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社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。  作者: 七渕ハチ
第三章前半『おじメダル配布作戦』

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第102話 スリルな秘密

≪光る貝玉の欠片を入手しました≫



 スカルシェルは足に攻撃を行うことで体勢を崩し、貝の中に隠れる弱点が露出するパターンだった。分かってしまえば簡単、と言えるのはコヨミさんが戦ってくれたおかげだ。


「無事に倒せたでござるな!」


「お見事でした」



【光る貝玉の欠片】

『種類』使用アイテム

『説明』周囲に光を放つ欠片

    水場で明るさが増す



 入手アイテムに特別感はない。地面に隠れてるだけで通常のモンスターだった?


「イベント要素かとも思ったでござるが。何も発生しませんね」


「とりあえず、宝の地図に一致する場所を確認しましょう」


「了解です!」


 新たなスカルシェルへの警戒をしながら先へ進む。茂みを避けて目的地にほど近い、地図の境界線を参考ポイントに選ぶ。


「おっと? これは底がなさそうでござるよ」


 他のエリアだと移動の制限に岩の壁や崖で区切られるが、墓地湿原の場合は湖というより海に似た景色だ。夜も相まって暗闇が続く水面は恐怖そのもの。興味本位には泳げなかった。


「地形と合わせて点在する茂みが手がかりですね」


「ふぅむ? この茂みがここで……?」


 今のところ重なる箇所がほとんど。最終的にポツンと佇む、少し背の高い木に行き着いた。


「宝箱は見当たりませんが、わかりやすく設置されていると宝の地図に関係なく取得できてしまうでござるし。何か仕掛けなどは……」


 どこかに怪しい部分や違和感がないか調べる。木は下から生えるタコ足状の根で支えられていて……?


「っ!」


 根をかき分けて太い幹に手を伸ばすと足が沈んで焦る。慌てて根に掴まり身体を固定させた。


「ナカノ殿! 大丈夫でござるか?!」


「はい、なんとか……」


 どうやら、この足元に限り深い水の溜まり場になっているようだ。


「ふむふむ、当たりを引いたのしょうか。少し潜ってみるでござる」


 コヨミさんが臆せずに根の隙間を縫いつつ身を沈める。照明具の灯りは水中だと頼りないのか、すぐに水面から消えた。


 直径二メートル未満の穴で底は不明瞭だ。単に潜るのでさえ不安なのに、モンスターが途中で襲いくる危険性もある。スリルで済ませるには物騒すぎた。


 心配をよそに、コヨミさんが何事もなく戻ってくる。


「かなりの深さですね。中で空間が広がっていて、迷い防止に対策が必要やもでござる」


 地図も上下の移動が加わると読み取るのが難しい。長いロープを身体に巻き付ける、原始的なやり方か……。


「光る貝玉の欠片はどうですか?」


「おー、試す価値ありかと!」


 アイテム入手のタイミングを考えると使いどころな気がした。ゲームに流れが用意されているのは、今までの経験で推し測れる。


 アイテム欄から光る貝玉の欠片を手に出す。いくつかの欠片になっており、一つ一つの光量が照明具よりも強い。


「これでしたら、半分ずつ持てるでござるな!」


「……そうですね」


 まさか同行するとは思っておらず、一瞬反応が遅れてしまった。


「では、探検に行きましょう!」


 自分は遠慮したい、などと言うことはもちろんできない。コヨミさんに欠片を半分渡し、後を追って水に潜る。


 多くの根を右手で掴んでは放してを繰り返す。頭を逆さにするか悩むがそのままで、左手の光る貝玉の欠片を頼りに下へ行く。落とさないよう握っていても指の僅かな隙間から灯りが漏れて、周囲の状況がはっきり見えた。


 壁は土っぽさが窺える雰囲気で、触ると崩れずに硬さを感じる。拠り所の根は続いてくれるが、急に壁がなくなり広い空間になった。


 なるほど。確かに迷えと言わんばかりで心細さが一気に増す。そして、コヨミさんが横に来て手を動かした。


 なぜハンドサインとなるが水中で呼吸はできても、会話の方は現実同様に不可能らしい。ぶんぶんと振る明るい左手が右手で指差され……?


 よく見ると光の筋が暗闇へ伸びている。おそらく、アイテムの隠れた効果だろう。行き先を示すと信じて向かうべきだ。怖さを押し殺して根から手を放し、二人で落ち着いて光を追いかけた。


 周りでは長く縦に細い変わった魚が泳いでいる。余裕があれば楽しめる環境要素も、モンスターへの危機意識が勝って緊張しかなかった。


 時間の感覚があやふやになったころ、前方に壁が見えてくる。一面のゴツゴツした岩に穴が開いており、光の筋が当然のように入っていく。


 穴の幅が、また不安を煽る絶妙な狭さだ。先へ進むコヨミさんに置いて行かれるのが一番まずいので、必死に泳ぐ。


 覚悟も束の間、狭いゾーンは入口近くで終わって再び空間が広がる。上にコースが変わり水の揺れを捉えて期待が高まった。


 ここが最後と勢いを増して急ぐ。


「……っ!」


 思った通り待っていたのは水面で、ついつい顔を出した後に大きく息を吸う。


「ふぅ、中々の道中でござった」


「本当に……」


 もはや何もなしでは済まされない。一人だったら足を取られた初めの段階で間違いなく諦めていた。


 そばに上がれる場所があり水から出る。灯りが照らすのは石組みの朽ちた遺跡で、天井と幅が二メートル以上の通路が奥に続いた。


「まだゴール、というわけではないでござるな」


 移動の大変さだけで試練は終わらないか。壁にはヘビに似た爬虫類系の頭を持つ人間が描かれている。モンスターとの戦いに身構えた方がよさそうだ。

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