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僕は本心を出したい  作者: 成海千晴
こころとかなで
6/13

混乱、からの。

 ...おはよう?

 目が覚めた。

 あれ、ここどこだっけ。

 なに、してたっけ。

 僕はとりあえず、ベッドから身体を起こす。

 そして、右を見た瞬間。


こころ「わ!?!?」


 なぜか、かなでがいた。無言で、ただ()()()()と笑っていた。

 僕は、これを夢だと思った。なんか、景色がぼやぼやで、かなでの雰囲気がなにかおかしくて。そして、()()()()()なかったから。


りお「こころ。気がついた?」


こころ「わ!?!? なんで!?」


 かなでの形をしたものが喋った。隣にいたのはかなでに擬態したりおだった。

 「バレた?」と言って元々の姿に戻った。やっぱ少女なのか少年なのかわからん。でも、本当に綺麗な顔。この顔を描いたら売れそう。再現できるほどの画力ないけど。


りお「追いかけてきてる最中に、急に意識がなくなって。とりあえずここに連れてきたんだよ。」


こころ「意識を、失ってた?」


りお「うん。急にガクッってなったから本当に驚いたよ。ここは、連れてこようとしてた場所よりも少し遠くにいったらある場所。一応、こころたちが行ってる学校の『保健室』ってところをまねてつくってあった場所なんだ。」


 作ってあったんだ....なんで?


りお「ここに迷い込んだことをわからないようにする時もあるんだよ! 君たちの学校まるまる作ってあるんだよ!」


こころ「でも迷い込んできたところに、()()()()()んじゃなかったっけ?」


りお「ま、まあ。細かいことは置いておいて。」


 はぐらかされた感が半端ないな。なんでだろ。そんなこと考えてたら、その思考を遮るように。

 無駄に優しい、圧を感じる声でりおが尋ねた。


りお「ねえ、こころ。なんでかなでさんの怪我を知ってるの?」


こころ「え、え!?!?」


 確かに!ここって6時間分の記憶ないって言ってたのに、に?


こころ「なんで思い出せないはずの記憶がわかるの?!」


りお「こころって、いろんなとこ抜けてるよね。てか、なんで思い出せてるかは僕が聞きたいんだけど。」


 ....なんなの。明らかにわざとらしくやれやれって感じで言うの。なんか気分を害された気分??

 気分の気分ってなんだよ。

 とか思ってたら、急にりおから血の気が引いた。まあ、実際にはそんな気がしただけだけど。


りお「しょうもないこと考えてないで。真剣に、よく聞いてね。」


 さっきと声の雰囲気が変わった。え、なんかめっちゃまずいのかな。

 こう言う時の勘は本当に当たるから嫌いだ。


りお「こころ。君がその6時間の記憶を思い出せちゃったってことは、ここの空間の秩序が狂ったって言うことになるんだ。」


 ...つ、ま、り?


りお「ここの空間が危ないかもしれない。」


 ...ってことは??

 ちょっと物分かり悪すぎてわからない。


りお「なんでそこがわからないんだよ。つまり、ここから出ないとまずいってこと! ここが再利用していい()()()()()じゃ無くなって、ここがどこかの空間と繋がろうとしてるってこと!!」


こころ「まじで? それめちゃくちゃマズイことになってるじゃん。」


 りおは僕の相槌をスルーし、独り言のようにぶつぶつ呟く。


りお「こんなこと。こんなこと今までなかったのに。103億1048万289年前にここに来てから、ずっとずっっっっっと変わらなかったのに。」


 ...さらっと103億何ちゃら年って言った?

 え、りおって、え?なんか色々とおかしい。あれ、AIとか言ってたから、ここにきたのはそんな昔じゃないと思ってたんだけど。え、そもそも地球って46億年前にできたんじゃないの?

 宇宙って何億年前にできたの?

 ...そんなの知らないよ!!

 てか、僕たちと日にちの数え方同じなのかな。

 ああああ!そんなん考えだすと意味不明になってくるじゃん!!


りお「何一人で喚いてるんだよ。こうなった以上、僕も危ないから一緒にこころのところに行かせてもらう。」


こころ「え、まじ?? それ大丈夫なの?」


りお「つべこべ言わずに! 僕の手を持って。」


 はい。手、手か。なんか恋人できた気.......あ、無駄なこと思い出した。

 さっきこいつ.....


りお「え、怖い怖い。圧出さないで。文句は後でたっぷり聞くから。」


こころ「だって覚えてられないんでしょ!」


りお「この空間が正しく働いてないから、多分覚えていられる! ほら、波長が合ったから、行くよ!」


 多分ってなんだよ。てか、そこは変わってなかったんかぁぁぁぁぁぁい!!




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 こころは、いつもの3人に見守られていた。

 今は5時。最終下校時間まであと1時間。あらゆるところで、部活動の光景が見受けられる.....屋内のみだが。

 外は、結構な強さの雨。とても止みそうにない。

 外練なんかしていられない運動部はそれぞれの割り当ててある場所で筋トレをしていた。

 3人は、全員部活そっちのけでこころの元にいた。




 僕は、意識が現実に戻ってきた瞬間飛び起きた。早く、現実に戻って来たかったから。

 空間を移動するって、あんなに気持ち悪い感覚だったのか。

 飛び起きたあと、しばらく目の焦点が合わなかった。焦点を合わせながら周りを見ると、いつもの3人がいた。

 ここは.....本物の、僕の学校の保健室だ。


こころ「みん、な?」


 3人ともびっくりして、各々面白い反応を見せていた。よほど、驚いたんだと思う。

 これは............うん、なんて言えばいいんだろう。とにかくみんなすごい格好だった。もう、面白いの次元を超えて、逆に大丈夫か聞きたくなった。

 その格好のまま、みんな僕が無事なことを口々に確認した。僕は少し慌てながら、「大丈夫、心配してくれてありがとう!」と言った。

 その言葉を聞いて、3人とも安堵の表情を浮かべた。そこから、少し雑談した。そして、それぞれが落ち着いたタイミングで部活に戻って行った。最後にりくが保健室から出ていった。

 どこからともなく、りおが出てきた。音もなく出てきたのでびっくりした。


りお「(ここではテレパシーで喋るね。)」


 僕はなんとなく察した。

 とりあえず学校から出ようと思った。それを、ジェスチャーで伝えようかと思ったけど、りおはわかっていた。

 そっか、考えてることわかるんだったね。

 僕の荷物は、ご丁寧に持ってきてあった。あの3人には、また改めて感謝しないといけないなと思った。


 さあ、保健室に戻ってきたのはいいんだよ。僕は、今、いかにして学校から出るか迷っているんだよ。

 推理タイムです。あ、特に推理じゃないけど。そうっぽくしたいんだよ!

 ...なんとなくね。はい!! りおはそんな顔をしない!

 まず、外は雨です。しかし、僕は傘を持っていません。そうなると濡れるだけではなく、りおの存在を迎えにきてくれた人として誤魔化すことができない。

 それ以前に、保健室は職員室の真向かいであり、靴箱が遠いです。そうなると、先生や学校の生徒にりおの存在がバレる可能性が高まるわけですよ。となると、「学校に許可をとっていない()()()が校内に侵入した」という事案になってしまうんですよ。

 こうなると何が困るか。僕がこの()()()を校内に入れたということになり、親、警察、とかの大ごとになってしまい。僕の平穏が消え去るということ。

 それはなんとか避けたいです。さあ、これを避けるにはどうしたらいいでしょう。


りお「(僕が、体操服か制服を着たらいいんじゃない?)」


 !?!?

 それで行ける!?だ、大丈夫、かな?

 僕が本当に大丈夫かあわあわし出すのを見て、りおはにっこり笑った。

 そして、


「(自然にしてれば、案外バレないよ。)」


 と言った。

 あれ、やっぱ、りおって.....悪魔??


りお「(ほら、制服貸して?)」


 え、制服着てるんだけど。やだ。体操服着なよ。


りお「(それじゃ、苗字書いてあるからバレちゃうじゃん。)」


 う、ここで、着替えるのは、ちょっと、は、恥ずかしいって.....

 恥ずかしがってて、何も始まらないのもわかってるけど。


りお「(カーテン閉めたら大丈夫。)」


 それもそうか。ここのカーテンはそういう使い方じゃない気がするけどな。

 そして、僕が保健室のカーテンを閉め始めた時、また、りおがにっこり笑った。今度は、物凄く圧を感じる笑顔だった。怖いから、急いで着替えようと思う。体操服持っててよかった。


 ...ねえ、まって。なんで音もなく出てきた人が、「自然にしてれば案外バレないよ」なんだよ?

 じゃあなんで普通に喋らないんだよ。なんか知らんけど、保健室の先生いないし。僕たち以外に誰もいないのに。

 すると、テレパシーで、少し文句のように伝えてきた。


りお「(保健室は、話し声が聞こえたらおかしいと思うから黙ってるんだけど。察したんじゃないのか。)」


 あ、まあ、そうだね。確かに話し声はあまり良くないな。よくわかってるんだね。僕のためにありがとう。

 はい、着替え終わったよ。制服を少し整えながら、僕はカーテンを開ける。


りお「(ありがとう、じゃあ場所変わって?)」


 うん、場所かわろ。

 そういえばりおって、女子?男子?問題。それを確かめるには、覗くしかないのか、ないのか!?

 ...いてっ。殴らないでよ。え、ちょ、睨まないで、ごめんって。あ、え、その蔑んだような目で見ないで。僕は別に変態じゃないから。変態じゃないから!!好奇心だって、許してください!


 ...10秒ぐらい、土下座した。


 乱暴にカーテンを閉める音が聞こえたので、僕は顔を上げた。微妙に半袖半ズボンは寒い。今は、まだ5月半ばだからね。雨降ったらひんやりするよ。地球温暖化でそんなことない時もあるけど。まあ。今は無事に校内を出ることが優先。

 あ、りおの顔。美しすぎて、隠さないとやばいかもしれない。本当に、本当に美しい顔。少し大きめのタオル探そ。持ってたっけな。制服のサイズはりおの身長的には問題ないはずだから、そこは気にしない。


 タオルをどうにかカバンの底から掘り出し終わって埃を払っていたら、カーテンが弱々しく開いた。

さっきと一転。物凄く恥ずかしそうなりおが出てきた。制服のサイズと着こなしはバッチリ、というか僕より似合ってる。可愛いのが羨ましい。スタイルもいい。でも、胸ない。やっぱ少年か。


りお「(胸だけで決めつけられるのは困るって。)」


 え、りおって女子なの??


りお「(え、いや、違う.....けど。)」


 なんだそれ。まあいいや。このタオルで顔隠して。じゃ、行くよ。

 とにかく、自然に、怪しまれないようにしたら、大丈夫だから。ここの廊下はどこの部活も使ってないから。静かだから確実だよ。

 めっちゃ緊張するけど。


 まあ、この後。僕の緊張も虚しいほどに誰にも会わず、無事に靴箱に辿り着き、校門を出た。

 外は、雨は降ってるものの、さっきよりも随分弱く降っていた。

 たまたまだったのかな?さっきの時間帯だけしか見ていないとわからないな。でも、6時間目あたりも雨降ってたよね、強さに波があるだけかな?とにかく幸運だった。

 校門を出たらとにかく僕たちが学校から見えないところまで走った。りおは意外と体力があって、走った後少しも息切れしていなかった。


りお「これで少し安心かな。雨、止みかけててよかった。」


こころ「そうだね、というか無事に学校から脱出できてよかったぁぁぁぁぁぁ〜」


りお「で、この格好どうする...?」


 そんなのそのままでいいから。


こころ「今から、かなでの病院に行く。僕は、かなでと話さないといけない。」


りお「こころ? ちょっと、スルーしないで欲しいんだけど?」


つづく

1/14 細かい部分を修正しました。

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