サオリ
「え!どっ、どろ…どろぼうなんてするもんか」
なんていっていいかわからず、おたおたしているぼくのとなりで、アキラがどもりながらもそう答えてくれた。
「どろぼうじゃなくても、ひとの家をのぞきこんでいたじゃない。じゅうぶんあやしいわよ」
腰に両手をあてて仁王立ちになったサオリは、ぼくたちよりもずっと小柄なのにとても大きく見えた。
「もう一度聞くわ。あんたたち、ここでいったいなにをしてたの?」
「探検だよ」
「探検?」
「探検というか…きもだめしというか。なあ」
アキラがきゅうに僕に話をふってきたので、ぼくはあわてて頭を上下にふって同意をつたえた。
「なんで、ここんちに入るのが『きもだめし』になるのよ?」
サオリが僕のほうをむいて聞いてきたので、ぼくはアキラから聞いた話…『この家は出るらしい』といううわさと、その話のでどころが『隣のクラスのタケシの兄ちゃんの友達』であることを伝えた。
「ふうん…で、アキラ君はともかくとして、オサム君もそれを信じて『きもだめし』しにきたんだ?」
「信じてっていうわけでもないけれど、アキラが行こう行こうってずっと言ってたし、今日はたまたま、うちの手伝いもなくてひまだったから…」
「まあ、いいわ。オサム君がそういうんだったら、そういうことにしておいてあげる」
「ええ!」ぼくとアキラは、同時に声をあげた。
「いや、ぼく、ほんとに信じているわけじゃないし」
いい終わる前に、アキラがいかにも心外といった口調で言った。
「オレは信用できなくても、オサムが言うんだったら信用するのかよ?それってフコーヘーってやつじゃね?」
サオリは悪びれた風もなく、アキラの言い分に反論した。
「アキラ君とオサム君じゃ『日ごろの行ない』が違うのよ。じごーじとくってやつね」
アキラは何も反論できず、横で聞いていた僕はアキラには悪いと思ったけれど、笑いをこらえるのに必死で、心の中で(サオリ、ナイス)と思っていた。
「でも、なっとくしたんだったらさ、先生たちには、チクらないでいてくれるんだよな?」
「そうね。言わないでおいてあげる」
「やった。サンキューな、サオリ」
そう言うアキラのほうを向いて、にやりと笑ってサオリはつづけた。
「ただし、それには条件があるわ」
「え?条件?」
「そう。私が今から言うことを、聞いてくれたら言わないでおいてあげる」
「なんだよ…?あ!まさかパシリになれとか?」
「はあ?なにバカみたいなこといってるの。条件はね、『私も肝試しのメンバーに入れること』よ」
「ええっ?!」
「やだよ。そんなの」
前者はぼくで、後者はアキラで、ふたり同時に叫んで顔をみあわせた。
続