100【年末年始は中継で繋ぎます】第二章完結
地球の季節がずれているのを修正しました!
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二年生の年末休みに入った。
今年の年末は、去年とは違い、王都の森の魔物も大人しいそうだ。
まあ、ダンジョンの最下層はまだ卵なんで。
という事で俺はロードランダ王国のグローベスエルフェンス城にある広い広い自室でまったりしていた。今年は学園のブラズィード教授の協力の元、プランツさんとお正月に何やらすごいことをしてくれるらしいので、今年はロードランダ王国で年末年始を過ごしている。
ウリアゴは残念ながらポリゴンにいる。
クリスはお母さんや妹とリーニング伯爵のところに里帰り中だ。
おれは、歴史あるこのお城で・・・もっぱらチェンバロの練習をしている。部屋に一台持ち込まれて。もちろん大きな部屋だからなんとピアノもある。今だけ。
なんと今年年明けのミサをここでやるのだ。
ねえ、ここいらの教会の司祭や助祭はもともと歌ってるんじゃないの?なぜ俺が行くと聞かせてもらえず自分が歌うことになるんだろうか。
でもね、今回はちょっと違うらしい。
「ふわわぁー凄いー」
昨日初めて見せてもらったロードランダ王国の教会は、このお城のすぐ西隣の少し高いところにデーンと建っているのだ。ラーズベルトの国境を抜けて西に進んでいくとこのお城があるんだけど、そのさらに西に教会があるなんて、まだ見てなかったんだよね。
そして、その教会はここら辺一体の他の国々の教会の総本山となっていて。まあユグドラシル様が抱えている教会だもんね。座席の数も今まで見たところより何倍も沢山あって、三階席まであるという立体的な教会だった。それになによりびっくりするのは、神様の像が全部揃って立っていた。
元々カナス様は台座さえないんだけど、それ以外の七柱がみんな揃ってた。
月と魂のタナプス神と、火と文明のヘファイド神は初めて見るお姿だ。
こんなに沢山そろっている前で演奏するんだよ?
しかも父さんは
「パイプオルガンもあるけど」
「むり。そんな恐ろしい」
「そっか、チェンバロの方が駿介の顔が見れるからいいけどね」
ぐ、自滅。
「では、皆さんに見やすいようにちょっと背伸びしていいですか?」
いつまでたっても六歳だし(後二年?)指はオクターブ届かねーし
「いいよ」
ってなわけで、見た目十歳の状態で練習しております。
この教会では、助祭はいるけど司祭はいない。父さんがやるんだって。
だから、お揃いの白い聖職者の服が用意されていた。
俺のは何歳状態でも着れるよう、サイズ調節機能が付与されているけどな。
そして、今回もお正月なので金色のストラ。眩しいぜ。
まあ、王子の公務としてもよさそうだし。頑張りますよ。
晦日の夜から寝る時間をずらし、大晦日は昼過ぎには睡眠に入る。
暖炉では赤色くんが踊ってくれているけど、広い部屋で寝るのは寒いね。ガスマニアより北にあるし標高が高いし。って思ってたけど、気が付いたらちゃんと寝ていた。でもまた
「父さん、どうして?」
「おはよう抱き枕君。温かかったよ」
このひとは、ポリゴンの俺の部屋の寝床からこっち、隙あらば俺の布団に潜り込んでくる。
まあ、父さんの前はアリサだったけどな。
父さん、男の子はな六歳じゃあもう一人で寝るんだよ!
まあ、もうすぐそれも出来なくなるから甘んじて受け入れているがな、
あと二時間半で年が変わるタイミングで、大浴場に転移させられた。
ハロルドっていう先客がいたけど。
「なあ、父さん」
「なんだ?」
「ノームにもらったルビードラゴンなんだけどね」
「ああ」
「あの子はあのままでいいのかな」
「まだいいだろう。そのうちに中から合図があるよきっと。持って行ってやりなさい」
「わかった、父さんはあの子がどういうものか分かる?」
「噂のようなものしか分からない。あの子達はいつももっと、地下にいるはずだ。火山の近くの」
「そっか」ノームがくれたんだもんな。
父さんに聞いても、謎が深まるだけだな。
ザー
「そろそろ、出ようか。浸かりすぎるとまた疲れて寝ちゃうよ」
「だな」
しばらくバスローブで火照った体を落ち着かせる。
父さんも自室で支度中。
そして軽食を貰って、助祭の服を着ながら十歳サイズに。
あ、またすこし髪が伸びちゃった。テーブルのベルを鳴らすと隣の部屋からクリスがやってきた。今日は祖父さんたちも王都の屋敷だからな。
「ごめんクリス、髪を」
「大丈夫ですよ任せて」
右側の前から再度に掛けてちょっと編み込みを入れて後ろで縛る。鍵盤を弾くときは右側を縛るんだよ基本。
仕上げに金色のベルベットのリボンで後ろに括ってくれる。
髪の毛をまとめると、尖った耳が目立つけど、左側の前髪はちょっと降ろしているからマシかな。
白地にキラキラの白い地模様の入った助祭の服も着せてもらって、最後に金色のストラをきっちりかける。
変身はキャンセルしちゃってるから、どうしても翅が出ちゃうけどな。翅も光ってて、我ながら眩しすぎる。
「よし、男前に出来ましたよ。やっぱり六歳と十歳は違いますね」
二人で姿見の前に立つ。
そう、いつもほぼ同じ背の高さのクリスの頭が、おれの目のあたりに来ているのだ。
「こんなもんだろう」
コンコンコン
「駿介」
「はーい」
父さんが呼びに来た。
「うん、可愛いねじゃあ行こうか」
そう言って、父さんは俺の部屋のそこいらのドアを開ける。うん、やり方は俺と同じ。父さんも、日本でアニメに影響されて、この転移の仕方をするようになったんだってさ。親子で発想が同じってことだね。
神々の像が半円になってぐるりと囲んでいる舞台の中の、今回も風の女神さまの像の前にチェンバロは置いてある。風の魔法で少しでも遠くへいい音が届くようにそうなってるんだって。
舞台の真ん中ではおれの父さん、ブランネージュ フォン ロードランダ国王陛下が立つ。
わが父ながら神々しいぜ。
去年ポリゴンの司祭様がやったように、この世界の始まりの物語をダイジェストで語る。司祭とは違ってイケボが大聖堂に響く。
今日はこの父さんのお話が、これまで俺がかかわった地域の教会に中継されている。
スポットライトのように父さんの足元に大きな魔法陣が出来ている。これが中継の魔法かな。
ガスマニア帝国のポリゴン町、帝都、パジャー子爵領、そしてラーズベルト辺境伯領、そして、リーニング伯爵領などの教会にスリーディー中継されるんだって。魔法ってすごいね、そして、俺の演奏や歌もこの後中継されるのだ。
紅白とかゆく年くる年みたいだよね。
「では、音楽の奉納を」
父さんの言葉で、俺は鍵盤に手を置く。
去年お顔を見せていただいた、太陽と創造の神様ゼポロ神の歌から。
父さんの足元の魔法陣が俺の周りにももう一つできる。
~全知全能の父神様よ~
最初のフレーズで年をまたぐ
~この世界を作りたまいし~
~太陽の神よ~
~皆の御子の我々は~
歌いながら、今日も神様出てこないかな~なんて考えていると、
複数の台座がキラキラと光り出す。と、真っ白な像に少し色が入っていく。
降臨されているのだ。
この様子は上手くいけば各教会の台座とリンクするらしい。
おおお・・・
客席からのざわめきが。
俺には正面に見えているゼポロ神は薄っすら色が付いている。ムーさんみたいに。これは見える人と見えない人が居るかもな。
そして、その隣に初めて見る神様。順番では月と魂のタナプス神様。
男性だけど、父さんみたいな麗しい感じのお姿。でも色は大地の女神と似ているかな?黒い髪で袈裟ではないけれど、黒い合わせのお召し物。その方が少し微笑んで立っている。そして口が少し動いて、黄色ちゃんの風に乗ってお声が。
“いずれ月を一緒に見ようぞ”
なんか誘われた。
“わかりました”
その横を一つ置いて、麗しい叔母さまたち。大地の女神のアティママ神と水の女神のウンディーナ神の白い像が鮮やかな色に変わっていく、そして、風の女神がふわりと俺の横で凄く暖かいそよ風を纏う。
真っ白な像に色はつかないけどね。
“駿介、頑張ってるわね。後、数年待っててね”
“かあさん。かあさんは、頑張りすぎてない?いくら女神様でも、頑張りすぎちゃだめだよ”
“ふふふ、ありがと”
元気そうなメッセージに思わずニコニコしてしまう。まあ、社長さんでもシルバーウィークはあるよね。こっちに神気を送れたのかな。
そして俺の後ろで暑い気配が。
チェンバロを弾いたまま、エイっと見上げてみると、でっかいドワーフの姿の火と文明の神、ヘファイド神がニヤリと俺を見下ろしていた。
“今年は会えるじゃろ、楽しみじゃ”
・・・どこで?いつ?
七柱の神気を受け止めるのはきついなー。圧迫感が半端ない。これを聖属性魔法に変えて、いつものキラキラのラメが降りかかっている。今年は専用のキュアちゃんも一人いるしさ。そして、アメージングな歌を歌う。これがやっぱりなんか厳かでさ、教会に似合うと思うんだよね。なんだか奇跡も起こってるし。
“うりさがびっくりしてる”
“なにを?”
“ぽりごんちょうにも、きらきらきてるって”
“中継の魔法陣はすごいね~”
“かーりんからも、めっせーじきたぜ、ことしもよろしくってさ”
“せいらーども、はやくかえってこいっていってるぜ”
カーリンもセイラード殿下も赤色くんの担当だ。忙しいね。
でも、しばらくはセイラード殿下に会えないんだよな。
年明けの挨拶を音楽と歌でこなし、俺は明日旅立っていくのだ。じつは。
学園にも手続きをしてあるのさ。
まあ、何かあれば一瞬で戻って来るけどね。
これも修行だよ。王子として?
まあ、せっかく異世界に来たから色々見て回りたいじゃん。
そうして俺はこの世界での、二回目のお正月を迎えたのだった。
第二部 FIN です~
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