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超短編小説『千夜千字物語』

『千夜千字物語』その6~同窓会

作者: 天海樹

小学校の同窓会の知らせが届いた。

いつもならゴミ箱へ直行なのだが、

なぜか今回は参加する気になった。


自分でも何でかわからない。

小学校の頃は友達は一人もいなく、

だから行ったところで、

酒を片手に楽し気に話している

同級生たちを見ているだけになることは

容易に想像がついた。

それなのに、考えても答えは出なかった。


会場に入ると面影のある顔が並んでいた。

何人か声を掛けてくれるけれど、

たいていあまり話したことが無かったことを思い出して

早々に退散していく。

そしてすぐに一人になる。

予想していた通りだ。


なんで来たんだろう。


そんな時、“サヤマミキ”という名を呼ぶ声が聞こえた。

思い出と共に懐かしさが一気にこみ上げた。

心臓が高鳴った。

期待して会場を隈なく探してみる。

姿は見当たらない。

会話で出たのが、偶然にも聞こえたのだろう。


人と交わるのが苦手だった。

苦痛でしかなかった。

だからいつも一人で遊んでいた。

ただそんなボクの傍に

いつの間にかいるようになったのがミキだった。

変わっている自分に興味を持ったのか、

放課後になるといつも後をついてきた。

不思議とイヤではなかった。

むしろ心地よかった。

なぜなら、ありのままの自分でいられるからだった。


声が枯れるまで話したり、どろんこになるまで遊んだり、

そんな時いつもミキの笑顔はキラキラ輝いていた。

毎日、別れるのが残念で下を向いていると

「顔をあげてないと、幸せを見逃しちゃうよ」

そう言って寂しさを和らげてくれた。

でも、二人の楽しい毎日は長くは続かなかった。

あと少しで卒業という時期に、ミキの転校が決まったからだった。


ここに来たのはミキに会いたかったからなのかもしれない。

そう考えると、自分が想像以上に落ちていることに気づいた。

でも、連絡がとれないという噂を聞いたことがあった。

同窓会の写真が毎回送られてきてはいるが、

彼女が参加した形跡はこれまでなかった。

今回だって万が一にもあるはずがない。

ミキに会いたかったから参加したとなれば、

ここにいる必要はもうない。


外に出ると、まだ日が高かった。

強い日差しが余計心に沁みる。

駅へと歩き出すとどこからともなく

「顔あげなよ」

ミキの声がした気がした。

気づけばまた下を見ていた。

くよくよ考えたって仕方ない。

なるようになれ!で、

明日からまた頑張るか。

そう心に誓って、顔を上げた。


「シンジくん?」

「えっ? ん? あっ! ミキ!!」

あの頃の笑顔が、そこにあった。

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