第133話 陽動に向けて
『フレイムマイト』
カンペさん、レモンさん、コヨミさんに続いて紅さんがキングと戦う。いきなりの全力攻撃は気持ちがいい。
個人ごとの連戦を通し直剣、蛇腹剣以外に短剣と大剣を切り替えるのが分かった。それぞれ威力や範囲に違いが生まれるため、ちょっとした油断で回復機会を逃す。この短い間に起こったのを考えると、他にも武器が用意されていると想像できた。
正面での殴り合いでは体力が早めに減る。どれだけ実力があっても攻守の役割分担が大事だった。
「イカキング親衛隊到着! 観念しろ侵入者!」
「さっきからやけに多くね」
「でも死にかけか?」
青陣営のプレイヤーたちがきても、大剣を仕舞えば赤い髪は目立たない。紅さんは攻撃をストップし、無防備でキングに倒された。
「せっかくきたのに!」
「階段を上がるのも手間なんだよな」
「待機でポイントくれたらねー」
文句を言いつつ去っていくのを見届け、自分も庭園を離れる。一人で城内をうろつくのは緊張感があった。
『お嬢もやられたかー』
『意外と戦える雰囲気じゃなかった?』
『タンクのスイッチは二人で間に合うよな』
行動に変化が生まれるまでは大人数の力押しでも被害は抑えられるかもしれない。
『攻撃は最低限、武器に気をつけて巻き込まれるのを防ぐと良いでござるな』
『共有しとく』
きっと、シュヴァルツさんが状況に合わせて指示をくれる。紅騎士団内で意見の交換も行われているはず。ギルドの大きさなりに慣れた人たちが多そうなのは、終盤へ向かうにつれて頼もしさが増した。
天守閣を出て皆の元に急ぐ。まだ大丈夫だと思うけれど、いつ青陣営が守りに入るかは読めなかった。
門に着いて少しの逡巡で橋へ飛び下りる。合流は赤陣営が占拠中の拠点近くだ。コヨミさんの偵察があるとはいえ、透明化の安全策は取りたい。城近くで紅さんの動向を捕捉されると侵入に支障が出た。
『こっちでござる!』
地図を確認しながら位置を把握して無事に発見する。
『ナカのんと合流完了!』
『アイテムを渡します』
『サンキュー、ナカノっち!』
この役割にもやり甲斐を感じて意欲が高まった。受け渡しを済ませた後は透明化をかける。
『次は城内で何するの?』
『待機で備えたいですね。城攻めについてギルド内で話は出ていますか?』
『そろそろ城手前の拠点を押さえる』
思ったよりも展開が速い。相手に先んじてプレッシャーを与える作戦だろうか。
『ではタイミングを合わせ城内で戦いましょう』
『お! 陽動だな!』
『三度目の侵入は難しくなるので生き延びるのを最優先にします』
『了解でござる!』
城内に居続けられれば、紅さんの存在が相手を引きつける。慎重さと大胆さで混乱を作り出そう。
再び城へ行き様子を窺う。周りに誰もいないのを確かめ、アイアンクラッドタートルをかけて爆発タルを設置。板をのせて、その上でバランスを取った。
――ドオオオン!
アトラクションと意識すれば衝撃で宙を飛ぶのも娯楽になる。問題はジェットコースターですら苦手なことだが、年齢を重ねたおかげか地面に打ちつけられても真顔を保てた。
『こっそり忍び込むのって、わくわくするよな!』
『爆音は鳴ってるけどね』
ひとまず透明化で隠れる。天守閣の内部は一度目の侵入で把握できた。次はどこかで石垣の上に行き、門へつながる櫓の構造調査だ。
《青陣営の城手前にある拠点、氷霊花の迷宮を占拠する。その後、城攻めを行うため準備が済んだ者から合流願う》
『いよいよ始まるぞ!』
『死なずに暴れるんだよね』
『コヨミさんの偵察が頼りです。よろしくお願いします』
『お任せを!』
ここまできて余計な警戒心は与えたくない。透明のまま紅さんが突然現れるのは避けて潜める場所を利用しよう。
『階段はこちらでござる!』
すぐに見つけてくれるのはさすが。石垣を上がった先の眺めは抜群で、本隊が下を通る際にも妨害したい。
外周には長屋が設けられている。内部は二階建てで等間隔に並ぶ小窓が厄介か。爆発タルは引っかかるが遠距離攻撃は可能だった。
門の近くは多くのプレイヤーが入れる広さだが、小窓は少なく意味が薄い。肝心の櫓へ上がると赤陣営の城同様に限りある空間だ。
『うーん、門の周辺だと囲まれちゃうかー』
『拙者が引きつけた追手の数を減らせる距離は必要かと』
姿を見せたコヨミさんを追う間に諦める人も出てくる。長屋の廊下は振り切るのに都合がよく、途中に木箱や俵など倉庫然とした物置き部屋がいくつもあった。
『物置きに隠れて透明化を解除、単純な不意打ちを狙いましょう』
何度も繰り返せるかは相手次第。
『それでいく』
紅さんを危険視してくれれば作戦は成功だ。
『ここで本隊が動くのを待つ感じか』
『開幕は天守閣で戦います』
『ほほう、派手にやるんだね!』
階層の多い場所なら探すのに時間をかけてくれる。拠点が交戦中になったところでキングを起動させるのも分断には有効だった。




