第34話 水底の青い光
スライムは単純な体当たり攻撃のみで派手さはないが、防御力が高いのか倒すまでに時間がかかった。小さな炎の核石が無効化されたのとは逆に、効果抜群の攻撃手段が設定されている可能性はある。
キュル助が行うのはスライムと同様に物理的な体当たりだ。投擲アイテムを集めて様々な効果の攻撃を用意しておけば、サポートの幅が広がる。アイテムを投げる分には精神力の消費もなかった。
よくよく考えると回復魔法との相性はいい。コヨミさんへの情報提供が目的だったけれど、自分の愛用スキル候補になりそうだ。
洞窟内ではプレイヤーがまばらな影響かモンスターが二匹三匹と近くに集まっていることが多い。一匹にちょっかいを出すとタコ殴りになってしまうので、適度な透明化でやり過ごす。
地図を見つつ行ってない区域を埋めていくのは地味な作業ながら楽しかった。ゲームと言えば宝箱をイメージする身としては何かご褒美があると嬉しいのだが。
分かれ道が多くなり始めた頃に水が溜まる広間が前方に立ち塞がる。腰が浸かるどころか、しっかり潜れる深さだった。
少し戸惑うが川に入ってもすぐに乾いた。前向きにゲーム内での泳ぎを体験しよう。
服も脱がずにそのまま水の中に入る。動きづらさはあるが自由は利いた。肩まで浸かって微妙な冷たさを確認し、頭から潜る。
「……?」
自然と息を止めてしまったが、目を開けると痛みはなく視界も鮮明だ。もしかしたらと呼吸をすると普通にできる。ゲームで窒息など笑えないし当然か。
一方で泳ぐ速度は遅い気がする。水中でモンスターに出会うのは、おそらく危険。周りに気を配り安全を確保していると、水底に青い光をいくつか発見した。
深い場所に潜るのは初めてだ。不器用に手を動かし足を動かし、泳ぐというより沈みながら底へ向かった。
水面からは五メートルほどの深さになる。青い光が神秘的なものの、水の中では不思議と怖さを感じた。
光の正体を確かめるために手を伸ばす。
≪雫石を入手しました≫
何かあるとは思ったが、ムリネイ草と同じく道具なしに採取するタイプのアイテムだ。
【雫石】
『種類』使用アイテム
『説明』青く光る石
地面に設置すると周囲に回復効果のある霧を出す
この世ならざるものを眠りにいざなう
雫石を調べると説明に回復効果の記述があった。最後の意味深な表現は不穏だが嬉しいサプライズだ。
この世ならざるもの、と言われてもクエスチョンマークが浮かぶ。ゲームで考えた場合は死者に関連したモンスターのことだろうか。
この洞穴だけでも色々なアイテムが入手できるため楽しくなってきた。見える範囲の雫石を乱獲して水面に顔を出し、広間の向こう側に渡って地上へ上がった。
「ふぅ……」
肉体的な疲れはないはずなのに身体が重く感じる。緊張を伴う行動はゲームであっても伸びをしたくなった。
もっと先へ進みたい気持ちが強いので休憩には早い。前方にスライムが現れてドキリとするが、地上で良かったとキュル助に任せた。
「キュル!」
忘れずに回復魔法をストックし、手には雫石を握る。回復効果があるのなら試さない訳にはいかなかった。
スライムが体当たりを仕掛けてくると同時に投げる。雫石はキュル助の足元へ跳ねずに落ちて、薄い霧を周囲に漂わせ始めた。
ペットの画面を見ていると体力が1ずつ戻っていく。一気にではなく時間経過で回復するのか。
数値を横目に戦いを注視するが、待てずに魔導書の魔法を解放した。さすがに二発でやられてしまう状態では危うさが勝って我慢できない。使いどころが難しいアイテムだ。
≪キュル助のレベルが上昇しました≫
≪スライムの粘液を入手しました≫
スライムを倒すとキュル助が成長する。
【キュル助】
『レベル』 3
『体 力』54/54
『精神力』55/55
スキル熟練度と同じく比較的簡単に上がってくれると助かるのだが。モンスターとの戦いを見守るのは、調合台と向き合うのと違って時間がかかった。
小さな炎の核石と雫石を集めながら洞窟を進むと自然な光が差し込んできた。そこは外につながる場所でようやく脱出する。
しかし、洞窟を抜けた先は岩場に程遠い湿り気を含んだ地面だった。生命力がある木々や水が溜まった箇所などが散見されて厄介そうだ。
地図には叡智の沼地という名称が表示されている。期待通りとはいかないが、せっかく来たのだ。探索を続けてみよう。
どの方向に行くか右に左にふらふらしていると不自然に建つ人の像を見つけた。背中に羽が生えていて頭上に青い球体が光る。ポータルのオブジェクトだった。これでどこからでも自由に行き来できる。
とりあえず、新たなエリアにはたどり着けた。まずは沼地を根城にするモンスターと出会い、キュル助で敵うか調べるところからだ。




