第94話 イベントのイベント
≪イベントが開催されました≫
「さあ、スタートでござるよ!」
コヨミさんと二人、王都の街なかでベンチに座りながらシステムメッセージを聞く。ギルドホームにいると誰かが来た場合、待ち構える形になる。今回も見つからずにやりたいことがあった。結社の名に恥じぬようイベントに臨もう。
≪ポータルより参加者のホームへ移動可能となります≫
≪プレイヤーのみさなま、ぜひお楽しみください≫
「いくつかホームを見て回りますか?」
「そうしましょう!」
自分たちのホームで遊びを提供するにも、人がいなければ始まらない。少し時間を置く必要がある。
とりあえず、ベンチを離れてポータルに向かう。後のことも考え、コヨミさんとパーティを組んだ。生産を前面に押し出すイベントだが事前準備中に改めて、DAOの自由度を目の当たりにした。せっかくの機会と思い積極的に取り組みたい。
『むむ、我々のギルドホームが混雑表示でござる』
『……本当ですね』
プレイヤーが囲むポータルにアクセスしてイベントの追加項目を開くと、トップに所属ギルドが固定されていた。電波に似たマークが意外にも混雑を示す。
『前回のイベントで名前が売れて、注目を集めたのでしょう』
『なるほど』
思ったよりも影響は大きいらしい。ホームの一覧を混雑度でソートする。紅騎士団やいぶし銀などが上に並ぶのは納得だ。空いたときに忘れず見学へ行きたかった。
『緊張してきました』
たくさんの人に興味を持ってもらえるのは嬉しいけれど、心配が上回る。
『大丈夫でござるよ! 準備は万端! みなさまに楽しんでいただけるかと!』
『だといいですが』
前向きな姿勢はいつも心強い。自分のネガティブは重症なので短所を長所に、慎重派と言い換え役に立ちたいところ。
『この盛況さであれば、すぐ作戦に赴けるでござるな』
『そうですね』
一番に選んでくれた人たちだ。おもてなし、とまで大層じゃないが、ちょっとした驚きをプレゼントしに行こう。
ポータルを使いギルドホームへ移動する。拡張時当初から設置されていた簡素な門に立つと、多くのプレイヤーが目に入った。畑に空き地に、色々な場所で喧騒が聞こえてくる。
『まるで違うホームに来たような……』
『大所帯のギルドでは日常の光景でござろうか』
これだと、さすがに窮屈で気が休まらなかった。所属人数を増やしすぎるのも考えものだ。回復代行結社に入りたいと思う人がいるかはともかく。いらぬ心配か。
「ひっろいなー!」
「こんなん野菜も育て放題じゃん。うちなんて植木鉢だってのに」
「ザ・和風の建物はいいよなー」
「あっちは蔵? 色々あるんだな」
「なんで激長の列ができてんの?」
「知らね。まあ並んどくか」
耳に入る会話に疑問を覚えて蔵へ近づくと、確かに長い列が見えた。
『あれは人気、なんでしょうか』
『接触判定を有効にしたため、中へ入れる人数に限界があるのでござるな』
そういうことかと腑に落ちる。ホームではメンバー同士が戦闘訓練などを行えるようにか、接触やダメージの判定を細かに設定可能だった。接触判定の有効化は、今回の趣向に合わせた処置だ。
『ではでは、拙者が先陣を切らせていただきます!』
『よろしくお願いします』
蔵の方は放置で問題ない。まずは物陰に隠れてキュル助を呼び出す。
「キュル!」
透明になり人を避けながら建物へ急ぐ。入り口横の立て札を眺める集団にも気をつけ、管理者権限で設定を変更した。続けて説明書きの下に作った金具で揺れる木札をひっくり返し、休止中から実施中にする。
「イベント用の看板?」
「ホーム内での催しか」
「あれ、実施中になってね? さっきまで休止中だったのに」
《屋根の上に忍者が現れた》
「お?」
「なんだなんだ?」
「触手忍者がいる!」
ホーム内全体をカバーできるチャットを使うと、屋根に立つコヨミさんへ視線が集中する。
《忍者に攻撃を当てると記念品が贈られます》
《攻撃判定は建物前の立て札により付与が可能です》
《みなさま奮ってご参加ください》
記念品は彫金で作成したオリジナルのアイテム。特に使い道もなく喜ばれるか怪しいが、軽いアトラクション程度に考えてくれるとありがたい。
そして、自分の仕事もこれからだ。記念品の用意は四種類。透明化を利用し密かに配って回ろう。
◇
【DAO】イベント会場Part4【第三回】
24 名前:名無しの古代人
ホームは複数の部屋に分かれてなかったか
25 名前:名無しの古代人
始まってすぐに混雑とは
26 名前:名無しの古代人
上位ギルドは漏れなくだな
27 名前:名無しの古代人
妖精おじさんのとこも大人気
28 名前:名無しの古代人
乗り遅れた
実況まだ?
29 名前:名無しの古代人
おじのホーム広いね
30 名前:名無しの古代人
畑と森か
回復代行結社の名前にしては田舎丸出しだ
31 名前:名無しの古代人
隠れ家の雰囲気は出てる
32 名前:名無しの古代人
単純に作ってる途中でしょ
紅騎士団も城の一部があるだけだ
33 名前:名無しの古代人
いぶし銀のホームに来れたけど似た感じ
34 名前:名無しの古代人
拡張チケットで広くなった分の時間はかかる
35 名前:名無しの古代人
エンドコンテンツなとこあるし
36 名前:名無しの古代人
おじホームの蔵にでかい地図がある
どのエリアでしょうだってさ
37 名前:名無しの古代人
何その謎クイズ
38 名前:名無しの古代人
答えを書く紙と提出用の箱がある
抽選で記念品が当たるとか
39 名前:名無しの古代人
何それ欲しすぎる
40 名前:名無しの古代人
混雑の解消はよ
41 名前:名無しの古代人
一応滞在時間に制限はあるみたい
42 名前:名無しの古代人
予約もできるし
そのうち入れる
43 名前:名無しの古代人
おじホームで忍者イベント始まった
44 名前:名無しの古代人
何その楽しそうなやつ
45 名前:名無しの古代人
公式じゃなくてギルドで開催してるのか?
46 名前:名無しの古代人
マジかよ
参加したいんだが
47 名前:名無しの古代人
接触判定の確認があったから不思議だったけど
このためか
48 名前:名無しの古代人
紅騎士団はPvPイベント開いてる
49 名前:名無しの古代人
公式と別でやる発想は微塵もなかった
余裕のあるギルドは違うな
50 名前:名無しの古代人
いぶし銀もPvPだ
51 名前:名無しの古代人
生産メインのイベントなんだが?
52 名前:名無しの古代人
闘争だ闘争だ闘争だ!
53 名前:名無しの古代人
血の気が多くて助かる




