玄関
「ほら。だから言ったでしょう。開いてないって」
「う~ん。あきらめるしか、ないのかな」
「そうよ。探検は、これでおしまいにしましょ」
「でもなあ」
なかなかあきらめがつかないアキラは、玄関のまえをうろうろと歩き回っていた。
そして、とつぜん大きな声を出した。
「あ!ここ!玄関。おれ、まだ確認していなかった」
そう言ってアキラは、玄関のドアノブに手をかけた。
ドアノブを左右に回す。
ガチャ、ガチャ
思っていた通り、ドアはガチャガチャと鍵がかかっているらしい音を立てるだけで、開く気配はなかった。
「ほらね。…残念だけど、ここでおしまい」
「ちぇ…しょうがないな。あきらめるか。なんだよ、まだ4時かよ。オサム、まだ遊べるよな?これから、いつもの公園行こうよ」
「うん」
ぼくはアキラに返事を返しながら、なぜか、玄関のドアが気になり、目を向けた。
そして、ドアから目が離せなくなった。
そのままなにかに誘われるように、ぼくは手を、ドアノブに伸ばした。
ドアノブをひねる。
カチャ…乾いた音をたててノブが回り、ぼくの手にひかれるままに扉がこちらがわに、開いた。
「え?」
三人同時に驚いた声を出して、その場にかたまってしまった。
「え??マジ?さっきおれが回したときは、ガチャガチャいうだけだったぞ」
アキラが言う。
「そうよ。私も横で見てたから、アキラ君が一生けんめい回してたの知ってるし」
ふたりともびっくりして、口をぱくぱくさせながら言っていた。
だけど、ふたりとおなじくらい、ううん、ふたりよりもぼくのほうが、もっと、ずっとびっくりしていた。
「ねえ、オサム君、なんで開けてみようとしたの?さっきは興味ない感じで、ちょっと離れたところにいたじゃない?」
「うん。興味がないというか。だって窓とか全部、鍵がかかってたじゃない?だから一番大事な、玄関の鍵をかけわすれるなんてありえないとおもってたし。それに、別に開かなくてもいいかもって思ってたもん。だけど」
「だけど?」
いいよどんだぼくに、サオリが聞き返してきた。
ぼくは、こんなこと言っても信じてもらえないかもと迷ったけれど、二人に言った。
「だけど、探検終わらせて、公園に行こうってアキラが言ったときに、なんだか呼ばれたような気がしたんだ」
「なにに?なにに呼ばれたの?ここには私たち以外に、だれもいないじゃない」
「うん。それが、ドアに、呼ばれた気がしたんだ」
「ドアに?」
サオリとアキラがハモっていう。
続