家を周って
「思ったより、ふつうね」
同じことを思っていたらしいサオリが言った。
「おれも、もっと古~い家かと思ってたよ。いかにもって感じのさ」
アキラも続いて言う。
「これで探検第一段階は完了ね。つづいて第二段階。家の裏側に行ってみない?」
「おう。今度はサオリが先に行けよ」
「わかったわよ。ふたりとも、ついてきて」
門を入るまではおそるおそるだったぼくたちだけど、一度入ってしまうと罪悪感がうすくなって、むしろ好奇心がむくむくとわいてきた。
そんなに大きくもない家の裏手をぐるっと一周回って、ぼくたちはすぐに、スタート地点の入口のところに戻ってきた。
家の裏側も、表側と同じように雑草だらけだった。
庭をかこんでいるブロック塀のそばには、ぼくには名前のわからない木が植えてあった。
トタン板の屋根がついてるテラスには、上からつりさげるタイプの物干しざおが、二本かかっていた。
その他には、目をひかれるようなものは、なにもなかった。
「なんだか、殺風景な庭だったわね」
「うん。犬小屋もなかったし。木はあったけど花とか一本もなかったよな。雑草は、いっぱい生えてたけど」
「犬小屋とか花壇とかは、ない家もあるだろうけれど。なんていうのかな、寂しい感じがする庭だったと思わない?」
「うん。ぼくも思った。『何もない』って感じがした。もしかして、だれも住んでないからなのかな」
「そうかも、しれないわね」
「なあなあ。まだ探検、するだろ?」
アキラが言う。
「まだって…どこを?見られるところは、見ちゃったじゃない」
サオリが答える。
「中だよ。な・か」
「はあ?なに言ってるの?勝手にひとの家の中に入るのって、だめじゃない。どろぼうと一緒よ」
「そうだよ。それに鍵だって、かかっているだろうし」
「でもさ、せっかくここまで来てるんだし。ちゃんと確認しないと、きも試しにならないじゃん」
「でも入れないんだったら、一緒でしょ」
ぼくたちふたりに否定されても、あきらめきれなかったらしい。
「どこか、あいてないかな…窓が割れてるとかさあ。おれ、家の周りもう一度確認してくる」
そう言って家の裏側にむかって歩き出したアキラを、ぼくとサオリはあわてて追いかけた。
まさかわざとガラスを割ったりは、しないだろうけれど。
アキラは歩きながら、すべての窓の窓枠に、手をかけてはひっぱって確認して回った。
背の高さより大きな窓が6枚。
背のびをして、やっと届くところにある窓が6枚。
開けられないようになっている窓が2枚。
裏口なのか金属製のドアがひとつ。
全部を確認して、またスタート地点に戻ってきた。
続