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社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。  作者: 七渕ハチ
第一章『妖精おじさんがあらわれた。ただし、その姿は見えない』

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第14話 王都地下通り

 王都の地下通りを歩く。太陽の光が入りづらいエリアで青系統や緑系統の灯りが目立っていた。


 路地とはまた違った雑然さでNPCが露店を開いていたり、ガラッと空気感が変わる。不自然に建物の二階部分が道に飛び出す光景も多い。後から増築した風に見えた。


 地下と言えばの水路には出会えないが、さらに地下深くへ続く穴がある。各所に橋がかかっていて入り組んだ構造だった。


 落ちないように作られた柵を周った先に時計のオブジェクトを見つける。機械仕掛けの台座に組み込まれた青い球体が光り出し、ポータルの起動は完了だ。


 オブジェクトの向こう側は行き止まりで下に続く階段が奥にある。その先にアーチ型の扉が待ち構え、丸底フラスコのシンボルが紫色に照らされていた。


 中に入ると外の怪しさとは打って変わって白色灯で眩しい。三角形の広間には魔女が使うような大きな壺が置かれて謎の草や生き物が天井から吊るされる。壁際の棚には薬品なども並ぶが、あまり胡散臭さはなかった。


「ようこそ調合ギルドへ」


 カウンターで話しかけると入門クエストが始まる。


「ヒールポーションを作った経験がおありなんですね」


 始まりの村にあったのは調合屋だった。ギルドとはまた括りが違うのだろう。


「ではこちらをどうぞ」



≪調合台を入手しました≫

≪レシピ:マナポーションを入手しました≫



「調合台を使えばどんな場所でも調合を行えます」


 わざわざ調合ギルドまで来なくてもいいのは便利だ。そして、マナポーションを作るように言われたので挑戦する。



【レシピ:マナポーション】

『素材1』イノシシの肝臓

『素材2』水

『素材3』空瓶



 確か道中の草むらでイノシシを見た覚えがある。一匹ぐらい倒しておけばよかったと思いながら他のカウンターを周ると、素材を売る場所を発見した。


 水と空瓶は安いがヒールポーションの素材に使ったイッカクガエルの角やイノシシの肝臓は少し高めな印象だ。


「これ、素材を買ってやんの?」


 節約に素材を集めて来ようとしたとき、気になる声が聞こえてきた。


「基本的に自分で集めるかマーケットでお買い得品を狙うかだな」


「あー、マーケットね」


 困るところは一緒なのか、二人組のプレイヤーが話し合っている。情報を得るには聞き耳を立てて町の中を歩き回るのが一番かもしれない。


 マーケットはプレイヤー同士がアイテムの売買を行うシステムだったはず。メニューを開いて天秤のアイコンを選ぶと大きいサイズのウィンドウが出た。


 武器や防具、アイテムなど種類を選択するフィルターが表示される。今はイノシシの肝臓に絞って検索バーに名称を入力した。


 一瞬でずらりとイノシシの肝臓が並ぶが値段はバラバラで目が滑る。ソートで値段の安い順に並び替えるとかなり安い設定のものがあったので購入してみた。



≪商品が存在しません≫



 システムメッセージと同時に画面が自動的にリロードし、選んだ品物が購入済みで灰色の表示になっていた。


 どうやら誰かと購入が重なったらしい。限定版のパッケージといい苦労させられるが、ゲーム内ならご愛敬と割り切れた。


 出品数が多く挑戦は何度でもできる。その分競争相手は多いものの十数回で購入に成功した。


 ただ、個数は百を超えて所持金の大半を持っていかれる。水と空瓶を合わせるとすっからかんだった。回復魔法を使うためと思えば安い投資だ。


 早速もらった調合台で作業に取り掛かろうとしたが、他のプレイヤーが誰もやっておらずクエスチョンマークが浮かぶ。そもそも数が少なく、周りを見て奥にまだ部屋があるのを発見した。


 そこも三角形の広間で中央に大きな黒い炉が置かれ、その周りでプレイヤーたちがしゃがんで調合台と向き合っていた。カウンターの前が混雑すると邪魔になるし、配慮でここを使ってるのか。


 冒険者ギルドや回復魔法ギルドに比べると賑わいは控えめ。何かを作るよりモンスターと戦いたい人のほうが人口的には多そうだ。


 部屋の隅で調合台を使うと床に設置される。触れるとアイテムのセット欄が現れたのでマナポーションの素材を選び作成ボタンを押した。



≪マナポーションを一個作成しました≫



 失敗はないのか普通に作ることができた。レシピに必要な熟練度の記述はないが、最低値さえあれば大丈夫のようだ。


 まとめて作ろうとしたところで熟練度の上がり方が気になる。一つずつ作るかで違いがあるの確認はしておきたい。初心者なりに考えながら遊んでいこう。

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