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社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。  作者: 七渕ハチ
第一章『妖精おじさんがあらわれた。ただし、その姿は見えない』

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第41話 忍者流爆符術

「青い松明が続く地下道でござるか。秘密のにおいがしますね」


 放棄された忍びの地下道へ入り、気を引き締める。


「入口近辺で確認できたモンスターは下忍ゾンビだけでした。倒すと膝をついた後に爆発するので注意が必要です」


「爆発づいているでござるな。火薬は落とさないのですか?」


「残念ながら。爆符という名前の攻撃用アイテムは落としましたが」


「ほお! 興味を引かれるアイテムですね!」


 説明には呪符とあった。同タイプのアイテムを入手したときには知らせることにしよう。


「どうぞ、一度使ってみてください」


「かたじけない!」


 コヨミさんに爆符を渡す。自分は後ろで距離を取るため、敵に近づいて使用するアイテムは扱いづらい。ならば効果を実戦で試してもらうのが一番だ。


「トリガー、詠唱」



――シュンッ!



「トリガー、ヒール」


「回復はお任せしたでござる!」


「頑張ります」


 まずは先頭をお願いし、キュル助と後ろを歩いていると人影が見えてきた。


「出ましたね。あれが下忍ゾンビですか」


 興味深そうな声音で呟いた後にコヨミさんが走り出す。


「先手必勝でござる!」


 振るわれた短剣は綺麗に当たる。雫石と違って通常攻撃を避けないというのも違和感はあるが。結局ダメージになるのは同じ。雫石は分断の手段に使ってくださいと言われている気がした。


 一方のコヨミさんも、下忍ゾンビの錆びた短剣を用いた攻撃を受ける。スキルで避けないのは爆発に備えての判断だろう。


 相手の動きは遅い反面、攻撃の振り自体は体当たりなどに比べて早く見極めが難しい。


「トリガー、ヒール」


 コヨミさんの体力が半分減ってから魔導書のストックを解放する。回復行為でもターゲットを引きつけるのはイベント戦で経験済み。過剰な回復にならないよう注意だ。


「とどめでござる!」


 合図をくれる最後の一撃で、下忍ゾンビの体力がゼロになって膝をついた。


「瞬歩!」



――ボゴオン!



 一瞬で距離を取るスキルが発動した後に爆発が起こった。


「普通に下がるだけでは巻き込まれそうでござるな」


 横に姿を現したコヨミさんが、やれやれといった様子で首を振る。もし自分の身一つで戦うことになった場合には、仲良く爆死する未来しか見えなかった。


「個人的に色物の忍者だと感じますが、コヨミさんはどう思いますか?」


「拙者でも一見すると色物に思うでしょう。しかしですよ、ゾンビになってまで生に執着するのです。とにかく生き延びる姿勢は立派な忍者と評価したいでござる」


 少し気になり尋ねてみたところ、鎧を着るのと似た理由が返ってくる。ゾンビ状態を生きていると称するのには議論の余地があるけれど、忍者として受け入れられるようだ。


「それに爆発は芸術であり浪漫。忍者とは切っても切れない関係です。自ら命を絶つという点で自爆するのは問題ですが、せめて味方側についての情報を敵に与えない行動とみれば褒めることもできるでござるな」


 忍者と爆発か。確かに懐へ手を入れて爆弾を出すイメージはあるし、情報の秘匿で自爆するのは妥当な行いな気がしてきた。話を聞けば聞くほどに下忍ゾンビが真っ当な存在に思えてくるから不思議だ。


「来たでござるよ」


 再び現れた下忍ゾンビの数は一体。キュル助は横にいてもらい回復魔法をストックする。


「ふむ……拙者、いいアイデアを思いついたかもしれません」


 コヨミさんが分かりやすく手を叩いて、なんの意思表示か眉を数度動かした。


「まあ見ていてください」


 浮かんだ考えはさっぱりだがサポートのため、言われた通りに待機する。


 下忍ゾンビへ短剣が振るわれ、反撃に錆びた短剣が襲いくる。先ほどと同じ戦闘シーンは安心して見ていられた。


 キュル助よりも与えるダメージは多く回復も一度で事足りるほど。二体同時に戦っても相手ができそうだった。


「これで、どうなるかでござるな!」


 下忍ゾンビの体力が次の一撃でゼロになるタイミング。コヨミさんが急に走りながら戻ってくる。


「この距離なら大丈夫でしょうか」



――パアン!



 何が、と感じた疑問は破裂音でどこかへ飛んでいく。音の発生源は下忍ゾンビで身体の一部が燃えていた。そして、膝をつく姿で体力がゼロになったのが分かる。



――ボゴオン!



 すぐに爆発四散し戦闘が幕引きとなった。


「成功でござるな」


 新しい忍者のスキルだろうか。説明をもらえるとありがたいのだが。


「爆符を使ってみました!」


「あぁ……」


 なるほど、スキルではなくアイテムか。最後の攻撃を爆符で行ったのだ。数秒後に爆発する効果が距離を取る時間を稼いでくれるとは。


 まさか、ドロップ品が落とし主に役立つと思わなかった。一体目で様子を見て、二体目の下忍ゾンビに試すのはさすがだ。


「今のところ、拙者のほうにドロップの爆符は回ってきています。使って拾ってを繰り返せば比較的安全に対処が可能でござるな」


 キュル助に任せきりでは難しい戦法だけれど、コヨミさんだと忍者のスキルで緊急退避もできる。地下道の攻略に心強いことこの上なかった。

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