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聖火  作者: 青山喜太


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第三十七話 迎えに

 ドンキホーテは走り出す。

 その彼の姿を見て、レヴァンスは叫んだ。


「まて! どういうつもりだ!」


「センセ! 動け! もう襲われてる!」


 走り出すドンキホーテをレヴァンスは止めようとするも、ドンキホーテの焦りの混じる怒気に似た叫びがレヴァンスには引っかかった。


(なにかはわからんが……こいつは確かな確証があって動いている、杞憂なら杞憂でいい、今は……)


 ドンキホーテの話が本当なら、まずは事実の確認だ、おそらくドンキホーテ自身も予想の域を出ていないはずだ。


 しかし彼の焦りは本気だ、その予想が限りなく正解に近いという確信があるのだろう。

 そう杞憂ならいい、杞憂なら……心で呟き続けるレヴァンスはなぜか、ドンキホーテの心配性とも言える予想が当たっているような気がした。


 そして、ドンキホーテ達は結界の外壁に近づき確信した。

 二人の視線の先、透明な結界の壁の向こう側で起こっている異常事態はまさしくドンキホーテの予想が当たっていることを示唆していた。


 ドンキホーテと、レヴァンスの目には生徒が血を流している光景が映し出されていた。結界の内側にいる教員が慌てながら結界を開けようとしている。


「センセ……!」


 ドンキホーテは腰に刺してあった剣に手をかけた。


「……いくぞ、ドンキホーテ」


 レヴァンスもまた、森を見つめた。

 魔の潜むこの危険な森を。


 ─────────────


「ふー」


 ネクスは空に向かって、疲れと達成感を吐き出す。

 地面に転がるのは人型と獣型のゴーレム多数。


「お、終わったぁ」


 そう呟くのはミケッシュだ、槍を杖代わりにして立っている。

 リリベルも持ち合わせたタオルで汗を拭っている。


 全く、不運だったまさか人型と獣型ゴーレムの群れに出くわすとは、しかし疲れはしたもののなんとも危なげなく倒すことができた。


(得点は……)


 リリベルはしおりを確認する。すると、百点という花文字がしおりに浮かび上がってきた。


「ネクス!」


 リリベルは喜びのあまり声を張り上げる。


「どうしたの? リリベル」


「僕たち満点取ったよ!」


 その言葉に思わず口元を緩めそうになったネクスはすぐさま咳払いをした。


(こんなの、予想通りだ)


 だからこの程度の事に喜んでちゃいけない。


「もっと笑ってもいいんじゃないのぉ? ネクスぅ」


 ミケッシュの茶々にうるさい、とデコピンで返事をすると、ネクスは近くの転がっているゴーレムの体にベンチのように腰をかける。


「これからどうしようかな……」


 ネクスは呟く、こうも早く満点が達成されるとは流石に予想外だ。

 まだ四日間もあるというのに、もうやることがない。


「特訓でもしようかな……」


 その時だったふわりと花の香りがする、珍しい嗅いだことがある匂い。

 薔薇の匂いだ。


(こんな森に薔薇?)


 不自然、不可解、不可思議、ネクスの脳内に疑問が溢れ返った時だった。


「そんなつまんなそうなのよりさ、良かったらお兄さんとお茶でもしない? お嬢さん?」


 いつのまにかネクスの隣に白髪の男が座っていた、半裸に縦に色が緑と黄色に分かれているコートと黒いズボンを履いたその男は笑みを浮かべていた。


 急いでネクスは立ち上がり、男から距離をとりながら納めていたサーベルを抜剣する。リリベルとミケッシュも男から距離をとりネクスと同じ位置に集まった。


「誰!」


 ネクスの問いかけに男はあくびで答える。

 教員ではない、身知らない顔にリリベルとミケッシュも、恐怖と警戒心を表情に滲ませる。


 すると男はボヤく。


「旦那ぁ? フラれたぜ」


「当たり前だ、デートに誘えと誰が言った?」


 するとさらにネクス達三人の背後から別の男の声が響く。三人が振り向くとそこにいたのは、黒い長髪、黒ローブの男だった。


「お騒がして申し訳ない、お迎えに上がりました、魔王様」


 そういい、ひざまづく男。

 黒ローブの男は中性的な顔つきをしているその男は表情ひとつ変えないせいでどことなく不気味だ。


 人間味が感じられない黒の男にいっそう三人は警戒を強めた。黒ローブの男はどう見ても魔法使いの風体だ。騎士学校の関係者ではない。


「アンタ、何者……!」


 ネクスの質問に黒ローブの男は微笑む。


「貴女を城へとお連れする、カボチャの馬車の御者でございます。ネクス様、いやこう言った方が確かでしょうか──」


 男はネクスの困惑する顔を瞳に収めながら黒髪の男は言った。


「魔王ヴィアエル様」

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