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社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。  作者: 七渕ハチ
第一章『妖精おじさんがあらわれた。ただし、その姿は見えない』

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第38話 沼地の星空を見上げて

 夕食後、休憩もそこそこにゲームへ戻る。すっかり暗くなった沼地はますます不気味さが増していた。


 ポータルの周りにはプレイヤーの姿がちらほら見える。二人組が沼に踏み入れて嬉しそうな声を上げる様子はどこか微笑ましかった。


 現実で汚れるわけではなくゲームなのだからと、自分も少しは気分を上げていこう。沼の前まで赴き子供が水たまりで遊ぶように泥を跳ねさせて歩く。静かにするより、こうやって大げさな方が不快感はなかった。


 傍からだと随分はしゃいで見えることだろう。さすがに羞恥心は現実同様でごまかしが利かない。大沼地に飛び出し静かな場所へ……!


「おっぷ!」


 向かおうとしたところで足が絡まる。派手に転んで泥の中へダイブしてしまった。


「……」


 はしゃいだらはしゃいだで、間抜けな格好になるのが自分らしさと受け入れる。むしろ、このまま大の字に仰向けになって空を見上げてみた。


 こんな沼地でも星々が輝く夜空は綺麗だ。欠けた月がまた風流と泥に浸かりながら思うことではないが。


 右足を上げて下ろし、左足を上げて下ろす。ゲームにログインしたのにやるのが泥遊びとは。それなりに楽しい気がするのは正しい感性なのかどうか。


 泥の風呂に入っていると小気味のいい音が鳴ってシステムメッセージが流れた。



≪コヨミから音声チャットのお誘いがあります≫



 突然の出来事に戸惑いつつ、コヨミさんの名前があったので承諾する。


『お、つながりましたね。こんばんはでござる、ナカノ殿!』


「あ、はい。こんばんは……」


 恥ずかしい姿は見せられないと急いで立ち上がり泥を振り払うが、周囲にコヨミさんはいなかった。


 なぜ、となる前にメッセージの内容を反芻する。つまりは離れた場所でも会話できるのが音声チャットと呼ばれるものなのか。


『先日はお世話になりました』


「こちらこそ、楽しい時間を過ごせてよかったです」


『叡智の沼地ですか。拙者の知らないエリアにいるのでござるね』


 今いるエリアが分かっているのは、やはり近くにいる? もしくは人工衛星のようなファンタジー要素度外視のシステムが?


『フレンド欄にて確認させていただきました』


 なるほど。フレンドには色々な機能が用意されているらしい。


「沼地には下忍ゾンビという名前のモンスターがいましたよ」


『おお! 一度お手合わせ願いたいでござるな!』


 コヨミさんが興味を持ってくれたのはありがたい。誘う口実はできた。わざわざ挨拶をくれたのだし、自然な流れを装い声掛けしてみよう。


「いる場所は地下道の通路なんですが、複数の下忍ゾンビが立ち塞がり一人では奥に進めず困っているところでした。よければ一緒に攻略しませんか?」


『もちろんでござる!』


 少し断りづらい言い方になってしまった気もするが、深く考えすぎても空回りしそうだった。余計な配慮は逆効果だ。


『して、どのエリアを経由すれば叡智の沼地へ行けるので?』


「始まりの村から行くのが一番近いと思います」


 ポータルの解放がまだなら歩いて向かわなければならない。案内と合わせて道中の洞窟で雫石の補給をすることにした。




 ◇




【DAO】総合スレPart148


912 名前:名無しの古代人

    そろそろメインクエストを制覇したプレイヤーが現れる頃か


913 名前:名無しの古代人

    そんな甘くないから


914 名前:名無しの古代人

    ネットゲーム舐めんなよ


915 名前:名無しの古代人

    レイド戦が合間に挟まれたり楽しく進めてはいるな


916 名前:名無しの古代人

    今はいいけど時間が経つと人が減るだろうに

    クリアすら難しくなりそう


917 名前:名無しの古代人

    サービス始まってすぐに考えることかよ


918 名前:名無しの古代人

    序盤のドクトカゲ・アビスならNPCの助けがあるぞ

    騎士団の連中がいたし


919 名前:名無しの古代人

    割と丁寧に作られてるんだな


920 名前:名無しの古代人

    クエストなんて無視で冒険しようぜ!


921 名前:名無しの古代人

    新しいエリアにはクエスト受けてりゃ行けるだろ


922 名前:名無しの古代人

    賑やかし的な場所もあるっちゃあるが


923 名前:名無しの古代人

    採取系のアイテム集めは寄り道必須だ


924 名前:名無しの古代人

    宝箱も設置されてたりな


925 名前:名無しの古代人

    そういや宝箱は全然見てねーわ

    メインのルート外を探索したご褒美で置いてんのか


926 名前:名無しの古代人

    でも寄り道で先に行けないとこはあった

    結局はクエスト関連で行くとかかな


927 名前:名無しの古代人

    見えない壁で遮られてるのは盛り下がり要素


928 名前:名無しの古代人

    壁じゃなくて深い沼があったんだよ

    首まで浸かって身動きが取れなくなった

    ポータルでの移動に気づけて助かったな


929 名前:名無しの古代人

    何それ怖すぎわろた(真顔)


930 名前:名無しの古代人

    急いで走ればワンチャン


931 名前:名無しの古代人

    失敗が怖くて試したくない


932 名前:名無しの古代人

    沼地は回避手段が手に入るまで後回しか


933 名前:名無しの古代人

    そういうのも含めて楽しいのが探索だ


934 名前:名無しの古代人

    沼にはしゃいで派手に転ぶプレイヤーを見れるのは今だけだぞ


935 名前:名無しの古代人

    そんなやつおらんやろ


936 名前:名無しの古代人

    ゲームとはいえ沼の感触は勘弁してほしい


937 名前:名無しの古代人

    沼大好き男ディスってんの?


938 名前:名無しの古代人

    真似して沼に寝転んで星空を眺めてみたけど悪くなかったな


939 名前:名無しの古代人

    沼に寝転ばず眺める星空のほうがマシなことに気づけ

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