第105話 呪忍刀
「ほっ、はあ!」
「ギギャアアア!」
コヨミさんは身動きが取れないタタリヘビに対し、勇猛果敢に攻め立てる。後方であっても長い首が追いかけ噛みつくが、相手の身体を障害物に左右へのステップで上手く避けていた。
「トリガー、ヒール」
時折かすめる攻撃にはしっかり回復を飛ばす。キュル助のおかげで離れた水面から支援できて戦いが安定した。クロ蔵は引き続きダメージ稼ぎに参加させる。ターゲットがこちらへこないのはありがたい。
――ミシミシ……!
このまま押し切れたら、と期待を抱いたのが見透かされたのか。根の嫌な音が聞こえて道がさらに沈む。
「ギャグウウウゥゥ!」
――ミシ! バシャアン!
ついには根が耐えきれず、派手に崩れてタタリヘビごと水の中へ落ちていく。同じフィールドに入ったことで安全圏が脅かされた。
「逃がしませんよ!」
そして、コヨミさんが後を追って飛び込んだ。逆に自分は残った根の道へ上がろうとしたが、それでは支援が難しくなる。
「任せたキュル助」
「キュル!」
方針を変更し補助を受けて潜る。水は澄んでいて視界は良好だった。
タタリヘビは沈むだけで終わらず荒々しく泳いでいる。水中では流れの影響を受けるので狙われたらひとたまりもない、というのは自分に寄った考え。コヨミさんはターゲットされつつも見事な泳ぎで戦っていた。
しかし、地上よりもダメージを受ける量が多い。加えて移動の距離が長く、キュル助がいてもヒールの範囲内に行くのが一苦労だ。
潜った状態だと声を出せない、つまりはボイスコマンドも使用不可能。手元で忙しく魔法を唱えて回復を飛ばす。
「ピアアアァァ!」
水の中でありながら高周波の音が聞こえてくる。同時にタタリヘビが急停止、その場で浮遊を始めた。
コヨミさんは離れて様子を窺っている。行動の変化は危険な兆候。自分もヒールを魔導書にストックして備えた。
――ゴゴゴ……。
タタリヘビの近くで水が渦巻くと、黒い頭が引っ込んで元の頭のみになる。口は力なく開いたままで光が集まって……?
攻撃前のモーション、それも大きなものがくると直感的に分かる。急ぎコヨミさんの元へ泳いでキュル助が覚えたばかりのスキル、アイアンクラッドタートルを使った。
まだ効果範囲が曖昧ななか、エフェクトが浮かんだのを確認し百八十度のターン、をしてすぐに太い光がそばを通る。
――イイイィィン!
「……!」
水に流れが生まれて身体が上下に回転した。なんとか姿勢を取り戻し状況を把握する。どうやら、タタリヘビの口からビームが照射され続けているらしい。
ターゲットは変わらずコヨミさんだけれど、体力は満タンだ。ぐるぐると回りながら攻撃を避けて近づいていく。
巻き込まれないよう位置に気をつけ回復のタイミングを計る。あっという間に双方の距離は詰まった。これ以上はビームの太さが脅威になる。かすめるどころか直撃は免れないが……。
声掛けできずに緊張が高まる。当たればかなりのダメージを受けそうだとの心配をよそに、コヨミさんが短剣を前に口の中へ向けて突っ込んだ。
「ウウウゥゥ……!」
まさかの命知らずな戦法に焦るが、甲羅のエフェクトが割れて見えた。落ち着いて体力ゲージの減りを調べると微量な継続ダメージにとどまる。事前にかけた、アイアンクラッドタートルが役立ってくれたのか。
その継続ダメージもヒールでの回復後に消え、ビームの照射が遅れて止まった。タタリヘビの身体が一瞬膨らみ、爆風を伴って破裂する。余波が届いて回る視界が戻ったときには、謎の丸太と短剣が戦いの場に残るだけだった。
≪クロ蔵のレベルが上昇しました≫
『レベル』 4
『体 力』 63/ 63
『精神力』103/103
システムメッセージがモンスターの討伐完了を知らせる。コヨミさんの体力は半分ほど。爆風を受けたにしろ生きているはずだ。泳いで気になる丸太へ向かうと、下から本人が現れて驚いた。
短剣を拾い、にんにん、とでも言いたげに両手で忍者特有のハンドサインを作る。変わり身の術などを用い緊急脱出を行ったのだろうか。
一安心で水面を目指して泳ぎ根の道に上がった。
「ふぅ……」
やはり、ゲームと分かっていても深い呼吸を挟みたくなる。
「お疲れさまでござる!」
「お疲れさまでした」
「なかなかの強敵で、拙者ひとりでは返り討ちだったかと。ナカノ殿のご支援に感謝です!」
「いえ、コヨミさんの力があってこそです」
自分がいなくてもと考えがちだが、パーティーの役割はきっと果たせた。
「泳ぎも達者で驚きましたよ!」
「あれはキュル助のおかげで……」
さすがに続けざまでモンスターは襲ってこないと緊張を解き、会話をしながら大きな木に向かって進む。
お宝が近づく気配に合わせ、コヨミさんのうずうずが伝わってくる。走り出すのを我慢している様子だ。
根元に着くと巨大なドラゴンが横たわっており足が止まる。いや、背中に根が張って身体も不自然で……?
「ほほう、枯れた木のようにカチカチでござるな」
コヨミさんがドラゴンに躊躇なく触れる。オブジェクト扱いで助かった。もう一戦交えるには厄介すぎる存在だ。
「あそこに宝箱があります」
「なんと!」
どういうわけか尻尾の方に宝箱が隠れていた。
「では、開けせていただきます!」
もちろんと、音を立てて開くのを見守る。出てきたのは真っ黒な鞘に収まる短い刀で、飾り気はなかった。
「おおー! これは良い物でござるよ!」
満足のいくアイテムなら道中を必死に通ってきた甲斐もある。
「ナカノ殿もご確認を!」
短刀を受け取り興味にひかれて詳細を確かめる。
【呪忍刀・古竜の尾】
『種類』武器
『効果』求めに応じ斬撃が伸びる
『説明』血を求めている
いわくつきな説明分はシンプルゆえに怖さが増した。鍔がないデザインのため指の場所に気をつけて鞘から引き抜く。刃に浮かぶ模様はぼんやり赤く光ってドラゴンにも見えた。
「カッコいいが詰まった武器でござる!」
「なるほど……」
勢いに押されて納得するが、コヨミさんが扱う姿は映えるに違いない。
◇
【DAO】総合スレPart192
59 名前:名無しの古代人
廃墟に宝箱落ちてたわ
わりとあるんかな
60 名前:名無しの古代人
ポンポン置いてる感じはせん
61 名前:名無しの古代人
見つけたときの嬉しさ優先か
62 名前:名無しの古代人
観光がてらの探索はやっぱ楽しい
63 名前:名無しの古代人
エンドコンテンツと言いたいけど
全貌の把握前限定なんだよな
64 名前:名無しの古代人
新種に出会ってテンション上がるやつ
挑んでボコされるのも一興
65 名前:名無しの古代人
アクティブにやられるのも定番
66 名前:名無しの古代人
簡単に進んでほしくない運営の刺客か
67 名前:名無しの古代人
逆に燃える
結局は撤退だが
68 名前:名無しの古代人
戦えるかなって挑戦してみたり
倒されてもだよねって笑えるし
69 名前:名無しの古代人
武器の更新忘れがち問題
攻撃が通ればワンチャンでしょ
70 名前:名無しの古代人
実は意外と武器の優先度が低い
71 名前:名無しの古代人
攻撃力の上昇は結構控えめだな
72 名前:名無しの古代人
熟練度の補正が大きいね
初期武器でストーリークリアもできそう
73 名前:名無しの古代人
今のとこ能力で選ぶ感覚だ
74 名前:名無しの古代人
イベントに向けて新調しなくていいのか
75 名前:名無しの古代人
あんまし考える必要はないかも
76 名前:名無しの古代人
攻城戦って話だし
わちゃわちゃのイメージ
77 名前:名無しの古代人
個人よりパーティの練度が大事っぽい?
78 名前:名無しの古代人
ボッチがこの先生きのこるには
79 名前:名無しの古代人
諦めてください
80 名前:名無しの古代人
支援兵みたいな愛されポジを担うとか
81 名前:名無しの古代人
アイテムを配ったりは感謝されるぞ
82 名前:名無しの古代人
消費アイテム仕入れとくわ
83 名前:名無しの古代人
他に何を準備しとけばいい?
84 名前:名無しの古代人
知らん
85 名前:名無しの古代人
ちょいちょい続報がほしいとこ




