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聖火  作者: 青山喜太


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第五十五話 新たなる始まり

 頭に靄がかかる、ぼやけた頭からは放たれる信号はしんどいだの、だるいだのといった弱音だけだ。


 そんな自分の心、頭に嫌気がさす。


「リリベル、平気か?」


 そんな自分を気遣ってくれる仲間や先生がいるのなら尚更だ、リリベルはそう思った。


 数十分前、あのネクスとドンキホーテの一戦のあと、ドンキホーテ達一向は無理やり転移させられたこの謎の地域がどこなのか調べるために、そして何より休息を取るために動き始めた。


 雨の中の草原を草と雨粒をかき分け集落の痕跡を探すそんな中だった。


「先生……」


 どさり、と倒れる音と草と雨粒が何かに押しつぶされる音をドンキホーテは逃さなかった。


「先生! リリベルが!」


 ミケッシュが叫ぶ。

 ドンキホーテが慌てて振り返ると最悪の予想が当たっていた。


 紅潮した顔、力無く伏せられたまぶたとは対照的に荒い呼吸。


「リリベル!?」


「大丈夫か! おい!」


 急いで、ネクスとドンキホーテはミケッシュと共にリリベルに駆け寄った。


「ひどい熱だ……クソ!」


 手をリリベルの額に当てドンキホーテは、焦る。

 何を発症したのか、なにかの病かどうかすらわからない。


 ここは見知らぬの土地、未知の病という可能性もある。


「まずいな……ネクス、ミケッシュ。俺がリリベルを背負う。君らは大丈夫か? 調子悪くないか?」


「大丈夫……ていうか先生こそ平気なの? 私にボコボコにされたじゃない、私が背負っても──」


「ハハ、まだまだ自分の教え子に気遣いされるような歳でもないぞ、俺は。それにボコボコにされたのは君も同じだろ?」


 ネクスの心配をよそに、ドンキホーテはリリベルに一言、「背負うぞ」と言ったあと自分の肩にリリベルの手をかけさせそしておぶる。


 そして、病人一人をかかえドンキホーテ一向は再び進み出す、安息の地を求めて。


 ─────────────


 雨をかき分け、草をかき分け、漂う閉塞感と体につきまとう疲労感を振り払う。


 ドンキホーテとネクス達の目の前に広がるのは、見通しの良い草原から鬱蒼とした森へと変わっていった。


「本当にこの先に集落なんてあるの!? 先生!」


 ミケッシュが雨を拭いながら言う。


「看板の通りならな!」


 ドンキホーテはネクス達の不安を吹き飛ばすかのように叫ぶ。

 このような森の中に入ったのはなにも迷い込んだわけではない。


 きっかけはドンキホーテが視界の隅にボロボロの看板を見つけたのが始まりだった。


 ──この先、スカオ村


 そう書かれた看板のそばには整備された道があり人の往来がありそうな雰囲気を漂わせていた。


 そうして4人は藁にも縋る思いでスカオ村に向けて歩き出した、この先に休息が待っているのだと信じて。


 だが結果はどうだろう、人の往来がありそうだと思った道は段々と獣道に、開けていた視界にはいつのまにか枝が入り込んでいる。


 本当に村などあるのだろうか、そもそもあの看板は正しかったのか不安と若干の後悔がドンキホーテたちの胸の中に渦巻き始めていた。


「リリベル、もう少しだからな……」


 気休めの言葉を最早、意識のないリリベルに投げかける。

 ドンキホーテの鎧越しでも感じるリリベルの息遣いは荒く、それは彼女の命が危険に晒されていることの証左だ。


 ──早く、せめて雨風の凌げる場所でも見つけられれば。


 この際、家屋でなくても良かった。最悪洞窟のようなところでも……。


「クッソ……あとでフォデュメの契約見直して、寝室ぐらい入れられるようにするか……」


「寝室は勘弁しろ」


 抗議する帽子の妖精フォデュメ。

 こんな時、帽子の妖精に人間は収納できない。彼とは契約を交わした中で契約外の基本的に仕事はしない。

 そのことに嘆きつつ歩みを進めていた時だった。


「先生! あれ……!」


 ネクスが指をさす。

 その指の先、木々の隙間にそれはあった。

 ポツンと立つ木造の小屋。


 ドンキホーテたちが望むものがそこにはあった。


「やった……! リリベル、あったぞ!」


 ドンキホーテは意識のないリリベルに声をかけてそして歩き出す。


 藁をも縋る思い、まさにドンキホーテ達の目の前に現れたのは藁以上の希望の糸だった。


「すみません! どなたか! どなたか! いませんか!」


 ドンキホーテが小屋のドアを叩く、縋るような音が小屋全体に伝わっていく。

 だが反応は返ってこない。


「くそ……」


 その時だった、ギイ、と軋む音が聞こえた。

 ドアがわずかだが開いている。

 隙間からドンキホーテ達を誘うように生暖かい空気が漏れ出していた。


「あ、先生……開いてるみたい……」


 ミケッシュが言う、どうやら彼女がノブを回して、扉を押したようだ。


「不用心だな……まあ、今はちょうどいい使わせてもらおう家主が帰ってきたら交渉しよう」


 そうと決まれば迷う暇はない。急いでドンキホーテ達は小屋の中に入る。


「ネクス! ミケッシュ! まずは毛布か何かを……」


「……先生」


 ドンキホーテと共に硬直するネクス。


「これ、どうなってるの? 何もかも揃ってるじゃない」


 テーブルの上にはホールケーキとチキンの丸焼き。

 暖炉には爛々と火が踊っており、寝床は丁寧にベッドメイキングまでされている。


 この異常な状態に、しかし四人は恐る恐る足を踏み入れる。

 最早それ以外に選択肢はない。


 だがなんだこの状況は、まるで少し前に人がいて何か祝い事でもしていたかのような雰囲気だ。


「とりあえず、リリベルをベットに寝かせる。ネクス、ミケッシュ、悪いが着替えとタオルか何か、拭くものをを持ってきてくれるか?」


 ネクスは頷くとすぐさま、辺りを探し始めた。反対にミケッシュは青ざめてテーブルの近くに立っている。


「……? どうしたミケッシュ?」


「ねぇ、先生、これって偶然?」


 ミケッシュの返事がいまいち理解ができなかったドンキホーテはミケッシュのそばによる。


 そうしてやっとわかった。ミケッシュが青ざめた理由が。


 ホールケーキ、生クリームが主体の甘い匂い。

 そしてそのケーキにはチョコレートで文字がこう刻まれていた。


 ──ネクス、リリベル、ミケッシュ、ついでにドンキホーテ、コングラッチレーション。


 文字が敷き詰められていたそのケーキは、いやケーキだけでない、チキンも暖炉も、この小屋の持ち主に向けられているものではなかった。


 これは最初からネクス達一向に用意されたものだ

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