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社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。  作者: 七渕ハチ
第三章前半『おじメダル配布作戦』

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105/152

第105話 呪忍刀

「ほっ、はあ!」


「ギギャアアア!」


 コヨミさんは身動きが取れないタタリヘビに対し、勇猛果敢に攻め立てる。後方であっても長い首が追いかけ噛みつくが、相手の身体を障害物に左右へのステップで上手く避けていた。


「トリガー、ヒール」


 時折かすめる攻撃にはしっかり回復を飛ばす。キュル助のおかげで離れた水面から支援できて戦いが安定した。クロ蔵は引き続きダメージ稼ぎに参加させる。ターゲットがこちらへこないのはありがたい。



――ミシミシ……!



 このまま押し切れたら、と期待を抱いたのが見透かされたのか。根の嫌な音が聞こえて道がさらに沈む。


「ギャグウウウゥゥ!」



――ミシ! バシャアン!



 ついには根が耐えきれず、派手に崩れてタタリヘビごと水の中へ落ちていく。同じフィールドに入ったことで安全圏が脅かされた。


「逃がしませんよ!」


 そして、コヨミさんが後を追って飛び込んだ。逆に自分は残った根の道へ上がろうとしたが、それでは支援が難しくなる。


「任せたキュル助」


「キュル!」


 方針を変更し補助を受けて潜る。水は澄んでいて視界は良好だった。


 タタリヘビは沈むだけで終わらず荒々しく泳いでいる。水中では流れの影響を受けるので狙われたらひとたまりもない、というのは自分に寄った考え。コヨミさんはターゲットされつつも見事な泳ぎで戦っていた。


 しかし、地上よりもダメージを受ける量が多い。加えて移動の距離が長く、キュル助がいてもヒールの範囲内に行くのが一苦労だ。


 潜った状態だと声を出せない、つまりはボイスコマンドも使用不可能。手元で忙しく魔法を唱えて回復を飛ばす。


「ピアアアァァ!」


 水の中でありながら高周波の音が聞こえてくる。同時にタタリヘビが急停止、その場で浮遊を始めた。


 コヨミさんは離れて様子を窺っている。行動の変化は危険な兆候。自分もヒールを魔導書にストックして備えた。



――ゴゴゴ……。



 タタリヘビの近くで水が渦巻くと、黒い頭が引っ込んで元の頭のみになる。口は力なく開いたままで光が集まって……?


 攻撃前のモーション、それも大きなものがくると直感的に分かる。急ぎコヨミさんの元へ泳いでキュル助が覚えたばかりのスキル、アイアンクラッドタートルを使った。


 まだ効果範囲が曖昧ななか、エフェクトが浮かんだのを確認し百八十度のターン、をしてすぐに太い光がそばを通る。



――イイイィィン!



「……!」


 水に流れが生まれて身体が上下に回転した。なんとか姿勢を取り戻し状況を把握する。どうやら、タタリヘビの口からビームが照射され続けているらしい。


 ターゲットは変わらずコヨミさんだけれど、体力は満タンだ。ぐるぐると回りながら攻撃を避けて近づいていく。


 巻き込まれないよう位置に気をつけ回復のタイミングを計る。あっという間に双方の距離は詰まった。これ以上はビームの太さが脅威になる。かすめるどころか直撃は免れないが……。


 声掛けできずに緊張が高まる。当たればかなりのダメージを受けそうだとの心配をよそに、コヨミさんが短剣を前に口の中へ向けて突っ込んだ。


「ウウウゥゥ……!」


 まさかの命知らずな戦法に焦るが、甲羅のエフェクトが割れて見えた。落ち着いて体力ゲージの減りを調べると微量な継続ダメージにとどまる。事前にかけた、アイアンクラッドタートルが役立ってくれたのか。


 その継続ダメージもヒールでの回復後に消え、ビームの照射が遅れて止まった。タタリヘビの身体が一瞬膨らみ、爆風を伴って破裂する。余波が届いて回る視界が戻ったときには、謎の丸太と短剣が戦いの場に残るだけだった。



≪クロ蔵のレベルが上昇しました≫


『レベル』  4

『体 力』 63/ 63

『精神力』103/103



 システムメッセージがモンスターの討伐完了を知らせる。コヨミさんの体力は半分ほど。爆風を受けたにしろ生きているはずだ。泳いで気になる丸太へ向かうと、下から本人が現れて驚いた。


 短剣を拾い、にんにん、とでも言いたげに両手で忍者特有のハンドサインを作る。変わり身の術などを用い緊急脱出を行ったのだろうか。


 一安心で水面を目指して泳ぎ根の道に上がった。


「ふぅ……」


 やはり、ゲームと分かっていても深い呼吸を挟みたくなる。


「お疲れさまでござる!」


「お疲れさまでした」


「なかなかの強敵で、拙者ひとりでは返り討ちだったかと。ナカノ殿のご支援に感謝です!」


「いえ、コヨミさんの力があってこそです」


 自分がいなくてもと考えがちだが、パーティーの役割はきっと果たせた。


「泳ぎも達者で驚きましたよ!」


「あれはキュル助のおかげで……」


 さすがに続けざまでモンスターは襲ってこないと緊張を解き、会話をしながら大きな木に向かって進む。


 お宝が近づく気配に合わせ、コヨミさんのうずうずが伝わってくる。走り出すのを我慢している様子だ。


 根元に着くと巨大なドラゴンが横たわっており足が止まる。いや、背中に根が張って身体も不自然で……?


「ほほう、枯れた木のようにカチカチでござるな」


 コヨミさんがドラゴンに躊躇なく触れる。オブジェクト扱いで助かった。もう一戦交えるには厄介すぎる存在だ。


「あそこに宝箱があります」


「なんと!」


 どういうわけか尻尾の方に宝箱が隠れていた。


「では、開けせていただきます!」


 もちろんと、音を立てて開くのを見守る。出てきたのは真っ黒な鞘に収まる短い刀で、飾り気はなかった。


「おおー! これは良い物でござるよ!」


 満足のいくアイテムなら道中を必死に通ってきた甲斐もある。


「ナカノ殿もご確認を!」


 短刀を受け取り興味にひかれて詳細を確かめる。



【呪忍刀・古竜の尾】

『種類』武器

『効果』求めに応じ斬撃が伸びる

『説明』血を求めている



 いわくつきな説明分はシンプルゆえに怖さが増した。鍔がないデザインのため指の場所に気をつけて鞘から引き抜く。刃に浮かぶ模様はぼんやり赤く光ってドラゴンにも見えた。


「カッコいいが詰まった武器でござる!」


「なるほど……」


 勢いに押されて納得するが、コヨミさんが扱う姿は映えるに違いない。




 ◇




【DAO】総合スレPart192


 59 名前:名無しの古代人

    廃墟に宝箱落ちてたわ

    わりとあるんかな


 60 名前:名無しの古代人

    ポンポン置いてる感じはせん


 61 名前:名無しの古代人

    見つけたときの嬉しさ優先か


 62 名前:名無しの古代人

    観光がてらの探索はやっぱ楽しい


 63 名前:名無しの古代人

    エンドコンテンツと言いたいけど

    全貌の把握前限定なんだよな


 64 名前:名無しの古代人

    新種に出会ってテンション上がるやつ

    挑んでボコされるのも一興


 65 名前:名無しの古代人

    アクティブにやられるのも定番


 66 名前:名無しの古代人

    簡単に進んでほしくない運営の刺客か


 67 名前:名無しの古代人

    逆に燃える

    結局は撤退だが


 68 名前:名無しの古代人

    戦えるかなって挑戦してみたり

    倒されてもだよねって笑えるし


 69 名前:名無しの古代人

    武器の更新忘れがち問題

    攻撃が通ればワンチャンでしょ


 70 名前:名無しの古代人

    実は意外と武器の優先度が低い


 71 名前:名無しの古代人

    攻撃力の上昇は結構控えめだな


 72 名前:名無しの古代人

    熟練度の補正が大きいね

    初期武器でストーリークリアもできそう


 73 名前:名無しの古代人

    今のとこ能力で選ぶ感覚だ


 74 名前:名無しの古代人

    イベントに向けて新調しなくていいのか


 75 名前:名無しの古代人

    あんまし考える必要はないかも


 76 名前:名無しの古代人

    攻城戦って話だし

    わちゃわちゃのイメージ


 77 名前:名無しの古代人

    個人よりパーティの練度が大事っぽい?


 78 名前:名無しの古代人

    ボッチがこの先生きのこるには


 79 名前:名無しの古代人

    諦めてください


 80 名前:名無しの古代人

    支援兵みたいな愛されポジを担うとか


 81 名前:名無しの古代人

    アイテムを配ったりは感謝されるぞ


 82 名前:名無しの古代人

    消費アイテム仕入れとくわ


 83 名前:名無しの古代人

    他に何を準備しとけばいい?


 84 名前:名無しの古代人

    知らん


 85 名前:名無しの古代人

    ちょいちょい続報がほしいとこ

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