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110【臨時護衛のロイエ】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 携帯のアラームが鳴って、目を覚ます。

 十五時になるところだ。

 洗面で顔を洗って口をゆすぐ。

 よし、起きたぞ。

 ウエストポーチから、冷えたリンゴジュースを出して二つのコップに注いでいると、マツも起き出した。


「かお、あらってくる」

 スリッパも履かずにてててーと洗面へ行く。

 くすくす、さっきの俺と同じ動きだな。


 テーブルにはクッキーも広げちゃう。

 細かくしていると妖精たちも寄ってきた。


 “ふう、おはようおうじ、もう、行ってきたわ”

 俺と同じ髪と瞳の色の緑色ちゃんがクッキーからこぼれたドライフルーツを拾う。

 緑色ちゃんは紫色ちゃんと同じでお姉さんポジションのしっかりした精霊ちゃんなんだ。


「え?もう?」

 “ええ”


「で、どうなった?」

 “なにもないわ”

「なにもない?」

 “エスカーザの魔法はすごいのね、ムーシュの出現地点だろう所をえぐるように転移していたみたい。公爵家の人たちも検査していたけれど、病原菌は一匹も残ってないわ”

 ほーっ

「よかったー。じゃあ、地竜達を帰せるね。まずはエスカーザを公爵家に帰らせてからのタイミングかな」

 “そうね”

「なんか、地竜の飼育自体があの国の産業につながってるらしいからな」

 あの大量の魔素を俺のアナザーワールドで俺が受け取り続けていたら申し訳ないし。


 お昼寝もして、おやつも食べて、やる気満々のおれは、ふとマツを見る。

「どうした?」

「もういちど、かおあらってくる、くっきーのこなが」

 ぱたぱたぱた

「ははは、おれもー」

 ぱたぱたぱた

「えー、マツがさきー」

「おれがー」

「きゃー」

「うそうそ、あわてなくていいぞ」


 “ふたりとも、かわいいわね”


「じゃあ、お姉さんまたカギをお願いします」

 俺だけ人間族になって、ギルドの受付でカギを渡す。

 そろそろ、依頼を終えた冒険者が帰ってきてしまうからな。今から騒ぎになると出かけにくい。

「はい、お気をつけて、行ってらっしゃいませ」

「いってきます」


 二人で手を繋ぎながら街道を歩きだすと、頼んでないのに一人の兵士が付いてきた。

 あ、ここの、スブルグ辺境伯領の私兵長のロイエさんだった。

「ロイエさん、お疲れ様です」

「殿下、その小さいふたりで歩くのはやばいですって」

「大丈夫ですよ」

「だって可愛いからひょいっと連れ去られそうで、はらはらします」

「ははは、一応俺Aランクですけど」

「存じてますけど、俺の精神衛生のためについて行かせて下さい」

「じゃあ、ロイエさん、高いところ大丈夫ですか?」

「はい?高いところ?」

「逆に丁度良かったです。今から国境の門へお伺いするので、顔つなぎしてくれますか?」

「わかりましたって・・・まさか」


 俺はハロルドを出してゼッケンをつけてマツを乗せる。はやく鞍を作らないとね。


 『ロイエ、鐙なくても大丈夫?』

「ハロルド様・・・」

「あ、このお家の柵を貸してもらおう」

 ぱかぱか

 ハロルドの手綱を曳いて丁度よさそうなポジションに付ける。

 そしてマツの後ろに俺も乗る。

「ロイエさん、付いて来てくれるんでしょう?」

 にっこりと彼に手を出す。

 狼ミックスのくせに、負け犬のような表情のロイエがそろそろと手を出してくる。

「わかりました」

 『ロイエ、しっかり手綱を持ってね』

「はい」

 『じゃあ行くよ』


「おや、ロイエ、いい馬に乗ってるじゃん。綺麗な白馬だ」

 街道の他の冒険者に声を掛けられた。


「そうだろ・・・ってああ、ちょっと待ってぇー」

 『はははは、いくよ~』

 加速していながらハロルドは羽を出し、空中へ羽ばたいていく。



 トルネキ王国への東へ続く街道の、地竜が通ったあとに行くより数キロ手前に交差点があった。昨日は、地竜に必死で、そんな道があったことも目に入ってなかったな。うん。

 それでもハロルドは迷わずそれを遠くに確認するとそのまま北東に真っすぐポイコローザ公国への国境を目指して飛んでいく。

「え?もう?」

 りっぱな門が見えてきた。ユグドラシルが絡んでいるラーズベルトと違って、人の手で入出国を管理する設備はちょっと立派。

「飛ぶってすごいでしょ」

「はい。確かに素晴らしい景色です」

 『ははは、いっちょくせーん』

「きゃー、ハロルドかっこいいー」

 『そうでしょー』


 国境門へは商店街が伸びていて、その南端にハロルドが着地して、羽を仕舞う。

 こちら側の街道にはポイコローザ公国へ持って行って貰おうと、ガスマニア名物の土産物街が続いているのだ。


「あ、おうじ、しゅばいちゅじるしのかんばんが」

 クインビーの蜂蜜のラベルとして貼っているのと似たデザインの看板がある小さなお店が一つあった。

「こんな所にも出店してたんだ」

 オーナーの俺はわかってませんよ・・・。時間が惜しいので素通りです。

 商品のラインナップは、蜂蜜と、蜜蝋製品と、おしゃぶりと、クッキーと最近はチョコもあるかな。

 売り上げの半分は、ガスマニアを中心に各孤児院の寄付へ回しておりますはい。もう、俺の資産はこの国では増やしたくない。

 あ、エリクサーが放出されていたら、補充に来なくちゃね。去年ポリゴンの孤児院を卒業した子が運営しているとか言ってたっけ。


 商店街の入り口でハロルドを降りたロイエは、ハロルドの手綱を持ちながら歩いている。


「おーい」

「ロイエ私兵長殿ー」

「お疲れ様です」


 門についた俺は、ロイエに挨拶はあとでいいからと、とりあえず、ポイコローザ公国からきて足止めに合ってる人たちのところに行く。


 鑑定したけど感染している人はいなかった。よかった。

 大地の女神から昼寝中の夢の中で、ムーシュはいきなりエスカーザが管理しているところに転移したらしいと聞き出したとお知らせがあった。あっちこっちにまき散らす前だったみたい。

 本当に、エスカーザの動きが凄かったってことだよね。


 一応、みんなに聖属性魔法を振り掛けておく。


「大丈夫ですよ、ロイエさん。この人たちは通しても大丈夫。病気の人はいないです」

「お疲れ様です殿下。ありがとうございます。本当によかったです」


 一人、少し立派な服を着たリザードマンがいる。

「こんにちは、お話いいですか?・・・っとロイエさん、小さな部屋ないですか?」

「ああ、でしたら、こちらに応接がありますよ、どうぞ」

 ロイエに簡単に事情を聴いていた国境の管理人の兵士に部屋に案内される。


 護衛代わりにロイエもついてきてもらう。

 俺は変身を解きながら。

「こんにちは、俺はシュバイツと言います。あなたは、エスカーザさんのご兄弟ですか?」


「は、初めまして、シュバイツ殿下。

 私はエスカーザの弟の、ワイザー フォン リザルドと申します。お会いできて大変光栄です」


 ワイザーは跪いて俺の右手を取って額に当ててきた。


「それで、兄は無事でしょうか」

 心底心配そうに話す彼に少し好感を感じながら、俺は彼の無事を伝える。

「今は、生き残っている沢山の地竜たちと安全なところにいます。

 もう、完治しているんですけど、大けがと感染の影響でまだ本調子ではないはずです。しばらくそこで療養した方が良いような気がするのですが、地竜達は早くお返ししたほうがいいですよね」

「そうなんです」


「では、明日の朝十時にお返ししますので、空間のゲートをつなげてもいいポイントに、ワイザーさんが居てくださいますか?」

「はいわかりました」


「その時に、これを持っててほしいのと」

 と言って、ウエストポーチから出した葉っぱだけの葡萄の蔓を一つ渡す。

「この花に話しかけてください。」

 次に黄色と赤のバラを彼の胸ポケットに差す。

「え?これに?」

「そこには、精霊がいますので、俺に連絡が届きます」

 バラには黄色ちゃんと緑色ちゃんが待機している。

 “まかせて”

 “がんばるわ”

「すごいですね」

 ワイザーが思わず声を漏らす。


 お花の携帯電話。やっぱり便利。


 スマホの時計はもう十七時。振り返ると、マツの手をずっと繋いでくれていた私兵長がいた。

「ロイエさん、さあ冒険者ギルドへ帰りましょう」

「そうですね・・・って、まさかまた」

「もちろん最短コースで」


 人間族に戻って、国境門の前に出ると、ハロルドが沢山の人に囲まれて待っててくれた。

「あ、ひっこめるの忘れてた!ごめーん」

 『だいじょうぶだよ。みんなとお話楽しかった』

 もう日が沈もうかとしている時間で、夕日にハロルドが染まっている。

「はろるど、ぴんくいろ~」

 『おかえり、マツ。ピンク色?僕が?』

「朝の公園のバラみたい」

 『え?ほんとだ、面白いねー』


 鐙の無いハロルドの横に、他の門番さんが台を置いてくれている。

 今度はちゃんとロイエさんが先に乗って俺に手を出してくれる。

「ではお二人とも、帰りましょうか」

「「はーい」」

 『このままじゃ危ないからちょっと光るね~』

 ハロルドは車のライトのように黄昏た風景にはっきりとその存在を明かしていく。

「おお」

「ああ、ハロルド様が光ってる」

 べつに、前の道を光らせる必要はない。

 羽を広げて、ハロルドは真上に跳びあがると、ゆっくり進みだす。


 『ロイエ、少し慣れてきたでしょ』

「ま、まあそうですね」

「たしかに手綱を持つ手に余裕が出てきたかも」

「ロイエ、たのしんだらいいよ」

「そうします・・・ってもうあっという間に領都ですね・・・ああ家々の明かりが美しいですね」

 『そうだね、ロイエ。君が守っている街だよ』

「おれが、守っている街。なんだか誇らしいですハロルド様」

 いい経験が出来たんじゃない?


「ロイエってボヌーって猟師の冒険者知ってる?」

 『あ、そういえばにてるねえ』

「ああ、従弟ですよ三人とも会ったんですか?」

 冒険者ギルドに着いて、ハロルドを仕舞いながら聞く。

「うん、おうじがてづくりグラタンをごちそうしてた」

「なんと、うらやま、いや恐れ多い」

「あの時は、人間族の平民の冒険者姿だったしねえ。料理人が止めちゃってて、レストランが機能してなかったみたい。体が資本の職業なのにちゃんと食べれないなんてね。募集してるらしいんだけどさ」

「そうですな、いい料理人じゃなくても、主婦が片手間で作ってくれるだけでも違うでしょうな」


「ボヌーさんにはちゃんとお金貰って食べてもらったから、気にしないでって言っといてね」

「はい、ありがとうございます」


「じゃあ、今日は臨時の護衛ありがとうございました。えっと報酬を・・・」

「いえ、俺が勝手についていっただけですし、ハロルド様に乗せてもらうという、一生に無いような貴重な体験もさせていただきましたし」

「そうですか?ではお言葉に甘えて」

「はい、ではお休みなさいませ。また、ここいらの観光の時はご一緒しますよ」


「ぜひ、お願いします」

「おねがいしましゅ」


今日は1本です~

お星さま★お願いします♪

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