とある小料理屋での一幕 ~転売対策について考えよう~
元々、小説のネタとして用意していましたが、微妙にリアリティがあって鮮度があるので、本編ではなく後日談SSの形で書いてみました。
ケイ:「ナギ、最近デババトが一気に売れ過ぎて困っているんだ」
ナギ:「売れ過ぎて困るってことあるんです? 寧ろ、どこも売り切れで俺の方が買えなくて困っているんですが」
ケイ:「まさにそれさ。どうにも大規模に転売されているようでね。それに吊られてクレームが後をたたないんだ」
ナギ:「確かにあれだけ売れていれば、転売者も横行するし、クレームも出ますよね」
ケイ:「出来ることはしているんだけどね。供給タイミングを調整したり、供給量を増やしてみたり。店舗側でも購入制限を付けたり証明書を求めたり、と個別に対応しているようだけど……。まぁ、その結果は想像できるでしょ?」
ナギ:「いたちごっこでしょうね。より簡単にお金を稼ぐ方法があれば飛び付くのは自然ですし。まして安く買って高く売るなんて商売の基本だから、心理的なハードルも低い」
ケイ:「ある程度規制は必要だけど、完全に犯罪だとするには境界線が難しいところだね」
ナギ:「あまり厳しく取り締まられないと判ると、規模がエスカレートしていきますよね。聞いた話だと、高値で売った上で配送しないとか、中身を抜いた状態で配送するとか」
ケイ:「そして、そんな本来無関係なクレームまでこっちに来たりするのさ」
ナギ:「企業側も災難ですね。だけど、そんな話を俺にしてどうするんです? 愚痴なら聞きますけど」
ケイ:「ほら、ナギはデババトでも想定外の構築をしてくるからね。何か突拍子もない意見でもないかと思ってね。対策の参考になるような」
ナギ:「はぁ、こんな小料理屋の店主がそんな大企業の経営に意見できるわけもないでしょうに。んー、でも、あれじゃないですか? 単純に値段を上げればいいんですよ」
ケイ:「需要と供給のバランスってやつだね。でも、そういう訳にもいかないんだ。子供でも楽しめるカードゲームなんだから」
ナギ:「全体が値上げされたらユーザーの俺も困りますよ。いえ、そうではなくて転売されている分だけ値段を高くして販売すればいいんじゃないかなと」
ケイ:「転売されている分だけ……2重に価格を設定するってこと?」
ナギ:「どうせ一定割合は転売用に買われてしまうなら、その分を公式的に高値で販売してはどうかと。つまり、公式な転売ですね」
ケイ:「あー、なるほどね。転売を規制するんじゃなくて、転売の需要を正規ルートで奪ってしまおうってことか」
ナギ:「正規品を取り扱う公式マークは強いですからね。多少の値段差ならこちらの方が買われるかと」
ケイ:「おや? その口振りだと販売価格の目安もできている感じかな」
ナギ:「そうですね。転売されている価格に合わせた変動制が良いんじゃないですか? 定価より高くしても転売価格より安ければ結局買い占められそうですし」
ケイ:「変動制か……それはえげつないな。在庫処分も許さない勢いじゃないか」
ナギ:「えぇ。多少安く在庫処分しようとしても、公式価格が直ぐにその値段になるのが判っていれば誰も買いませんよね」
ケイ:「ユーザー側は安心感が得られて、企業側も最大限の利益が得られる。更には転売業全体にも脅しを掛けられる、か。やっぱり、ナギは面白いこと考えるね」
ナギ:「どうです? 参考になりました?」
ケイ:「参考どころか即採用するレベルだよ。後は、高値で売ることへの付加価値の付け方とか、供給量とかの微調整、法律面の調整とかがあるだろうけど……もういっそ、デババトで実績が作れるなら新しく会社を興してもよいかもしれないね。似たような事で困っている企業も多いだろうし」
ナギ:「きっと部長のことだから上手くやるんでしょうね。さて、肩の荷が降りたなら何食べます? リクエストに答えますよ」
ケイ:「そこはそろそろ義兄とでも呼んで貰っていいところなんだけども……。まぁ、そうだなぁ、じゃあ今日のところは――――」
~とある小料理屋での一幕 完~