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社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。  作者: 七渕ハチ
第二章『回復代行結社でござる』

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第52話 回復代行結社

「……こんばんは」


「こんばんはでござる! 紅殿とはお知り合いだったのですか?」


「以前のイベントでフレンドになって以来の再会でした」


「なるほどなるほど」


 一体いつからいたのか気づけなかったが、神出鬼没も忍者のロールプレイか。


「紅騎士団と言えば有名どころのギルドでござるな。そこからのお誘いとは、さすがナカノ殿!」


 ほぼ全てのやり取りを認識済みだった。盗み聞きというより入ってくるタイミングを見計らっていたのだろう。


「お断りしてしまいましたが」


 さすがと言われてもピンとこないが、運良くイベントで一位を取ってしまったのだ。必死に否定するのも大げさな気がするし、もちろん自慢げにするのはもっと違った。


 キュル助の名前で参加したので、知っているのはコヨミさん一人のはず。紅さんが声をかけてくれたのは単純にフレンドのよしみか、もしくは回復要員に評価してくれたのか。


 ギルドへ入る以外に何か手伝いなどがあれば積極的に行いたかった。


「二回目のイベントが発表されましたからね。助力を仰ぎたかったのでしょう」


「イベント?」


「内容は前回と似たプレイヤー同士での対戦なのですが、ギルドで挑むところに違いがあります」


 初耳の情報だ。前回は運営から手紙が送られてきた。次からは公式サイトなりで確認する必要があるのかもしれない。


「ナカノ殿は参加するのでござるか?」


「そうですね……」


 イベント自体への参加は前向きだが、ギルドへの所属が必須なのはハードルが高い。紅さんが誘ってくれた訳も、ようやく理解できた。


「拙者は一度目のイベントを逃しています。今回はぜひ参加したいのですが、ひとつ問題が!」


 コヨミさんが心底困った様子で首を振る。


「ギルドに未所属のため参加資格がなくてですね。いやあ、忍者を求める奇特なギルドがどこかにあると、大助かりなのでござるが!」


 これは忍者を求めるギルドを探す、のではなく直接用意するよう訴えかけられていると見える。察するのは苦手だけれど、分かりやす過ぎる態度に意欲が湧いてきた。


「ギルドを作るのは難しいんですか?」


「いえいえ、そんなことはありませんよ。ナカノ殿にはこちらをお渡しいたしましょう」


 手渡されたのはチケットの形をしたアイテムだ。名称はギルド創設チケットという、まさしくなものだった。


「このアイテムは……」


「使用すればギルドの創設が完了します。ギルド管理局の建物で無料配布されているアイテムでござる。気にせずお使いください」


 用意周到とはこのこと。自ら作る選択肢はなかったのか。


「忍者は使われるのが本分。人の上に立つのは遠慮したいのですよ」


 ロールプレイも大変だ。面倒を押しつけられている気もするが、興味のままにギルド創設チケットを使用する。



≪ギルド名を入力してください≫



「ギルド名……」


 名前の入力に移るが急に言われても、すぐには思いつけない。


「回復魔法など、ナカノ殿らしさを表現するのはいかがです?」


 紅さんのギルドは騎士団だった。それに倣って回復魔法騎士団だと、いささか安直か。


「回復……屋?」


 自分なりに名付けようとしたところで、どこか間の抜けたものになってしまう。


 コヨミさんには静かに数度頷かれた。ぜひともアドバイスや参考意見を頂きたいのだが。


「プラスアルファの要素があると、よりギルドの印象が強くなりそうですね。お得意の、隠れながら他者へ回復を行う面を押し出すのはいかがでござる?」


「回復の支援や代行を行うギルド、ですか」


「そのまま回復支援屋か回復代行屋なんて名称も素敵ですよ」


 確かに回復屋よりは締まりが生まれた。ただ、あまり自分一人が目立っても仕方がない。イベントに参加するためのギルドだし、コヨミさんらしさも入れるべきだ。


「例えば忍者の場合、どんなギルドが似合うと思いますか?」


「世を忍ぶ秘密結社でござるな!」


 即答する程度にはギルドについて頭にあったようだ。しかし、回復代行屋の前に秘密結社を付けると名前が長くなる。せっかくなら、もう少しスマートに……。


「回復代行、結社はどうでしょう」


「よいかと!」


 頷きに加え拍手をされたので納得して入力する。これ以上考えても沼。自分のセンスには諦めが肝心だ。



≪ギルド回復代行結社を作成しました≫

≪メニューにギルドが追加されました≫



 あっさり作成が終わりメニューを開くと、新たに炎が揺らめくマークが並んでいた。


「作れたみたいです」


「それは僥倖! さてさて、これでナカノ殿はイベントへの参加資格を得たわけですが。実はひとつのギルドから参加できるのは最大五人なのですよ。つまり、ひとりでは戦力的に不十分。創設したばかりのギルドだと人を集めるのにさぞ苦労するでしょう。そこにフリーの忍者がいたらどうします? 忍者というのは、かゆいところに手が届く便利な存在。戦場で役立つこと間違いなしでござる!」


 腕を振っての力説を聞きつつギルド画面を操作する。勧誘の項目を見つけ、コヨミさんをターゲットして選んでみた。


「おお? 回復代行結社からの勧誘が!」


 ギルドのメンバー欄が二人に増える。現状パーティとの違いは分からないが、不思議とやる気は出てきた。


「ナカノ殿の期待、しかと受け取りました。イベントでの活躍はお任せください!」


「よろしくお願いします」

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[良い点] ネーミングセンス [気になる点] 五人参加でテイムモンスターの上限あるのかな [一言] いきなり大人数に飛び込むのは危険
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