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聖火  作者: 青山喜太


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第四十一話 魔王の生まれ変わり少女と運命を棄却する少女と、輪廻の龍に好かれた少女④

 新たに機械の義手を装備したフランシスは射抜くような視線をネクス達に投げかけた。


「ヒッ……!」


 ミケッシュはたじろぎ、リリベルは冷や汗を垂らした。

 このままでは勝ち目はないことは確かだ。唯一勝算があるとすればネクスの謎の力だけだが、しかし──。


「……」


 コメディアンに一撃を加えた以降、ネクスは微動だにしない。

 今の自分たちで勝てるだろうか、リリベルは考える。


 相手はおそらく圧倒的な格上、ネクスは不安定な状態で今動けるのかどうかすらわからない。


 決断しなければなならない、この状態でどうするのがベストかどう生き残るのが最善なのか。


(逃げる……? できるのか? 目の前のこの人たちから……)


 そうしてリリベルが迷っている時だった。ザリ、と目の前のフランシスが一歩踏み出す。

 来る、攻撃される、その段違いの敵意に晒される恐怖がリリベルを硬直させる。


 その時だった。


「クキキキキ!!」


 そんな不快な鳴き声がリリベル達の耳に入る。


「な、なに?」


 ミケッシュの疑問に答えるように、彼女の足元に倒れ伏していた、ゴーレム達が起き上がる。


「ゴーレム?!」


 ゴーレム達の体は起き上がった同時に体は綻び、崩壊していった。

 しかしゴーレムの体は地面へと落ちていったわけではない。


 何かに引っ張られるように空中へと集まっていき、巨大な球を形成した。


「ほう……」


 それを興味深そうに見つめるフランシスにコメディアンは問いかける。


「おいおい、旦那なんかやばそうだぜ? 破壊しとくか? あの岩の玉」


「いや良い、ウォーミングアップにはちょうどいい」


 そして、空中にできた岩はまるで卵。そしてその卵から鳥が生まれるかのように、岩の殻を破り人型のゴーレムが姿を現す。


 背には羽を携え鋭い爪と竜の頭を待ったその巨大な人型ゴーレムは地面に重々しく着地すると真っ先にフランシス達に向かっていった。


大地を砕きフランシス達に迫っていくゴーレム。


「なるほど、生徒を守るためのセキリュティか」


 フランシスは呟き、ゴーレムの動き冷静に見て拳を構える。


「旦那ぁ、マジでいけそう?」


 心配そうに聞くコメディアンにフランシスは頷く。


「当然だ」


 その返事と共にフランシスはゴーレムのタックルをモロに受けた。

 金属音が鳴り響く。


 木を薙ぎ倒しながら、ゴーレムはフランシスを彼方まで吹き飛ばした。


「い、今だ!」


 リリベルはその光景を見たあと即座に動きだす、逃げるなら今しかない、ミケッシュの手を急いでリリベルは握りしめた。


「ミケッシュ! 早く!」


 その言葉に、ミケッシュは遅れながらも頷き手を引かれるままに駆け出した。


 ミケッシュを連れたリリベルはネクスにすぐさま駆け寄った。


「ネクス! ネクス! しっかり!」


 一見、羽を背中から生えたこと以外に目立った変化はネクスにはない。

 だが──。


「逃げて……」


 ネクスはただそう呟いた。


「何を言って……!」


 リリベルの言葉に、ミケッシュも頷く。


「そうだよ! 逃げるなら一緒でしょ!」


 ミケッシュの言葉に、しかしネクスは否定した。


「早く……行って……抑えられない!!」


 そういうネクスの体は震えていた。

 リリベルの目にはそれは恐怖によるものではないように思えた。


 まるで暴れ出しそうになっている体を押さえつけるために、必死に力んでいるそんなように思えたのだ。


「だったら……!」


 リリベルはネクスの手を握る。


「なおさら、放っておけない! 一緒に逃げよう! 先生ならなんとか──」


 その瞬間だった、地面に土煙が舞った。大質量の何かが、地面に堕ちた様だった。


「ごあああ!!」


 土煙の中からゴーレムの叫び声が聞こえる、それは怒号に似ており明らかに敵対者に向けた威嚇だ。

 すると土煙が突如晴れた。ゴーレムがその長い腕で煙を散らしていた。


 そしてリリベル達は目にする。

 まるで疲弊した様子もない、フランシスの立ち姿を。

 ところどころ、体に綻びが生じているゴーレムの姿を。


 その姿から予想するに大地に落ちてきたのはゴーレムの方だったようだ。それはゴーレムが魔術師相手に膂力で負けた証拠。


 だがどうやって。


 フランシスはただの機械の義手をつけた珍しい魔法使いにしか見えない。とてもではないがゴーレムを投げ飛ばせるような膂力を持っているとは思えなかった。


 その疑問に答えるかのようにゴーレムと対峙するフランシスは懐から何かを取り出す。


「チェーンソーでいくか……」


 フランシスが懐から出したのは散弾銃の薬莢だった。


「魔道ショットガンエンジン起動」


 そのフランシスの呟きに答えるかのように彼の右腕の義手が開き、穴が現れる。

 ちょうどまるで散弾銃の薬莢が入りそうなその穴の中にフランシスは薬莢を詰め込む。


 “チェーンソー”


 するとフランシスの腕からどこからともなくくぐもった声が響いた。人間から感情を排したようなどこか事務的で無機質な声。


 その声が響いた次の瞬間、フランシスの右腕に変化が現れる。淡い光の粒子が彼の右手の甲からまるで湧き上がる水のようにせりあがり、そして物質化した。


 できたのは先端の丸い剣のようなもの。

 その先端の丸い剣の刃の先端から根元に至るまで、細かい刃が歯のように並び立っていた。


 そしてフランシスは特に気にするでもなく続けて、右腕の穴に散弾銃の薬莢を入れる。


 フランシスは合計三発、右腕に薬莢を納めると再び右腕から声が響く。


 “ヒート”


 “ライトニング”


 “インパクト”


 三つの言葉が、発せられそれと同時に剣の刃に、取り付けられ行儀良く整列していた歯のような刃が剣の縁にそって移動し始めた。


 やがて高速で剣の縁を移動し始めた細かな刃は同時に、紫色の稲妻もそこら中に吐き出し始める。


 “セーフティ・オフ”


 右腕は再び呟く。まるで目の前のゴーレムの運命を決定づけるかのように、フランシスの剣はけたたましく鳴く。


「はあああ……!!」


 そしてフランシスは雄叫びをあげながら、走りゴーレムに肉薄していく。

 ゴーレムも、それを迎撃するかのように、突進し爪を振り上げた。


 だが──。


「はあ!!」


 一瞬の差で、フランシスの右腕の刃の走る剣がゴーレムの胴を切り裂く。

 いや、切り裂くというより削り取ったと言った方が正しいだろう。


 削り取られたゴーレムはフランシスの剣から迸っていた爆発的なエネルギーの影響かその身を爆発させる。


 爆炎の中残ったのは灰と──。


「さあ、魔王様お待たせいたしました踊りましょう」


 フランシスのみだった。

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