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聖火  作者: 青山喜太


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第三十五話 侵入者

 光が弱まっていく、爆音によっていかれた耳の金属音が通り過ぎた。

 恐怖によって閉ざされていた瞼をウラカールはゆっくりと開けていく。


 目の前には、木漏れ日の中に立つ黒髪の少女がいた。

 倒したかった、自分を認めさせたかった少女。


(綺麗……だ)


 脳内の言葉をウラカールは振り払う。そうじゃない自分が尻餅をついていることに気がついたウラカールは理解する。


(負けた……のか?)


 ネクスから一直線に続いている地面の溝、それはおそらくウラカールに向けて放たれた闘気の破壊光線の後だ。


 地面を抉ったその光線の跡を見ればわかる明らかにウラカールを当てるつもりで撃ったわけではない。

 光線の跡はウラカールの隣を走っている。


 わかっていたのだ、ネクスは、ウラカールの自信の無さも弱さも。

 そして、ウラカールは振り返った。


(これネクスが……)


 大木が縦に裂けていた、それもその大木一つだけではない、ネクスの剣から放った破壊の光は、その大木に続く木々たちを薙ぎ倒し、森の一部を完全に消失させていた。


もしこれが自分に当てられていたら……ウラカールは不覚考えなくてもどうなっていたか理解できた。


(負けた……)


 完全なる、敗北だった。最初から勝ち目などなかった。

 アビリティを覚えたから勝てるなどと、思い違いもいいところだった。


(負けた……負けたんだ……)


 いや、そのアビリティがあれば勝てるなどと思っていた時点でそのほかの分野ではネクスに敵わないと自ら認めていたようなものだった。


 そうだ、戦う前から自分は負けていた、ウラカールは気づく、勝敗など最初から……。

 自然と彼は己の弱い心を隠すようにうずくまる。


 だがそれでも抑え付けられなかったものが自然と口から溢れでた。


「ちくしょう……」


 惨めだ、悔しい、なんで俺は、と責める言葉ばかりがウラカールの脳内に響き渡る。

 そんな時だった、土を踏む音が聞こえた。


 ウラカールは見なくてもわかった、ネクスがウラカールの前に立っていた。

 笑いに来たのか、憎まれ口の一つでも言ってやろうと思った瞬間、ネクスは言った。


「また、戦いましょ……待ってるから」


 そしてただ言いたいことだけを彼女は言うとウラカールの横を通り過ぎていく。

 勝敗は決した、だからこれ以上はもう何も言わない、ただ少女は敗者の傷に塩を塗るようなことをしなかった。


(そうか──)


 ウラカールは涙を浮かべながら顔を上げる、もうネクスはいない。


(少しは……認めてもらえたか……)


 ─────────────


「ネクス!」


 リリベルが帰ってきたネクスの元に急いで駆け寄る。

 若干焦げ臭い匂いを、漂わせながらネクスは笑った。


「勝ってきた」


 そう誇らしげそうな彼女にリリベルは安心したように肩を落とす。


「途中、ウラカールさんと高速移動しながらアタシたちのとこから離れていくから心配したよぉ」


 遅れて歩きながらきたミケッシュも安堵のため息を吐きながらそう言った。


「で? アンタたちも勝ってきたの?」


 リリベルは頷き、ミケッシュはピースサインをネクスに見せた。


「そう……まぁ当然よねアンタ達が負ける道理ないし」


「いや結構、僕苦戦してた……」


「勝てばいいのよ」


「アタシもなんか手加減されてた……」


「……勝てばいいのよ」


 何だか霧がかかったように若干モヤモヤとした勝利だったようだが、それはそれだ、ネクスは胸を張って宣言する。


「チャンスをチャンスとしてつかみ取れるのは強者の証!! 先生も言ってたでしょ! 運でも相手のミスでも何でも、有効活用した方が強いんだから!」


「そうかな……?」


 ネクスの言葉にリリベルが疑問を呈するもネクスの鋭い眼光によって、「そうかな?」が「そうだね!」に変わった。


「いい? とりあえず、私たちは学年一番のチームに勝ったと言ってもいい! この調子で! 学年トップ目指すわよ!」


「おおー!」と三人の掛け声が森に響き渡った。そして三人は突き進む、目指すは獲得点数トップの座だ。


 ─────────────


 試験開始三日目の朝。


「ゴーレムの討伐数は……おお……! 三日目にして結構減りが早いな、今年は才能の溢れる学生が多いらしい……」


 魔法の石板に表示される残りのゴーレム数を見ながら騎士学校教員、カレイスは感心する。

 確かに前年度よりも優秀な生徒が多い校長や国が無理にでも教育をさせたいわけだ、と改めて実感した彼は、石板から目を離す。


「さて、そろそろ怪我人が出てくるか?」


 そう独り言を呟いた騎士であり教員のカレイスの仕事は所謂、今回の試験の怪我人の治療もしくは治療ができないほどの怪我や病気に生徒がなった場合の結界外への生徒の搬送だった。


 最も、試験のゴーレムはそこまで強くは設定されていないためそんな重篤な怪我人が出ることはあり得ないのだが。


 だが万が一ということもある、この前の魔道機関車襲撃事件や教員が狙われた事件もだいぶ衝撃的な内容だった。


 故にそのような本当の危険が訪れた時のための保険、それがカレイスの役目だった。


「全く、この前の隕石落下事件といい、何が起こってんだかこの国で」


 物騒な世の中になったものだとため息をつくカレイス。

 そんな時だった。


 ──ガサリ。


 カレイスの近くの草むらが揺れる。


「ん?」


 不審に思ったカレイスは草むらに近づく。モンスター……ではないはずだ、モンスターは試験の邪魔になるため前日に一帯から追い払った。


 仮にモンスターがいたとしても、試験のゴーレムが学生の安全を確保するために安全装置を解除して、排除するはず。


 ではいったい何が草木を揺らしたのか。

 嫌な予感がする。急いでカレイスは草をかき分けその中にいる草花を揺らした原因を見つけようと目を凝らした。


 すると、


「た……け、て」


 とか細い声が聞こえた。

 赤黒い液体、カレイスの最初の印象がそれだった。

 戦争で嫌というほど見た、命が流れ出た証。


 騎士学校の生徒だ。生徒が血を流している。


「君! 大丈夫か!」


 すぐさま意識を切り替えたカレイスは簡易的な回復魔法を唱える、癒しの温かな陽光に酷似する光が少年を包むも、怪我が治らない。


「腹が刺されて……クッソ!! 間に合わない!」


 カレイスが使えるような初級中の初級のような回復魔法では焼け石に水だ。

 今この少年に必要なのは高度な回復魔法だ。急いで少年を抱えたカレイスは走り出す。


「待っていろ! 先生が今すぐ結界の外に!!」


 ちょうどいい、カレイスは思い至った。ここからなら早く外に行く。

 ちょうどカレイスは結界の外に通じる壁の近くにいた。いつでも大怪我を負った生徒を外に出せるように。


(しおりに教員の場所を書いておいて良かった!! 大丈夫だ、この子は助かる)


 結界が見えてくる、木々をどんどんと避け、そしてついに、カレイスは結界に触れる。


「開け!」


 この結界は単純だ、選ばれたもの要請に従い機能を稼働させる。

 結界は素直にカレイスが通れる分だけの穴を作り出した。


「聞こえるか? 君! 近くに野営の医療所がある! もうすぐだからな!」


 ここで、疑問を生じさせることができたならカレイスの運命は変わったかもしれない。

 なぜ安全な環境のはずの会場でここまでの怪我を負った生徒がいたのか。

 なぜそんな生徒が都合よくカレイスの近くに現れたのか。


 全てがもう遅かった。


 カレイスが結界の外へと踏み出そうと足を上げた瞬間、ぐらりとカレイスの景色が右に傾く。


「な、え……」


 カレイスは自然と、大地に倒れ込んでいた。


「ご苦労だったな先生」


 声が聞こえる、誰の声だ。聞いたことのない声だった若者の声ではない、かと言って教員の誰かでもない。

 結界の外側から聞こえた声にカレイスはただ困惑した。


「君が結界を開けてくれたおかげで入れたよ、この試験会場に」


 長い黒い髪、中性的な顔、黒いローブ。

 黒の魔術師がカレイスのぼやけかけた視界に映った。

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