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社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。  作者: 七渕ハチ
第三章後半『攻城戦イベント』

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第117話 防衛任務

 青陣営のプレイヤーは逃げずに部屋の中を動き続ける。守護人形のターゲットが簡単に切れる特性上、生き延びるのは簡単だった。辺境の里は復活機能をマヒさせやすい拠点なのだろう。


 ただし、守護人形の活動範囲は屋敷内に限られる。裏口を除くと侵入経路は一つなので、門番的に防衛すればソロなど少人数の妨害は阻止可能だ。


 数がたくさんいる場合はコヨミさんを始め、警戒が得意な人たちの頑張りで事前に把握できるはず。攻められる前の報告で援軍に来てもらおう。


『お嬢! 突っ込んで大丈夫!』


『任せた』


 会話が途切れたのも僅かな時間。緊迫感が最も高まるやり取りに力が入った。


 拠点での復活ができない以上、非戦闘状態でいることがより大事になる。屋根裏だからと安心するのは避けよう。気づかれてしまい、アドバンテージがなくなっては台無しだ。忍者になり切り存在感を消す。


『あー、やっぱ集中的に狙われるとダメだな』


 そして、すぐ横にカンペさんが現れた。身体を張った作戦を終え自分を復活場所に選んだのか。


『おれが一番乗り?』


『下に青陣営のプレイヤーがいるので動きは控えめに……』


『そっか、報告が流れてたっけ。静かにするのは得意だ!』


『いやいや、あんたの騒がしさはナカのんも分かってるから』


 続けてレモンさんが姿を見せ、紅さんも少し遅れてやってくる。


『回復が飛んできて倒し損ねた』


 そもそも数は向こうが上で、きっと不意打ちの混乱も時間経過で冷静さを取り戻す。二人を倒せただけでも上出来だ。


『ほいっと、拙者も戻りました。最後に紅殿へ注目が集まったおかげで、リーダー予想の方を仕留めたでござるよ』


『ナイス』


『よっしゃ! 拠点の守りが楽になるぞ!』


『ひと仕事終えたね』


『皆さん、お疲れさまでした』


 無事に、という表現が合っているかは怪しいけれど。当初の作戦を達成して喜ぶ一方で、動きは最小限にとどめた。


『こっちの状況は?』


『変わらず一人です。周囲に数パーティがいて、リーダーを倒した報告はしますか?』


『しない。過剰な戦力が集まると本隊の規模が小さくなる。可能な限りギルド内で調整する』


『分かりました』


 確かに内容次第で援軍へ行こうか悩むプレイヤーは出てくる。報告を細かくしようとの考えは改め、やはり紅騎士団に任せるのが一番か。大人数が参加のイベントは難しい判断が多かった。


『ではでは、侵入者の成敗に……と?』


 拠点の奪取に続々と訪れるのは確実で復活機能を戻すため動こうとしたところ、入口に影が見えた。


『味方が入ってきたでござるな』


 赤い装備の五人でホッとする。ガーディアンと合わせ数の差が大きく、加勢せずに相手陣営のプレイヤーがあっけなく倒れた。



《辺境の里にいた敵を倒しました!》



 報告もしてくれたので一安心だ。


『これで復活できますね』


『しばらく防衛でござるか?』


『そうしましょう。シュヴァルツさんから何か指示はありましたか?』


『戦力が足りなかったら早めに言えって』


 救援は拠点での復活が可能なうちに行いたい。


『コヨミさんは警戒に出てもらえますか?』


『了解でござる!』


『紅さんとレモンさん、カンペさんで屋敷の入り口を守りましょう』


『分かった』


 みんな間違った指示には訂正を入れてくれる。積極的な発言を心がけ、全員で屋根裏部屋を下りて裏口から外へ出る。表に回ると屋敷内にいた五人組が門を出ていくところだった。


 現状、辺境の里にいる味方は僅かに思える。青陣営が占拠する方へ多く流れていそうだ。


『それでは行ってまいります!』


『よろしくお願いします』


 コヨミさんを見送り入り口前で対応の仕方を考える。


『やっぱ、コヨミっちみたいに身軽な相手だと走り抜けられる?』


『こっちに引きつけるスキルは温存だね』


『紅さんに庭園で自由に戦ってもらい、三人で支援する形でしょうか』


『踏み込みすぎないように気をつける』


 ガーディアンが背中にいるのは心強い。生きてさえいれば戻ってくる時間をかけずに戦える。


『ナカノは屋敷に入ってるぐらいでいい』


 防具は同じでも魔導書はヒーラーの目印だ。狙われるのは間違いなかった。


『隠れるのは前提ですが、透明になれるので多少の無理は利きます』


『透明?』


 キュル助を呼び出し、いつも通りに透明化を行う。


『うわ、急に消えた!』


『おー、ナカのんも忍者の人?』


『ペットのスキルです』


 コヨミさんが透明になる手段を探していたのを思い出す。比較的、珍しい部類なのかもしれない。


『透明化は忍術スキル以外に未発見だった』


『そうなんですか?』


 そこまでとは驚きだ。キュル助とは初期エリアに近い場所で出会ったため、特別な意識は薄かった。


『スキルによる効果の解除手段はほぼない。たぶん、その影響で特殊なものは手段が限られてる。レモンとカンペは口外禁止』


『うっ、それ得意なやつ……』


『あたしが目を光らせるし大丈夫!』


『ナカノも無暗に言いふらすのはダメ。ペットのスキルなら欲しがる人は多い。しつこいと大変だから』


『気をつけます』


 頭になかったタイプのトラブルだ。もちろんキュル助を手放すつもりは毛頭なく、紅さんの助言を素直に受け止める。

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