第143話 こそこそダンス
『む、困りましたね』
『何か問題ですか?』
少し考える口調で独り言にも聞こえたが、単独行動中のコヨミさんに話しかける。
『三階での工作を終えて四階へ上がろうとしたのですが、三人組が待ち構えているでござる』
『なるほど、先回りですね』
さすがに天守閣までくると対応も素早い。
『盾を持った方がいるので突破は難しそうですが、何事も挑戦でござるな』
『待ってください』
階段は上がるにつれて狭くなる。最上階での青陣営を崩すためにも、コヨミさんの存在は重要だ。
『自分が透明化をかけに行きます』
『おお、それは大助かりでござる!』
どう通ったのか、と疑われても忍者だからでの納得を期待する。できるだけ安全に戻れるよう急ごう。
『ただですね、えらく集中した様子が懸念点かと』
警戒心が高いと足音以外にも気づかれる要素になる。ここで支障なしとの判断は危ない気がした。
『よし、おれに任せろ! キングで鐘を響かすぞ!』
『あ、それ名案かも!』
確かに何か音が鳴ってくれると楽に進める。しかし、一つ心配なのが……。
『その場合、攻撃を行うことでカンペ殿の透明化が解除されるでござるよ』
別行動ではかけ直しも叶わない。キュル助を行ったり来たりさせるのにも限界があった。
『かくれんぼは任せろ!』
『うわー、簡単にバレて死んじゃいそう』
コヨミさんの暗躍と合わせて複数のプレイヤーがいると思われたら、隠れ続けるのは大変だ。預かるアイテムがなくなるだけの自分とは違い、紅さんたちは戦闘で相手をかき乱せる。なんとか生存を目指したい。
『ペットのクロ蔵でキングの起動を行ってみます』
『ほほう、面白い作戦でござるな』
庭園は外につながっている。空中を飛んで壁を越えれば逃げられるはずで、クロ蔵が適役だった。
『おれの出番はお預けかー』
『当たり前でしょ』
早速、クロ蔵を庭園入口で呼び出し待機させる。ターゲットをキングに固定して、反撃対策にアイアンクラッドタートルをかければ準備完了だ。自分は慎重に四階へ向かうが、途中で青陣営のプレイヤーには出会わなかった。
『四階に到着しました』
物陰に隠れて、階段前の三人組を確認する。手持ち無沙汰には見えずしっかり戦闘態勢だ。
『鐘を鳴らします』
時間をかけると戦況次第で巻き込まれる。ペットへの命令が可能な距離は未知数。試すにも早い方がよかった。
メニューからクロ蔵に攻撃の指示を出す。地図で追うと位置が狙い通りに動いてくれた。同時に自分も階段へ忍び足で近づく。
――ゴーン、ゴーン!
攻撃の成功は鐘の音で分かる。すぐにクロ蔵を庭園の外へ待避させた。その時、三人組のうち一人が振り返って走り出す。端を歩いてなければ危うくぶつかるところだった。
すれ違うように階段を下りるが焦りは禁物。鐘の余韻を味方に、コヨミさんの元にたどり着いた。
『透明化をかけます』
『かたじけない!』
安堵にはまだ早い。上で残る二人は、より警戒した構えでジッと動かない。杖と盾の組み合わせで攻撃力は控えめだが、見つかった時点でアウトだ。大丈夫、チャンスはやってくる。
『おっと?』
『来てくれましたね』
後ろを走ってきた青装備のパーティが階段を上がっていく。三人組の一人が離れたのと同じく、追加で誰かがキング起動の原因を探りに行くとの目論見が当たりホッとする。
『援軍です。行きましょう』
『了解です!』
「やばっ!」
元からいた二人組が慌てるも紛れるには十分。大人数がいてのピンポイントな意思疎通は難しいようだ。
◇
【DAO】イベント会場Part21【第四回】
612 名前:名無しの古代人
赤の城内は破城槌を運び放題か
613 名前:名無しの古代人
序盤以降の狭さがいい
ギリギリの幅で逆に安全かも
614 名前:名無しの古代人
上からの集中砲火もマシ?
615 名前:名無しの古代人
破城槌の屋根が結構強い
616 名前:名無しの古代人
坂の多さが守りに有利な点かな
617 名前:名無しの古代人
爆発タルを転がし放題っていう
618 名前:名無しの古代人
壊せるけど気を抜けん
619 名前:名無しの古代人
普通に吹き飛ばされた
誘爆をすり抜けてくる怖さよ
620 名前:名無しの古代人
てか横道が多くて困る
いきなりの範囲攻撃は痛すぎた
621 名前:名無しの古代人
破城槌を運ぶのに人手が必要だし
やっぱ坂がきつい
622 名前:名無しの古代人
でも決定的な妨害手段に欠ける
623 名前:名無しの古代人
お互い攻めに精鋭が集中してそう
624 名前:名無しの古代人
わちゃわちゃの前に実力なんて
と思ってたが関係あるか
625 名前:名無しの古代人
赤のキングまですぐだ
覚悟しろよ
626 名前:名無しの古代人
ここに書き込んでる時点でな
復活待ち乙
627 名前:名無しの古代人
うげ
天守閣の階段がもう抜かれた
628 名前:名無しの古代人
拮抗してたんじゃなかったのか
629 名前:名無しの古代人
青が勝手に自爆した?
630 名前:名無しの古代人
爆発タルが放り込まれた
しかも後ろから
631 名前:名無しの古代人
先に忍び込んで待ってた系ね
632 名前:名無しの古代人
徹底的に見回りしとくべきだった
633 名前:名無しの古代人
そこに人員を割く余裕がなー
634 名前:名無しの古代人
この人数だし余裕はあるでしょ
面白くないだけ
635 名前:名無しの古代人
突っ込んで死んでを繰り返したい
せっかくのイベントだもの
636 名前:名無しの古代人
どれだけ陣営のために動けるかだ
637 名前:名無しの古代人
そもそも爆発タルが強すぎ
638 名前:名無しの古代人
まさか範囲化より厄介とは
639 名前:名無しの古代人
空も飛べるし
640 名前:名無しの古代人
試したら死んだわ
上に乗るのは体力が持たないって
641 名前:名無しの古代人
近くないと飛距離が出んしな
生半可な防御バフだと無理
642 名前:名無しの古代人
そういえば上位スキルの話あったね
ダメージの軽減率が高いやつ
643 名前:名無しの古代人
あれって辺境の里で使われてた?
644 名前:名無しの古代人
そこは回復代行結社の……
645 名前:名無しの古代人
気づいたか
妖精おじさんの影がちらつくことに
646 名前:名無しの古代人
我々は始めから手のひらの上ってわけ
647 名前:名無しの古代人
おじさんの手ならまあ
648 名前:名無しの古代人
踊り狂って死にそう
辻ヒールを頼む