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93【懐かしい風景に似ている】

 ムカつく出会いもあったが、俺たちはオフ島の冒険者ギルドに立ち寄る。

 この世界の冒険者ギルドは、観光案内の代わりにもなってよい。銀行も兼ねているしね。


「お待たせしました、シュンスケ様、皆様、ようこそオフ島へ」

「「よろしくお願いします」」

 それにギルドの中は治外法権だから、さっきのヨットの人みたいな地域間のトラブルはない。中は。

「民芸品の街は地図で言うとこのあたりです」

「馬車で行けそうですか?」

「はい、ギルドのレンタル馬車はそちらです」

「ありがとうございます」


 ギルドの馬車乗り場に行くと、残念ながらみんな出払っているようだ。

 そのそばに、トリトン族のいかつい兄ちゃんが馬車の前で立っている。

「ギルドの馬車は残念ながらさっき最後のが出ちまったぜ。俺のに乗って行かないかい?」

 うーん、ギルドの馬車は冒険者割引きが利くんだよね。

 それにこの兄ちゃん耳にピアスのトリトン族なんだけど、鑑定では別の種族なんだよね、怖いなあ俺の鑑定。


「お兄さん、民芸品街まで幾らですか?」

 クリスが聞いてくれる。

 目的地までは十キロほど。普通の乗合馬車だとガスマニアでは一人大鉄貨一枚。日本人感覚だと五百円ワンコインぐらい。それでもバスに比べると高く感じるよね。

「一人頭中銀貨一枚(五千円)ずつだ。子供料金は設定していないぜ」

「「高っ!」」

 思わず俺とカルピンさんは素直に叫ぶ。

「あん?いやなら歩くんだな。ガキでも冒険者なら鍛えてるんだろう?」

 なんだろうこの島の人たちは、俺たちは民芸品を買えるのか・・・。


 ま、俺達にはとっておきの馬車があるからね。地図もあるし、精霊ちゃんのナビもあるしぃ。


「いいよ、お兄さんの馬車は高すぎるね。やっぱり自分の馬車にするよ」

「ああ、そうだな。お願いしましょう」

「ああ?自分の馬車?何処に持ってきてるんだよ」

 兄ちゃんは疑うような目を向ける。

「ここに」

 と言って、アイテムボックスから父さんにもらった、四人乗りのロードランダ王国の紋章入りの馬車を出す。今、手持ちの馬車はこれだけなんだよね。帝都のお屋敷にはもうちょっと大きいのはあるけど。

「なんじゃそのキラキラした馬車は。しかもその紋章はま、まさか」

 そう、それにこの馬車は王子が乗る様なので、無駄にキラキラしている。

「へえ、国王陛下が持たせたのかい?」

「そうなんですよ、今度もっと地味な普通のものを作らなくちゃね」

「そうだな、まあ、普段はいらないんだろ?」

 カルピンさんも俺のことを分かってくれてうれしいな。

「だから勿体なくてね」


 そしてハロルドを出して繋げる。

 『やった、また出番?』

「頼むよ」

 『任せて!』


「え?え?この馬どこから出てきた?」

「馬じゃないよ」

「これが馬に見えるなんてだいじょうぶか?」


「な、角が・・・羽根が・・・ま、まさか」


「兄ちゃん、いや、エルフ族のバダスさん。ご縁がなくて残念だよ」

「なぜおれの種族が分かった、それにどこで俺の本名を」

 鑑定で。あ、こいつ前科持ちじゃん。


「じゃあ、いつかロードランダで逢いましょう(帰ってこれないだろうけど)」

 そう言って、変身をキャンセルしてバダスの前をゆっくり歩き、キラキラの馬車に乗り込む。

 馭者はクリス。

「行くよ、シュバイツ王子殿下。さあ乗って」

 中から大きな声でカルピンさんが手を引っ張ってくれる。


「そ、そんな・・・あの方があの、ブランネージュ様の息子?」


 俺達は南国であった残念エルフを後に、民芸品街へ向かった。

「あいつらは一生故郷に帰れんだろうな。シュンスケに更に嫌われたらもうユグドラシル様にも嫌われるだろうな」

「ひょっとして帰ろうとして弾かれちゃったかもしれませんね」

 弾き飛ばすなら、葡萄の蔓は関係ないらしいし。

 怖い怖い。


「でも、そうやって不良なエルフが外で問題起こすのも良くないですよね」

「そうだな、ロードランダ王国やブランネージュ様の評判にかかわるかもしれないね」

「今度会った時に相談だな。父さんとユグドラシルとに」


「やれやれ、こんな暖かい南国で、自分の国のいやな部分を見ることになるなんてな」

 カルピンさんの眉間に少し皴が寄っちゃった。ごめんね。


「気分を変えて、民芸品ですよ」

「はい!」

「ああ!」


 ハロルドの馬車は急に長閑な風景の道に入る。今はまた普通の白馬に戻っている。でも馬車がキラキラだから目立ってるんだろうな。時々人がびっくりしてこっちを見ている。


 それにしても、目の前が一面美しい風景だ。

「なんだか、懐かしい風景だな」

「そうなのか?」

 日本人なら、都会っ子でも郷愁を誘う、一面グリーンの絨毯のような、田んぼの風景だ。

 南国だから、大陸では今は冬だけど、関係ないんだろうな。

 田んぼの縁では水がキラキラしている。あぜ道で一寸いびつだけど同じ形で区切られているのもきれい。きっと空撮にしてもいいだろうな。


 ただ、この田んぼは稲用ではない。今回の旅では米の仕入れも目的たが(それはミアに頼んだ)この田んぼの製品だ。鑑定ではちゃんと出ている。

 〈イ草〉やったぜ!畳表は生産されてるだろう!百歩譲ってゴザだ。


「楽しみ~」

「さっきとは打って変わって子供の顔だな」

「子供ですよ俺」

「まあそうなんだけどね」


 パカパカとリズミカルに馬車は進む。

 『そろそろ着くって黄色ちゃんが言ってるよ』

 “みえてきてるでしょ?”

「ほんとだ!あそこだね」


 ふわあ、なんか不思議な空間。二階建ての壁がくっつきあった建物が石畳の両側に並んでいる。まるでアーケードのない商店街だ。そして壁はくっつきあってるけど、一件ずつ色分けされていて、ビビッドでカラフルな街並みだ。

 これは、写真撮るよね。スマホを出してパシャパシャ。


「ねえ、地図に載ってる商業ギルドに行ってみようか。あそこなら馬車を出し入れできそうだし」

「そうだね」

 一応俺はシュバイツ印のブランド主なので商業ギルドにも本名で登録済みである。ドミニク卿の手続きで。ありがたいですね。


 『あ、あれだね、他のお店より入り口が広い』

「ほんとだちょっとロータリーになってるね」

「では、そこへおねがいします」

 『オッケー』


 馬車を前に止めたとたんに、中から商業ギルドのギルド長らしき人が出てきた。

 初老のセバスチャンのような物腰なのに目がギラギラしているのこの人は・・・人間族だねよかった。さっきからエルフ族不信になりかけてるからな。


「これはこれは、シュバイツ殿下。良くお越しくださいました」

 はあ、あの白タクならぬ白馬車のバダスのせいで大げさになったよね。まあ乗り心地はこっちの方が抜群なんでいいけどね。まあ本物以上の白馬車の方が立派なのは確かである。


「突然お騒がせして申し訳ありません、ギルド長」

「なんのなんの」

「あ、ちょっと待ってくださいね」

 といって、ハロルドと馬車を仕舞う。


「おお、消えてしまった」

「今の白い馬は?」

 沿道のギャラリーのつぶやき。

「あの方は馬ではありませんよ」

 さすが、商人の方々は正しい情報をお持ちだ。

 遠いところなんだけど。


 俺は大した買い物をするつもりはなかったのに、VIPルームに通されてしまった。

「父さんのお城の応接みたいだねえ」

「そうですね、もっとこの島らしい設えにしたらいいのに」

「ね、南国にロードランダ王国風は暑苦しいんじゃない?」

「殿下にクリス。大変いいですよ。その感覚は大変すばらしいですよ。大事にした方が良いです」


 やった、カリスマ建築士に褒めていただけました!


駿介「俺の見た目が印籠みたいになってるかも」

クリス「このお姿は目に入らぬか!ひかえおろー」

駿介「そのセリフは何処で?」

クリス「国王陛下から」

駿介「ですよねー」

ーーーーーーーーーー

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