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社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。  作者: 七渕ハチ
第三章後半『攻城戦イベント』

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第129話 スケルトンHigh&Low

「うっわ、全体攻撃か!?」


「でもダメージほとんどなくね?」


「なんか直前にバフきた?」


 広間の全員を急いで確認したところ、体力が少しずつ減っていた。アイアンクラッドタートルで軽減はされたのだろう。どれだけの威力か分からなかったけれど演出は派手だ。まともに受けるのは避けた方がよかった。


 青い炎が収まると花々は灯りを取り戻す。赤い炎が安心できる色合いに感じた。


『今のが連発はきついか』


『発動のトリガーがある系? 体力が何割以下になったらとかさ』


『まだ半分にもいってないでござるな』


 こちらのクールタイムが間に合わずまた全体攻撃がくるとまずい。トリガーが存在するのなら、戦闘による変化と考えられた。


 リッチ本体に怪しい点はない。プレイヤーの数も一定で、スケルトンのみが増減を繰り返す。青い炎の後には再び二十体以上に戻っていた。


『全体攻撃の前にスケルトンが十体以下に減っていました。関連があるでしょうか』


『単純な敵としては少々控えめでござるし。何らかの仕掛け要員説は十分あり得えるかと』


『それでいく。ナカノ頼んだ』


 管理を一人で行うのは難しい。味方の協力が肝心だ。


「スケルトンが十体以下になると、全体攻撃の可能性があります。倒しすぎに注意してください」


「そういうことか」


「了解ボス!」


 自分にできるのは数の把握だ。広間の端で全体を見渡しながら支援する。


 そこからはトラブルなくいい流れで攻略が進む。逆に心配を覚えるのは性分か。


「スケルトンが十五体になりました」


「気をつけ了解!」


「邪魔されるとついなー」


 いくら威力が低くても一方的に攻撃を受け続けると回復魔法に追われてしまう。範囲系スキルもダメージ稼ぎにはなるので、巻き込んでも使うべきだ。余裕を持ったスケルトンの管理が欠かせなかった。


 いよいよリッチの体力が五割を切るタイミングが訪れる。念のため各区切りには警戒だ。


『アイアンクラッドタートルはクールタイム中です』


『あたしとかんちゃんは少しの間、各々で耐えよう。ナカのんはパーティへ向けた回復を!』


『分かりました』


 魔導書で準備をして待つのも十数秒、辺りに白い靄が浮かび始めた。


「くるぞー、なんかくるぞー!」


「体力満タン!」


「バッチこい!」


 十六体いるスケルトンの数は覚えておこう、と思った次の瞬間には全てが形を崩し地面に転がる。


『げげっ! リッチの体力が回復した!』


 五割を切ったはずのゲージが、なんと六割にまで戻っていた。


「まーじか」


「肩透かしでこの仕打ちかよ」


「時間かかるやつかこれ」


 予想に反した仕掛け後には靄も消えてスケルトンが復活する。


『十体を境に全体攻撃と回復効果が切り替わるのかもしれません』


『回復がどのタイミングでくるかでござるな』


『半分を切ったらじゃ?』


『それだと回復し続けるでしょ』


『攻撃力が上回ればいける!』


 対策はさらにスケルトンを放置気味にリッチへ集中する他ない。言わずとも味方の行動は一致し攻勢が強まった。


 忙しくなる支援もマナポーションで維持させる。六割に戻った体力は感覚的に早く減って、五割をすぐに切った。


『今度は回復がこなかったなー』


『時間経過にしてはタイミングばっちりだったし。一回こっきりでお願いだね』


 安定した戦いにはなっている。ただ、どこかで裏切られるとの懸念は常に、と考えていたせいか。白い靄が浮かんできた。


「またかよ!」


「体力ゲージが二本分あると思ってやるか」


「しゃーなしだな」


 スケルトンが二十二体で先ほどと異なる一方、リッチの体力が四割を切る。一割ごとに回復が行われるのだろうか。


『おっと、再度六割に体力が届いたでござる』


『永久機関は反則だって!』


『残り数回はくるのかなー』


 長期戦を強いるガーディアンと納得する以外に、少々気になる部分があった。


『スケルトンの数で回復量が増える、というのはどうでしょうか』


『あ、その線ありかも!』


『十体以下で全体攻撃だったよな。ぎりぎりの数に保てばいける?』


『レモン殿とカンペ殿がリッチにつきっきりですし、手に余るでござるな』


『ナカノ頼んだ』


 周りへの指示がすっかり自分の役割になっている。紅さんには戦闘へ専念してもらいたいので、皆に比べてまだ余裕な支援役が行うのは自然だった。


「スケルトンが回復量に影響しそうです。十体以下にならないよう調整が必要になります」


「全体攻撃ラインで我慢か」


「うちのパーティがスケルトンを担当するよ!」


「お願いします」


 複数パーティでの管理は連携が問題になる。手を挙げてくれて助かった。


 スケルトンの討伐が始まり徐々に被ダメージは落ち着く。リッチの体力が順調に五割を切って、四割に戻る。仕掛けさえなければ戦力は十分だ。


「スケルトンの数よし!」


「過剰な回復は勘弁!」


「さあいくぞ!」


 やはり、三割を切ると白い靄が浮かびだす。体力ゲージを注視すると回復効果は及んだものの、四割で止まった。


「お、成功か!」


「よっしゃ、ゴールが見えてきた!」


「勝ったかこれ」


 意思の疎通を取りやすい数のおかげで円滑に攻略が進む。


『かんちゃん、精神力は足りてる?』


『余裕!』


 そろそろ青陣営の横やりが気になる頃合いだ。体力が二割を切っての回復も最低限に抑えられた。しかし、白い靄が黒に変わるとリッチの身体を青い炎が包む。


『おっと、新たな展開でござる』


『悪あがきか?』


 アイアンクラッドタートルのクールタイムが間に合い、全体化を用いて発動させた。


『リッチの攻撃サイズが大きいのかな』


 対象が全体にはなっていない。加えてスケルトンは復活せず不安が膨らむ。


『うげ! 威力が激やばになってる!』


 カンペさんの体力がダメージ軽減後の二撃目で半分に届く。明らかな異常事態だ。


『姉貴交代!』


『こんなの、あたしもすぐに白旗だって!』


 盾役の防御スキルを使っても耐えるのが難しいとなると、解決策は限られた。


「リッチの攻撃力が大幅に上昇しました。ターゲットを全員で回しましょう」


 回復魔法も追いつかない。ダメージを散らして受け持てば乗り切れるはずだ。


「んじゃあ、タゲ取り上等でスキルの固め打ちか!」


「おれからターゲットを奪えるかな?」


「いや、死ぬぞそれ」


 この状況にも士気は上々だ。


『タゲ取りのスキルはやめとくかー』


『紅さんもスキルは間を置いて発動してください』


『全力でいく』


 本気か怪しい発言も、周りに合わせた動きを見て安堵する。ダメージを受けた人が攻撃を控えるだけで、リッチが右へ左へ向きを変えた。気づけば体力が一割を切る。


『パターンに変化なしでござる。押せ押せでいけるかと』


『フレイムマイト』


 紅さんもターゲットを受け持ち、最後まで混乱なく進行できた。


「やったか!?」


「フラグみたいなのやめろ」


「地図上で赤陣営に切り替わったし大丈夫だ」


 リッチが倒れてみると脱落者ゼロで占拠は完了だ。


「後ろ! なんかきてる!」


「うーわ、青装備だ」


「滑り込みセーフ! リッチさんやっちゃってください!」


 喜ぶ時間はないが、リッチも赤陣営のガーディアンで復活した。もうひと踏ん張りで拠点を守ろう。

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