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聖火  作者: 青山喜太


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第二十三話 ワープ

「……あ? 何のためにそんなことを……」


 ドンキホーテは訝しんだ。

 何の意図があってそんなことをするのか。魔王の存在を触れ回ることに何のメリットがあるのか。


 だがドンキホーテの質問にサーレスは笑みを浮かべたまま答えない。

 そして細身のサーベルの剣先をドンキホーテに向ける。


「これ以上の事はいうなと言われています」


 そういうサーレスは不敵な笑みを浮かべる。最初は挑発や、揶揄いのつもりで向けられた細剣の切先に一瞬に殺気が宿る。


 フラフラとしていた剣先がまるで芯でも入ったかのようにただ一点に留まり、離れているというのにドンキホーテは己の急所全てが危機に晒されている錯覚に襲われた。


 ドンキホーテは一瞬で、悟る。もはやガトリングのような()()()な火器では通用はしない。

 なによりも今の手持ちの弾丸では効果は薄いとドンキホーテは判断した。


「フォデュメ、No.1を」


 ドンキホーテがそう言うと、


「はいはい」


 帽子の妖精フォデュメが返事をする。すると帽子の頭を覆う部分から出ていた、丸太ようなガトリングが飲み込まれるように帽子の中に消えて行く。


 そして帽子に取り憑いた妖精のフォデュメのサメの尾のようなトンガリ部分に現れた口から今度は空薬莢ではなく、鞘に納められたロングソードを吐き出した。


 鈍い金色の鍔に、黒と鍔と同じ鈍い金を主体とした色の鞘に覆われた剣は完全なる十字の形をしていた。


「マジかよ? マジもんの騎士?」


 そう言うのは赤髪のヴォルスだ。

 ヴォルスはどうやら、それまでドンキホーテが本物の騎士であることに若干の疑いを持っていたようだ。


 ドンキホーテの体格の良さから質のいい戦士である事はヴォルスも見抜いていた。

 シスターを守る姿を見て、揶揄いのつもりで騎士と言っていたが、しかし、この度現れたドンキホーテのロングソードを見て、理解した。


 質のいいその剣は、騎士のものだ。

 だが、騎士だというならヴォルスの目の前にいる男、ドンキホーテの取った行動は騎士らしくない。


 魔弾を使ったリボルバー、妖精の取り憑いた帽子。そしてそこから取り出したガトリングガン。


 どれも、騎士のステレオタイプからは外れた武器だった。

 とくに古代兵器の復元である銃火器の類は農民上がりの格の低い一般兵が使うものとしてプライドの高い騎士には好まれてはいない。


「マジですよヴォルス。気をつけてください、あの帽子はただの帽子ではありません」


 サーレスの言葉にヴォルスは雑に返事をする。


「わかってるよ! 武器庫になってるって言いてぇんだろ?」


「違います、あの帽子。魔女帽です」


「だからどうした?」


「わかってないですね、彼は魔女に……マナ人(エーテリアン)に認められた人間です」


「じゃあ魔法剣士?」


「それがわかりません、魔法剣士が使う獲物にしてはロングソードは重すぎる」


 それ以上、サーレスとヴォルスの会話は続かなかった。

 突風が二人にぶつかったのだ。

 それはたった一人によって巻き起こされた風だった。


 そしてその突風の中に剣と殺意が混じって迫る。

 サーレスとヴォルスの胴を分断しようと、空気を切り裂き襲いくるその剣は、音速の壁を越えて第一目標であるサーレスに向かっていった。


「……!!」


 この世のものとは思えない、甲高くそして爆発音にも似た音がガキン、と響く。

 結界内を衝撃波が襲う。


 片付けられていない教会に残った古びた長椅子が、衝撃波で舞い上がる。

 そしてそんな衝撃の嵐に中心に残っていたのは、ヴォルスとサーレス、そして悪魔のような笑みを浮かべたドンキホーテだった。


 ドンキホーテの殺気の籠った薙ぎ払いを、サーレスは細剣で受け止めていた。

 暴風のような衝撃波はその重なり合った二つの剣の交差点から生まれたものだった。


 ドンキホーテの斬撃を受け止めたサーレスは思う。


(この剣の重み……純正の騎士ですね……)


 だが、それにしては魔法の知識に対する理解が深い。しかしドンキホーテに対する疑問を解消する時間はサーレスにはなかった。


 ドンキホーテの剣が離れ、二撃目がくる。

 サーレスが認識できない速度、許容範囲外の威力の斬撃が迫る。


「宝剣!! ルビー!!」


 咄嗟にそう叫んだサーレスの周囲に炎が渦巻く。サーレスを守るように包んだ炎だったが、しかし剣は止まらない。


「はははぁ!!」


 ただ笑いながら、ドンキホーテは火の中に剣と共に突き進む。

 そして剣が生み出した、圧倒的な破壊の前にサーレスが生み出したであろう焔の繭は容易く断ち切られてしまった。


「道化がぁぁ!!」


 サーレスはそう悪態をつきながら、炎のおかげで若干速度が下がったドンキホーテの斬撃を受け止める。


 再びロングソードと細剣が重なり合う。

 三日月のように、口を歪めて笑うドンキホーテと、その道化のような笑う男を睨むサーレス。


「ヴォルス!!」


「こりゃあ! だめだね!」


 と、サーレスの一言にヴォルスは応えて自身の顔をケースのように開く。

 すると、顔の穴から化け物が這いずり出してくる。


 細長い手足と胴体。異常に肥大化した頭部には巨大な口以外何もない。

 ドンキホーテはそのは怪物に見覚えがあった。


「ワープモンスター!」


 ワープモンスター、名は体を表すその魔物は、口から飲み込んだ物体を別の何処かの場所にワープさせる魔物だ。


 本来ワープモンスターのは、自分のに取って有利な地形に誘い込むためだったり、または自分の子供に餌を届けるために使用する技だ。


 本来はワープモンスターが生きるために、使用するその特技をなんのために利用するのか。

 ドンキホーテは考えずとも直感で理解できた。


 ワープモンスターは躊躇う様子すらなく、まずヴォルスを飲み込んだ。

 逃げる気だ。ある地点から別の地点への転送、これでは閉じ込めるための結界も意味をなさない。


 そしてドンキホーテが、ワープモンスターに気を取られていた時だった。


 鋭い蹴りがドンキホーテの腹に直撃する。


「ぐっ!!」


 蹴りを放ったのはサーレスだ。一瞬の隙をつきドンキホーテと距離を取ることに成功する。


「では、またお会いしましょう、騎士殿」


 芝居がかった礼を披露するサーレス。

 そしてワープモンスターは最後にサーレスを飲み込んだ。


「クソ!」


 ドンキホーテは瞬時にワープモンスターに肉薄し、


「吐き出せぇぇ!!」


 そう言いながらワープモンスターの腹に一撃、横一直線に切り裂いた。

 美しい弧を描いたドンキホーテのロングソードは、斬撃の軌道上に、血の三日月を残す。


 ワープモンスターは、自身の腹に収めておくべきだった、赤い血を黄昏るように呆けてみた後、遅れて痛みに気がつき、聞くに耐えない絶叫をあげて、地面に倒れた。


「チッ」


 ドンキホーテは舌打ちをしながら指を鳴らす。すると、ドンキホーテ自身が作った結界が消えて行く。

 もはや、意味のない誰かを閉じ込めるための結界は光の塵とかしていき、外に取り残されていたアーシェが心配そうにドンキホーテに駆けて行く。


「ドンキホーテさん大丈夫ですか?!」


「えぇ……とりあえずは……でも敵は逃しました」


 アーシェの心配をよそに、ドンキホーテはワープモンスターの亡き骸を見つめる。


「ですが、コイツが自身をワープさせる前に仕留められたのは運がよかった」


 ドンキホーテはワープモンスターの裂かれた腹を更に広げ片手を突っ込む。


「ウエッ……! 何してるんですか!?」


 気持ち悪がるアーシェをよそにグチュグチュと音を立てながら文字通り腹を探る。

 するとドンキホーテはワープモンスターの裂かれた腹の中から一つの指で挟める程度の大きさの光玉を取り出した。


「あったあった」


「な、何してるんですか?! 病気になりますよ!?」


 ドンキホーテは笑う。


「なりませんよぉ、とりあえず今日は帰りましょう、送りますよ」


「あ……は、はい! じゃなくて! こんなあっさり……」


 戸惑うアーシェにドンキホーテはまた笑う。


「もう敵はいないから大丈夫ですよ、いたとしてももう襲う気はないでしょう」


 ドンキホーテのその発言にアーシェは若干の戸惑いを見せた。


「な、なんでそんなことが……」


「俺と戦うこと自体、あいつらにとってイレギュラーだからです、多分もう姿を表さないでしょう」


「……確かにそうかもしれないですね……」


 それに、ドンキホーテは付け足しながらワープモンスターの腹から取り出した光玉を見つめた。


「それに早く帰って調べたいことも出来ましたしね」


 ─────────────


「ああ、マジか! マジかマジか、マジかよぉ!!」


 王都エポロのとあるアパートメントの一室。

 そのベットの上でヴォルスは駄々をこねるように、叫んでいた。


「俺の虎の子、死んだんだけど?! どうなってんだサーレス!? あんなところで使う予定も死なす予定もなかったんだぞ! マジでもったいねぇ!」


「いやぁ、残念でしたね」


 さらりと哀悼の念を示すサーレス。ヴォルスとは反対の位置のベットに座る彼は至って冷静に、細剣の手入れをしていた。


「なんでそんな静かなんだよ!? 死んだんだぞ!? ワープ君が!? くっそぉ! マジで使いたくなかった!!」


 そのまま、ヴォルスは枕に顔を突っ込み、叫びを上げる。

「ウルセェ!」と隣の部屋の住人が壁を殴りながらその向こう側から叫ぶ。

 「申し訳ない!」と叫ぶサーレス。

 それも「だまれ!」と言い返される。


 サーレスはそんな状況に肩をすくめながら、ヴォルスに問う。


「大体なんで、あんなヤバい騎士とエンカウントしたんですか? 当社の予定と違うでしょう」


「しらねぇよ、唐突に出てきた」


「……まあいいでしょう、とりあえずあの騎士が強い事は確かです、やはりまずはあの騎士の対策を……」


 そう言って、サーレスが細剣を鞘にしまった時だった。


「あーあーもう大丈夫そうかい?」


 その一室にヴォルス、でもサーレスでもない声が響く。


「勘弁してくれ今はジョークを聞きたくない」


 ヴォルスがそうぼやく。

 そして同時にサーレスは気づく、ヴォルスの隣に男が座っている。


 白い髪で、整った顔立ち。上半身には薄くそして縦半分は緑、もう半分は黄色のコートを羽織り前のボタンを止めず肌を露出している。それに合わせて下半身のズボンは黒く上等なものをその男は身につけていた。


「どうも、二人とも朝飯買ってきたぞ、で、作戦は?」


 突然現れた男が聞くと、


「失敗しましたよ、コメディアンさん」


 サーレスは笑いながらそういう。


「あっそう、じゃあ旦那からの伝言だ」


 コメディアンと呼ばれた男は、頬に手を当てながら、言い放った。


「『とりあえず、計画は変えない。なんとかしろ』だってよ」


 二人のため息が部屋に、響いた。

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