101【新しい旅立ち】
いよいよ第三章です。
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俺は、田中駿介 二十歳まで後五カ月ちょっと。
東京都の某市で生まれ育ち、大学生になる前のクリスマスイブに、母さんの目の前で、異世界転移をしてしまった。
転移したところは、ゼポロという創造神が作られた世界で、神様はゼポロ以外に主だった神様が六柱おられて(実はもう一柱いらっしゃる)
地球や日本とは似通っているところと全然違う部分が混在した、中世西洋風の国だった。
この世界で今現在一番歴史のある国の建国王つまり初代国王にして在位316年目のハイエルフのブランネージュ フォン ロードランダの息子にして、風の女神ローダ神を母に持ち、創造神ゼポロの孫だという事を納得させられてしまった(まだ少し疑ってる)。
まだまだ、自分は日本人だという感覚なんだけどな。もともとこっちの人だったみたい・・・。いや、生まれは東京だったはず。
それに俺は、ハイエルフの父さんのもともとの種族の方の〈精霊〉の方を引き継いでいるらしい。
というわけで、この世界の、ガスマニア帝国に転移して二度目の正月を過ぎた俺の現在のステータス。
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シュバイツ フォン ロードランダ〈田中駿介〉
種族 スピリッツゴッド 十九歳〈六才〉
ロードランダ国王子
冒険者 ランクA ウリアゴパーティ
レベル 八〇〇
生命力 一八三〇
体力 二五九三六
魔力 四五〇〇〇〇
魔法基本属性 全属性
魔法特殊属性 全属性
スキル魔法 空間・錬金・鑑定・精霊・変身
その他スキル 算術・剣術・弓術・投擲・料理・裁縫・癒し・音楽・治癒・素描、潜水、ペガコーンの主、世界樹
称号:白鯨の盟友
風の女神の加護
水の女神の加護
海と宇宙の神の加護
大地の女神の加護
太陽と創造神の加護
月と魂の神の加護
火と文明の神の加護
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「まあ、人じゃないしな。この数字でAランクのままなのは俺の抵抗って言うか、お前の安全のためだな、お父上でも納得してくれるだろう」
ポリゴン町の冒険者ギルドのギルマスのドミニク卿の執務室で、翅や耳を伸ばした状態でメインのステータス測定器に手を当て、現状を確認させられた。
「あのー、神様の加護半分ぐらい隠せませんか?」
「むりだ」
「だって、全部いてたら目立つじゃないですか」
「やってみたけど弾かれた。俺もギルマス特権でこの魔道具のどこを触れるかどうかはやってみないと分からんのだ。まあ、神様辺りのおかげだろう。
大丈夫だ、お前の名前の時点で目立ってるから、最後まで見やしないぜ誰も。
ほらっ」
手にバシッと置かれた。
「おおう」問題はやっぱり名前かも
年が明けて元日、俺は教会で風の女神様とたくさんの神様の姿を見たことで勇気をもらい、そのままポリゴン町に転移したが、旅に向けて、小細工をお願いしたステータス確認が逆効果になって全部表示されてしまった。
でも、目的地のトルネキ王国へは、ポリゴン町の街道の先から陸続きでつながっているのだ。
ダンテ殿下は、セイレンヌアイランドを中継して、高速魔道フェリーで行ったそうだが、陸続きだし、まっすぐ行った方が近いはず。
冬の初めに完成した、リンゴの木のある家で、クリスのお母さんに準備を手伝ってもらっていた。
「この林檎ジャム持って行ってね」
「ありがとう」
大量の着替えやタオル類、塩や香辛料、シュバイツ印の蜂蜜、蜜蝋のリップクリームも持たされた。そして、食糧と食料。
アナザーワールドはしばらく小さい精霊ちゃんだけにいててもらって、この家にスフィンクスをガードマン代わりに置く。まあ、彼は出入り自由なんだよね、アナザーワールドの方も。
クリスは王都の屋敷で、冬休みの課題に取り組みながら王城にも通って侍従の仕事を仕込まれ中。
「一緒に行けずにすまんな。次の機会までにレベル上げとくわ」
ウリサはそういうけど、ウリサも含めたゴダの三人の妹従弟冒険者パーティーを守ってほしいし。レベルが上がるような冒険活動は、危険な依頼ってことなんだから積極的にこなすのはやめてほしいぜ。
「ありがとう、ちょいちょい帰って来るはずだから。何かあったら精霊ちゃん経由で連絡して」
すっかり基本的な精霊魔法と黄色ちゃんでの声のやり取りをマスターしたウリサは人間族の中でも精霊魔法使いとしても一人前だ。俺の自慢の兄ちゃんだ。
学校の方は、あっちに落ち着いたら連絡して、カリキュラムの確認と試験をしに帰ると。出席日数不足は目をつぶってもらって、課題提出でこなすことになった。通信教育式だな。
ウリアゴと初めて出会った街道に続く門でみんなが送ってくれた。わざわざ、ボルドー殿下とセイラード殿下まで。まあ帝都にある俺の屋敷の転移扉を使ったらしいからすぐ帰れるんだけどね。
俺はハロルドに乗って、手を振りながら門を離れパカパカと街道を進む。
寒いからほとんどの動物は冬眠でもしているのか出てこなさそう。これは精霊ちゃん達の情報だ。
初めて来た時よりは若干枯れている、冬だからな。それでもロードランダ王国よりはかなり穏やかだ。
キンと冷えて澄んだ風が顔をかすめていく。
「寒くないか?」
俺には今回始めにこなすべきミッションがある。
俺の腹に張り付いている猫耳がいっぴ・・一人。
「まっちゃん」
「むにゃあったかい~おうじぃ」
おかげで、温いんだけどね。
オムツが外れたばかりの、小さかった猫人族のまつも、もうすぐ五歳です。俺との差が縮んできた。とおもいきや、案外まだ小さい。もしかして小さめの種族かな。
改めて鑑定しちゃってるんだけど、マツは本当はいいところのお嬢さん。見た目は猫人族に見えるんだけど、他にもミックスが入ってる。ミックスの先が分からない?
ご実家は東の方にあるらしい。
マツの名前は、マチューラ フォン ケティー嬢。うん、立派なフルネームだ。
もし、ご実家が見つかって、そこにいることの方がマツに幸せだと判断したなら、一度、転移魔法でドミニクに相談して、手続きをすることになっている。
そのために俺のアイテムボックスには、マツのお嬢様仕様の服も沢山入っている。
「どうして、まっちゃんは俺のことを王子って呼ぶの?」
「しゅんしゅけ、とかしゅばいちゅとか、いいにくい」
たしかに、キュアちゃんみたいだな。まだ舌足らずだね。
「はじめは、えほんの、おうじさまに、にてたから」
「え?孤児院にあった本でしょ?あれは金(黄)髪で青い目に塗ってたじゃない」
「いろじゃなくて、えーとえーと、ふいんき」
「雰囲気?」
「でも、まちゅのかんは、あたってたね。ほんとうに、おうじさまだったから」
「ははは、そうだね」
舌足らずながらも、マツのおしゃべりは達者だ。歳のわりに?頭の回転も良いところを感じてびっくりする。
周りの大人は、
「子供は急に大人になるときがあるのよ」
とか言うけどね。急に子供になった俺としては複雑なセリフだ。
だが、今回間違われないように、マツにもドミニクによる隠蔽された身分証と人間族に変わる魔道具が首に掛けられている。
俺たちはどうみても、他人だが、どちらも人間族にすればギリ兄妹に見えるだろう。
ドミニクは始めは
「ケティー家を見つけたら、転移で教えてくれ」
と言ってたんだけど
「まちゅもいく」
って言いだして、じゃあってことになった。わがまま言わない子なんだけどな。
孤児院も人手不足だしな、一人でも減った方が良いのか・・・それとも、父さんが俺に言ったように、マツにも可愛い子には…のつもりなのか。女の子は当てはまらないのでは。可愛いから危ないし。
はじめ一緒に行きたがってたクリスが渋い顔になっていた。でも俺も二人引率は無理だから!
まあいいや、カイロ代わりの連れがいて困ることはないようん。
いざとなれば、スフィンクスを戻して、アナザーワールドでいてもらえばいいんだからね。
しばらく街道を行くと、草原がまばらになり、土で固めたような建物が増えていく。
『そろそろ、最初の街かな』
ハロルドがつぶやく。
「そうだね」
いくつかの村は通り抜けたので、次の大きな街で一泊の予定。
俺は人間族状態をスマホで再確認して、マツの姿も変えさせる。マツも獣人のわりに、貴族の血筋だからか、割と魔力が多い。得意なのは風魔法だ。黄色ちゃんだけは見えている。他の子も存在は感じるらしいから、将来楽しみだよね、そして闇属性もお持ちだ。
基本今回の旅は、冒険者ギルドのはしごで行く。その方が何かと安全だからね。
「マツ、最初の街に入るよ、ここからは俺のことは」
「わかってるよ、おにいちゃん」
「よし、いいこ」
猫耳が引っ込んだ頭を撫でる。
最初の街はガスマニア帝国のラズラン領の領都ラズラン。可愛い響きの地名だぜ。
バジャー子爵領地ぐらいの規模だな。だから村は他にもあるけど、街はここだけ。
かなり手間でハロルドを下りて、ゼッケンを片付けて、俺の中に仕舞う。
「じゃあちょっと歩くね」
「うん」
手を繋いで、六才児二年目ともうすぐ五歳児が歩く。
あ、このままじゃ身分証出したら入りにくいか。耳だけエルフにしておく。
街の入り口の門で当番の冒険者が声をかけてきた。門の当番は専用のゼッケンを付けるから出入りの冒険者とは区別が付く。
「おい、子供が二人で何処から来たんだ?」
「俺たちはポリゴン町からきました。あ、ヤッキーさん」
ほかの冒険者の対応をしていたもう一人の当番がこっちを見る。
「お、シュンスケじゃん」
「こんにちは」
「その子も見たことあるな、いつもはこういう」
と言って猫耳のジェスチャーをすると、マツもにっこり頷く。
隣町だからね、顔見知りもいるさ。
「おい、俺はこの子を冒険者ギルドに連れて行ってから戻るから、ちょっと一人でやってて」
「ああ、わかった」
「お手数かけます」
「いいっていいって」
ヤッキーさんはポリゴン町でもウリサ兄さんとよくギルドで話していたDランクの人。
俺から見たらベテランさんだ。
そのままマツを真ん中に手を繋ぐ。
初めてこの世界に来た時を思い出すな。
冒険者は小さい子を保護するように言われてるんだよね。
結局いつもの顔で門をパス出来ちゃった。緩くてよい。
「元旦はすごかったな―」
「聴いてくださったんですか?」
「ああ、そのためにポリゴンにいたんだよ」
「しゅばいちゅおうじの、うたはしゅごいの」
「そうだな、そうなんだよ。
この街のラズラン領主の息子さんが、耳が不自由になっててね、ダメもとでもって、元旦にポリゴンに行ったんだ。それの護衛も兼ねてね」
「で、どうでした?」
「ちょっと聞こえるようになったみたいだけど、来年も行けたらなおるだろうって、助祭の話だった」
ああ、結構広範囲に撒いたから薄くしたんだよな〜。あんまりやりすぎるとお医者さんから苦情が出るらしいからね。
「その方はお医者さんには?」
「お前さんに頼るぐらいだから匙投げられているんだろう」
「そうですか。もし明日チェックアウトまでにギルドに来てもらえれば」
「そうだな!言ってみるよ」
「コッソリお願いしますね」
「もちろん。あ、ここだぜ」
この世界共通の冒険者ギルドのピクトグラムは剣と盾。そのマークが張り付いた建物のドアをくぐる。
「あ、ヤッキーさん、ちょうどよかった、ご指名ですよ」
ヤッキーさんは、入ってすぐのところに立ってた職員の人に声を掛けられている。
姉御って感じの人を指し示して。
「どうしたんです?ギルマス」
この人がラズラン領都の冒険者ギルドマスターだね。カッコいい女性だ。
「弟が今朝、倒れてしまって、意識がちょっと・・・今すぐ帝都に」
「そりゃ大変だ。だけど丁度良かったよ、ほら」
ようやくギルマスさんが俺達を認識してくれた。
「君たちは?」
「ポリゴン町から来ました、俺はこう見えて冒険者のシュンスケと言います」
「シュンスケ?君が」
「そうだよ、この子だよ、去年の元旦は直接ポリゴン町の教会で」
「そうか、それはありがたい。
コホン
私はここのギルマスをしております、アウラって言います。元旦は殿下のおかげで少し楽になったようなんですが」
この人も、家名はこの街と同じ〈ラズラン〉って鑑定に出ている。領主の家族かな?
「話し方は改めないでいいですよ。それよりすぐに連れて行ってください。ポーション(エリクサー)も持ってますし」
「わかった、こっちだ」
ギルドの馬小屋から一頭を出すアウラさんの隣に、俺も白馬状態のハロルドを出す。
「その子が噂の精霊のハロルド様か」
「ええ」
今はゼッケン無しで許してもらう。
『はやく乗って』
俺の中にいるハロルドはやり取りを聞いているから、説明不要だ。
俺は、再びマツを抱えて、浮遊して跨る。
「ではお願いします」
「いくよ」
そして、この地域で一番立派な建物を目指して駆け出す。
お星さま★お願いします♪
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