105【リアル恐竜図鑑走る】
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「おはようございます殿下」
「しっ」
「失礼しましたシュンスケ様」
朝起きて、チェックアウトをしにカウンターへ行く。
「おはようございます。あの、俺達今からスブルグ辺境伯領都を目指すんですけど、急ぎの依頼はありますか?」
「丁度良かったです。それなら、シュバイツ殿下のエリクサーをドミニク卿からスブルグ辺境伯領都に持っていく依頼がありまして。もしまだ手持ちもありましたら足してほしいのです。ランクはCなんですが、急いでいまして」
「何かあったのですか?」
「魔物が沢山出てるそうなんです」
と言いながら、受付嬢がスブルグ辺境伯領地の地図を出す。
「ここが、このギルドの町で、ここに橋の落ちた河が流れています」
「はい」
「そして、この領都の向こうの国境の手前で魔物が発生しているそうで、怪我人が領都に運ばれているのですが、医薬品が不足してるそうです。橋も落ちてしまってますし上流を行く隊にもエリクサーの半分と、上級ポーションを持って向かっているのですが、かなり遠回りになっておりまして、怪我によっては間に合わないかもと」
「そりゃ大変だ、すぐ行きましょう」
「お願いしたいのですが、その子も連れていくのですか?」
マツを不安そうに見る。
「ええ、問題ありませんよ。置いていくわけにもいきませんしね」
「では、依頼の書類と荷物はこれです」
そうして小さな袋をみると、確かに見覚えのあるガラスの小瓶。二十本ほどのエリクサーだった。
「このギルドには、備蓄しているこれ有りますか?」
「いえ、備蓄分を上流組に渡しているのです」
「じゃあ、これは置いておいてください。俺の手持ちを持っていきましょう」
「助かります」
“黄色ちゃん、領都の怪我人とその向こうの魔物の情報をおねがい”
“りょうかい・・・わ、けがにんはきょうかいにいっぱいいる。べっどたりない、ぎるどでねてるひともいる。まものは、えと、えと、でっかいとかげがいっぱぁい”
「まじか」
「おうじ?だいじょぶ?」
振り向くと、マツが青白い顔でいる。
「俺は大丈夫だけど、どうする?いったんポリゴンに戻るか?」
「やだ」
「よし、じゃあ空から行こう。地竜は飛べないからな。飛べても低いし」
「うん!」
受付嬢が外まで見送ってくれながらギルドを出たところでボヌーさんが立ってた。
「シュンスケが行くのか?」
「はい。俺なら一飛びですしね!」
ボヌーさんはきょろきょろしている。
「しかし昨日みたいな馬じゃ無理だぜ・・・ってあの白い馬は何処なんだ?」
「ああ、今から出てきますよ。ハロルド」
『はーい』
「ああ、ハロルド様」
受付嬢がハロルドに手を合わせている。
「ハロルド様?たしがに凄くきれいな白馬だが。手を合わすってなんだ?」
何があるか分からないので、ゼッケンは付けずに、手綱だけ状態のハロルドにマツを抱えて乗る。
「では行ってきます。マツしっかりつかまってね」
「あい」
「じゃあ、ボヌーさんまた!行ってきます!」
「よろしくお願いします」
『じゃあ、最初から飛ぶよ』
「白馬に角が」
バサッ
「は、羽根が」
「ああ、本当にペガコーンのお姿が」
「・・・と言うことはあの子供は」
高らかに蹄をしばらく響かせて真っ白なペガコーンが飛びたつ。
『どっちを先に行く?』
「うーん、ちらりと地竜を見てから領都だな」
『了解。黄色ちゃん場所教えてね』
“はーい、こっちー”
ハロルドの急上昇に合わせて、マツの鼓膜を守るためにすこし聖属性魔法をかけてやりながら、綿の入った上着を着せる。
「ごめん、着ておけばよかったね」
「王子があったかいからへいき」
と言いながらしがみ付くトラ猫。俺もあったかいけどね。
ちょっとふるえてる。
彼女の負担を軽くするために、魔力を吸い出し続ける、種族変更の魔道具を外しておいてやる。
陸路だと二日かかる道を二時間で到達する。領都が見えてきた。
「キュアちゃん先に教会ひとりで行ける?」
“うーん”
“きょうかいのしさいは、せいれいつかいよ。わたしがつれてく”
青色ちゃんが名乗り出てくれた。
“じゃいく”
「よし!たのんだよ」
“がんばる”
“あたしも、きょうかいで、まってるから!”
もちろん黄色ちゃんも協力します。
“うん”
“もちろんおれも、がんばるぜ”
白色君も軽症の治療は得意だ。
『みんな頑張って』
ハロルドの激励を受けてみんなが消える。
キュアちゃん、すっかりしっかりしちゃって・・・
思わず娘の成長にパパは胸がいっぱいに・・・ってそれどころじゃないね。
領都らしい建物が密集したところを超えると、また街道沿いにしか木がない、まばらな草原みたいになってきた。
・・・そこになんだ?芋虫の行列みたいなうごめく帯が。
『うわーこりゃヤバイ』
ハロルドが叫ぶ
「これは・・・」
小さいころに保育園や小学校の図書館で見た恐竜の図鑑の表紙のような、色々な恐竜が二頭から六頭の幅で行列を作って歩いている。歩いているやつはひっくるめて地竜と言われている。それに低空だが飛んでるやつもいる。たぶんそっちは飛竜と言われているが、長距離や高いところを飛べる種類ではない。それらが北の方から南へ進んでいる。
街道の辺りでは人間が防戦している。こんなところで一時的にやっつけても列は彼方まで続いているんだけど、空から見えないんじゃその様子は分からないか。
それにこれは地竜のスタンピートじゃないのか。
やばすぎるだろう。
北の方で何があるのか、地竜たちも何かから逃げ出しているのか。
「はろるど、あの子達と話しできる?」
『ぱにっくになってるっぽいから無理かも、でもみんな〈やばいやばい〉って言いながら歩いてる』
「たしかに聞こえているけど、北の方で何かあるんだろうね。とりあえずそのことを言いに街道の冒険者と、あれは辺境伯の兵士かな?に言いに行こうか」
『うん』
説得しやすいように、変身を解く。
兵士たちに認識できそうなぐらいに高度を下げていく。
「おーい、みなさーん」
「あ、あれは、ペガサス?いや角が」
「あれはハロルド様だよ。と言うことは騎乗しているのはシュバイツ殿下」
よかった、こういう時は俺の姿を知ってくれてる方が話しやすい。
「怪我人はいますか?」
「そこのテントに何人か」
ハロルドを下りて、ちょっと良い装備の人に掛け寄る。多分リーダーだろう。
「ポーション類をお届けに来たんです」
「ああ、たすかります。おい、殿下から誰か受け取ってくれ」
「はっ」
とりあえず巾着を一つ渡す。
「えっと、あなたは」
プレートアーマーを着てヘルメットは背中にぶら下げている。ボヌーに少し似た濃い灰色の髪に青い目の男性。狼ミックスだね。
「私はスブルグ辺境伯領の私兵長のロイエです、ロードランダ王国のシュバイツ王子でいらっしゃいますか」
「そうです。あの、大変言いにくいんですけど、今空から見てて、このアースドラゴンの列はもっと十キロ近く北の方まで続いています。なので、一旦ひいてもらって、俺が原因を見てきます」
「なんとそんなに」
「どうするんだ」「十キロって」
「静かにしろお前ら。
わかりました。ご協力ありがとうございます。
お前たち一旦引け」
「おーいひけー」
「「「はっ」」」
兵士が手を止めても恐竜たちの動きは止まらない。まっすぐ南に向かっている。
このずっと先は海だよな。
“なあ海はどうなってる?”
“せんとうは、まだまだうみにたどりつかない”
「南の方に村や町はありますか?」
兵士と精霊に同時に聞く。
“村はあるけど人はいない”
「避難は完了しているはずです」
「わかりました、ありがとう」
“黄色ちゃんもありがと”
「ロイエさん、ここは俺が対処しますので、元気な人でエリクサーと、もう少し軽症用の薬をお渡しするので、領都へ」
と言ってさっきより少し大きな袋にエリクサーの瓶を詰めて渡す。依頼のあった二十本よりもっと沢山。他にはギルドから預かっている中級ポーションを。
「はっ。ありがとうございます」
「マツは、ハロルドに乗ってて」
「あい」
手綱をマツの体に少し巻き付けておく、
『僕といようね』
「うん、はろるど」
モフモフの鬣に抱き着いてらっしゃいます。
ハロルドは、飛竜が届かない程度の空中で浮いている。
「よし」
今度は自分の翅で飛ぶ。
まずは海に向かってる先頭の子から。
パニックが治まればと緩く聖属性魔法を振りかけながら南へ行く。
すこしスピードが落ちてきたけど、止めちゃうと重なって行って逆効果だからな。
“クインビー手伝ってー”
空中でアナザーワールドを開けて頼りになる女王バチを呼ぶ。
『お呼び?あら、すごい集団ね』
「あの子達の先頭を誘導できる?ちょっと蛇行させてさ、スピードを落としたいんだ」
『なるほど、それならもう一度ドアを開けて』
「うん」
もう一度アナザーワールドを開けると、沢山の蜜蜂が出てきた。
『みんなでやりますわ』
「たのんだよ」
クインビー達の誘導で、恐竜の列が、テーマパークの人気アトラクションの列のように極端な蛇行を始める。これなら時間が稼げるか。みんなが海に飛び込んで行ってしまうのだけは塞ぎたい。
俺は恐竜たちに魔法を振りかけながら北へ向かう、途中で一体の飛竜に呼びかける。
最近身に着けたハロルドのスキル。離れてても使えるようになったんだよね。
『ねえねえ、どうしたの?』
『悪魔が、出たんだ』
『君たち沢山のアースドラゴンが逃げ出すような?』
『あれはとんでもないぞ』
地面を歩いていたトリケラトプスっぽい地竜が話に加わってくる。
『女の悪魔だ』
学園ではさらりとしか習わなかった単語。
しかしこれから行くもう一つの世界樹の地域には、悪魔と言われる存在がいるそうだ。
とりあえず見に行って来ようかな。
パタパタと跳んで魔法を振りかけながら北へ行く。
地竜の動きが緩やかになってきている。
『なあ、君たちとりあえずおれのアナザーワールドに行かないか?』
あそこなら今は精霊ちゃんしかいないし。
『避難ってことだな』
結構話が通じるじゃん。
『ああ』
『頼みたいぜ、そこは水とかあるか』
『ある。じゃあ』
と言って、俺はもう一度クインビーのところに瞬間移動する。
「クインビー」
『あら、もう戻ってきた』
「この子たちを一旦アナザーワールドに引き取ろうかと」
『分かったわ、誘導してあげる』
「たのむよ」
といって、今回はドアではなく四角いよこに扉の無いゲート状の穴を開ける。
今、俺のアナザーワールドはおよそガスマニア帝国ぐらいの広さがある。このぐらいのアースドラゴンなら余裕で過ごせるだろう。
『みんな、こちらへいらっしゃい』
『わあ、お花畑がある』
『美味しそうな草だ』
“肉食の子はどうしよう”
“多少は犠牲になるんじゃない?この子たち同士で”
“それはしょうがないよね”
俺は向きを戻し、また地竜の列に沿って北上していく。
だんだん、怪我している子とか、疲れた様子の地竜が増えていく。
『もうちょっとだ、頑張れ』といいながら、治癒魔法を発動しながら地竜たちを励ましていく。
そうして、七キロぐらい過ぎたところで途中から、違うものの列に変わっていく。
「ううっ」
「助けて、痛いよ」
傷ついて苦しんでいる地竜たちの列。
「がんばれ、助けに来たよ」
「助かった?」
「ああ、治してあげる」
そして死体の列に。
もう、苦しんで居る声さえ聞こえていない・・・。
「間に合わなくてごめん」
近くに魔法で穴を造りながらそこに魔法で動かしながらそうっと埋めていく。
ああ、中には小竜をかばいながらも一緒に倒れている恐竜もいる。親子かな。
涙が出そうになるのを堪える。そんなことは後だ。
そうして、俺の前に現れたのは圧倒的な威圧を振りまきながら頭に大山羊のようなねじれた角を生やし、耳の下まで続く口をせわしなく動かす、三メートルほどある大きな女だった。
お星さま★お願いします♪
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