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社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。  作者: 七渕ハチ
第一章『妖精おじさんがあらわれた。ただし、その姿は見えない』

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第30話 投擲ギルド

 今日も目覚めは良好で朝の用事に精を出していると、ふいに開けた窓からパンの甘い香りがした気がする。


 近くに小さなパン屋はあるが、さすがにここまで匂いが届くとは思えなかった。何度か足を運んで美味しさは覚えている。朝食を食べてなお身体が欲するとは、自分の壮健振りに驚きだ。


 ここでパン屋に行かないのは逆に不健康。やることを済ませて外に出た。


 家の近辺は地域密着型のスーパーにチェーン店のお弁当屋などが散らばっているため、暮らしやすくて助かっていた。少し行けば河川敷などの穏やかな風景もあり、ポテンシャルは中々高いと謎の目線で批評する。


 パン屋へは散歩気分になる前についた。たとえ看板がなくても漂う香りで何を売る店なのかが分かった。


 こじんまりした店内には多様な種類のパンが並ぶ。訪れた際は無難に食パンやフランスパンを買うことが多かったけれど、別のものに手を伸ばしたくなった。


 とはいえ定番どころに目が行くのが性分。選んだのはクロワッサンのサンドイッチだ。


 勝手にお洒落なイメージを持つクロワッサンだが、ここではベーコンにレタス、トマトに加えてタマゴとチーズまでが挟まれ、ボリューム感があった。


 一つでお腹が膨れそうなものの、これだけパンに囲まれると目移りする。デザート感覚に甘い系を選ぼうとして、結局はカレーパンを買ってしまった。この歳になってわんぱく具合が増したようで複雑な心境だ。


 店を出て寄り道せずに帰るとポストからチラシがはみ出していた。パッと見たところピザなどの出前関係がいくつかで、全て回収し家に入る。


 お昼ご飯は確保できた。チラシと共に机へ置いて、早速いつものDAOを始める。まずは王都のギルドをいくつか回って簡単にスキルを調べたい。


 そういえば王都もまだまだ行ってない場所ばかり。クエストで訪れる前に少しだけ観光の先取りだ。


 噴水広場にあるポータルを出発し、冒険者ギルド前で地図を開く。片手剣や両手剣、槍など近距離系の武器に関連したギルドが周囲には多かった。


 端から歩いて回っても同じエリアなので街並みは同じ。それぞれのギルドでは武器をモチーフにしたシンボルを掲げている。建物の外観に多少の違いはあれど、レンガや石造りとファンタジーに忠実なデザインだった。


 スキルは魔法と異なり秘伝書という名称のアイテムで覚えるらしい。分かりやすく統一化せずに特色を出すのは個人的に好感を持てた。


 しかしながら、単純にダメージアップのスキルがほとんど。愛用する魔導書のギルドは王都になく、本の角で殴ったりする特殊な攻撃はできない。備えに別の武器で何か覚えておくべきなのだろうが、それはキュル助頼りで行き詰まったときに考えよう。


 地図をさらに見ると魔法関連のギルドは火や水、風など属性ごとに存在した。精神力の余計な消費は回復魔法との兼ね合いが難しくなる。とりあえず別系統の魔法を覚えるにしても、熟練度がもう少し上がってからだ。


 王都で解放済みのポータルは噴水広場以外に、地下通りにある時計のオブジェクトだけ。そこへ移動後に近くのギルドを確認すると調合の他、投擲のギルドがあった。


 何かしら物を投げるタイプだと思うがイメージは薄い。スキル欄ではなぜか熟練度が1に伸びていた。


「投擲……」


 意識して使った覚えはなく、記憶を辿ってしばらく呆けるが無駄に終わる。素直に投擲ギルドへ向かうことにした。


 大穴の側に作られた柵を周って行くと、トタン風の建物が連なる場所に変わる。明らかにさびれた雰囲気だった。


 途中、短い通路に気づいて立ち止まる。地図を開くと投擲ギルドの名前が自分の位置とちょうど重なっていた。


 奥にはギルドで必ず掲げられるシンボルがある。砕けた岩の集合体が目玉のように見える奇妙なものだ。扉はなくトタン屋根の下をくぐって入った。


 他のギルドに比べて狭さを感じる。内装は外観とほぼ同じでカウンターが一つあるだけの簡素さ。プレイヤーも数えるほどでパッとしない印象だった。


 NPCに話を聞くと投げるタイプのアイテムを使った際に、投擲の熟練度に合わせて効果がアップすると教えられる。おそらく、キュル助をテイムする時の眠り玉で熟練度自体が上がったのか。つい先ほどのモヤモヤが晴れてスッとする。


 売られているのは秘伝書で投擲物に貫通効果を持たせたり、武器や所持金を投げることも可能だそう。投げっぱなしで返ってこないのなら金食い虫のスキルだ。さらには料理も投げつけられるようで罰当たり感があった。


「これは……?」



【レシピ:煙玉】

『素材1』骨粉

『素材2』火薬

『素材3』玉皮



 秘伝書が並んでいた中にあって見逃しかけた。こんなところにもレシピが売られていたなんて。


 煙玉で思い浮かぶのは忍者の名称だ。コヨミさんは存在を知っているのだろうか。


 レシピと合わせ、素材の玉皮が売っていたので購入する。いくつか作って実際に使ってみよう。透明とはまた違うが役に立ちそうだった。

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