよかったね」

「本当によかった。悪魔もやっつけてくれたんでしょ?」

「まあ捕らえたんだけどね」


「あ、くいんびーだ」

「クインビーありがと、蜂蜜美味しかったよ」

 『ほほほほ、私も楽しかったわ、こんな大きなお友達が沢山で』

「うん、おいらたちお友達」

 『ほほほ』


「兄さん、まったく同じ姿の人が三人出てきましたね」

「ああ、あの方はスフィンクス様だ、あの方も精霊なんだよ。三人のようでお一人なんだそうだ」


 そうなんだ、スフィンクスには分身のスキルがあってさ、一度に五人まで増やしてばらばらの仕事が出来るのだ。だから、一人はポリゴンの家を守ったままだし、アナザーワールドでは、エスカーザの世話をしつつ、草食動物と肉食動物の世話が出来たんだ。

 まじで、便利なやつだったのだ。下手な宝箱を拾うより良かったよね。遠足で行ったダンジョンは。そして分身した皆が料理をはじめ家事スキルがあるという・・・。

 マルチタスクとはこいつの動きの事では・・・。将来もっと分裂しないかねえ。


 さて、そんなことはさておき、

 『王子、私の方は皆さんこちらに来ましたわよ』

 『『こちらも、皆さん出てこられました』』

「よし、みんなお疲れ」

「「お疲れ様です。精霊の皆さん、お世話になりました」」

「「「「お世話になりました」」」」

「「「「ありがとう」」」」


 『いえいえ、良かったですね』

 『もう、いい夢しか見ないでしょう』


「良かったな、うんうん」


 素晴らしい光景に俺は思わずニコニコしていた。

 みんな良い笑顔、これは記録しなくちゃ。

 スマホを出してパシャパシャ、パシャパシャ。


「しゅばいちゅおうじー」

「どうしたマツっておわっ」


 振り向くと、滂沱の涙のリザードマンが二人・・・いやもう一人増えていた。

「大丈夫ですか!」


「いえ、感動して」

「こんなに速くみんな元気な姿で・・・うう」

「本当にありがとうございました」


 涙を拭きながらエスカーザが一人のリザードマンを伴って近づいてきていたのだった。

「殿下紹介します、父のリザルト公爵です」

「挨拶が遅くなってすみません、これらの父の、グアーナ フォン リザルドです」

「初めましてリザルド公、シュバイツ フォン ロードランダです」

 リザルド公も、俺の前で跪き、俺の右手を取って甲を額に当てる。

 この仕草は国を問わず王族への挨拶らしい。いつもなされるがままだけどさ、うん、何度されても慣れないんです。


「この度は息子と地竜達の事、悪魔の捕縛、そして伝染病を食い止めてくれたこと、そのほか沢山のことについて感謝を申し上げます」

 俺の手を取って跪いたままのリザルド公に立つようにお願いする。


「いえ、たまたま遭遇したので、お手伝いしたまでの事です。

 どれも一刻を争うので、公に相談もなく勝手に動いてしまった事、俺の方こそすみません」


「おお、なにを仰るのですか。私共はありがたいとしか思わないですよ。殿下にどうやって感謝を伝えたらいいのか、悩んでいるくらいです」

 そういうリザルド一家の顔をみてハッとした。


「あの、俺はもう、金品や不動産は必要ないですからね。いいですね」

 ここは、びしっと言わなければ!

「え?」

「では、どうしたらいいのでしょう」

「私どもには借りが多すぎます」


 うーん・・・。

 悩みながら、まっちゃんを椅子からどかして、そこに座り、膝に猫むすめを乗せると、


「ねえ、おうじ」

「なあに?まっちゃん」

「あそこに、いけがあってね」

 うん?池あったね。

「そうだね・・・?あれは?」

「あのこたち、ないてる?」

 そういえば、池の傍で、二頭の地竜が泣いている。


「まつが、おはなしきいてくる」

 ぴょんと俺の膝から飛び出たマツが、てててーと

 地竜に寄っていく。

 泣いているけど、マツよりちょっと大きい。


 “あたしが、ようすみてくる”

 黄色ちゃんが見守りつつ三人の話を届けてくれる。


「どうしてないているの?」

「あ、ネコちゃん」

「はんかち?かしてくれるの?」

「うん」

「ありがと」

「ぼくたちね、おとうさんとおかあさんが、たべられちゃって」

「そればびっくりしたね、かなしいね」

「うん」

「ずっととってもかなしいの」

「そっか」

「おんなのあくまはね、さいしょぼくのてをつかんできたんだ」

「それはこわかったね」

「そしたら、おかあさんがかばって、たべられちゃったの、ぼくたちのめのまえで」

「おとうさんも、ぼくたちをひっしに、にがしてくれたの」

「うん」


「でも、おとうさんと、おかあさんは、いなかった」

「ぼくたちのかわりに、たべられちゃった」

「あーん、かわいそう!」


 あ、泣いてる子が増えたじゃん。

「ごめんね、ねこちゃん、なかないで」

「ないてくれてありがと」

「ひっく、うん、ふたりともかわいそう」


「ねえ、ねこちゃん」

「まつっていうの」

「まつ?」

「うん、あたしのなまえ」

「まっちゃん?」

「うん!」

「ぼくはね、ぷうっていうんだ」

「ぼくは、ぽうっていうんだよ」

「ぷうと、ぽう?」

「「うん」」


「ぷうとぽう、あたしのお友達になってね」

「まつのおともだち?」

「こんな、かわいい、こねこちゃんとおともだち?」

「うん、おともだち」

「わーいおともだち」

「あはは、おともだち」


 まつ、スゲー、あっという間に二頭を笑顔にしたじゃん。

「あたしは、これからもうしばらく、たびにでるから、かえってきたらあそんで?」

「わかった、まってる!」

「ぼくたちとあそぼう!」

「うん!いっぱいあそぼう!」


 ほっこりしている俺の横で

 『うううっなんて尊いのでしょう』

 スフィンクスか!


 『私もお世話楽しかったのですが、寂しくなりますね』

 『そうね、アナザーワールド楽しかったわ』

 クインビーもしんみりしている。


 おれは、隣に座るグアーナ公爵に聞いてみる。

「あの子達のように、孤児になった子を引き取らせてもらえませんか?」

「え?」

「もちろん、魔素を集める装置も借りれるなら集めておきますし」

「ふうむ、そうですな、数頭ぐらいなら、そんなに魔素も集まりませんしね。

 エスカーザ、何頭ぐらいいるかな」


「今回孤児になったのは、七頭ですね、みんなあの子達の他は一人っ子です」

「そっか、一人っ子の親がいなくなったんじゃもっとつらいよな」

「はい、今後はあの子達の心のケアも大事だと思っております」


「グアーナ公、もしも、ここの風景を見て親を思い出して辛い子がいたら、俺に譲っていただけませんか?もちろん、心のケアとか専門家を用意して、大切に面倒を見させていただきたいのです。俺、南国に島も持っているので、暖かい環境も提供できますよ」

「なんと、それは願ってもないですが」

「そうですね、お言葉に甘えていいですか?」

「もちろんです。とは言え地竜の飼育は何分初めてなので、色々お聞きしにお邪魔するかもしれませんが」

「それはもちろん、いつでも気軽にお越しください!では、明日までに、行きたい地竜がいるか、聞いてみますので、お待ちいただけますか?」

「はい!わかりました!」



 翌日、ヤシの木や綺麗な花が咲くサボテンなどを、スフィンクスに用意してもらって、アナザーワールドの半分をすっかり模様替えし終わった俺は、地竜達を迎えに来た。


「・・・結局十頭もおりますけど、大丈夫ですか?」

 孤児だけじゃなくて、若い地竜で、リザルド公爵領のフィールドしか知らなかった子が、すっかり新しい地域を気に入ってしまい、志願してきたのだ。

「大丈夫ですよ!」


 大きいのとちょこまかしたのと、肉食ともちろんあの泣いてた二頭も。


 『これは、お世話のし甲斐がありますねぇ』

 スフィンクスが張り切っている。

 『ほほほ、大きい働き者を育てますわ』

 クインビーも蜂以外の子分を持てて、まんざらでもなかったらしい。


 ほんと二人ともお世話好きで助かるよ。


 そうして俺は自分の恐竜ランドをゲットしたのだった。


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