表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくの・夏  作者: 奈那美
3/16

作戦開始

「じゃあさ、何して遊ぶ?」

ぼくが聞くとアキラは、にまっと意味ありげな笑いをうかべた顔で、ぼくに小さな声で返した。

「決まってるだろ?例のとこ、行ってみようよ」

「え…?今から?」

「今からだよ。一緒に遊べるチャンスが少ないんだから、やれる時にやっとかないとさ」

「それはそうだけど…。まあいいか。行こう!」

「やった!じゃあ三丁目まで競争だ!」

 

アキラはよっぽど楽しみにしていたらしく、そう言うととたんに走りだした。

「あ、待ってよ」

話は聞いていても、その家の場所を知らないぼくは、置いていかれないようにあわててアキラの後を追って走った。

『例の空き家』は三丁目の外れの方、川の近くにあった。

ぼくは、初めて来た場所にちょっと緊張しながら、アキラの隣に立って家を見た。

ブロック塀で囲われたその家は、門のすぐそばから雑草がびっしりと生えていて、誰か住んでるようには見えなかった。

 

ぼくとアキラは、門のかげに隠れるようにして、首だけ伸ばして中を覗き込んだ。

「…だれもいないみたいだな」

「というかだれも住んでないんじゃないの?こんなに草ばっかりだし、誰かが通ったようなあともないし」

「じゃあ、よけいにラッキーじゃん。探検しに入ったら実はだれか住んでて、そのだれかから『こらー!』って怒られる心配がないってことだしさ。」

「そりゃそうかもしれないけど、やっぱり知らない人の家に勝手に入っていくのはだめだよ」

そんなことをこそこそ言い合いながら門のところで押し問答をしていたから、ぼくもアキラも、だれかが後ろに近づいてきたことに少しも気がつかなかった。

「こらっ!あんたたち!!そこでなにをしているの」

とつぜんどなられて、ぼくたちは文字どおりとびあがるほどびっくりして『わあっ』とか『ごめんなさい』とか、そのようなことを口走りながらあわてて、声をかけた相手のほうに向きなおった。

 

「サオリ…?!」

アキラの間が抜けたような声が、となりできこえた。

そこに立っていたのは、知らないおばさんでもなく、先生とか知ってる大人でもなく、クラスメイトのサオリだった。

「あんたたち、こんなところでなにしてるの?」

「なんもしてねえし」

アキラがこたえる。

「こそこそひとの家の中、のぞきこんでたでしょう?私、ずっと見てたんだから」

「いや、あの、ボールが」

アキラが、目をきょろきょろさせながら口の中でもごもごいうと、サオリがぴしゃりといった。

「うそをつくのはやめたら?ここのどこに、そんなボール遊びができるスペースがあるの?それよりなにより、ここはあんたたちが住んでる町内とは、はなれてるじゃない。ほんとうのことを言わないと、先生に言いつけてやるから。『アキラ君たちは、ひとのいえにどろぼうしに行こうとしてました。』って」

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ