表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。  作者: 七渕ハチ
第一章『妖精おじさんがあらわれた。ただし、その姿は見えない』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/152

第24話 どこにでもいてどこにもいない

「……」


 目が覚めて昼前なのをスマホで確認する。こんな時間の起床は久しぶりだった。


 ただ、休日だと気づいて安心する。たまにはゆっくり過ごす日があってもいいだろうと、言い訳しながらクセにならないよう気を付けたい。


 日課のあれこれを済ませて昼食を簡単に取った。特に二日酔いなどの症状はなく元気に満ち溢れている。ゲームのおかげもあって、すっかり精神的にも肉体的にも健康体だった。


 しばしの間落ち着いて、日課になろうとしているゲームを始める。定位置のベンチに座って何をするか考えていると目の前を多くのプレイヤーが行き交う。休日はゲーム内も賑やかだ。



≪運営よりお手紙が届きました≫



 システムメッセージに心当たりがあるため驚きはないが、ちょっとした期待はあった。


 手紙のタイトルはイベントについて。この度はとの文言から入り、ランキング一位おめでとうございますと祝いの言葉が続く。


 まさかの結果は昨日の夜に公式サイトで確認済み。自分でいいのかと申し訳なさがあったけれど、やはり嬉しさもあって遅くまでお酒と共に過ごしてしまった。


 読み進めた手紙には報酬に武器や防具、アイテム、魔法書にゲーム内通貨などの中からどれか選んだものもらえると書いてある。希望があれば特定のアイテムも可能らしいが、レアすぎる品は難しいのだそう。


 優柔不断な身としてはこれだと決めてくれた方が楽だった。事前に知っていればペンリルを頼んで無駄にゲーム機代を払わずに済んだかもしれない。


 今後も衝動的に欲しくなる何かが出てくる可能性はあった。返信の期限が書かれていないのを見て、とりあえず保留という少々ずるい手段を取る。急かされたらその時に考えよう。


「よし」


 気合を入れて立ち上がるも、することを決めていなかった。迷ったときにはクエストだ。回復魔法の熟練度を上げながら適当に進めていこう。


 地図を開いてマークを探す。一番目立つメインのクエストにピンを指して移動だ。


 階段を上がって回復魔法ギルドを越える。目的地までは馬に乗って坂道を走るのが早いみたいだが、歩きで各所にある階段をさらに上がっていく。


 場所が高くなるにつれて建物の質が豪華なものに変化する。一つ一つが大きく庭が備え付けられていたり、建物同士の間隔が広かったりと作り込みが見られた。


 鎧姿の銅像が建てられた広場に出て、城の雰囲気がある建物前にたどり着く。掲げられているのは剣と盾と女性のシルエットが組み合わさったシンボルで、複雑な書き込みが印象深かった。


 中に入ったエントランスには重々しさがある。色味が抑えられた様子は飾り気が少なく見える一方で、シャンデリアなど立派な装飾品も使われていた。メリハリのある空間には説得力のようなものを感じられるから不思議だ。


 ガイドに従い廊下を進んで本棚に囲まれた部屋に入る。奥に置かれた執務机では鎧を着た人物が作業中だった。


 話しかけると前置きに座りながら失礼と言われ、ここは由緒正しき騎士団の建物で国の為に日夜職務につとめていると簡単に紹介された。


 本題は近くの森で商隊が襲われた件だ。モンスターを利用して足止めしたのは手を焼く盗賊団で冒険者が撃退したものの、ひそかに重要な物資を奪われていたとのこと。


 森を抜けた先の坑道跡地に仮拠点を見つけた報告があり、調査隊に同行するよう頼まれた。自分が行く理由は現場に居合わせているため、何かの気づきを期待しているらしい。


 ストーリーの都合と言えばそれまでだが、理由には弱く裏で盗賊団の仲間だと疑われていてもおかしくない。断る選択肢は出なかったので会話を終えて出発だ。




 ◇




【DAO】幸運の妖精おじさんPart3


267 名前:名無しの古代人

    いつも回復ありがとうございます


268 名前:名無しの古代人

    今日も妖精さんに出会えませんでした

    残念です


269 名前:名無しの古代人

    初日に回復をもらったのは運が良かったんだな


270 名前:名無しの古代人

    明日はお願いします


271 名前:名無しの古代人

    がっつくのは悪手でしょう

    古来より物欲センサーなるものも存在するのですから


272 名前:名無しの古代人

    神はいつも見てくださっている


273 名前:名無しの古代人

    信じる者は救われるのだ


274 名前:名無しの古代人

    王都周辺が熱い気がする


275 名前:名無しの古代人

    ≫274

    神はどこにでもいてどこにもいない

    憶測を呼ぶ発言は慎むように


276 名前:名無しの古代人

    すいませんでした


277 名前:名無しの古代人

    何このスレ怖い

    イベントの一位が妖精おじさんだと聞いてきたんだけど


278 名前:名無しの古代人

    ≫277

    意味のない戯言だ


279 名前:名無しの古代人

    ≫277

    無粋な詮索はやめよう


280 名前:名無しの古代人

    神なのか妖精なのか

    どっちなんだい!


281 名前:名無しの古代人

    感じろ

    それが全てだ


282 名前:名無しの古代人

    そう

    我々はただ信じればいいのだ


283 名前:名無しの古代人

    回復を頂いた翌日に彼女ができました

    ありがとうございます


284 名前:名無しの古代人

    回復を頂いた翌日に尿管結石が出ました

    ありがとうございます


285 名前:名無しの古代人

    回復を頂いた翌日に宝くじが当たりました

    ありがとうございます


286 名前:名無しの古代人

    尿管結石は助かる

    神かよ


287 名前:名無しの古代人

    お前らのほうがよっぽどおじさんだというのがよく分かった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ