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聖火  作者: 青山喜太


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第六十三話 銃声

「さあ、初依頼、達成記念だ! 乾杯!!」


 ドンキホーテの号令と共にジョッキのぶつかる音がする。

 場所は冒険者ギルド、依頼を終えたネクス達は質素ながらも食事にありついていた。


「ぷはぁ! レモネードがうめぇ!」


 そういって飲み干したジョッキをテーブルに置くドンキホーテ。


「確かに、美味しい……ですね!」


 リリベルもドンキホーテと同じくジョッキのレモネードを口につけ笑う。


「で、今回のお金はどれくらいなの? 先生」


 そうして各々が食事に手をつけ始めた後、ミケッシュがドンキホーテに聞いた。問題は今回の報酬だ。

 どれくらい入ったかどうか、それが今後動きにも影響してくる。


「まあ、簡単な依頼だったから大した金額にはならなかった……だが──」


「だが?」


 ミケッシュは固唾を飲む。


「──だが、実は俺だけ早朝にもう一つ討伐依頼を済ませていてな、その金額が結構入った!」


 ドンキホーテの言葉にネクス達3人が破顔する。


「やったじゃない! いくら入ったの?!」


 ネクスが思わずテーブルから身を乗り出してドンキホーテに迫る。


「飛行船のチケット3枚分だ、薬草採取の依頼と、俺の討伐依頼でな」


「じゃあ……!」


「ああ、もしかしたら国を出られるのももう直ぐかもな」


 希望が見えてきた、コレでソール国に帰れる。そんな淡い希望をネクス達3人の生徒は抱いていた。


 だがそんなムードを壊す人物が一人。


「飛行船で行くと言うなら、私は反対だ」


 レヴァンスだ。


「飛行船は危険も多い、もし空中で狙われれば、逃げ道を確保するのは難しいだろう」


 レヴァンスの言うことはもっともだった。空には逃げ道がない、襲われればひとたまりもないだろう。


「だが、だからと言っていつまでも手をこまねいている訳にはいかない」


 するとレヴァンスは、ジョッキを置き真剣な眼差しでネクス達を見つめる。


「飛行船で一気に、ソール国にはいかない。日数がかかりすぎて危険すぎる。だがこのコールランド王国の近くに、ソール国の同盟国、ポウセ国がある。ポウセ国ならば半日もあれば飛行船で到着でき、さらにポウセ国の国家間テレポート魔法を使えば……」


「なるほど、いい考えですね」


 レヴァンスの言葉にアーシェは賛同する。


「それなら通常の飛行船の旅費よりは高く着くかもしれませんが……何より早く安全つけますね」


「さすがセンセ、やっぱ頭いいな!」


 ドンキホーテの褒め言葉に対して小馬鹿にしたかのように鼻を鳴らすレヴァンス。

 順調だ恐ろしいほどに。


「希望見えてきたね!」


 ミケッシュの言葉に思わずネクスは口元を綻ばせる。

 だが心の片隅ではこんな言葉が木霊していた。


 本当に、うまく行くのだろうか。

 自分たちは帰れるのだろうか家族のもとに。


 ─────────────


「いやあ、質素ながらも美味い飯だったな!」


 帰り道宿に向かう途中、そんな帰路の途中でも陽気なドンキホーテにリリベルは思わず笑う。


 全く不安を感じさせないいつも通りの先生、そんな彼がいるとリリベルは日常が戻ってくるような感覚を覚えていた。


「飛行船に乗る前に、着替えとか色々準備しとかなきゃ……ちゃんと衛生的に……」


 今後の計画を練るアーシェ。


「全く、呑気な……」


 ドンキホーテに小言を言うレヴァンス。


「明日はもっと派手な仕事がいいわね」


「え! ウチ……アタシ薬草集めでいいよ!」


 くだらない雑談を繰り広げるネクスとミケッシュの2人。

 差し迫る、世界の危機とやらがまるで嘘みたいだ。


 リリベルがそう思った、瞬間だった。


 天地が回る。夜空が眼下に広がり、後頭部には地面の気配。


 リリベルは誰かに抱えられていた。


 次にリリベルが感じたのは爆発だった。圧倒的な熱と破壊。

 当然、自然現象などではない意図的に誰かが起こした殺意の表れ。


 心の隅に追いやっていた、不安が膨れ上がる。

 リリベルはなにが起こったのかなどと、すでにわかっていることをわざと疑問を心に生み出した。


「リリベル! ミケッシュ! 平気か!」


 ドンキホーテが二人の名を呼ぶ。どうやらミケッシュとリリベルの2人を抱えたているのはドンキホーテらしい。


 そのことに気がつくと、リリベルは瞬時に意識を切り替える。


「先生! もしかして……!」


「そうだ敵襲! センセ! レヴァンス先生(センセ)! ネクスとアーシェさんは!!」


 ドンキホーテの余裕を無くした言葉に、レヴァンスいち早く答える。


「ネクス君は無事だ!」


「わ、私もなんとか!」


 アーシェの声も聞こえたところでドンキホーテは急いで広い表通りから民家の物陰に隠れる。

 そこで、2人の生徒を下ろしたドンキホーテは帽子の妖精フォデュメを手のひらに呼び出した。


「フォデュメ! 鎧とNo.1だ!」


「はいよ! たくっ! 短い休日だったぜ!」


 フォデュメは魔女帽のトンガリに生成された自身の口から群青のマントを、魔女帽の頭を覆う部分からロングソードをそれぞれ吐き出す。


「先生なにが──!」


「説明は後だミケッシュ!」


 群青のマントがドンキホーテを覆うといつのまにか彼は純白の鎧を身にまとい、さらに群青のマントと魔女帽を身につけていた。


「レヴァンス! ネクスとアーシェさんを!」


「もうやっている!」


「サンキュー!!」


 アーシェとネクスはすでにレヴァンスによって民家の路地裏の物陰に避難させられている。


 そのことがわかればもはやドンキホーテに迷いなど無かった。


 ドンキホーテは一気に民家から先ほどまでいた表通りへと身を乗り出した。


「先生!」


 リリベルの呼びかけにドンキホーテは答えない。背中でリリベルの言葉を受け止めてドンキホーテは街の城壁を見た。


 刹那、城壁のてっぺんから十字の光が瞬き、音速を超えた殺意が迫り来る。


 ドンキホーテは逆手で剣の柄を握りしめる。

 そして、風が切り裂かれた。


 ドンキホーテの最速の逆手抜剣そして流れるような居合い切り、それによって迫り来る投射物はものの見事に両断された。


 ドンキホーテの剣に比べれば、小さい角が丸くなった細い円錐のようなその投射物は両断されたことによって、二つに分かれ、そして地面に着弾する。


 しかしそれで終わりでは無かった。その2つに分かれた投射物は地面に着弾した瞬間稲妻のような音を奏で赤の炎を生じさせる。


 周りの民家の壁を破壊したその爆発を見てドンキホーテは確信する。

 この芸当には見覚えがある。


「こいよ──」


 ニヤリとドンキホーテが笑った。


「魔弾の射手」

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