第16話 うなぎ風のり弁DX
ゲーム機を横に置いて伸びをする。調合に没頭していたらいつの間にか夜になっていた。
熟練度は70まで上がってマナポーション+2を作れるまでになった。マーケットでの売買を繰り返し、塵も積もればで所持金も少しは溜められた。
晩ご飯は手間をかけるか楽をするか。明日はイベントがあるし景気づけにと言い訳し、自分を甘やかす。そう毎日まともな人間になろうとしても疲れてしまう。
財布を手に家を出て向かうのは近くにある弁当屋だ。メニューを頭に浮かべて歩く道中は働いていた時の癒しだった。
のり弁が好きで一番頼むことが多い。からあげやチキン南蛮におろし竜田など、何を食べるか考えているとお腹が空いてきた。
だが、今日はあれにしようと決める。チェーン店でありながら店舗限定の商品だ。
弁当屋に入って、うなぎ風のり弁DXを注文する。三百八十円するのり弁に比べて六百八十円と少々値段は上がった。
待ち時間もそこそこに購入を済ませて上機嫌で帰宅する。飲み物を用意してテーブルで早速、いただきますをした。
弁当の中身はのり弁と言えばの白身魚のフライとちくわの磯辺あげに加え、蒲焼きになった白身魚がある。かなり身が柔らかく絡んだうなぎのタレが抜群だった。
のりの下は白ご飯とタレが染みたご飯に分かれた手間のかかりよう。いつものタルタルソースと白身魚の組み合わせも白ご飯で楽しめた。
定番のきんぴらごぼうと漬物はもちろんのこと、卵焼きは厚みのあるだし巻き卵になっている。満足感は十分だ。
さらに弁当の他、みそ汁のカップに似た容器がある。そこには小さく切り分けた白身魚の蒲焼きとご飯が入っていて、ひつまぶし風になっていた。
刻みのりとネギにワサビなど薬味もあって自分好みに食べられる。途中で付属の顆粒だしを追加しお湯を入れるとお茶漬けに様変わり。最後まで味の変化を楽しめた。
「ふぅ……」
食べ終えると値段以上のボリュームにお腹が膨れて寝転びたくなる。ゲームを再開するつもりだったけれど、今日は控えておこう。一日にこれだけゲームを遊んだのは初めてだが、疲れ自体はそれほどなかった。
◇
翌日。午前中を生活用品や食材の買い出しに使いまったり過ごし、昼食後に休憩を挟んでゲームを始める。
手紙が来ており見てみると運営からだ。イベントへの参加が決まった旨の内容で、時間を三十分毎に選べた。
全てがゴールデンタイムで勝ち進んだ場合は特定の時間帯になるらしい。当日ではなく、もう少し余裕を持った準備期間を設けることはできなかったのだろうか。
時間はいつでもを選び、もう一つの項目に移る。ランキングを表示する際にプレイヤー名を使うか別のニックネームにするかを決めるようだ。
プレイヤー名でなんの不都合がと考えるが、ランキングが低いと恥ずかしい思いをする可能性はある。最下位争いを繰り広げる自信しかないので、ニックネームを選択しキュル助と入力しておいた。
上から下まで再確認。返信ボタンで送るとすぐに新たな手紙が来る。差出人は運営でイベントの参加時間が書いてあった。
夕食を済ませて間に合う時間だ。初心者なりにイベントへの備えをしたいが何をすべきか。
マナポーションで精神力の回復は間に合うはず。しかし、自分にしか使えない都合上キュル助のスキルには限界があった。
調合に他人へ影響を与えるレシピがあるか調べたが目ぼしいものはない。だったら今ある所持金で買える回復魔法を覚えておこう。きっと役には立つ。
噴水広場にあるポータルを利用し回復魔法ギルドへ行く。おそらく状態異常を治す系が無難だ。広間へ入りカウンターでお布施品を眺める。
当然、熟練度が高い回復魔法は扱えない。順番に確かめていき、これはというのを見つけた。
【マナグレイスの魔法書】
『種類』魔法書
『効果』マナグレイスを覚えることができる
回復魔法の必要熟練度:200
『説明』聖職者を目指すものへ力の源を分け与える術
素質がある者は神の影を見るという
説明にある力の源が引っかかる。回復魔法に必要なのは精神力だ。分け与える、その言葉が意味するところはもしや……。
ただ、現在の熟練度は126。イベントに間に合うかは怪しいラインだが、他にできる準備は思いつかない。とりあえず時間いっぱいまで回復魔法を振りまくことにしよう。




