表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は本心を出したい  作者: 成海千晴
こころとかなで
11/13

番外編 かなでの出会い

今回は番外編です。

 私とこころが出会ったのは幼稚園...ではなく、3歳の時にあった夏祭りだった。そもそも私は幼稚園にも保育園にも行っていない。

 こころは、道の端っこでうずくまって泣いていた。迷子になったらしい。夏祭りといっても地元の小規模なものだったので、人はあまり多くなかった。

 私が「どーしたの?」と声をかけた。こころは、真っ赤に腫らした目で私を見た。前髪は眉毛が隠れるぐらいで切り揃えられ、2本の少し短いおさげになっていた。薄ピンクを基調とした少し大きめの、でもよく似合う浴衣を着ていた。しゃがんだまま、私だけをまっすぐ見ていた。泣いていたのに、美しい顔。目が離せなかった。今思うと、一目惚れだったのかなと思う。

 

 幼いながら、この美しい存在を守らなきゃ、助けなきゃ、と思った。すぐ両親に声をかけた。両親はすぐに状況を理解して、こころの家族を探そうと言ってくれた。私はこころとしっかり手をつないで、お姉さんのように頼もしくあろうとした。

 幸い、こころの両親はすぐに見つかった。でも、私はこころと離れなければいけないことが悲しくなってしまった。ついさっき、初めて会ったばっかりだったのに。

 そのことを両親に伝えようかと思った。でも恥ずかしくて伝えられなくて。でも悲しくて、私は泣き出してしまった。

 泣いてしまった私を見て、両親はなんで泣いているのかわからなかったらしい。そりゃそうだ、昔から私は、感情を伝えるのが苦手で、何かをうまく伝えられなかったらすぐ泣いていたから。その時、こころはこころの両親から離れ、私の前に来た。そして、私の頭をよしよしして、「ありがとう」といった。にっこり笑っていた。今度は物凄く可愛かった。時が止まったようだった。

 嬉しくて、涙なんて一瞬で止まった。でも、その後にだんだん恥ずかしくなってきた。私がお姉さんしてたのに、って。こころの方が、お姉さんっぽかった。さっきまで、助けないと死んじゃいそうだったのに。

 可愛い嫉妬心。でも憧れた。今でも、こころ以外には抱けない感情。こころは私の世界を色づけた。

 私は、こころともっと関わりたくなった、友達になりたいと思った。だから、勇気を振り絞っていった。


「ね、ねえ。ま、また、会いたい・・・」


 近くにいる両親に聞こえないほどの小さい声だった。でも、こころはしっかり聞き取ってくれて、


「いいよ!」


と言ってくれた。


「こころはねー、はやし、こころっていうの!!」


 私の両親は、3歳で自分の名前をはっきり言えていることを素直に感心していた。

 私は、こころみたいにはっきり言うことはできなかった。でも、さっきよりは大きな声で言った。


「わ、わたしは、いいだ、かにゃで、よろしく」


 やっぱり恥ずかしかった。発音はちゃんとできなかったけど、ちゃんと言えてよかったなと思う。


 このやり取りから、私の両親は花火を一緒に見ることを提案してくれた。こころの両親も承諾し、はぐれないようにまたしっかり手をつないで両親たちに挟まれて歩いた。疲れたころに、花火の見やすい位置についた。そこは高台で、少し長めの椅子もおいてあった。私とこころは隣同士で座った。こころは花火を楽しみに空を見てそわそわしていた。私はこころをずっと見ていた。花火が始まったとき、私はこころと花火を交互に見ないといけなくて大変だった。

 私たちが花火に見惚れている間、両親たちの間で連絡先などの情報交換をしていて、住所が近いことが判明、お互いの家で遊べるようになった。

 初めての友達。2人とも、幼稚園にも保育園にも行っていなかった為、小学校に入るまでひたすらお互いの家で遊んだ。どんどん仲を深めた。こころはコロコロ表情が変わって、見ていて面白くて、私も笑っていた。私が笑うと、こころは嬉しそうににっこり笑う。その表情が可愛くって、私は好きだった。


 成長するにつれて、こころのことは家族のように思うようになった。昔のように、美しいと思うことはなくなった。でも、こころが愛おしくてたまらない。その想いが膨らんでいく。こころがいない世界なんて、考えられない。なにをされても、嫌いにならない、もっと好きになっていく。そのことを冷静に考えると少し全身が粟立った。

 そんなことを思いながら小学校を卒業し、中学生になった。中学に入ってすぐ、幼馴染のるきに告白された。るきと付き合ったら、こころのことを考えすぎなくて済むかなと思ったけど、無理だった。初めは付き合うことに前向きだったけど、だんだんどうでもよくなって、やっぱりこころの方が大切だなと思った。純粋に好意を伝えてくれてたるきには少し申し訳ないと思った。でもどうしても、こころが一番だった。

 そんな時に、こころはいじめられていることをたまたま知った。私だけのこころに何してくれてんだ。学校の人たち、今まで仲良くしていた人たちとの距離が一気に遠くなった感覚があった。愛おしいこころと昔の美しいこころが重なった。こころを傷つけるわけにはいかない。私が、守らなきゃ。守ってあげなきゃ。


 私は一生、こころと一緒に生きていく。これは純粋な友情じゃないのかもしれない。でも、これも友情の一つ。正解なんて、私とこころで作ればいい。他の人たちなんて関係ない。もしこころが私から離れようとしても絶対に離してあげない。こころは、一生私のなんだから!

来年から次章に入ります。

今年もありがとうございました。来年も、よろしくお願いいたします。

来年も時々短編を投稿しようと思うので、気が向いたら読んでください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ