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聖火  作者: 青山喜太


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第三十一話 ゴーレム

 赤い瞳、鉄火の混じる吐息と石の肌。そして無機物でできたコウモリのような羽と、巨大な四本の足。

 ネクスの視線の先には確かにゴーレムがいた。


 それもドラゴン型、高得点のゴーレムだ。大きさは成人男性二人といったところだろうか、ネクス達の想像以上に大きい。


 三人は息を呑む。

 首を持ち上げ、鼻を鳴らし、ハァハァと呼吸しているゴーレムドラゴンのその姿はあまりにも生物的だ。


「……! どうしようネクス……!」


 ミケッシュがネクスの手によって塞がれた口から、絞り出すように声を出した。


「シッ! 静かに……声が聞こえるかも……!」


 ネクスの言葉に二人は余計に体を強張らせる。

 そして、二人が完全に静止したのを確認するとネクスはそっと、口から手を離す。


「ちょうどいい……! ここで私たちで仕留める……!」


「待って! 僕たちだけで? 危険なんじゃ……」


「なに言ってんのリリベル、これはチャンスでしょ! 三十点が……」


「でも、見てよ! 警戒してる……! 辺りの匂いまで嗅いで……!」


「あ、まって」


 ネクスとリリベルの会話に唐突にミケッシュが割って入る。


「なに? ミケッシュ?」


 ネクスの問いにミケッシュは顎に人差し指を当てながら答えた。


「さっきからあのドラゴンのゴーレム、息を吐いたり匂いを嗅いだりしてるけど、ゴーレムってそんな機能必要かな?」


「……ミケッシュどういうこと?」


「リリベル、あれはニセの機能ってこと。試験のためとはいえ匂いを感じたりわざわざ呼吸のための臓器を作ったりしないと思うの。少なくとも私が魔法使いだったら嗅覚まではいいとして、呼吸する機能はつけない、コストの無駄すぎるし」


「意味がわからない、じゃあ何でそんな呼吸したり匂いワザと嗅ぐような機能つけてんのよ?」


 ネクスの疑問は最もだ、それらの機能が全てニセモノだとしたら、まるきり無駄な動作をあのゴーレムはやっていることになる。

 それに何の意味があるというのか。


「私が考えるに、あれはハンデなんじゃないかな?」


「ハンデ?」


 リリベルが首を傾げた。


「そう、吐息、鼻を鳴らす音、いわゆる呼吸音、それをワザと大きくドラゴンにやらせることで、ドラゴン型ゴーレムがここにいるよーってみんなに知らせているんだよ」


「そうか、そうすれば未熟な学生達も理不尽な接敵は避けられ、戦略を考える時間も生まれやすい!」


 リリベルの言葉に大きくミケッシュは頷いた。


「って、あれ? ネクスは?」


 ミケッシュの言葉に、リリベルは「そういえば」と周りを見渡す。

 すると、信じられない光景がリリベルの目に映る。


 ネクスが、ゴーレムに接近している。それも十メートル付近のところに。


「あっ! ネクス……!!! なにしてるの……!?」


 リリベルの心配する声にネクスは反応して振り返り、ただ口に人差し指を触れさせて、静かにと暗にいうと、近くにあった石を拾い上げる。


 そして、心配している二人を他所にネクスは石を投げた。

 ボトリ、と鈍い音を立てて石はドラゴンの向こう側の大地に落ちる。


「ッ!!」


 すると突然、ゴーレムドラゴンはその落ちた石の音に反応したのか、音のした方向に顔と体を向ける。

 つまり、ネクス達に背を向けたのだ。


「ネクス、なにをしてるの!」


 駆けつけたリリベルがネクスに話しかける。ミケッシュも同時に辿り着き冷や汗を全身から垂れ流し体を硬直させたままネクスの肩を掴み引き止めようとしていた。


「試してみたいことがあったのよ、本当にあいつ嗅覚が使えないのかを。その証拠に見て! あいつここまで私たちに近づかれても全く気づいていない!」


「じゃあミケッシュがいう通り……!」


「ええ、あいつが持ってるのは、視覚と聴覚だけ嗅覚は飾り!」


 リリベルとミケッシュは頷く。今が絶好の奇襲のタイミングだ。


「え? 待ってアタシたち行くカンジ?」


「行くわよ!」


 ネクスと、リリベルはそこで飛び出した。


「ちょっ! 待って本当にドラゴンと戦うの!?」


 ミケッシュの言葉は二人を引き止められない。そのまま遅れて、ミケッシュは飛び出す。

 ドラゴンに迫るネクスたち、最初に飛びかかったのはネクスだ。


「はあああ!!」


 天高く飛びかかったネクスを当然ドラゴンは彼女の声と跳躍の音を認識する。

 だがそれはネクスの策略だった。


 ネクスは日光を背にしていた、そのせいでドラゴンの視界は光に塞がれる。


「かかった!」


 そしてそのままネクスは剣を引き抜く。

 一筋の閃光がゴーレムドラゴンの肉体を襲う。ネクスのサーベルは見事に羽を切り取った。


「ちっ! 狙いが!」


 目標は頭だったのだが、ドラゴンの振り返るタイミングや、頭の位置が微妙にネクスの予想から外れたせいか羽を切り取るだけに終わる。


 切り取られた羽を惜しむようにドラゴンは見つめた後、感情がないはずのゴーレムドラゴンの瞳に憎しみが宿る。


 少なくともネクスにはそう見えた。

 そしてその憎しみを爪に乗せてゴーレムドラゴンは前足をネクスに振り下ろす。


「ネクス!」


 ネクスに爪が振り下ろされるその瞬間、リリベルがロングソードを抜き放った

 そして鈍い金属音が森に鳴り響く。


 リリベルがドラゴンの爪を破壊したのだ。


「ミケッシュ!」


「わかってる!」


 そしてミケッシュがリリベルの言葉に答え、背中に背負ってた槍を抜く。


「うああ! こわいい!!!」


 石が弾け、火花が飛び散る。

 情けない叫びを発しながら繰り出したミケッシュの一撃はドラゴンの胴体に見事に命中した。


 痛覚のない筈のゴーレムが叫ぶ。

 痛いと。

 生きたいと。


 その一瞬の隙、刹那にも満たない勝機にネクスとリリベルは大地を蹴った。


「やあぁぁあ!!」


「終われぇぇ!!」


 二筋の光が弧を描く。

 ドラゴンの胴体にさらにバツ印のキズが刻まれ火花が宙に舞った。


 そして遂に竜はその巨体を地面に預けた。これ以上動くことがないと、学生達に示すかのように。

 沈黙が三人の間に流れた後、勝利を確認した三人の胸の内に達成感が湧き出てくる。


「やった! 僕たちやったよ! ネクス! ミケッシュ!」


「アタシの槍どうだった? よくない!?」


 はしゃぐ二人を見つめあくまで冷静に、ネクスは言う。


「二人とも、はしゃぐのは後にしてしおりの確認よ、ポイントが入ってるかどうか確かめなきゃ」


 冷静にネクスはしおりのページをめくり始める。倒したポイントの合計は各々生徒達の持っているしおりに記録されるのだ。


「なに〜? ネクス殿は勝利がうれしくないのぉ?」


 ミケッシュが茶化すように言うと、ネクスは薄く笑みを浮かべてこう返した。


「このメンバーなら当たり前よ」


 その言葉を聞いたミケッシュは破顔し、


「ちょっとぉ〜ネクス! ウチ……じゃなくてアタシ嬉しくなっちゃう!」


 とネクスに抱きつく、「鬱陶しい」と言うが満更でもないネクスはミケッシュになされるがままだ。

 そんな二人を微笑みながら見つめリリベルもしおりをめくる。


 喜んでいる二人に代わり自分がポイントを見ておけばいいかと思ったリリベルはポイントが記載されているページをめくる。


 リリベルは目を疑った

 十五ポイント、しおりにはそう書かれていた。


「二人とも! ポイントが半減されてる!」


 リリベルの言葉に一気にネクスとミケッシュの勝利のムードが吹き飛んだ。

 ネクスは急いで、ゴーレムドラゴンの死体を確認しに近づく。


 するとどうだ、よく見ると、倒れているドラゴンの足の根本に矢が刺さっているではないか。

 ネクス達三人の中に弓を使う者はいないつまり──。


「何だ、遅かったな気づくのが」


 ネクスでもリリベルでも、ミケッシュでもない少年の声だ。

 茂みから何者かが出てくる。

 男子四人組、どうにも友好的な雰囲気ではない。


「アンタら何?」


 ネクスが睨みつけると、リーダー格であろう男子は笑った。


「ネクス、お前達はここで脱落してもらう」

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